著者
三田 コト 西内 久 松元 文子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会誌 (ISSN:03862666)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.79-84, 1975-03-31 (Released:2017-11-29)

Experiment was carried out to know the relations between the qualities and quantities of materials in making hamburg-steak and its finished products. Various kinds of samples were made, each weighing 100 grams, varying the quantities of minced beef, onions, eggs and bread crumbs. Four different kinds of beef were used; one of which was bought at the city market, and the other three were the different percentage of fat contents, i.e. the one is no fat, and the others are 20 percent fat, and 40 percent fat respectively. The National Electric Hot Plate (800 W) were used for roasting. The results were as follows : 1. The quantities of onions, eggs, bread crumbs, and fat contents in beef have some relations to the weight of finished products. 2. The quantities of eggs, bread crumbs and collagen in beef are important factors in determining the sizes of finished products. 3. The taste is generally influenced by the quality of beef and the fat used in mixing.
著者
佐藤 安純 志村 結美
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集 第60回大会/2017年例会
巻号頁・発行日
pp.104, 2017 (Released:2018-03-06)

【目的】近年、若者の社会参画に対する意識の低下や、投票率の低下が問題視されている。2016年から選挙権年齢が18歳に引き下げられ、若者の社会参画意識やシティズンシップに関する意識の育成が喫緊の課題として挙げられている。家庭生活や地域社会に根ざした学びを特徴とする家庭科教育は、地域社会の形成者を育成することに大きな役割を果たすことができると思われる。高等学校家庭科学習指導要領(2009)においても、家庭や地域及び社会の一員としてのあり方を考える学習内容が新たに増え、社会とのつながりの重要性が明示されている。一方、キャリア教育は、中教審答申(2011)において、その重要性が謳われている。その後、「基礎的・汎用的能力」が定義され、広く活用されている。家庭科教育においても、高等学校家庭科学習指導要領(2009)において、「生涯の生活設計」が全共通科目で扱う内容とされた。生活設計の中で、職業生活、家庭生活、地域生活の三者のバランスを考え、すなわち、ライフキャリアの視点から職業生活を捉えていく内容となっている。家庭科におけるシティズンシップ教育とキャリア教育の有効な実践が期待されている現状ではあるが、両者の関係性を明らかにした研究は少ない。そこで本研究では、Y大学生を対象に調査を行い、家庭科におけるシティズンシップ教育とキャリア教育の関係性を検討していくことを目的とした。【方法】(1)Y大学生対象アンケート調査①対象:全学部1年生488名、教育学部2~4年生137名②期間:2016年10月~12月③内容:シティズンシップ教育に関する項目、キャリア教育に関する項目、家庭科・家庭生活に関する項目(2)Y大学4年生対象ヒアリング調査①対象:アンケート対象者から抽出した男性2名、女性3名②期間2016年12月③内容:就職活動について、地域、社会に対してできることについて、家庭科の授業に関連して、将来について他 以上の結果を踏まえて、シティズンシップ教育・キャリア教育に関する家庭科教育の提案を行った。【結果及び考察】Y大学1年生のシティズンシップ教育に関する意識は、自己肯定感が低く、特に女性の自己肯定感が低い結果であった。また、女性は他者との関係性や付き合い方を男性よりも深く考えている傾向が見られた。社会への参画に関する意識は、社会を創造していくのは自分たちであるという自覚がある学生は男女ともに多いが、新聞やニュースをよく見るようにしている学生が少ないなど、実際の社会には目を向けられていない学生が多い結果であった。選挙に参加している学生は48.2%と約半数であり、日本の同世代の投票率とほぼ同率であった。キャリア教育に関する意識では、基礎的・汎用的能力のうち「人間関係形成・社会形成能力」が全体的に肯定的な回答が高く、「自己理解・自己管理能力」は全体的に低い結果であった。学年比較において、学年による相違はあまり認められなかったことから、教育学部学生のキャリア意識については、学年が上がり、社会人に近づくにつれて培われていくものもあるが、大学入学以前の学校教育や、家庭環境等によって養われるものが大きいと考えた。大学生へのヒアリング調査からは、シティズンシップ教育・キャリア教育に関する意識に関係する発言が見られた。以上より、家庭科教育への示唆として、以下のことが明らかとなった。①シティズンシップ教育に関する意識とキャリア教育に関する意識の関連性が大きく認められ、大学入学以前の学校教育等が重要であるとのことから、「シティズンシップ教育・キャリア教育の関連性を重視する」こと、②全体的に、何かしようとする意識は高いが、行動へと繋げることができていない、実際の生活に繋げて考えられていない学生が多く、認識と行動の乖離が見られたことから、「認識と行動の乖離をなくすための、実践に繋がる教育」が必要であること、③自己肯定感が全体的に低く、特に女性にその傾向が強く表れ、自己肯定感の育成の必要性が認められたことから、「自己肯定感の育成」することである。
著者
田中 滋子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会誌 (ISSN:03862666)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.51-57, 1971-03-01 (Released:2017-11-29)

It is generally said that some difficulty is experienced in removing the shells from hard boiled hen eggs, when the eggs are fresh. Investigations were conducted as to the removability of the shells to know how such shelling differs depending upon conditions such as place of storage, time of storage, size of eggs, and cooling time. As for the eggs used in these experiments, 273 eggs produced on the same day by white leghorns raised in the same environment were collected and about half of them were then stored in the room and the rest in the refrigerator. Experiments were conducted with 5 eggs respectively of large, medium and small size, all having been assorted by weight. The eggs were placed in the saucepan containing a fixed quantity of cold water, which was then heated up to the boiling point, or simmering temperature, of 97℃., and the eggs were thus boiled for 10 minutes. The eggs were then immediately cooled by being kept in contact with a continuous fresh supply of water at 20℃. for five different period of times, i.e., few seconds, 5, 10, 15 and 20 minutes respectively. It was found that the shells were removed most satisfactorily when the eggs had been stored in the room for 4 days or more and in the refrigerator for 8 days or more; and the small eggs better than the large ones; and though there was little difference, if any, resulting from the cooling, the eggs cooled for 15 minutes in running water showed the best result of all.
著者
青木 幸子 大竹 美登利 長田 光子 神山 久美 齋藤 美保子 田中 由美子 坪内 恭子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, 2015

<br><br><目的><br>&nbsp;&nbsp; 2008年は「子どもの貧困元年」であるといわれる。それは子どもの貧困問題に関する政策論議が具体化したことに由来する。翌2009年の厚生労働省の調査によれば、子どもの貧困率は15.7%であり、約6人に1人の割合で貧困状態にあることが明らかになった。これはOECD調査においても「相対的貧困率」が加盟国34カ国中29位(ワースト6位)、「子どもの貧困率」は25位(ワースト10位)、「一人親家庭の子どもの貧困率」は33位(ワースト2位)という深刻な事態にあることを認識させた。さらに厚生労働省の「平成25年国民生活基礎調査の概況」によれば子どもの貧困率は16.3%を示し、確実に格差が拡大していく傾向を窺わせている。<br>&nbsp;&nbsp; 子どもの貧困は、学習面や心身の発達に影響を及ぼし、加えて経済的な理由から友人と同じ行動が取れないなど友人関係にもひずみをきたし、不登校や引きこもりの原因になっているともいわれている。また、経済的な理由から進学をあきらめざるを得ない者もおり、更なる格差を生み出す土壌ともなっている。このように現下の社会・経済状態は、貧困の連鎖を断ち切る抜本的な政策が求められている。<br>&nbsp;&nbsp; この政策のひとつに学校教育への期待がある。学校教育の一教科として生活の自立と共生を目標とする家庭科においては、生徒が貧困の連鎖について理解し、自己責任ではまかないきれない連鎖の経路を断ち切り、自らの人生を自己選択することができる力を育成するなど、たくましく生きる力を育んでいかなければならない。<br>&nbsp;&nbsp; そこで本研究では、貧困に対する理解、貧困に陥らないための知識と方法、不測の事態に備える力など、生活を創る主体としてたくましく生き抜く力を育てる家庭科の学習内容について提案することを最終目的に、まず高校生の生活実態や福祉制度への理解、将来の生活への意識を把握することを目的とする。<br><br><方法><br>1.&nbsp;調査の方法<br>調査対象;都立高等学校6校、有効回収数406票<br>調査時期;2015年1~3月<br>調査方法;家庭科教員に調査票の配布、回収を依頼した。<br>2.&nbsp;分析方法<br>調査対象校を4年生大学進学率の傾向の違いにより3群に分類し(80%以上をA群、21~79%をB群、20%以下をC群)、分析した。<br><br><結果と考察><br>1.&nbsp;&nbsp;高校生の日常生活の特徴として看過できない実態は、欠食率、栄養バランス、家庭の食卓状況の3点である。なかでもC群の欠食率がもっとも高く、とくに果物の摂取不足は80%以上であり、それは手作りの食事の摂取状況とも関連している。<br>2. アルバイトの経験については、アルバイトを禁止している学校がある一方で、アルバイトに精を出さざるをない状況の生徒もいる。とくにC群の生徒にアルバイト経験者が多い。<br>3. 授業以外の学習時間にも3群間には大きな差があり、通塾率との関連が推測される。また、ボランティア活動や地域での活動、家事手伝いについては3群間に顕著な差はなく、消極的な関与実態が明らかになった。<br>4.&nbsp;生活上のリスク管理に必要な福祉制度の項目に関しても、総体的に理解不足である。しかし、困難を克服し、希望は叶えられるとする将来の生活への見通しについてはおおむね肯定的に捉えている。 <br>5.&nbsp;以上の結果から、3群間での生徒の実態と意識を比較すると、C群の生徒に欠食率、アルバイト経験率が高く、将来の生活への経済的・職業的不安が強い傾向が明らかになった。
著者
安岡 和佳 鳴海 多恵子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.48, pp.38, 2005

<目的> 布を使ったものつくりの指導は、児童・生徒さらに短大・大学の学生においても知識・技能の低下や興味・関心の希薄さから多くの課題を抱えており、教材や指導法について種々の研究が行われている。本研究は、製作環境面から課題解決をはかることを目的として、代表的な用具であるミシンの日常的な使用実態に基づく改善等について検討した。<br><方法> ミシンを一定期間貸与し、その間の使用状況および使用上の意見や要望を中心にモニター調査した。 対象は教育学部に在籍する女子学生22名である。モニター22名のうち応募によるものが13名、依頼が9名である。モニター期間は2004年8月_から_10月初旬の約60日間である。貸与したミシンは12通りのジグザグ機能のある直線縫いミシンで、自動糸調子設定、上停止・下停止機能等がある。種々の機能については調査期間前にモニターに説明をした。調査方法は、記録用紙を配布し、ミシン使用時に使用日時、作業内容、使用場所、使用機能や縫い目の種類等についての記入を依頼した。また、製作物、作業場所、収納場所の写真による記録も依頼した。さらに、モニター期間後に記録内容をもとにミシンの使用感やミシンへの要望やこれまでの被服製作に関する学習経験等について記入式および聞き取りによる調査を行った。<br><結果> モニターがミシンを使い始めたきっかけは、「身近な人がミシンを使用していた」ことが70%と多く、「家庭科の授業」とする人の割合を大幅に上回った。<br>さらに「身近な人からミシンの使い方や裁縫を教えてもらった」経験は85%が持ち、今回のモニターについては家庭縫製にふれる環境が幼少時代にあったことがわかった。しかし、モニター期間前の日常的な布を使ったものつくりは55%が「していない」状況であった。 モニター期間中のミシンの使用日数は、モニターの72%が1日_から_5日間であり、平均使用日数は11日であった。最大では32日間の使用もあったが、全く使用しなかったモニターが4名あり、縫製の基礎知識がないことや縫製用具が揃っていないことが意欲を欠く要因であったことがあげられた。<br>ミシンの使用場所はほとんどが自室で、「こたつくらいの高さの座卓」「20cmくらいの高さの木箱や机」と座位での使用が80%であった。ミシン使用時の不都合な点として、ミシンが重いことや準備の面倒さ、スペースの確保の難しさがあげられており、製作意欲に用具と住環境の相互の問題が影響することが示された。<br>モニター期間中のミシンの使用目的は、衣服製作はリメイクも含め8名(9点)あったが、全般的にはマットやカーテンなどの生活用品(35点)やバッグや小物の製作(16点)、衣服の裾直しなどの補修(28点)など、簡易なものが多かった。<br>使用した機能などについては、モーターの作動は「スタートストップボタン」の使用が86%であったが、座位の使用状況でも膝を立ててコントローラを使用する例もあり、両手が作業に使用できる利点へのこだわりもみられた。また、押さえは7種あったが、作品の部位や布の特性に応じて付け替える事はなされず、基本押さえのみで製作されていた。ジグザグ縫いは30%の作品に使われていたが、刺繍模様縫いについてはほとんど使われず、将来子どものために作るものに使う縫い目、との位置づけがされていることがわかった。<br> 以上の結果から、ものつくりの意欲を支持し持続させるために、ミシンはさらに軽量化と省スペース化、使用実態に応じて選定された機能に簡易化する改善が求められるとともに、被服製作学習におけるミシン指導においては、生活用品など容易なものの製作活動の実態を視野にいれて、教材設定されることの必然性が示唆された。
著者
手塚 貴子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.61, 2018

【目的】<br><br>改正教育基本法以降、平成28年12月21日に中教審答申が出された次の学習指導要領においても、引き続き「伝統や文化に関する教育の充実」が掲げられており、家庭科での内容にも「和食、和服及び和室など、日本の伝統的な生活文化の継承・創造に関する内容の充実」が求められている。しかしながら、首都圏では家族のライフスタイルが多様化し、年中行事を祝う心が希薄化傾向にあり、行事準備への合理化・外部化の比率も年々増加している。生徒や保護者世代でも、「年中行事に興味・関心が無い」、「家庭で行事食を作ったことが無い」人が多くいる。例えば、多忙さや居住環境を理由に、「ひな人形」や「兜」、「鯉のぼり」等を一切飾らない家庭も増加しているのが現実である。<br><br>そこで、行事食における和食文化の継承・創造を目的として、高校生に向けた授業実践を行うこととした。<br><br>【方法】<br><br> 平成30年2月13日~2月28日に、東京都の私立T高校2年10クラス対象に「家庭基礎」の授業実践として、「上巳の節句(3月3日)又は端午の節句(5月5日)のどちらかを想定して調理実習を演出する」取組みを行った。事前学習として、調理実習当日に使用するための演出作品を手づくりで準備させ、本番までに創意工夫を凝らし、行事食を彩るテーブル演出を含めた調理実習を実践した。この授業を通じて、日本の伝統文化の一つである年中行事の風習が何故行われてきたかを考えさせるとともに、行事を祝う食(=行事食)を手づくりすることの重要性を学び、自らの生活で生かすための実践の場として行うこととした。実習時期を考慮すると、「上巳の節句」のみを課題とする授業運営が理想だが、本実習では発展的調理学習の一つとしてグループ選択制のメニューを一つ設けて綿密な実習計画力を構築させることとした。また、昨今増加しているアレルギー保持者への配慮として小麦粉食材と米粉食材の二種類の和菓子を設け、負担無く取り組めることを意識しての選択制とした。実習当日の準備時間を前週に設けたが、それ以外にも冬休みでのホームプロジェクト活動として行事食を演出するための作品づくりを行うことを一つの選択肢として用意をした。<br><br>【結果および考察】<br><br> T高校は、東京都にある私立中高一貫の高校(共学)で、多くの生徒が国公立大学や難関私立大学を希望しているため受験指導を主に置いた進学校である。2年生3学期は特に、入試や模試等によりどのクラスも連続した授業運営を実施することが難しい。そのため、冬休み前から事前指導を行い、調理実習に向けた意識付けと準備作業に取り組ませた。<br><br> テーブル演出の準備において、それぞれのグループで創意工夫が見られた。具体的には、「手芸で雛人形製作、皿を事前に焼く、切り細工でのランチョンマット製作、折り紙細工での飾りつけ」等である。しかし、献立の中に「チャーシュー」を入れたことで行事食らしさのイメージが生徒に伝わりにくかったこと、行事食の代表菓子である「さくら餅」や「かしわ餅」を作ったことがない生徒がほとんどであったため、調理工程のイメージがつきづらく、想定以上の作業時間が必要であることなどの反省が見られた。<br><br>首都圏の生徒にとって、和食文化の継承の一つに「行事食」の授業実践を行うことは、家庭教育で学ぶ機会がほとんどない中で貴重な体験の一つとなり、今後も継続して取り組むことが重要である。また、同時期に首都圏の高校生対象に「和食文化の継承に関するアンケート」を実施したが、その分析報告については次回の課題としたい。
著者
根本 亜矢子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.59, 2016

【目的】<br> 中学校家庭科の「食領域」においては、生涯にわたって健康で安全な食生活を送るための基礎知識を身につけること、食事の役割について理解を深め、基礎的な調理ができることをねらいとしている。「日常食の調理と地域の食文化」項目では、食事には文化を伝える役割があることを理解し、地域の食材を生かした調理、地域の食文化にも関心をもつことが取り上げられている。しかし、内閣府による食育に関する意識調査報告書(2014年3月)によると、地域や家庭で受け継がれてきた料理や味について知っている者は46.9%であり、半数を満たしていなかった。そこで、地域の伝統的な行事食や郷土料理について、どの程度理解しているのか、食生活・生活習慣も含めて調査を行った。<br><br> 【方法】<br> 北海道F大学に在籍する女子学生のうち、同意が得られた156名を対象に2014年10月に実施した。調査項目は、食育に関する意識調査を参考にし、食育への関心4項目、地域の食文化(行事食・郷土料理)に関すること6項目のほか、日ごろの食生活・生活習慣に関すること6項目について無記名自記式質問紙法により実施した。行事食、郷土料理については、知っていると回答した者に対し、料理3つまで記述してもらった。回答に不備があるものを除き、132名を解析対象とした。<br><br>【結果および考察】<br>1.食育への関心 食育の言葉も意味も知っていた者は99名(75.0%)、言葉は知っていたが意味は知らなかった者は33名(25.0%)であり、食育に関心があると回答した者は、128名(97.0%)であった。食育の日および食育月間を知っている者は、それぞれ44名(33.3%)、54名(40.9%)であり、食育の日の認知度が低かった。<br><br>2.地域の食文化 行事食を知っていると回答した者は106名(80.3%)であり、おせち料理が最も多く、次いで桃の節句、端午の節句の行事食であった。回答した中には、料理名ではなく行事名での回答がみられた。節分については、炒り大豆、福豆の回答はみられず、恵方巻が多かった。行事食の料理として土用の丑の日、ハロウィン、クリスマスという回答も見られた。中学校家庭科教書の中では、受け継がれる食文化として、雑煮・おせち料理(正月)、おしるこ(鏡開き)、七草粥、炒り大豆、福豆(節分)、ちらしずし、ひなあられ(桃の節句)、かしわもち、ちまき(端午の節句)、そうめん(七夕)、月見だんご(中秋の名月)、おはぎ(彼岸)、かぼちゃ(冬至)、年越しそば(大晦日)が行事食として取り上げられていた。北海道の郷土料理について尋ねたところ、知っていると回答した者は110名(83.3%)であった。中でも鮭を使用した料理(石狩鍋、チャンチャン焼き)の回答が多く、全体の76.3%であった。行事食や郷土料理を次世代に伝えたいと回答した者は116名(87.9%)であり、地域や家庭で受け継がれてきた料理や味を大切にしたいという意識が高いことがわかった。<br><br>3.食生活・生活習慣 朝食を欠食する者は32名(24.2%)であった。日々の生活に時間的なゆとりを感じている者は44名(33.3%)、感じない者は51名(38.4%)であり、朝食を欠食する者の方が、日々の生活に時間的なゆとりを感じていない者が多かった。自分の健康状態について、とても良い、まあまあ良いと回答した者は96名(72.7%)であったが、どちらともいえない20名(15.2%)、あまり良くない、良くないと回答した者は16名(12.1%)であった。<br><br> 以上のことから、食育への関心は高く、地域の食文化について認知度は高かった。しかし、伝統として長く受け継がれてきた行事食の意味、生活の節目の行事に用意する特別な食事であることを正しく伝える必要性が確認できた。
著者
西谷 圭二 信清 亜希子 河田 哲典 佐藤 園
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.50, pp.89, 2007

<B>1.目的</B><BR> 現在、我が国では、偏った栄養素等摂取など食に関する問題が顕著になっており、小学校家庭科にもその解決の一端が期待されている。しかし、第49回大会で発表したように、現在の小学校家庭科の食生活学習には、児童が生涯にわたり健康を保持増進していくために必要な「食事の意義・食品の選択」に関する知識が欠落・不足しているため、それを充足できる新たな小学校家庭科の授業開発が急務であると考えられた。<BR> 授業開発に必要な児童の栄養素等摂取の現状と問題点を明らかにするため、岡山県の小学校第5・6学年の児童135名を対象とした2日間の食事調査、及び、岡山県浅口郡里庄町立里庄東小学校の全校児童280名・東京都八王子市立浅川小学校の第5学年2組の児童38名を対象とした給食調査を、写真記録法により行った。その結果、新たな小学校家庭科の授業には、2006年度例会・第50回大会で発表したように、食事を栄養素等と食品群の両視点から捉え、食品に含まれる栄養素等の種類と量から自分に必要な栄養素等・食品の量を同時に把握する能力を育成できる教育内容の必要性が示唆された。<BR> 上記の条件を達成する教育内容を検討した結果、児童に、自分に必要される栄養素等・食品の量を同時に把握させるためには、食品が栄養学的な特徴から食品群に類別され、各食品群の必要量がサービングポイントで表されるとともに、各食品の概量が理解できる食品群を用いた教育内容を編成することが有効であると考えられた。<BR> 以上から、本発表では、児童が自分に必要な栄養素等と食品の量を同時に把握することのできる授業を開発するため、以下に示す方法で研究を行い、サービングポイントを用いた新規「食品群」を開発することを目的とした。<BR><B>2.方法</B><BR>(1)食品群の選定<BR> 「平成16年国民健康・栄養調査成績」、及び、先の三つの食事調査から明らかにした児童の食品群別摂取の現状と問題点から、新規「食品群」に求められる条件を検討した。その後、現在我が国の小・中・高等学校家庭科で使用されている「三色食品群」・「六つの基礎食品群」・「四つの食品群」、及び、授業構成の基盤とする栄養学習プログラム"Teaching Nutrition by Teams-Games-Tournament"における「四つの食品グループ」に示された食品の類別を基に、新規「食品群」を検討した。最後に、検討した選定条件から新規「食品群」の群数と食品群の食品の例示を決定した。<BR>(2)食品の選定<BR> 岡山大学教育学部附属小学校の平成18年1月12日~平成19年1月31日の学校給食の献立構成表(日数196、献立数951)を分析し、献立に使用された食品の使用頻度を算出した。その後、得られた食品の使用頻度を基に、新規「食品群」に使用する食品を選定した。<BR>(3)サービングポイント・サービングの算出<BR> 現在、中学校家庭科で使用されている『六つの食品群別摂取量のめやす』を基に、新規「食品群」の各食品群における摂取量のめやす(g)を設定した。その後、「食品解説つき新ビジュアル食品成分表[増補版]」に示された食品の概量から新規「食品群」に使用する食品の概量を設定するとともに、各食品群毎のサービングポイントを算出した。最後に、食品群別荷重平均成分表を用いて新規「食品群」と食事摂取基準との比較を行う。<BR><B>3.結果</B><BR> 現在は、各食品群毎のサービングポイントの算出が終了した段階である。今後は、上記「方法」に示した手順で検討を進め、発表時に詳細な結果を報告したい。
著者
福田 典子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.47, pp.15, 2004

<目的>生活用水の使用量は年々増加傾向にある。この用水は排水として、下水に流されるが、わが国の約半数といわれる下水道の完備されていない地域においては、直接河川に排出されている。一般に河川には微生物等の力で、汚濁物質を分解する能力があるが、短期間に多量の物質が流入し、水中の汚濁物質が高濃度になり、微生物の分解能力を超えると、水棲生物などへの影響が生じる場合も予想される。生活用水は様々な生活場面で不可欠であり、その家族構成やライフスタイルにより異なるが、使用量の多いものから、調理・入浴洗面・洗濯となることが知られる。これまでに、洗濯排水に関しては界面活性剤やリン酸塩などが問題視され、生産者サイドでは様々な対策が講じられてきた。行政サイドには、下水道の充実や汚水処理施設の充実を一層望む。生活者サイドの役割について日常生活での行動から考えると、生活における用水の使用状況を見直し、節水やカスケード利用の方法を実践的に指導し、定着を図ることが何よりも優先されよう。第ニに、汚れと基質(汚れが付着しているもの)の性質に応じた洗剤の種類や濃度の選択についての正しい知識を有し、実践力を身につけさせることが不可欠であろう。そこで、家庭科教育において家庭や学校における指導を徹底し、生活者一人一人の行動変容を期待したい。そこで、本研究では、日常生活において最も身近であり、実践し易い行動の1つである「衣料用洗剤を適正量使用すること」に注目した。洗剤の使用量と汚れ落ちの関係を実物の観察によって実感させ、児童・生徒が洗剤濃度に関心を持ち、自らの洗剤の使い方に意識を高め、正しい利用ができることをねらいとした実験教材を開発した。大学生を対象とした授業実践を通して、その教材の有用性と課題等について指導方法を含めて考察することを目的とした。<br><方法>研究授業は2003年1月、国立大学構内調理実習室において、45分の1回で実施した。授業対象は大学生女子20名であった。当日の水温は11℃、天気は雪のち晴れであった。実験教材の試料は綿スムース(綿100%白ニット)10cm角、モデル汚染物質は希釈用コーヒー飲料、モデル洗剤は市販洗濯用合成洗剤であった。汚染布は室温にて、授業日の1日から3日前に直接浸漬処理して作成し、風乾させて用いた。同一濃度に均一に汚染させるよう配慮した。実験教材の洗浄方法は、1リットルのペットボトル内に1リットルの水道水を入れ、キャップをして、50回手で上下に振ったのち、水道水で軽くすすいだ。授業の流れを以下に示した。まず導入部では、コンサートに出掛けるために服を選ぼうとして、洋服に染みがついていたという劇を見せ、着用後の手入れの重要性を意識化させた。展開部で着用後の衣類は実際にどのようにしているか学習者自身の日常生活を振り返らせ、手入れの中でも主要な洗濯という日常の衣類管理上不可欠な行為に目を向けるように配慮した。次に、10cm角のTシャツ生地にコーヒーの染みがついてしまったら、1リットルの水で洗うとしたら、洗剤はどのくらいの量が必要だろうか。という発問を投げかけ、洗剤量を予想させた。そこで、8条件の実験で用いる洗剤グラム数を提示し、予想させた。実験は4班に分かれて、班ごとに、2つの濃度の違う洗剤液を作成させ、それを用いて洗濯を行い、汚れ落ちの具合を観察比較させた。実際に洗浄後の汚染布の状態は師範台の上に並べた8枚の様子を洗剤濃度とともに示した。洗浄後の布をビデオカメラで接写し、プロジェクターで投影し、拡大して、8枚の汚れ落ちの程度を並べて学習者に観察しやすいように工夫した。終結部では、洗濯機の中に洗剤を多く入れても、汚れ落ちは変わらず、排水中の洗剤濃度を高めるだけであることを知らせ、洗剤の適正量を守ることの重要性を伝えた。<br>【結果】実験後記述された学習カードの分析より、学習者が洗剤は多く入れれば入れるほど、汚れが良く落ちるわけではないことを実感し、洗剤には水の量(洗濯物の量)に応じて、適正量があることに気付いている様子が伺えた。また、環境に負荷の少ない洗濯方法を実践しようとする態度が形成されることが期待できた。衣服を着用すると、手入れが必要であり、適切な手入れをすることは、環境に負荷が少ないだけでなく、経済的であることにも気付かせることが可能であることがわかった。実験の際には、予想をさせる段階で、どのような内容(情報)をどのような方法で学習者に対して与えるかについて、一層検討すべきであることがわかった。また、本実験教材では、汚れ落ちの観察方法の説明において、汚染布と洗浄布を比べて、洗剤濃度によって、どのくらい汚れ落ちの程度が違うのかを比較するということをしっかりと明瞭に指示する必要があることがわかった。
著者
岡野 雅子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集 第45回日本家庭科教育学会大会
巻号頁・発行日
pp.20, 2002 (Released:2003-04-02)

【目的】中学·高校の『学習指導要領』の保育領域には乳幼児等とのふれあいや交流の機会を持つように努めることが明記され、生徒が幼稚園や保育所で保育体験学習を行う例が増えている。本研究は受け入れ園側から見た課題について検討し、体験学習をより実り多いものにするための示唆を得たい。【方法】群馬県T市とM市にある幼稚園48園および保育園(所)79園に調査質問紙を配布し、32幼稚園(公立6, 私立25, 不明1)と64保育園(公立30, 私立34)の計96園(所)より回収した(回収率75.6%)。調査時期は平成13年3月である。【結果と考察】(1)93.8%の園は受け入れ経験があり、92.7%は中学生の受け入れ経験がある。体験学習の内容は「一緒に遊ぶ」「世話をする」7-8割、「施設を見学」「一緒に給食を食べる」5割弱等が多い。(2)教育効果として「子どもを好きになる」が最多で「保育の重要性を理解する」「自分自身について考える」「子どもの発達を理解する」と続き、「親の役割を理解する」は相対的に少ない。(3)問題点として「観点やマナーを指導して」「生徒の意識や態度の変化を見て」「協力体制を整える必要」が多く、「迷惑だ」は少ない。(4)生徒は「幼児とのふれあいを楽しんでいる」、幼児は「喜んでいる」が圧倒的に多いが、その程度が強い程「子どもを好きになる」「自分自身について考える」「親の役割を理解する」も高率である。(5)したがって、生徒の幼児に対する親和性の形成は認められるものの、親準備性の獲得に向けては、なお一層の検討すべき余地があるようである。
著者
田中 京子 岩崎 香織
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.50, pp.77, 2007

<B>【目的】</B><BR> マズローの欲求階層説によれば、生理的欲求を満たすことが人間の最も基礎的な欲求とされる。食生活の知識・技能の習得は、生理的欲求を自ら満たす術を身につけることであり、愛情と所属欲求や自尊欲求、自己実現欲求といった、より上位の欲求を満たす基盤になると考えられる。日本の子どもの自尊感情は、世界的にみて低いことが指摘されており、1990年代以降、家庭科教育においても子どもの自尊感情を育てることへの関心が高まってきている。<BR>本研究は、高等学校家庭科食領域の授業において、生徒の食生活の知識・技能を向上させる上で有効と考えられるプログラムを実験的に開発・実践し、1)食生活の知識・技能の習得、および2)子どもの自尊感情(Self-esteem)の2点から授業効果の検討を行うことにより、家庭科教育への示唆を得ることを目的とする。<BR>第1報では、開発した授業の内容と実施した授業の様子について報告する。第2報では、実施した授業の効果について報告する。<BR><B>【方法】</B><BR>1、調査の概要<BR>お茶の水女子大学附属高校3年生(3クラス、女子117名)の家庭科(家庭総合)の授業(2006年4月~2007年1月)を対象として、調理実習を中心とする食生活の授業(ミニマムエッセンシャル調理実習)の開発と授業効果の測定を行う。授業開発・実施を田中が担当し、調査設計・効果測定を岩?が担当する。授業効果の測定は、1)参与観察(4月~1月、週1回、1クラスを対象)と2)質問紙調査(記名自記式、同一内容調査を授業前5月と2学期末12月の2回、全クラスを対象として実施)の2つの方法を採用する。<BR>2、授業開発の経緯<BR>田中は、高校家庭科の指導経験をもとに、生活での実践につながる、材料と手順を単純化した基本的な料理を『ミニマムエッセンシャルクッキングカード』にまとめた(田中2006)。本研究では、このレシピをもとに、3年生対象の1コマ(45分)の授業時間で[材料・調理法の説明、調理、試食、片付け]の全てを実施する調理実習を開発した。授業内容は1)親子丼(7月)、2)中華風あんかけ焼きそば(9月)、3)ドライカレー(11月)、4)ビビンパ風丼(12月)、5)赤飯(1月)の全5回である。これらの実習は、食生活領域としてまとめて実施するのではなく、「自立に向けて」を包括的なテーマとして、家庭経営や住居領域の授業と並行させて実施した。<BR>3、附属高校家庭科の特徴<BR>対象校の家庭科の授業は、2004年度入学生から家庭総合5単位を実施することとなり、対象者は1・2年次に、食生活の科学と文化を学習し、調理の基礎(1年次)献立調理(2年次)を経験している。本研究で対象とする3年生の授業は、1・2年次の授業を基礎として、実生活で応用する力を身につけることをねらいとした。また、1・2年次は家庭総合のすべての授業で班別学習を実施しているが、3年次は2単位のうち1単位分のみが班別学習となっている。<BR><B>【結果】</B><BR>参与観察の結果、実習初期(7月~9月)には、作り方が途中で分からなくなる生徒、作業分担の出来ない生徒が多くみられたが、実習後期(11月~1月)には、教師からの調理法の説明の際に自ら質問する生徒、事前に班内で手順を確認し、班員の行動を先読みして次の行動を選択する生徒が現れた。また、実習後期には、試食中の発話が増え、自己の食生活の反省(毎日の夕食にコンビニ弁当を購入する、最近家族が料理を作ってくれない)や、自分の作った料理に対する感動(「やっぱり家庭料理が一番だよね」)等が現れ、生徒が自己の食生活の知識・技能に自信を深める様子が観察された。
著者
菱村 佳子 飯村 しのぶ
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.59, 2016

【目 的】 <br> 2012年「消費者教育推進法」が施行され、この中で学校における消費者教育の推進については、発達段階に応じた体系的・総合的な消費者としての能力の開発が目指されている。とくに中学校では、消費生活についての基礎的・基本的な知識の習得をもとにそれらを消費者の基本的な権利と責任に結びつけ、消費者としての自覚を高めていくことが必要である。本研究では、小学校での学習を基盤にして、中学生の身近な消費行動と関連させながら消費者としての自覚を高められるよう、具体的な場面を設定し実践的な学習を試みた。<br> 【方 法】 <br> (1)2015年12月に札幌市公立中学校2年生4クラス116人を対象として中学生の金銭・消費行動に関する基本的なアンケート調査を実施した。 (2)上記のアンケート調査結果を踏まえて、2016年2月に同様の生徒達を対象に、「商品の選択と購入」の授業として「考えてみよう!&rdquo;読み取り上手は買い物上手&rdquo;~こんにゃくゼリーの場合~」を各クラス1時間ずつ実施した。教材として「マンナンライフの蒟蒻畑 ララクラッシュ」(8個入り160円)の商品パッケージ(両面)を印刷したワークシートを作成し使用した。 授業の展開は、1)個人作業として「売る人の立場になって、この商品のセールスポイントを1つあげよう」、つぎに「買う人の立場になって、この商品の注目するところを1つあげよう」との問いかけをした。つづいてそれらをもとに2)グループ作業として、上記の個人作業の結果について意見交換をさせた。さらに、3)再び個人作業として、「買う人の立場でとくに注意した方がよい商品情報」をあげさせ(複数)、その理由についてもワークシートに記入させた。2)3)を通して発表された意見を教師が黒板に板書する形でまとめ、クラス全体で確認をおこなった。その際、自分以外の意見については、ワークシートに追加記入するよう指示した。最後に<まとめ>として、「あなたの友達がこの商品を買おうとしている時、あなたはどのようなアドバイスをしますか」について考えさせワークシートに記述させた。<br> 【結 果】<br> 生徒が売る側のセールスポイントとして挙げたのは、商品パッケージの表面に書かれている「おなかの調子を整える」(約60%)が最も多かった。一方買う側の注目箇所としては、「価格」(約36%)、「味と内容量」(約24%)、「1個あたりの食物繊維量」(約19%)の順であった。中学生では、栄養効果よりも味に対する期待が上回っていた。この他では期限表示に注目した生徒が約1割あり、この表示は小学校家庭科での学習を通して生徒たちには身近なものとして捉えられていることがわかった。グループでの意見交換と発表の後は、買う側がとくに注意すべき商品情報としてパッケージの裏面にある「食べる際の注意事項」(死亡事故につながるかもしれない、体質によってはおなかの調子が悪くなる)や、「原材料名」(アレルギーへの注意)、「問い合わせ先」(問題が起きた時に必要)など、当初は注目されていなかった表示に目を向ける生徒が多くなった。さらに、消費者にとって本当に必要な情報は、商品パッケージの表面よりも裏面に多く表示があり、しかも小さい文字で書かれていることに気付いた。その結果、<まとめ>のアドバイスとしては商品裏面に記載されている説明文に注目するよう促す内容が多く見られた。 授業後の「学習記録表」に記入された生徒の自己評価によると、「これから買い物をするときには小さい文字もよく見て買うようにしたい」「気をつけて見る必要がある表示がたくさんあって驚いた」「今までは価格と好みだけで選んでいたが、これからはもっと他の表示にも目を向けたい」などの記載が見られ、「生活に生かせる知識・技術」としての授業効果が確認された。<br> &nbsp;
著者
荒井 紀子 鈴木 真由子 綿引 伴子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, 2015

<br><br><br><br>【目的】<br>&nbsp; &nbsp;1980年代後半以降、学校の中でしか通用しない力を標準テスト等で測るのではなく、現実の生活の中で真に働く力を評価する方法論が米国を中心に模索されてきた。ウィギンス(Wiggins, G.)等により「真正の評価(Authentic assessment)」の概念が提示され、それ以降、「リアルな課題」に取り組ませるプロセスのなかで子どもを評価する試みが各国で施行されている。スウェーデンにおいても、2011年のシラバス改訂により、評価基準を明示化し、その到達に向けての学習の工夫が志向されている。本報告では、同国の家庭科の新シラバスにおける評価尺度を検討すると共に、評価方法として提示されている「真正の評価」の事例として、パフォーマンス評価をとりいれた学習事例を取り上げ、子どもの学習の実際と、学習構造の特徴について分析する。<br><br>【方法】<br>&nbsp;&nbsp; スウェーデンの2011年家庭科シラバスおよび関連文書、教師用解説書等について文献調査を行なった。また2014年10月に、ヨーテボリ市郊外の中学校において、「真正の評価」の方法論としてパフォーマンス評価を採用した授業を参観するとともに教師の面接調査を行った。加えて新シラバスおよび評価方法について、ヨーテボリ市、ストックホルム市およびウプサラ市の大学関係者と家庭科教師に、聴き取り調査を実施した。<br><br>【結果および考察】<br> &nbsp;&nbsp; スウェーデンでは、2011年に知識の獲得と定着、選択の自由の拡大、生徒の安全の確保の3点を促進する新教育法を制定し、新カリキュラムを導入した。大きな特徴として、学習の評価尺度をAからFまでの6段階(このうちA~Eが合格)で示し、評価を第6学年から開始することを定めるとともに、知識をより深く広く獲得するための方法として「真生の評価」の方法を提示している。家庭科については、2つのパフォーマンス評価の演題「持続可能なランチ」「タコスの夜」が開発され、それを活用することが推奨されている。<br> &nbsp;&nbsp; 今回参観した「持続可能なランチ」(9年生、6時間)の学習は、以下のような3段階構造をとっていた。1)「持続可能」をキーワードに、a.健康・栄養、b.価格や品質、c.環境への影響の3点(これらは生徒が生活の質について考えるうえで重要な家庭科シラバス全体を貫く観点)に配慮した献立を各自で考え、活動内容、道具・調理方法、時間行程を検討し計画を練る。(180分) 2)12名が調理実習者と観察者の6組のペアになり、実習者は自分で考えた献立のもとに、手順に沿って食材を調理し、料理を完成し、片付けまで全て1人で遂行する。観察者は終始そばで実習の様子を観察し、評価シートに結果を記入する。この役割は週毎に入れ替わる。(80分) 3)実習後、キーワードと3つの観点から自己の実習について省察し、観察者による評価シートも参考にしながら、改善点を考え自己評価を行う。(60分)<br>&nbsp;&nbsp; 全体的に、実習者の集中力と意欲の高さは際だっており、かつ楽しんで活動する様子が観察された。知識を理解しつつ、それをスキルに結びつけ、かつ試食という本番に向かう学習の構造であること、および本人の自由な発想が保証されていたことが、生徒の意欲ややりがいを刺激した要因と考えられる。また評価の視点が全員に通知され共有化されており、さらに、「健康」「経済」「環境」の3観点を目ざすことがどの程度できたかを生徒が省察的に自己評価することになっている。評価という行為が、生徒の学習の深化を促す契機となり得ているのは、こうした学習の構造によるところが大きいと考えられる。<br>&nbsp;&nbsp; なお、これらの授業が、実習時間の長さ、1クラスの人数の少なさ、機能的なシステムキッチンの整備などに支えられている点も無視できず、日本の家庭科の学習環境の問題がみえてくる。<br><br>&nbsp;&nbsp; パフォーマンス評価のもうひとつの演題「タコスの夜」の分析と、日本における「真生の評価」に関わる授業のさらなる開発が今後の課題である。<br><br>
著者
亀原 めぐみ 森田 みゆき
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, 2013

〈目的〉 本研究は、2009年発表の「高等学校家庭科における洗浄力試験教材の開発」、2011年発表の「高等学校家庭科における洗浄力試験教材の実践」を基に、その実践結果について報告するものである。2009年の研究では大学生を対象に実践を行い、その結果、この実験を用いて授業を行う有効性を得られた1)。2011年の研究では、高等学校家庭科授業時に高校生を対象に実践を行い、この実験によりどのような効果が得られるのか、また改善すべき点は何かを明確にし、教材としての有用性を高めることができた2)。そして今回の研究では、「家庭総合」被服分野の授業の教材として授業に組み込み、実践を行ったものである。実験から得られる効果は何か、より精査な教材にするに改善すべき点は何か、明確にすることを目的とする。〈方法〉 汚染布は(財)洗濯科学協会の湿式人工汚染布を用いた。汚染布を一枚ずつ渡し、各家庭で洗濯を行ってもらった。調査項目は、洗濯衣類、洗剤、洗濯物の詰め込み具合、使用した水の種類である。洗浄後の汚染布を持ち寄り、全員で見た目での比較の順位付けを行った。その結果と調査項目を一覧表にし、それを資料に衣生活管理の授業を行った。さらに全員にアンケートを実施した。実践1:高等学校家庭科「家庭総合」1年生19名。2012/2/1実施。実践2:高等学校家庭科「家庭総合」1年生20名。2012/2/5実施。実践3:高等学校家庭科「家庭総合」1年生20名。2012/2/5実施。実践4:高等学校家庭科「家庭総合」1年生16名。2012/2/5実施。実践5:高等学校家庭科「家庭総合」1年生19名。2012/2/7実施。実践6:高等学校家庭科「家庭総合」1年生19名。2012/2/7実施。〈結果〉 前回からの改良点 1)汚染布を他の洗濯物に安全ピンで留め付けることで、途中で失くす生徒はいなかった。2)教師側が用意した多様なサンプルも含めて洗浄効果の順位付けをしたことは、多くの例を示す上でもよかった。3)実験時の調査項目を4項目に絞ることで、項目が多いと取り組む意欲を削ぐといった点を、改善することができた。意識の変化 洗濯への関わりは、実践前後で次のように変化した。「ぜんぜんしない」54%→42%(減少)、「いつもする」5%→10%)、「よくする」5%→10%「時々する」12%→16%「自分のものは自分でする」10%→14%(増加)。このことから、実験を通して洗濯への興味関心が高まった事がわかる。実験時の感想から 実験の効果として次の6つが挙げられる。1)「洗濯、というものがわかった。」「汚れたものを洗うということをやって、気持ち良かった。」洗濯への興味関心を持たせられる。2)「洗濯中、時々止まることがあるのを知った。」初めて洗濯機を使い、洗浄の仕組みについて関心を持つ子もいた。3)「自分の布はあまりきれいになっていなかったのに、クラスの人のはとてもきれいになっていて驚きました。」「クラスの人が洗ってきている布を見て、洗濯はそこまで落ちるわけではないのを知った。」友達と比較することで高い興味関心を引き出せる。4)「小さくなった。布の周りの糸がほつれた。」洗浄効果以外の、洗濯による布の傷みにも気付くことができる。5)「普段から部活のユニフォームを親に洗濯してもらっているが、とても大変なことだと改めて思いました。感謝の気持ちを忘れないようにしたいです。」「家の人から、これからもやってくれるとうれしいんだけど…と言われた。」家族とのつながり・会話の一助になる。6)「『家庭科でやった』と言ったら、『じゃあ、自分のものは自分でね。』と言われ、自分の洗濯物は自分で干すところまでやるようになった。家庭科の授業を通して、家事に少し興味を持ったよ!」「洗剤のCMを気にするようになった。」興味関心の広がりが見られる。今後多くの生徒が日々の実践へとつなげていくためにはどうしたらよいか、その点を見据えた授業展開が、検討課題と言える。1) 高等学校家庭科における洗浄力試験教材の開発、亀原、森崎、森田、日本家庭科教育学会第52回大会要旨集、132-133頁(2009)2) 高等学校家庭科における洗浄力試験教材の実践、亀原、森田、日本家庭科教育学会第54回大会要旨集、176-177頁(2011)
著者
荒木 葉子 笹原 麻希 三神 彩子 長尾 慶子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, 2014

<b>【目的】</b>比較的水源に恵まれた我が国では、水の大切さをあまり意識することなく大量の水を使用しており、生活用水の一人当たりの使用量は297L/日(2010年)となっている。一方、水資源を活用するためには、水の揚水、浄水、下水及び汚水処理の各段階で大量のエネルギーを必要とし、我が国の上下水道事業における電力使用量は総電力使用量の1.4%、約150億kWh(2010年度)を占めている。そこで、本報告では、水使用、特に食器洗浄に着目し、実態調査などから食器洗浄に関する問題点を洗い出して、家庭への省エネルギー策の普及を目的とした節水行動を推進するための方策を検討することとした。<br><b>【方法】</b>まず、食器洗浄法に関して、小学校家庭科教科書での記述内容及び洗剤メーカーなどの情報提供の現状について調べるとともに、欧米と日本の食器洗浄法について、それぞれの特徴、節水に対する考え方や具体的な節水方法を文献調査などにより比較検討した。次に、各家庭の上下水道の家計費に占める割合を調べて、電気やガスなどの光熱費と比較した。また、新渡戸文化短期大学1年生45名に対して食器洗浄に関するアンケート及び実態調査(洗剤使用量、水使用量および残留洗剤量)を行った。<br><b>【結果】</b>小学校家庭科教科書内に食器洗浄法に関する記述はあるものの、限られた時間内での実習であることから、食器洗浄指導が十分な時間を割くことが難しい現状が考えられる。短大生のアンケート調査では、家庭における食器洗浄の機会は、約7割において小学生の段階で発生し、洗浄手法はその約9割において親あるいは家族から伝えられたものであった。また、各種洗剤のCM等の影響もあってか、現代の日本においては、直接洗剤を塗布しての洗浄及び流し洗いが好まれており、上記アンケートでも、残留洗剤に対して懸念する声が多かった。<br>&nbsp;一方、欧米諸国では、ため水洗いが主流であり、日本のような流水洗浄は習慣化されていないことが多い。省エネ及び節水を推奨するためにIFHE (国際家政学会)が作成したポスターでも、汚れを落とし、洗剤を混ぜた温水でのため水洗い後、きれいな温水でのため水すすぎ、乾燥といった手順が推奨されている。また、日本と違って温水洗浄が主流である。これらの洗浄方法の違いは、水資源を大切にしようとする節水習慣に起因していると考えられるが、衛生面からの配慮や温水洗浄による水切れの良さ、硬水での長時間流水洗浄は食器にカルキがつきやすいこと、食器の形状などにも理由があると考えられた。<br>&nbsp;我が国でも江戸時代以前はため水を使った食器洗浄が行われていたとされるが、現代においてそれが廃れてしまった背景には、流しの狭さも関係していると見られる。欧米のような2層式シンクやため水作業が行いやすいシンクのサイズは日本のシステムキッチンでは少数派である。また、電気、ガス、通信費と比較しても上下水道費が廉価であることも節水につながりにくい要因の1つだと考えられる。<br>&nbsp;食器洗浄に関する実態調査では、大半が洗剤原液を付けたスポンジでこすり洗いをした後、大量の流水によってすすぐ方法を選択しており、直径15cmのポリプロピレン製食器1点の洗浄での洗剤使用量は0.5mL~5mL、水の使用量300mL~1300mL、残留洗剤量は0.05ppm~2ppmと個人差が大きかった。一方、希釈洗剤を用いた洗浄ではすすぎ水が少なくて済む傾向が認められ、大量に食器を洗浄する際にはため水洗いによって節水できる可能性が示唆された。<br>&nbsp;食器洗浄に関して、洗剤の適量使用、適切な取扱いによって効率化を図るとともに、衛生面も担保した洗浄の方法を教育指導することは大きな改善につながると考えられた。そこで、今回の調査から明らかになった点を整理し、学生指導のための適切な食器洗浄方法を図式化した。今後、この方法を習得した学生の食器洗浄時の水使用量測定などを通して、行動変容による省エネルギー効果や行動を阻害する要因について継続して検証を行っていく予定である。
著者
佐藤 雪菜 高木 幸子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, 2015

<b>〔目的〕</b> <br> 小学校家庭科における製作学習では、製作経験が少ない児童に対して限られた時間の中で指導することが求められており、結果として作品を完成させることに重きが置かれやすい現状がある。筆者は、2013年度に児童が考えながら取り組むことを目的とする製作学習を行ったが、活動の質を高めるためには、児童一人一人の進め方などの違いに対応できる学習環境を整えることの必要性が課題となった。そこで、本報告では、製作活動の進め方や進度、支援教材の活用の仕方に、児童の製作活動への取り組みの傾向(学習スタイル)や教材提示のタイミングがどのように影響しているのかを検討することを目的とする。 <br> <b>〔方法〕<br></b> 2014年11月~12月に新潟市内の小学校第6学年2学級(A組:男子17名 女子18名、B組:男子18名 女子18名)を対象に題材名「作ろう!オリジナル袋」とした授業実践を行った(A組8時間,B組6時間)。実践前には(1)児童の特性を捉えるためのアンケートを行い、結果を因子分析法によって分析し学習スタイルを整理した。実践後に(2)製作進度や進め方・支援教材の活用の仕方等の観点について、学習スタイル別の特徴をワークシートや製作物・事後アンケート等を用いて検討した。また、教師の働きかけとして(3)支援教材(動画・作り方ブック)の提示方法の違いによる児童への影響を、2学級の比較を通して考察した。 <br> <b>〔結果〕</b> <br>(1)事前アンケートは、滝聞・坂本ら(1991)が作成した認知的熟慮性‐衝動性尺度の項目<sup>1)</sup>、学習スタイルに着目した製作学習の開発を行った中沢ら(2010)の調査票<sup>2)</sup>などを参考に構成した。因子分析法を用いて分析し、児童の学習スタイルを〔熟慮/衝動型〕,〔能動/受動型〕として整理した。<br> (2)〔熟慮/衝動型〕の視点から比較して違いが確認されたのは、製作の進め方であった。衝動型の児童は製作初期から一定の速さで製作を進めていたのに対し、熟慮型の児童は製作初期よりも後半に製作の速さが高まる傾向が見られた。また、作品完成までの時間を比べると、能動型の児童の方が受動型の児童よりも早く製作を終えていた。これら2つの学習スタイルを組み合わせて考えると、熟慮かつ能動型に含まれる児童が早く製作を終え、熟慮かつ受動型に含まれる児童が完成までに時間がかかっていることがわかった。児童が使用した支援教材の種類を比較すると、使い方では〔熟慮/衝動型〕において違いが確認された。衝動型よりも熟慮型の児童の方が、動画を利用して製作を行っていることが伺えた。また、全過程を通して支援教材を用いず友達や先生に聞いて進めていたのは、衝動かつ能動型の児童にのみ見られた。支援教材の分かりやすさについては、学習スタイル別による有意差は見られなかった。 <br>(3)支援教材の提示方法に関して、毎時間の製作開始前に作り方ブックと動画を提示した学級の児童の方が、他の学級の児童よりも作り方ブックを分かりやすいと感じていた。 <br> 以上、学習スタイルの違いを捉えることで、製作学習の進め方や進度に影響していることが確認できた。多様な児童の製作活動を充実させ一人一人の学習を保障するためには、これらの違いを参考にした学習支援環境づくりを行うことができるのではないかと考える。今後、学習支援環境を構成し、その効果を確かめることが課題である。 <br>1)瀧聞一・坂本章,(1991),「認知的熟慮性-衝動性尺度の作成―信頼性と妥当性の検討―」,日本グループダイナミックス学会第39回大会発表論文集,39-40 2)中沢公美他,(2011),「小学校家庭科における製作学習の開発と実践-学習スタイルに着目したマスク製作-」,教材学研究(22),137-144
著者
岡野 八代
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会誌 (ISSN:03862666)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.133-143, 2015-11-01 (Released:2017-10-01)

The purpose of this paper is to explore a further possibility of home economics education through the insights of care ethics. The ethics of care has influenced various fields of study such as philosophy, political theory, economics, pedagogics and so on. Recently the ethic of care attracts much attention not only because it urges a radical reexamination of the premises of human and social sciences and but also because it criticizes neo-liberal assumptions of human beings and society. To clarify social potentiality of home economics education in the age of mixture of neo-liberalism and neoconservatism, the article reviews first the assumption of "independence" in the discipline of western political philosophy. The ethics of care was discovered through criticizing the male-oriented idea of “independence” in the tradition of western philosophy. Whereas traditional political philosophy has idealized independent male citizens, women has been degraded as the second citizen mainly because they are forced to care for the dependent, such as children, the disabled, the infirm and the aged. To reexamine the history of devaluation of female care wo leads us not only to reevaluate the social meaning of care work but also to criticize the idea of “independent”citizens itself. It is a significant issue how to situate home economics education in a wider political context to explore its potentiality.
著者
猪野 郁子 田結庄 順子 入江 和夫
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.46, pp.10, 2003

<研究目的> 研究目的は第1報と同様である。 中学・高校生の実態を明らかに,得られたデータと全国データを比較し,地域の課題に対応した家庭科カリキュラム開発の基礎資料としたい。 <br><研究方法> 第1報と同様。調査実施期日,実施校,配布数,有効回収数等,入力・集計等は第1報のとおりである。 <br><研究結果> 中・高校生の特徴があったものを記す。<br>1.基本的な生活技能の実態と意欲・関心について<br>1)食衣住生活技能の実態と意欲・関心---食生活 4項目全てにおいて学年進行に伴って実践率は低下していた。全てで女子が実践率が高かった。「家族の夕食を作る」は、中・高ともに実践率が食生活の中で最も低いが、中国中2の実践率は全国中2と比較して高かった。衣生活3項目において学年進行に伴って高まる結果が表れ,中・高ともに4項目全てにおいて女子の方が実践率が高かった。パソコン利用の項目では,中2女子を除いて、全国と比べて利用状況が低い。中学生では女子の方が男子より利用状況が高く、高校生では男子の方が女子より利用状況が高くなっていた。住生活では中・高ともに,4項目全てにおいて女子の方が男子より実践率が高く,男女差も学年進行に伴って拡大していた。<br>2)対人関係について---3項目全てにおいて,学年進行に件ってほぼ同じ実践率であるか,低い。「近所の人へのあいさつ」は,全国と比較して,中・高ともに高い実践率であった。<br>3)もっとすすんでするようにしたいと思うこととその理由 理由は「気持ちが良くなるから」が中・高とも多かった。<br>2.生活についての自己管理 <br>1)金銭についての自己管理---外出時の所持金額においては、中2では2千円位、高2では5千円位と学年進行に伴って金額が高い。男女別に見ると、中・高ともに女子の方が男子より金額が高かった。<br>2)コンビニへ行く目的---コンビニヘ行く目的は,「食べ物を買う」「飲み物を買う」が圧倒的に多い。中・高生は,全国の中・高生より「コンビニヘは行かない」割合が高いことから,全国の中・高生と比べて利用することが少ない。<br>3.幼児との関わり <br>1)幼児の遊び相手を頼まれたときの対応---中・高ともに「遊んであげる」が最も多く,学年進行に伴って増加していた。中・高の男女ともに,遊び相手をひきうけようという意識は高い。<br> 2)遊んであげる理由---中・高ともに「子どもが好きだから」が最も多い。「子どもが好きだから」は学年進行に伴って増加している。「子どもが好きではない」という理由をあげた者は学年進行に伴って減少しており,全国の結果と逆の結果となっていた。<br>4.家庭の働きと家族についての意識<br> 1)家庭の働きについての意識---物質的なものが存在する場として捉えるのではなく、精神的な豊かさを育む場として捉えていた.女子は,家族や近所の人など人と人のつながりを重視していた。<br>5.家庭科の学習経験とその効果 最も高かったものは,中「できるようになった」,高「わかるようになった」であった。高の「考えるようになったこと」の「ある」割合が「ない」割合を下回っていることは、今後の課題である。まとめ 1~3 報の結果より,「生活価値観の育成」と「人と人とのかかわりを重視した」カリキュラム開発の必要が指摘できた
著者
渡邉 智美
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, 2014

【目的】<br> 高等学校「家庭」の科目、家庭基礎の食事と健康では、「健康で安全な食生活を営むために必要な基礎的・基本的な知識と技術を習得させ、生涯を見通した食生活を営むことができるようにする」ことが求められている。家庭基礎の食事と健康で学んだことを生活のなかで実践できるようにするためには、生徒の実態に応じた題材を取り上げ、調理実習を通して指導することが必要である。<br> 本研究では、調理経験の少ないと思われる生徒でも調理ができ、課題のねらいが理解できるように教材の改善を試みた。<br>【方法】<br>(1)平成24年度に、県立高等学校1年生70名を対象として、夏バテを防ぐための1食分の献立作成と調理・レポートという夏休みの課題を与えた。さらに教員が作成した教材「野菜をたっぷり摂れるレシピ」を生徒へ配布した。このとき配布した教材について、作り方の理解度に関するアンケートを実施した。アンケート結果をもとに、教材「野菜をたっぷり摂れるレシピ」を改善した。<br>(2)平成25年度に、同校1年生66名を対象として、改善した教材「野菜をたっぷり摂れるレシピ」を使用した夏休みの課題を与えた。課題後に調理方法、課題のねらい(野菜を多く摂ることができる調理方法を知る)に対する理解度や調理の意欲についてアンケートを実施した。<br>【結果】<br> 平成24年度の夏休みの課題で、生徒が作成した献立の約60%は、野菜の使用量が食品群別摂取量のめやすの1/3を充たしていなかった。そこで、野菜を多く摂ることができる調理方法を学習させるために、教材「野菜をたっぷり摂れるレシピ」を生徒へ配布した。レシピは根菜のお味噌汁とスープカレーである。根菜のお味噌汁には人参と大根などを使用。スープカレーにはキャベツ、玉ねぎ、プチトマトとウィンナーを使用した。この教材についてのアンケートで、材料の切り方が分かったという回答は82.5%、分からなかったという回答は17.5%であった(回答者63名)。材料の切り方が分からなかったという回答をした生徒が指摘した4種の切り方について、教材に図を加えた。また加熱時間を具体的に示し、さらにカラー刷りにした。<br> 平成25年度の夏休みの課題で、生徒は改善した教材「野菜をたっぷり摂れるレシピ」2つから1つを選択し、調理を行った。この教材についてのアンケートで、材料の切り方が分からなかったという回答は1.5%であった。前年度の教材を改善したことによって、切り方が理解しやすくなったと考えられる。またレシピの選択では、根菜のお味噌汁が30.3%(20名)、スープカレーが69.7%(46名)であった。レシピを選択した理由(複数回答あり)は「美味しそうだから」が32名と最も多く、次いで「簡単そうだから」が14名であった。このように生徒が美味しそうと思うような料理を題材とすることにより、生徒に調理の意欲を持たせることができる可能性があると考えられる。また、選択しなかったレシピも調理しようと思った生徒は54.5%であった。加熱調理をすることにより、野菜を多く摂取できることを理解した生徒は45.5%にとどまったため、今後さらに教材を改善する必要があると思われる。<br>
著者
吉井 美奈子 大本 久美子 岸本(重信) 妙子 田中 洋子 藤川 順子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, 2012

【目的】<br> 近年、消費者庁の設立などの機会によって、消費者教育の重要性が改めて認識されつつあるものの、今なお教育現場では消費者教育に関わる問題が山積している。消費者教育はこれまで必ずしも体系的に実施されてきたとは言えず、日本消費者教育学会も消費者基本計画に関する提言の中で、「系統的・計画的な消費者教育の欠如」を指摘している<sup>1)</sup>。消費者教育は、主に家庭科や社会科で行われているが、特に家庭科では衣食住などの各分野における体系立てた消費者教育が必要であると言える<sup>2)</sup>。これまで、本研究メンバーの一部で、食生活分野での教材を作成し、その効果を検証してきた<sup>3)4)</sup>。本研究では、体系立てた消費者教育を目指し、「安全」「契約・取引・家計」「生活情報」「環境・責任・倫理」の各領域の目標を設定し、その目標が達成できるような消費者を目指す消費者教育教材作りを衣生活分野において行う。<br>【方法】<br> 消費者教育を体系的に行うための領域別目標を掲げ、その各目標を達成できるような教材作りを「衣生活分野」において行った。具体的には、衣生活の流れに沿ったスゴロクを作成し、カードなどを使うことで購入、使用、管理、廃棄(環境への配慮)などが一連で学べるようにした。小・中・高全ての校種で活用できることを目的としているが、今回はまず中学・高校で活用できる教材作りを行い、改良を重ねながら小学校等でも活用できるようにしていく予定である。<br>【結果と考察】<br> スタートからゴールまでの間にあるイベントマスで「商品カード」「表示カード」「エコカード」を引きながら、自立した消費者を示す星マークを多く集めてゴールを目指す教材を作成した。スタート近くでは、衣服を購入するための金銭的なイベントマスを用意し、目標を立てて貯蓄することの大切さなどを感じられるようにした。「商品カード」では、様々な視点から商品を捉えられるように工夫した。「表示カード」では、商品についている表示をクイズ形式で答えるようにし、知識を確認できるようにした。「エコカード」では、環境に配慮した廃棄や再活用について考えられるようにした。また、全員がゴールした後、講師が「お知らせ」を発表することで、知的財産への配慮などの必要性を感じることができるようにした。 本教材の特長は、消費者教育を体系立てて学べるということの他に、ゲームを援用したことで、生徒が自ら学ぼうという意欲が高まるようにしたことである。加えて、ゲームを活用することで、単に「楽しかった」で終わらせず、知識を付けながらコマを進められるように工夫した。また、ゲーム終了後の振り返りを利用して、既にゲームを通して獲得したポイントの数を変動させて意外性を持たせることで、より強い印象を付けることができる。<br>&nbsp;1)日本消費者教育学会「消費者計画に関する提言」(2004年12月13日)内閣府へ提出した意見書<br>2)「消費者教育体系化シートの領域別目標の達成と課題-大学生の消費行動に関する意識調査を手がかりにして―」吉井美奈子、他(2010)消費者教育第30冊、日本消費者教育学会<br>3)「食生活における消費行動に関する領域別達成度と課題」岸本(重信)妙子、他(2011)消費者教育第31冊、日本消費者教育学会<br>4)「食生活分野における消費者教育教材の検討-教材開発の成果と課題-」吉井美奈子、他、日本消費者教育学会第31回全国大会、2011.10.23