著者
前田 紀夫 磯部 由香 平島 円 吉本 敏子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.54, pp.56, 2011

<B>目的:</B>現在実践されている中学校の調理実習では、習得すべき技能・技術が明確に位置づけられておらず、献立構成や指導方法において個々の生徒の技能・技術の習得という視点が欠けている(河村、埼玉大学紀要、2009)。本研究では調理実習を通して身につけるべき力を「1人で調理できる技能・技術」であると定義し、生徒の個々の技能・技術の定着に主眼を置いた授業展開を提案することを目的とした。これまでに調理に必要な技能・技術を盛り込んだ献立3種(A:鰯のかば焼き・青菜のお浸し、B:ホワイトシチュー・ブラマンジェ、C:スパゲッティミートソース・トマトサラダ)と、新しい調理実習の指導方法として、「1限2品3まわり調理法」(3人1組になり、1限で2品の料理を2人が1品ずつ調理し、1人が観察者となって2人をサポートする方法)を報告した。本報では前回の報告で提案した献立と指導方法を用い、授業を実践することにより調理技能・技術習得に対する1人で調理することの効果について検討した。<BR><B>方法:</B>三重県内のA中学校の1年生(全3クラス)を対象に、2010年の4月~10月にかけて3つの献立を用いて調理実習を行った。1人で調理することの効果を比較するため、「1限2品3まわり調理法」だけでなく「1限1品調理法」(班で役割を分担して1限で1品を作るという方法)と「2限2品調理法」(班で役割を分担して2限で2品を作るという方法)を加え、各クラス異なる指導方法で調理実習を行った。各クラスの人数は24~25名であった。効果を検討するため、小学校での調理操作の経験等を問う事前アンケートを最初の授業に行った。また調理実習実施の前後には、リンゴの皮むきを実技テストとして行い廃棄率を計算した。さらに学期末には、筆記テストや事後アンケートを行った。有意差検定にはt検定やχ&sup2;検定を用いた。<BR><B>結果:</B>本報では2010年の1学期に行った献立Aおよび献立Bの調理実習実施前後での指導方法による調理技能・技術習得の差について検討した。事前アンケートにより生徒の調理技能・技術について調べたところ、22%の生徒が小学校で「調理実習において習得すべき技能・技術」の経験がないとわかった。調理実習前の調理経験にはいずれのクラスにおいても差がなかった。実技テストでは廃棄率の変化により検討したが、「1限2品3まわり調理法」を行ったクラスにおいて調理実習前後で廃棄率が下がっており、包丁の技能・技術の向上がわずかに見られた(<I>p</I> < 0.1)。事後アンケートにおいて「1限2品3まわり調理法」を用いたクラスは「1限1品調理法」や「2限2品調理法」を用いたクラスよりも調理操作の自信度の高いことがわかった(<I>p</I> < 0.05)。また、調理実習でとりあげた献立を家で作ってみたいと答えた生徒の割合は「1限2品3まわり調理法」が最も多かった。筆記テストでは、「ホワイトシチューの材料の切り方で正しい組み合わせを選びなさい」という設問に対して「1限2品3まわり調理法」の生徒は「1限1品調理法」や「2限2品調理法」より正解率が高かった(<I>p</I> < 0.05)。献立においては煮込み料理である「ホワイトシチュー」は時間がかかるため、1限の調理実習には適しておらず、2限の調理実習に相応しいことがわかった。また、「1限2品3まわり調理法」は「2限2品調理法」や「1限1品調理法」よりも多くの授業時数を要した。今後は、献立ごとに「2限2品調理法」や「1限1品調理法」を取り入れつつも、1人で調理する場面をできる限り増やす工夫が必要である。また、各献立においても1人で調理させることで習得させたい技能・技術に焦点を当て、実技テスト等も行うことで、個々の調理技能・技術習得や向上につなげていくことが課題である。
著者
小林 裕子 村田 晋太朗 永田 智子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.61, 2018

【研究の背景と目的】<br><br> 平成29年告示の学習指導要領では,中学校家庭科において新たに「B衣食住の生活(5)生活を豊かにするための布を用いた製作」で「衣服等の再利用の方法」を扱うことになった。中学校学習指導要領解説技術・家庭編(2018)には「着用されなくなった衣服を他の衣類に作り直す,別の用途の物に作り替える」などが例として示されている。しかし,現在中学校で使用されている家庭科教科書(開隆堂・東京書籍・教育図書)の内,2冊はリフォーム・リメイク等の単語がイラスト付きで簡単に紹介されているのみ,1冊は古着を持ち寄り衣服や小物にリメイクしている団体の取り組みに関する内容であり,実践的で具体的な内容や方法は記載されていない。<br><br> 衣服等の再利用に関する研究として,高森(1999)や赤塚ら(2016)による「衣服等の再利用」に関する調査がある。中高生は衣服の再利用やリメイクに関心がない訳ではないが(赤塚ら2016),着用しなくなった衣服をリメイクする生徒は僅かである(高森1999)ことが分かっている。高等学校段階では消費生活やESDと関連づけた研究調査や実践があるが,中学校段階ではほとんど見当たらない。<br><br> そこで,中学校家庭科「衣服等の再利用の方法」の教材開発を目指し,本研究では中学生対象に「不要になった布製品の活用について」の質問紙調査を実施し,家庭で不要となっている布製品の実態や対処方法・リメイク経験や興味関心等について,中学生の実態を把握することとした。<br><br><br><br>【研究の方法】<br><br> 質問紙調査の内容は(1)家庭で不要になっている布製品の種類,(2)不用になった布製品の家庭での対処方法,(3)不要になった布製品を何かに作り替える(リメイク)ことへの関心度,(4)不要になった布製品を何かに作り替える(リメイク)ことの経験について,(5)何かに作り替えて(リメイク)みたい布製品の種類,(6)具体的なリメイクのアイデア(自由記述)である。<br><br> 2018年3月,兵庫県M市と大阪府S市の中学1・2年生422人(M市275人,S市147人)を対象に行った。<br><br><br><br>【結果】<br><br> (1)家庭で不要になっている布製品として,「Tシャツ(59.5%)」が最も多く,次いで「靴下(48.1%)」が家庭にあることがわかった。(2)不要になった布製品の家庭での対処方法は,「誰かにあげる・譲る(62.5%)」が最も多く,次いで「捨てる(59.5%)」となった。(3)要になった布製品のリメイクへの関心度は,「とてもある・少しある」と「あまりない・ない」がともに50.0%であった。(4)不要になった布製品のリメイク経験は「ある」の回答が31.3%,「ない」が68.7%であった。(5)リメイクしてみたい布製品は「Tシャツ(46.0%)」が最も多く,次いで「ジーンズ(41.5%)」,「タオル(36.7%)」,「ハンカチ(29.1%)」の順となった。<br><br><br><br>【考察と今後の課題】<br><br> 質問紙調査の(1)と(5)の結果から,家庭で最も不要になっている布製品であり,生徒が最もリメイクしてみたいと考えているものが「Tシャツ」であった。「Tシャツ」は,生徒が自宅から持参しやすく,リメイクに対して関心も高いことから,次期学習指導要領で新たに示された「衣服等の再利用の方法」を扱う授業の教材として適切であることが示唆された。<br><br> 今後は,不要になったTシャツをどのようにリメイクすることが中学生の発達段階に適し,かつ資質能力の育成に寄与するか,具体的なリメイクの方法を検討し教材化することが課題である。
著者
日景 弥生
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, 2012

<b>はじめに<br></b><b></b>&nbsp; 家庭科の授業で行われる実習は、学習の手段として位置付けられている。発表者は、2007年以降、小学校家庭科学習内容に関する児童生徒の知識および技能の実態調査を行っており、同一対象者に対し、1回目のボタン付け結果を提示することにより2回目は「できた」割合が高くなったこと、生活技能が高い人は自己肯定感が高いこと、ジェンダーにとらわれている男子児童は生活技能を積極的に習得しようとしないため技能程度が低いこと、被服製作や調理に関する知識が高い生徒は技能程度も高いこと、などを報告している。<br>&nbsp; 以上のようなことを踏まえ、本研究では、青森と東京都において小・中学生を対象に、地域における知識や技能の実態を調査することを目的とした。<br><b>方法<br></b><b>1.アンケート調査<br></b>1)調査時期および調査対象【調査対象】青森は小学5年生106名、中学1年生188名、中学3年生193名、東京は小学5年生154名、中学1年生157名、中学3年生152名(以下、小5、中1、中3)とした。【調査時期】2011年5月~12月に実施した。<br>2)調査内容および方法<br>【学校以外の実践経験】学校以外での裁縫と調理の経験の有無を、「はい」または「いいえ」で回答させた。<br>【被服製作用語と調理用語】小学校家庭科教科書から、被服製作技能を伴う用語17項目と、調理技能を伴う用語20項目について、「できる」または「できない」で回答させた(技能の自己評価)。<br><b>2.「ボタン付け」テスト<br></b>1)調査時期および調査対象;上記のアンケート調査と同じとした。<br>2)調査方法<br>【試料】綿ブロード,縫い針,糸を用いた。<br>【テスト方法】「布に二つ穴ボタンをつけなさい」と指示した。<br>【評価方法】評価基準を決めて6つの項目により評価した。<br><b>結果および考察<br></b><b>1.学校以外の実践経験<br></b>&nbsp; 学校以外で裁縫をしたことのある者の割合は、男子では、小5、中1、中3の順に、青森では46.2%、46.0%、68.4%、東京では68.4%、75.6%、80.5%、女子では青森が81.5%、94.3%、88.8%、東京が91.0%、97.5%、86.7%となり、いずれの地域でも男子は学年進行とともに高くなったが、女子ではどの学年による差はみられなかった。この結果から地域における違いをみたところ、小5と中1の男子では有意差がみられ、東京が優位になったが、女子では有意差がみられなかった。<br>&nbsp; 学校以外で調理をしたことのある者の割合は、男子では、小5、中1、中3の順に、青森では90.7%、83.7%、94.9%、東京では91.9%、93.8%、96.9%、女子では青森が95.9%、96.3%、95.0%、東京が94.1%、98.6%、98.5%となり、裁縫経験と同様に、いずれの地域でも男子は学年進行とともに高くなったが、女子ではどの学年による差はみられなかった。また、地域による違いはみられなかった。<br><b>2.用語に関する知識する知識</b> <br>&nbsp; 青森の子ども達の被服製作用語の「知っている」割合は、[用具]は被服製作用語、調理用語ともに小5が最も高く、小5から中3までほぼ同じ値を示した。小5から中1にかけて被服製作用語の[縫製方法]は約10ポイント、[布・型紙]は約40ポイント増加した。調理用語は、どの学年でもほぼ同じ値だった。<br> 一方、東京の子ども達の被服製作用語と調理用語の「知っている」割合も、青森とほぼ同様な傾向を示したが、その割合は青森より高い値を示した。また、東京では小5や中1が対象学年の中で最も高くなった語群もみられ、特に「できる」割合で顕著にみられた。<br>&nbsp; 地域のおける違いをみたところ、被服製作用語、調理用語ともに小5、中1では東京都の方が優位な項目が多く、特に男子で顕著にみられた。しかし、中3では他の学年に比べて、有意差がみられた項目が少なく、両地域に大きな差はみられなかった。<br><b>3.「ボタン付け」テスト<br></b><b> </b>ボタンつけの調査評価項目については、どの学年でも青森の方が高かったが、あまり大きな差はなく、有意差もあまりみられなかった。また、青森と東京ともに女子の方が高い点数の割合が多かった。<b>&nbsp;</b>
著者
池崎 喜美恵
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.46, pp.21, 2003

<b>目的 </b>本研究では、日本人学校の家庭科教育の現状を明らかにするために、家庭科を指導する教師の属性や教師がどのような教育意識をもって児童・生徒を指導しているかを明らかにした。そして1996年の調査結果と比較し、日本人学校の家庭科教育がどのように変容してきたかを検討することを意図した。 <br> <b>方法 </b>2002年11月に世界の国々に点在する88校の日本人学校の学校長と家庭科担当教師宛に「日本人学校における家庭科の教育環境に関する調査」を依頼した。そして、2003年2月までに67校から回答が得られた。回収率は76.1%であった。 調査の概要は、家庭科の指導者、家庭科の指導法、家庭科教育に対する問題点や要望の観点から調査項目を設定した。<br><b>結果および考察</b>? 家庭科指導者は専任1名のみが59.5%、非常勤1名が17.5%であった。小学部と中学部で同一教師が指導する場合もあった。年齢構成は30歳代、40歳代とも各49名(38.9%)であった。大学時代の専門は、国語や音楽、美術を専攻した教師が家庭科を指導しているケースが多く、家庭科やその関連科目を専攻した教師は僅少で、免許外の教師による指導が現状であった。派遣教師と現地採用教師の比率は半々であった。 日本人学校での家庭科指導経験が2年以下が約5割を占めており、10年以上の家庭科指導経験をもつ教師が約2割いた。前回調査と比較して、教師の属性には大きな変化はなかった。<br>? 家庭科の指導方法では、4~5の手段を取り入れて指導していた。実習や講義の他、家庭での実践、現地にあった内容の導入、英語によるイマージョンの授業、幼稚部での保育実習なと多様な指導法を駆使していた。調理実習教材では現地の特産品を使用した実習や現地料理を扱っていた。教師の年齢や経験年数、採用方法により指導に特色がみられた。前回調査と比較すると、概ね現状の方が多様な指導法を活用していた。また81.0%の教師が教科書を使用しており、前回調査より教科書を使用して指導している教師が多くなった。<br>?教師全体の83.9%が、「とても・少し関心がある」と児童・生徒の家庭科に対する関心を高く評価していた。授業態度については、全体の83.3%が「とても・少し積極的である」と回答していた。前回調査ではそれぞれ83.3% 75.0%であり、児童・生徒に対する評価が若干上がっていた。<br>? 家庭科指導上の問題や悩みとして、「指導者の専門性(49.2%)」「教科書にそってすすめるとギャップがでる(46.6%)」「被服製作のための施設・設備の不足(46.4%)「調理のための施設・設備の不足(36.4%)」「教材が揃わない(33.9%)」が上位にあげられた。男性教師の半数以上が「指導者の専門性」を、女性教師の半数が「被服の施設・設備の不足」、47.6%が「指導者の専門性」をあげていた。その他、小規模校におけるカリキュラムの構成や教師の交替など、切実な問題が指摘された。年齢や経験年数・採用方法などにより問題点に特色がみられた。 <br>? 家庭科の授業の中で現地理解教育の観点から、学校の現地スタッフの協力や現地の人々との交流により、海外生活への理解を深める活動を推進していた。例えば、ローカルフードを利用した料理、調理用具の使い方、生活習慣や住まいの違いなどにふれ、エスノセントリズムの払拭に心掛けていた。<br>? 日本人学校の設置国によって違いはあるが、家庭科指導上の問題点として、多くの学校では教材入手の困難性授業時間の不足、視聴覚教材の不備、家庭科の専門教師の配置をあげていた。概ね、家庭科の教科書に準じた指導が行われているが、特に製作教材の準備の難しさや疑問が出された。<br>? 授業時数の確保や海外生活の利点を活かした授業実践を構想していく必要がある。また、日本人学校の家庭科教育の実態や指導方法などの情報交換を密にすることが要請される。
著者
田中 由美子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, 2015

<b>【背景と目的】</b><br><br>2005年、OECDが『DeSeCo』プロジェクトの中で提案した3つのキーコンピテンシーにより、日本の教育政策における学力の捉え方に変容が見られたといわれる。これは、今日的な教育目標とされる能力概念を示しており、社会で必要とされ、これからの社会で生きる子どもたちに身につけさせたい能力である。<br><br>一方、社会問題と捉えられる状況の渦中にいる子どもたちには、その状況から救済する視点での教育も考えなければならない。例えば、ネット・スマホ依存症、貧困などである。これらに陥らない予防策を学校教育の内容に導入することは、人生をよりよく生きていくために必要である。<br><br>ところで、家庭科教育での目標・学びと、今日的な教育目標は重なる部分が多い。言い換えれば、家庭科での学びを有意義なものにすることで、社会で生きるために必要な能力の多くを培えるということである。そこで、本研究の目的は、今日的な教育目標と、社会問題の予防策という両面からアプローチした教育内容・教材を提案することとした。<br><br><b>【方法】</b><br><br>1.OECD(2005) DeSeCoから、キーコンピテンシーのカテゴリー及び下位カテゴリーの抽出<br><br>2.青少年のインターネット利用環境(状況)実態調査及び、ネット・スマホ依存症に関する先行研究から、その原因の抽出<br><br>3.貧困の連鎖を回避する要因の抽出<br><br>4.2.3.を予防するための手法として認知行動療法等からの知見を援用し、予防に留まらずキーコンピテンシー育成を目指した教育内容・教材の考案<b></b><br><br><b>【結果】</b><br><br>青少年のインターネット利用環境(状況)実態調査より「規則正しい生活がなされていない」という実態が窺えた。 また、先行研究として、日本の大学生のインターネット依存傾向測定尺度作成を試みた鄭は、ネット依存傾向の問題点を分類すると①「欲求抑制・自制心の欠如」、②「時間管理能力の不足」、③「コミュニケーションスキルの不足」の3点とみなすことができる。<br><br>これらを解消する手法として「認知行動療法」を援用することを考えた。その手法の中での「気づき」をきっかけに「発見」「思考」「実践」「省察」「修正」と発展的拡張を可能にし、より良い成長、自己実現が可能になる。<br><br>また、適切で有意義な社会生活を送るには、自己のありのままの感情や欲求を自制(コントロール)することが必要であり、その第一歩は、それらを客観的にとらえ、望ましい状況・感情と比較・意識(モニター)することを要する。この一連の思考様式は、メタ認知である。<br><br> ネット・スマホ依存症、及び貧困の連鎖を予防するだけでなく、生活上の思考様式・行動様式をより自律性の高いものとするため、それを身につけた人材育成を目指した教育内容・教材に取り入れることを考え、下記項目を設定した。<br><br>1.生活時間を記録し、振り返り、気づき・満足度を記入する。<br><br>2.上記1.に改善点・向上点(できるようになったこと)も記入させ、自己効力感向上とモチベーション保持を行う。<br><br>3.やらなければならないことをリストアップし、優先順位を決め、時間を逆算し、予定を立てるスキルを身につけさせる。<br><br>4.予定を立てる際、上手くできたとき、できなかった時をイメージするトレーニングを行い、悪循環を自分で断ち切れる自己管理能力を身につけさせる。<br><br>5.他者とのコミュニケーションを行う際、ストレスを感じにくくするための主張行動スキルを身につけさせる。<br><br>今後は、本研究において作成した教材を教育現場において実践し、教育効果の測定を行う。<br><br>
著者
田甫 綾野
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, 2014

1.はじめに<br> 中学校では、幼児とのふれあい体験活動を全ての生徒が体験すべき活動となっている。筆者はこれまで、中学生と幼児(3歳児~就学前児)との触れ合い体験活動の観察を通して、幼児と中学生の質の高い交流とはどのようなものか明らかにすることを試みてきた。その結果、ただ、かかわる機会を持てば良いのではなく、幼児と中学生がともに同じ目的をもち、身体的な同調を伴うような活動を設定することが有効であるということが明らかとなった。<br> これまでは、幼児との触れ合い体験を研究の対象としてきたが、本発表では、かかわりの対象が乳児および低年齢の幼児(0~2歳児)の場合の事例を検討し、交流活動が双方にとってどのような学びをもたらすのか、また乳幼児の保護者にとってどのような効果があるのかを明らかにすることを目的とする。&nbsp;<br><br>2.研究方法および研究対象<br>(1)研究対象<br>①山梨県内にあるA中学校<br>⚫︎家庭科の授業における「赤ちゃん抱っこ体験」(子育て支援活動を行っているNPO法人が行っている活動に依頼)<br>⚫︎参加者;家庭科の授業を受講しているA中学校2年生および乳幼児(主に0歳~2歳児)とその保護者<br>②東京都内の区立B児童館 子育てサロン「ひだまり」<br>⚫︎ B児童館で行われている乳幼児と遊ぶキッズボランティア活動&nbsp;<br>⚫︎参加者;キッズボランティアに参加している小学校1、2年生および「ひだまり」遊びにきている乳幼児(0歳~1歳半児まで)とその保護者<br>(2)研究方法①②ともに、参与観察を行い、手記記録および映像による記録を行った。①は動画および静止画②については静止画のみの記録である。&nbsp;<br><br>3.結論<br>乳児および低年齢の幼児との交流の場合、乳幼児側からのアプローチが高年齢幼児と比べて少ないため、交流する児童・生徒は積極的に行動しないと、かかわりをもつことができない。また、かかわり方も難しく、戸惑う児童、生徒も多くみられた。しかしながら、今回の活動は両者とも保護者が参加しており、保護者が自分の子どもの好きな遊びや発達の様子などの細かいことを教えてくれたり、児童生徒が戸惑う部分のサポートをしてくれたりしていた。その他にも母子手帳やエコー写真などを持参し、子どもを授かり出産するまでの話を涙ながらに話してくれるなど、子どもの愛おしさ、子育ての大変さなどを生徒に伝えてくださっていた。乳児や低年齢幼児との交流活動の場合、保護者の方の存在も大きいと考えらえる。<br> 「キッズボランティア」については、今回の観察対象は小学生が活動の主体であったが、継続的に乳幼児とかかわれるということで小学校低学年の児童であっても、学びの多い活動となっていた。継続的にかかわることが可能であれば学習効果は高まると考えられる。今後、中学校・高等学校の家庭科の授業としても児童館との連携、また総合的な学習の時間や他教科との連携も考えていけるとよいのではないだろうか。<br> 乳幼児と「触れ合う」という意味では、今回観察したふたつの活動ともよい交流になったと思われるが、「赤ちゃん抱っこ体験」については、一度きりの活動であり、ただ「触れ合う」という目的のみでは「もったないない」「もの足りない」と思われる。例えば、生徒が作ったおもちゃを与えて遊んでみるとか、既成のおもちゃであっても生徒自身が選択して赤ちゃんに与えられるようにするなど、他の保育分野の学びと合わせてこの活動を位置付けることが必要なのではないだろうか。中学校については、学習の対象として乳児は入っていないが、乳児や低年齢幼児との触れ合い体験も、保護者との交流、子育てや出産の生の声を聞けるという意味で有効な学習になると考えられる。
著者
岡部 雅子 堀内 かおる
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.59, 2016

<b>〈研究の目的〉 <br></b>&nbsp; 小学校家庭科の教科書には、汎用性の高い基本的な手順や知識と、個々の状況により加減が必要な時間等のめやすが記述されている単元が多いが、子どもたちはそれらを区別して読み取ることができず、すべて教科書に書かれたとおりに行えばうまくいくと考えている。<br>&nbsp; そこで本研究では、炊飯の単元において、実習を通して学んだことや、自分の経験から言えることを、自分たちの言葉で表現し、教科書の炊飯のページに吹き出し型に付け加えていく形でまとめて、オリジナルの教科書ガイドを作ることを試みた。そして、子どもたちにどのような炊飯のときにもあてはまる内容と、状況によって加減する必要のある内容とが書かれていることに気づかせたいと考えた。その後グループで、作ったガイドをもとに「どんなごはんが炊きたいのか」という思いを共有し、それらを実現する具体的な方策を考え、次時の実習に臨ませた。そうすることで学習がより子どもたちの生活に生き、考えながら実践し続ける態度につながると考えたからである。こうした活動を通して、教科書を子どもたちの生きた教材として使いこなす方策を探ることを本研究の目的とする。<br><br><b>〈方法〉<br></b>&nbsp; 授業実践は国立大学法人附属小学校5年生3学級において平成28年2月に行った。そのうちA組(児童数32名)での実践を報告する。単元名は「いつものごはんを見直そう」で、授業数は全10時間、授業の流れは次のようである。<br> ・「いつものごはんとは」について考え、話し合い、学習課題を確認する。(1時間)<br> ・ビーカーと文化鍋で炊飯をする。(各2時間)<br> ・実習したことなどをもとに、グループでオリジナル教科書ガイドを作る。(2時間)<br> ・オリジナル教科書ガイドを発表しあい、次時のおにぎり作りに向けて自分たちの作戦を立てる。(1時間)<br> ・作ったガイドを生かして炊飯をし、おにぎりを作る。(2時間)<br><br><b>〈結果と考察〉</b> <br>&nbsp; 単元の導入では、「いつものごはんとは」について考えさせた。考えを交流する中で、子どもたちは、ごはんの炊きあがりを左右する炊飯の要素がさまざまあること、また、おいしさの基準は人によってちがうこと等に気づいた。その上で単元を通して「どうすれば自分の思い通りのごはんが炊けるのか」を追究することを確認してから、2回の調理実習を行った。<br>&nbsp; 単元最後のおにぎり作りの実習の前に、炊飯の実習を通して学んだことや自分の経験から言えることを、自分たちの言葉で表現し、教科書の炊飯のページ(開隆堂「小学校私たちの家庭科」pp.46-47)に吹き出し型に付け加えていく形でまとめて、グループで一枚のオリジナル教科書ガイドを作った。ガイドの吹き出しには、米や水のきちんとした計量、洗米の仕方、浸水時間の保障といった汎用性の高い知識に関する追加記述のほかに、水の量や火加減の調節など、自分の思いや米による違い等によって加減する必要のある作業があることについての記述が見られた。また、まとめのおにぎり作りの実習時には「どんなごはんが炊きたいか」という思いと具体的な方策を考えて臨んだグループがほとんどであり、これまでの実習に向かう姿勢との違いが見てとれた。<br>&nbsp; このように、教科書をカスタマイズして作ったオリジナル教科書ガイドは、あいまいさや加減の要素を併せ持つ生きたテキストになり、教科書を教材化する有効な方策であるということができた。<br> (なお、本研究は、小玉亮子お茶の水女子大学教授と堀内かおる横浜国立大学教授との共同研究の成果の一部である。)
著者
三神 彩子 赤石 記子 飯村(久松) 裕子 長尾 慶子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.60, 2017

<strong>【目的】</strong>物の購入や消費にかかわる消費生活の分野は,身近な問題でもあり,小・中・高の家庭科教育の中でも重要な分野である。さらに,食品の選択は食分野の教育においても欠かせない。しかし,調理実技と異なり,食品の選択は講義だけで済まされることも多く,実践が難しい。<br /> これまでの調査研究から,買い物,調理,片付けを通した食生活における省エネ行動に関する教育を行った場合に,買い物に関しての教育効果(意識変容や行動変容) が調理や片付けと比べ,得にくいことを明らかとしてきた。<br /> そこで,本研究では,買い物を擬似体験できるゲームを開発し,授業等で活用することとした。合わせて,大学生を対象とした授業及び中学校家庭科教員を対象とした研修で活用し,教材としての可能性を検討することとした。<br /><strong>【方法】</strong>買 い物に関する5項目の省エネ行動,「環境にやさしい商品を選ぶ」「必要な量だけ買う」「旬の食材を購入する」「買い物袋を持参し必要のないものを断る」 「食材を選ぶ際に簡易包装のものを選ぶ」について,教育前の認知度及び教育前後の実践度の変化を調査し,行動の阻害要因を明らかとした。<br /> 合わせて,小・中・高等学校で使用している教科書をもとに,環境に配慮した消費者教育に資する教材とするため盛り込む必要のある要素を抽出し,ゲームに反映させた。<br /> 次 に,T大学3年生「食教育の研究」授業履修者(2015年度65名,2016年度44名)を対象とし,ゲームを導入していなかった講義のみの2015年度 とゲームを導入した2016年度の授業前後の意識及び行動変容効果を調べるためアンケートを行った。合わせてH市中学校家庭科研修会にて活用し,ゲームの 教材評価を行った。<br /><strong>【結果】</strong>調査結果から,認知度と実践度の間には相関関係は見られなかったものの,環境に良 い理由や具体的な方法を理解していない等,理解度に差があることが阻害要因の1つとなっていることが明らかとなった。また,教科書等の記載状況を鑑み,環 境に配慮した消費者教育に資する教材とするためには,金額,容器包装,旬,地産地消,必要量に関して,選択理由と選択方法を具体的にゲームに盛り込むこと が重要であることを確認した。<br /> ゲームは,実際の買い物が想起できるよう,学生にもなじみのあるカレーライスとオムライスを作ることを想定し,店員 と消費者に分かれ,1,600円の所持金額の中で疑似買い物体験をするという設定とした。ゲームセットの内容は,はがき大のカードを使用し,実際の食材の 写真に,本物に即したラベル等を組み合わせたものとした。カードの表面には商品の情報,裏面には領収書を作成する際の選択のポイント等を表記した。開発し たゲームセットには,カード(ルール・買い物リスト・食材・レジ袋カード),領収書,買い物かご,電卓等が含まれる。<br /> 教育前の認知度及び実践度に関しては,2015年度及び2016年度ともにほぼ同様の傾向がみられた。一方,教育後の実践度を見てみると,2016年度のゲームを導入した教育では,「いつも実行している」人の割合がいずれの項目でも有意に増えていることが確認できた。<br /> ゲー ム終了後の振り返り発表の中の感想からも,「値段だけでなく,地産地消や,有機栽培かどうか等に気を付けることの意味が分かった」「安いという理由でセッ ト販売のものを買いがちであるが,余らせて捨ててしまうことを考えると必要な量を買うことがよいと思った」「たくさん販売されているものが旬のものと思い がちだった」「簡易包装が良いことは分かっていても何を選ぶと簡易包装になるのかがよく理解できた」等の声が聞かれた。このことから,情報提供の講義だけ の2015年度と比較し,理屈としては理解していても実際の買い物時に迷うことが多かった点に関し,ゲーム体験により,自信をもって日常で実践できるよう になったのではないかと推察された。<br /> また,教員研修の結果からも,すぐに使える教材であるとの評価を得た。特に,意図していた消費生活や環境の分野,食品の選択の授業で活用したいといった回答が得られた。
著者
西岡 真弓 今村 律子 赤松 純子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.60, 2017

<strong>目的</strong> <br /> 家庭科の製作実習はこれまで,実習体験だけで終わりがちだった。しかし,現行の中学校学習指導要領においては「生活を豊かにしようと工夫する能力と態度を育てること」が求められ,さらに次期学習指導要領では,「何ができるようになるか」,「何を学ぶか」,「どのように学ぶか」が今まで以上に重要となった。本研究は,「アイロンかけ」実習を科学的知識に基づいた授業と位置づけ,生徒に3つの力(生活に生かせる知識・技能,工夫して実践する思考力,将来にわたって学びを生かそうとする意識)をつけさせる主体的・対話的で深い学びであるアクティブ・ラーニング型授業を具現化することをねらいとし,提案・実践・評価・分析する。<br /><strong>方法 </strong><br /> 「アイロンかけ」実習授業で学べる科学的知識を整理し構想図にまとめ,授業を立案した。授業展開については,アイロンかけの科学性すなわち,しわが伸びる3要素(熱・水分・圧力)および繊維の性質(霧吹き・スチーム)の理解に重点を置くことと,アクティブ・ラーニング型授業の特徴である主体的・対話的で深い学びに導く指導方法を確立することを重視した。指導の工夫は,①視聴覚教材の開発,②実感で納得させる体験,③グループ学習による学びあいのしかけ,④思考を深め授業を振り返る相互評価と自己評価の4点とした。それに基づいた授業をW県内3中学校9クラスで実施し,「生活に生かせる知識・技能」,「工夫して実践する思考力」,「将来にわたって学びを生かそうとする意識」の3点について授業効果を確認した。<br /><strong>結果</strong> <br /><strong>1.授業立案</strong> 「アイロンかけ」で学べる内容を整理し,科学的知識に基づく「アイロンかけ」実習をアクティブ・ラーニング型授業として立案,試行実践の後,基礎編(アイロンでしわが伸びる原理の理解と基本的なかけ方の習得)と応用編(繊維の水分特性と衣服の構成を理解したかけ方の習得)各1時間の授業提案ができた。<br /><strong>2.アクティブ・ラーニング型授業</strong> 基礎編では「繊維分子の紙芝居・かけ方ビデオの活用」および「アイロンのしわ伸ばし体験」を,応用編では「綿と毛の吸水実験」および「ワイシャツの解体見本提示」を行い,原理やかけ方の意味を考えさせた。また,グループで1枚のワイシャツを分担して実習する学習形態をとった。これらの指導の工夫により,「アイロンかけ」実習をアクティブ・ラーニング型授業として提案することができた。<br /><strong>3.3</strong><strong>点の授業効果</strong><br /><strong>(1)</strong><strong>「生活に生かせる知識・技能」</strong> 3要素の理解と霧吹き・スチームの使い分けは自己評価で9割以上が「わかった」と回答した。これは,視聴覚教材と体験を取り入れたアクティブ・ラーニング型授業の効果であると思われる。「アイロンかけ」技能の習得レベルは約9割がきれいに仕上げることが「できた」と回答しており,基礎的な技能はおおむね習得させることができたと思われる。<br /><strong>(2)</strong><strong>「工夫して実践する思考力」</strong> これまで各自で行うことの多かった「アイロンかけ」実習を,互いのかけ方を見て双方向に学びあう協働学習で行った結果,相互評価で「しわを整えるとかけやすそうだ」などの生徒の記述から,思考力の深化が認められた。<br /><strong>(3)</strong><strong>「将来にわたって学びを生かそうとする意識」</strong> 授業前後の意識変化調査から,今後のアイロンかけ意欲が8割以上の生徒にみられた。教師からの一方向的な指導ではなく生徒主体で考えさせる学習ができたこと,協働学習により友だちからよい刺激を受けたこと,自己評価により授業の振り返りと自己の到達度確認ができたことなどが,次の意欲へとつながったと思われる。このことは主体的で対話的な学びであるアクティブ・ラーニング型の授業展開に取り組んだ本研究の大きな成果といえる。
著者
仲田 郁子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.48, pp.32, 2005

1、目的<BR>自分らしく充実した人生を送るためには、生活設計を立案し自らの課題について考えることが不可欠である。しかし十代半ばの高校生には、何十年も先まで考えることは簡単なことではない。近年は社会変動の激しさに伴うフリーターの増加や未婚化・少子化の進行などの問題点が指摘され、また就職活動に取り組もうとしない若者が増えていることなど、従来は見られなかった問題も注目されてきており、高校生にとっては、学校を卒業してから精神的・経済的に自立するまでの移行期の過ごし方を考えることが特に重要であると考えられる。就職や結婚などに関する意識は、性別や進路の違いによって相当大きいことが予想されるが、これらについて今までに充分研究がなされているとは認められないことがわかった。<BR>そこで本研究では、高校生が学校卒業後の生き方についてどのように考えているか調査を行い、男女差と進学志向に注目して、その特徴と課題を明らかにすることを目的とする。<BR>2、方法<BR>ほぼ全員が大学進学を希望していると考えられる高校2校(都立高、千葉県立高各1)と、多様な進路選択が行われていると考えられる高校2校(都立高、千葉県立高各1)の計4校を選び、各校の家庭科担当教諭に依頼して質問紙調査を行った。対象は1年生、調査時期は2004年11月から2005年2月、回収数は647(男子302、女子345)である。<BR>3、結果<BR>調査は高校生の(1)親との関係と成育環境、(2)職業選択・結婚・自立に関する意識、(3)現段階での自立度と興味関心、(4)生活設計のための資源の4点について行った。今回は(2)と(4)について報告する。<BR>職業選択で重視する点については全体に大きな違いは見られず、「安定していて雰囲気が良く、自分がやりたい仕事」が挙げられていた。働き方についても大きな違いは見られなかったが、男女別に見ると、どの高校でもフリーターについては男子の方が「長く続けるべきではない」と考えていることがわかった。「就職のことを考えると不安になる」者は進路多様高の男子に多く見られ、女子は男子に比べて、人間関係に不安を持つ者が多かった。<BR>結婚については「するつもりはない」とする者は大変少なく、結婚志向は高い。「フリーターとは結婚したくない」と考える女子は男子と比べて多かった。「長男には特別な役割がある」、「理想的な女性の生き方は専業主婦」とする者は今回の調査ではかなり少なかった。「子どもが3歳になるまでは母親は家で子育てをするのがよい」とする者は進路多様高の女子には比較的多く見られたが、全体では「女性も働き続けるのがよい」とする者が多かった。<BR>自立したと言えるのはいつかという問いに対しては、全体では「就職して自活が可能になった時」が最も多かった。進路多様高の女子ではそれ以外に「親元を離れた時」とする者が多く、男子では同様に「親元を離れた時」と「就職した時」が多かった。<BR>自分の生活設計を考える時、どのような資源を利用したいかについては、男子は「自分で勉強する」と答えた者が最も多く、続いて「学校での進路指導」や「アルバイトの経験を生かす」が挙がった。女子もほぼ同様であるが「親や友人と相談して考える」とする者が男子より多かった。「授業の中で考える」を選んだ者は男女共大変少なく、彼らも教科としては現代社会や政治経済、総合的な学習を挙げており、家庭科はごく少数の者しか選択していなかった。<BR>高校生は就職や結婚について真面目に考えてはいるが、生活設計として積極的に捉えることは充分にできていないように思われる。
著者
猪野又 友美 財津 庸子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集 第53回大会・2010例会
巻号頁・発行日
pp.86, 2010 (Released:2011-01-13)

1.研究目的 現代の生活においては、ファッションが楽しみのひとつとして受け入れられ、衣服が自己表現の手段としても発展してきた。一方で、生活環境は個人の衣服に対する意識や行動に、大きく影響を与えている。特に都市部と周辺部の子どもの間では衣服についての意識や行動に差が生じているのではないかと考えられる。都市部と周辺部の子どもの間に「被服行動」に関する意識や行動に差があるとすれば、家庭科の被服分野では、それぞれの実態により適した授業を行う必要性があろう。そこで、本研究の目的は、_丸1_中・高等学校家庭科の被服分野において、都市部と周辺部のそれぞれの子どもの「被服行動」の違いとその要因をアンケート調査により明らかにし、_丸2_その結果を踏まえ、実態に応じた指導を行うための題材や指導方法を具体的に検討するための基礎資料を得ることとする。 2.研究方法 調査対象は、大分県内の都市部及び周辺部の中・高等学校各1校ずつの計4校である。回収数は中学校168部、高等学校542部の計710部である。調査内容は、被服購入時の様子に関する項目が11項目、被服行動に関する項目が31項目である。「被服行動に関する項目」は、先行研究を参考に、次のように設定した。_丸1_最近のファッションへの興味や流行をとりいれるなどの「流行性」、_丸2_店ごとの価格比較やバーゲンセールの利用などの「経済性」、_丸3_学校の制服や雰囲気に応じるなどの「社会規範」、_丸4_品質や取り扱い表示の確認などの「機能性」、_丸5_友人の着ている服が気になるなどの「他者承認期待」、_丸6_人と違うファッションや魅力を引き出すなどの「自己顕示・表現性」という6尺度について5項目前後の質問を設定した。 3.結果及び考察 「被服購入時の様子に関する項目」において、被服購入時の同伴者、移動時間、情報源の3項目で顕著な差が見られた。同伴者では、周辺部では家族、都市部では「友人」や「自分だけ」など家族以外の傾向が高かった。移動手段では、「自動車」と回答した生徒が両地域とも圧倒的に多かったため、自動車での移動時間を比較したところ、周辺部では「30分~1時間」、都市部では「10~20分」と回答した生徒が最も多く、都市部の方がより身近に被服購入の店舗があるということが推察される。情報源では、周辺部は「テレビ」、「インターネット」、「家族」、都市部は「雑誌」、「友人」、「街中で見かける人の服」が多く、都市部の方が、被服に関する情報が、より身近に接しやすい環境であるといえよう。 また、「被服行動に関する項目」をカイ二乗検定によって分析した結果、周辺部と都市部の間で有意差及び有意傾向の見られた項目は、全31項目中、中学生では11項目、高校生では15項目であった。特に有意差の見られた尺度は、中学生では「自己顕示・表現性」、高校生では「経済性」及び「自己顕示・表現性」であった。この結果より、都市部の方が、被服行動に関する意識が高く、中学生より高校生の方が、有意に意識が高い傾向にあることがわかった。 このことから、周辺部では、全体的に意識が低いため、被服行動における全体的な意識の底上げ、都市部では、最も意識の低い「機能性」を意識させながら、目的に応じた被服選択を行う必要があると考える。 以上の点を配慮した指導方法・学習内容、及び教材等を検討していくことで、より有効な生徒の実態に応じた被服行動に関する授業の展開が可能になると考える。
著者
加藤 浩子 池崎 喜美恵
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.41, 2009

<B><目的></B> 環境教育は、これからの持続可能な社会の形成において、重要な役割を担うものである。特に、ゴミ問題は私たちにとって日常的な問題であり、見過ごすことはできない。環境教育について研究している中で、環境先進国であるドイツの環境問題への取り組みと日本の取り組みの違いに関心を持った。ゴミの分別について言えば、ドイツは国で環境対策をしており、どこの地域に行っても分別方法は国で決められているので一定である。 このようなドイツに暮らす日本の子どもたちは、日本に暮らす子どもたちよりも環境意識が高いのではないのかと考え、日頃、環境問題についてどのように考えているのか、どのように行動しているのか調査することにした。日本もゴミの有料化やゴミの分別、レジ袋の有料化などの環境への取り組みは進んできているが、日本より以前に、環境対策に取り組んでいるドイツの環境教育には学ぶべきものが多いと言える。本報告では、ドイツと日本に暮らす子どもたちの環境に対する意識や実態を比較検討し、今後の家庭科における環境教育への示唆を得ることを目的とした。<BR><B><方法></B> 2008年11月から2009年1月にドイツの日本人学校4校(A校、B校、C校、D校)の小学部、2009年2月に東京都の公立M小学校にアンケート調査を行った。対象は家庭科を学習している5、6年生の児童である。ドイツの日本人学校では199名、M小学校では181名の回答を得ることができた。アンケート項目の中で、ゴミの分別方法や分別理由等の項目を環境認識度得点、ドイツでの日常生活の満足度に関する項目を生活満足度得点として計算し、得点の平均点から上位群、下位群に分けて比較検討を行った。<BR><B><結果および考察></B>・ドイツの滞在年数が1年未満の児童は46名、1~3年未満は59名、3~5年未満は58名、5年以上は36名であった。・環境認識度得点の上位群の割合は、日本人学校が6割、M小学校が5割であり、日本人学校の児童の方が高かったが、顕著な差はみられなかった。・日本人学校4校それぞれの環境認識度得点を見ていくと、上位群の割合は、B校が4割、他の3校は6割とB校がやや低い結果となった。生活満足度得点に関してもB校が他の3校よりもやや低い結果となったが、4校とも高い得点結果となった。・ドイツでの滞在期間が長い児童やドイツ語能力が高い児童など、ドイツの生活に同化していると考えられる児童は環境意識がやや高い傾向にあった。・「家庭科が好きか」という問いで、日本人学校では男子7割、女子9割、M小学校では男子6割、女子7割の児童が「好き」と回答した。学年ごとでは、日本人学校の5年生9割、6年生 7割、M小学校の5年生 7割、6年生 6割が「好き」と回答した。・日本人学校の児童もM小学校の児童も、環境意識が高い児童ほど家庭科に対するイメージは肯定的である傾向が見られた。・日本人学校もM小学校も、家族で環境について話す機会がある児童ほど、環境認識度得点が高い傾向が見られた。・顕著な差はみられなかったが、環境先進国であるドイツに暮らす子どもたちの方が、日本に暮らす子どもたちよりも環境意識が高いという結果から、今日の我が国における環境問題解決のためには、環境教育をより充実させる必要性があると言える。
著者
遠田 瑞穂 吉野 真弓 佐藤 麻子 大竹 美登利
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会誌 (ISSN:03862666)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.117-126, 2001
参考文献数
15

Several industrial arts and home economics textbooks in junior high school have been analyzed as to text, illustrations, photos and charts. Their expressions have been discussed with gender perspectives. Only home economics area has been analyzed and it was divided into 5 sections home life, nutrition, clothing, housing and nursing. Each section was divided into subgroups ; cover, back cover, frontispiece and so on. Summary of the results is shown as follows, 1. There are little expressions in the text that are recognized to be gender biased. 2. Illustration and photos have gender biased ones regarding roles for each gender, particularly in home life area. Gender biased expressions were also observed in covers and frontispieces, in terms of colors. 3. It seemed characteristic that some photos have gender biased expressions that are typically seen in society.
著者
小林 裕子 永田 智子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.59, 2016

【研究目的】 <br>&nbsp; &nbsp;自然災害大国と呼ばれる我が国において、児童生徒に対し実践的かつ継続的な災害学習の実施は必要不可欠である。本研究の目的は中学校家庭科で災害時の食を扱った学習の開発、実施、評価を行うことである。前回の報告(小林、永田2015)では研究の第一段階として、中学生に災害に関する質問紙調査を実施した。その結果、食料を数日分備蓄している家庭は3割程度に過ぎず、災害時に水や食料の確保が不安だと答えた生徒が6割を上回っていた。また社会の中で広がりを見せる従来の「非常食」から保存のきく日常食を災害時に活かす「災害食」への転換や、「ローリングストック法」の考えはまだほとんどの中学生が知らないことが分かった。そこで次の段階として「災害食」を題材とした課題解決的な学習を開発し実践することとした。 【開発した学習】 <br>&nbsp; 開発した学習は3時間で構成され、B食生活と自立(3)ウの「食生活についての課題と実践」に位置づけた内容である。この題材の目標は「災害時の食生活に関心をもち、課題をもって災害時の調理活動と献立作成を体験することを通して、災害時に備えた食品の備蓄を工夫して計画を立てて実践できること」である。この目標に沿い、学習の構成は、1.生徒が災害時の食生活に関心をもち課題を見つけ、どのような解決方法があるかを知り考える 2.災害時を想定した「災害食」の調理実習を実施し、体験活動から工夫や学びをさらに深める 3.平均的な家庭の備蓄食品から災害時の一日分の献立を栄養バランスにも配慮して考え家庭での実践につなげる という展開とした。3ではB(2)イの献立学習内容を押さえながら家庭での備えの改善につながるよう工夫した。 <br> 【学習の実践】 <br>&nbsp; &nbsp;実践は兵庫県公立中学校2学年の生徒5クラス164名を対象に、2016年2月に行った。 第1校時の授業はパワーポイントを使用して行った。南海トラフ地震の被害想定と日本が自然災害大国であることの確認から入り、災害時の食生活の課題にはどんなものがあるか各自で考え、発表をして意見の共有を行った。次に日常的に保存のきく食品を備蓄しながら使い回す「災害食」の考えや、その実践方法として「ローリングストック法」が推奨されていることを学習した。従来の乾パンやアルファ米のように使わず備えておく「非常食」より、「災害食」は賞味期限切れの無駄がなく、味も普段から慣れているので合理的でよいという感想が大半を占めていた。 第2校時は災害時を想定した調理実習を行った。使う食材は保存食品のみ、水の使用は調理と洗い物含め各班2リットルに制限、ガスコンロは使用可とした。献立はポリ袋炊飯で作るわかめご飯とツナ缶を肉の代わりに使用したツナじゃがとした。栄養面で6つの基礎食品群をすべてカバーした献立である。炊飯時間が20分と短く洗い物も出ず、なおかつ食味も炊飯器で炊き上げたものとほぼ変わらないと生徒に大変好評であった。食器にラップを敷き洗い物を減らす体験も行った。被災地から生まれた節水になる工夫のすばらしさに感心している様子が伺えた。 第3校時は班活動とした。平均的な家庭の備蓄食品を各食品群別に分け一覧にしたプリントを配布し、まず各自で災害時の一日分の献立を栄養バランスも考慮して考えた。それを班単位で組み合せ1週間分にまとめるという活動を行った。その後、献立を立てる際に不足した食品や使用しなかった食品を挙げ、災害時の備蓄の課題を再度見直し、どのように改善していけばよいかを具体的に考えた。 今後は、授業で生徒が記入したワークシートの感想や自己評価、アンケートなどを分析し評価を行う予定である。
著者
倉元 綾子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, 2015

【目的】子どもの貧困,虐待,殺人など,個人・家族・社会において生活をめぐる多様な問題・課題が発生している。このような状況において,個人・家族の生活に関する教育の必要性が認識され,米国,韓国,台湾,シンガポールをはじめ,諸外国では家族生活教育が様々な形態で提供されるようになっている。日本においても家庭科・家政学を基礎にした家族生活教育を展開しようとしてきている。その方法論については従来の講義を中心とした授業の形態を発展させ,ワークショップなど理論と実際の生活を結びつける実践的な教育方法が求められている。ここでは家族生活教育をいち早く確立し発展させてきた米国の家族生活教育における方法論に関する言説を検討する。<br>【方法】『家族生活教育 人の一生と家族 第2版』(パウエル,キャシディ著,倉元,黒川監訳,南方新社,2013),Family Life Education Working with Families across the Lifespan 3rd ed. (Darling & Cassidy with Powell, Waveland Press, 2014),米国家族関係学会(NCFR)などの文献を用いた。<br>【結果】米国における家族生活教育方法論に関して検討した結果,以下のようなことが明らかになった。<br>(1)米国家族関係学会では,2011年に「生涯にわたる家族生活教育のための枠組み」(The Family Life Education Framework)を改訂し,家族生活教育方法論を新たに加えている。 <br>(2)同枠組みのまえがきは,「幅広い,生涯にわたる家族生活教育プログラムのための主要な内容を特定することによって、家族生活教育の定義について詳述する。 これは、それぞれの内容領域における最近の概念の発達や経験的知識を反映しており、関連知識、態度、スキルに注意を払っている。枠組みは,カリキュラムではなく、プログラム開発、普及、調査のためのガイドを目的としている。実践者は特定の対象者のニーズを満たすために,最も適切な概念組織と最も適切な種類の方法論を選択することが望ましい。コミュニケーション、意思決定、問題解決は、個別の概念としては取り扱っていない。しかし,それぞれの内容領域に組み入れなければならない。」と記されている。<br>(3)提示された枠組みのなかの,家族生活教育方法論のうち,「FLEプログラムを計画し実行しなさい。」では「プログラムを設計して、対象者のニーズを満たしなさい。/FLEの材料、関与している進歩、およびプログラムの有効性を評価しなさい。/さまざまな教育技術を使用しなさい。/教育学と成人教育学の原則を適用しなさい。/関係者と利害関係者を関係させ、教育的有効性を高めなさい。/すべてのフォームの多様性を尊重して、敏感にコミュニティ関心と価値に応じなさい。/奉仕活動と広報戦略を実行しなさい。/個人的な値/信念とFLE領域との関係を理解しなさい。」としている。また,「ベスト・プラクティスを利用しなさい。」では,「さまざまな習慣と戦略を使いなさい。/基本規則を使用するか、または集団規範を特定しなさい。/教育の年齢に適した原則を適用しなさい。/(あなたの対象者にとって適切)で段階ごとの認識的な内容を構造化しなさい。/学習スタイルの好みを尊重しなさい。/特定のグループの過程を支持して、管理できるグループサイズを使用しなさい。」<br>(4)さらに,家族生活教育方法論では,プログラム計画の循環的ステップが示されている。<br>(5)Family Life Education&nbsp; 3rd ed.&nbsp;では,新たにワークショップに関する記述が追加され,家族生活教育におけるワークショップの定義が提案されている。<i></i><br>&nbsp; 以上のことから,米国では家族生活教育方法論に関する認識の高まりが見られ,優れたプログラムの実践に高い関心がはらわれていることが分かる。家族生活教育の実際を分析検討が今後の課題である。
著者
多田 千代 小野 日出子 徳永 登喜枝
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会誌 (ISSN:03862666)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.96-99, 1974

Of the method of making Pompon Tufting, a way of using a rectangular cardboard pattern was examined tentatively. The cardboard should be long enough to wind the desired full length of the yarn around, and, as winding, it is necessary to make it uniform and not to tense. Width of the cardboard will be the same as desired for the finished pompon. Where to cut and where to tie the wound yarn should be marked clearly with chalk before the cardboard is removed. Instead of the cardboard, pencils may be used. The round of the pencils bound is as following; circular pencils : 2r(π+n) six-angle pencils : 6r+n√<3r> r=a pencil's radius, n=number of pencils bound, π=the circular constant.
著者
藤田 智子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.48, pp.18, 2005

<B>【研究の目的・背景】</B><BR>過剰な痩身願望を持つことは、特に青年期の女性にみられる現象とされ、その影響としての摂食障害の増加も問題視されている。近年、摂食障害の患者の低年齢化、男性における発症なども指摘されている。摂食障害の大きな原因として、身体像(ボディ・イメージ)の歪みと、それに基づくダイエット行為が挙げられる。田結庄(1997)は家庭科における学校知と日常知の検討において、栄養や食品に関する知識、特にダイエットに関する知識は学校知より日常知が先行し、「学校知が日常知を後追いするか、あるいは両者が対立することになってしまうという事情をどう解決するかが課題」であると指摘している。学校知が日常生活において実践されるためには、生徒たちがどのような日常知を持っているかを明らかにすることが必要であると考えられる。よって、高等学校において、家庭科で食物領域を学ぶ前の生徒たちが、ダイエットについてどのような知識を持ち、ダイエットを実践しているのかを明らかにすることを本研究の目的とする。<BR><B>【研究の方法】</B><BR>高等学校において、家庭科の食物領域を学ぶ前の都内の高校1_から_2年生を対象とする質問紙調査。有効回答数269名(男子校84名、女子校115名、共学校70名。男子113名、女子156名。2004年1~2月に実施。)なお質問紙は高校生14名(男子8名、女子6名)に対するインタビュー調査(藤田 2003)を元に作成した。具体的には、知っているダイエット、実際に行ったダイエット、ダイエットの情報源、他者(家族や友人)との関わり、実際のBMI、理想の身長と体重、属性などである。<BR><B>【研究の結果と考察】</B><BR>(1)知っているダイエット りんごダイエット、マイクロダイエット、ダイエットテープ、カロリー計算、断食ダイエットをそれぞれ知っているか尋ねた結果、知っていると回答した生徒は、53.5%、36.9%、36.1%、73.2%、81.4%であった。知っているダイエットの数と、性別×学校属性の一元配置分散分析の結果、女子校、共学・女子、男子校、共学・男子の順で有意差があった。同じ性別の場合、学校属性によって差が生じていた。<BR>(2)実際に行ったダイエットの種類 上記の5種類のダイエットのうち少なくとも一つは行ったことのある生徒は、男子生徒は0%、女子生徒は1割強であった。自由記述欄を入れても、男子でダイエットを行ったことのある生徒は1人であった。χ2検定の結果、性別による差は有意であった。現在の身長とそれに対する理想の体重、理想の身長とそれに対する理想の体重を聞いた結果から、男子は身長、体重とも増加するのを望んでいるのに対し、女子は身長は男子と同様に高くなることを望んでいるが、身長が高くなっても理想体重はほとんど変わらなかった。男子の場合、理想の身体に近づこうとする際、やせるということが重視されないため、ダイエットといった場合、実践率が低いと考えられる。<BR>女子生徒のうち、どのような生徒がダイエットを実践しているのかを明らかにするため、クロス集計をした後、χ2検定行った。その結果、知っているダイエットの数、学校属性において有意差が見られたが、自分は太っていると思う、今よりやせたいと思う、BMIとの有意な関連は見られなかった。また、家族、同性の友人、異性の友人から体型について言われた経験がある女子生徒は、それぞれ6割以上が実際にやせようとしたと回答した。<BR>高校生において、ダイエットに関する知識および実践において、性別差のほか、学校属性による差がみられた。また身近な他者とのかかわりの中でダイエットは実践されており、身体像や実際のBMIではなく、日常生活環境の中でダイエットに関する知は影響を受けているといえるだろう。
著者
中須 晴南 湯川 夏子 中西 洋子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集 第57回大会・2014例会
巻号頁・発行日
pp.62, 2014 (Released:2015-01-10)

【目的】中学校技術・家庭科の技術分野において、新学習指導要領より「生物育成」が必修となった。「生物育成」の中には、野菜の栽培も含まれる。また、家庭分野の調理実習においては、野菜を使った料理を取り上げることもできる。したがって自分たちで食材を栽培し、調理して食べるという技術科と家庭科の連携の授業ができると考えた。しかし、どの野菜が栽培と調理実習の連携の教材として適しているのか、またどのように連携授業を行えばよいのか明らかではない。そこで本研究では、「生物育成」で栽培する野菜の検討及び連携授業の提案と実践を行い、その教材の教育的効果を検証することを目的とした。【方法】2012年5月~2013年8月に、中学校技術科の教科書に記載されている野菜を中心に、16種類の野菜を栽培し、評価を行った。評価の結果、適していると考えられた野菜の一つである万願寺とうがらしを用いた教材を提案し、授業実践を行った。授業実践は2013年10月に、京都府内のA中学校の第1学年(124名、4クラス)を対象とし、講義と調理実習の授業実践と、授業実践前後にアンケート調査を行った。調査内容は、万願寺とうがらしの知名度や好き嫌い、イメージ等、である。【結果】栽培と調理実習の連携授業を行うにあたっては、「収穫しやすく、かつ一度に多く収穫できる」野菜であり、「50分間という短い時間でも可能な調理実習内容」という課題を解決する必要があることを我々は明らかにした1)。そこで、栽培をした野菜について1.簡単さ、2.面白さ、3.時季、4.関係性、5.調理への応用、という5つの観点から評価した結果、ピーマン、万願寺トウガラシ、シシトウ、ミズナ、コマツナ、ホウレンソウ、ジャガイモがその条件を満たしており、かつ総合的にも栽培と調理実習の連携に適した教材であることが分かった。 これらの野菜の中から、京野菜でもある、万願寺とうがらしを選び、育ち方や旬、京野菜についての講義と、短い時間でもできる「万願寺とうがらしと厚揚げの炒め煮」の調理実習を提案し、授業実践を行った。授業後にアンケート調査を行った結果、万願寺とうがらしに対するイメージの変化や好みの変化が見られ、講義や調理実習を通して生徒の意識を変え、可能性を広げることができた。また、京野菜の一つである万願寺とうがらしの学習をしたことで、他の京野菜にも関心をもつきっかけにもすることができた。本授業の目標は、「万願寺とうがらしについて理解を深め、万願寺とうがらしを使った料理を作ることができる。」であったが、調理実習に意欲的に取り組んでいたことからも授業の目標は達成できたといえる。調理実習は、4クラスとも50分間で片付けまで終わらせることができていたことも含め、「万願寺とうがらしと厚揚げの炒め煮」は教材として適しているといえるだろう。 以上のことから、万願寺とうがらしを用いたこの教材の教育的効果は認められ、栽培と調理実習の連携の授業として有効であるといえる。今後は、栽培と調理実習の連携の授業を推進していくために、「収穫しやすく、かつ一度に多く収穫できる」野菜を用いた、「50分間という短い時間でも可能な調理実習内容」等の調理実習教材を開発することが必要である。また、京都府以外でも実践できる「地域の食文化」の内容と関連づけた、各地域の特産物や郷土料理を用いた教材を開発することも必要であろう。そして、教員自身の意識を高め、「生物育成」と調理実習の連携を推進していきたい。 引用文献1)中須晴南ら;教育実践研究紀要 Vol.14,印刷中(2014)
著者
藤田 智子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, 2015

<b>【研究の背景と目的】</b><br>家庭科が男女共修となって20 年が経過した。男女共修家庭科の履修経験は、ジェンダー・イクイティ意識の形成や、高校生の多様な家族形態の受容、家事参加率、親準備性等に影響すること(荒井他1998、中西2000等)が明らかにされている。だが、家庭科に対するイメージには根強いジェンダー意識がみられる(中西2006)。<br>本研究では、家庭科に対する「学習レリバンス(学習にどのような意味や意義を感じているか)」の構造を明らかにすることを目的とする。それを通し、男女共修家庭科の意義と課題を検討する。「学習レリバンス」は、学習そのものを面白いと感じる「現在的レリバンス」と学習が将来役立つという感覚である「将来的レリバンス」に分けて捉えられる(本田2004)。<br><b>【方法】<br></b>男女共修家庭科を学んだ大学生に対してインタビュー調査を行った。調査人数は39名(女性27名、男性12名)である。所属は教育学部生21名(家庭科専攻10名、家庭科専攻以外11名)、その他の学部生18名である。インタビュー調査協力依頼の文書を配布・掲示し、同意の得られた人に対し1対1の半構造化インタビューを行った。調査時期は2014年11月~2015年3月である。対象者に了解を得た上でICレコーダに録音し、文字起こしを行い1次データとした。大まかな質問項目ごとに、共通するキーワードに着目してコード化し分析した。<br> <b>【結果および考察】<br></b> 家庭科の学習で楽しかった・面白かったこととして、調理や裁縫が多く挙げられた。自分たちで自由にメニューやデザインを決められる場合、特に楽しかったと記憶されていた。「失敗して『もうちょっとこうすればよかったね』と反省は色々結構するんですけど、それでもやっぱり楽しいという方がみんな勝っていました」というように、失敗しても「自分たちでやった」とことが学びの楽しさとなっていた。「個人的に私がちょっとクラスに行きづらい時期で。でも、(調理実習の班員に恵まれて)仲良くできたのがすごく印象的で。その授業はすごく楽しくて印象に残ってます。」と、学びの状況に関する語りもみられた。<br> つまらなかった・嫌だったこととして、座学の授業を挙げる者が多かった。学校の雰囲気に左右される部分も大きく、「荒れた」環境の場合、授業はつまらないと認識されていた。摂食障害を発症していた学生は、自分が作ったものなので絶対に残さずに食べなければならないことや、友人と一緒に食べなければならないことが苦痛だったと語った。<br> 役に立っていることとしては、調理と簡単な裁縫技術が多く挙がった。ミシンを家庭科の授業で初めて使ったという学生も多く、サークル活動などで衣装を縫う時などにも役立っているようだ。<br>男女が共に家庭科を学ぶことについては、全員が肯定的な意見を述べた。授業中の男子の様子として、男子だから要らないという雰囲気はなく、「『料理、俺やりたい』みたいな人がいたら結構その人が率先して」行動する男子もいたり、家庭科が得意で上手い男子に対しては、「素直に『あ、それ、綺麗ー』みたいな。『すごいね、ってか、どうやってやったの』とか」といったように、称賛の声が上がり、教えてもらうこともあるようである。男子は苦手と感じる者もいたが、「女子にも苦手そうな子はいると思うんですけど、あまり言わないというか。男子は苦手と言って助けてもらおうというのがある」というように、必ずしも男女による得手不得手ではないと考えられる。「(お米を研ぐときに、女の子の)友達が洗剤を取り出そうとしたんでそれを止めて」といった経験がある者もいた。進学校のため、男女ともに軽視していたと語りもあった。<br> 男子が家庭科を学ぶ必要性については、母親の大変さや結婚後の女性の仕事を理解するため、一人暮らしでも生きていくために必要と考えられていた。生活をする上で必要、自立のために必要と語る者が多かったが、男性が中心的に家庭の仕事を行うことを考えている者は少なかった。<br> なお、本研究はJSPS科研費26780493の助成を受けた。
著者
伊藤 葉子 鶴田 敦子 片岡 洋子 高野 俊 宮下 理恵子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.9, 2009

<B>目的</B><BR>家庭科の女子のみ履修に抗して、家庭科の男女共学の実践に取り組んだ「源流」は京都府(1963年1校開始、1974年全面共修実施)の教師達であった。本研究では、ほぼ同時代(1970年代)に長野県の高校において、同じく自主編成の教育課程として男女共学家庭科の実現を導いた元家庭科教師たち5人のライフヒストリー研究に取り組む。元家庭科教師たちのライフヒストリーから、それぞれの人となりとその活動を明らかにしながら、なぜ各自が男女共学家庭科の実現に取り組んだのか、どのように男女共学実現を果たしていったのかを考察していく。また、その授業づくりにはどのような特徴がみられるのかを検討する。<BR><B>方法</B><BR>1960-70年代に長野県において男女共学家庭科の実現に関与した元家庭科教師5名に対して、一人約2時間のインタビュー調査を実施し、スクリプトを作成し、分析・考察を行った。この方法を用いることで、教師の価値観や動機および周囲の状況に対する理解が、その教師の実践にどのような影響を及ぼしたかを探求することが可能になる。加えて、同種の集団(ここでは、男女共学に取り組んだ教師たち)に属する複数のライフヒストリーは、互いに補い合うことができることから、個人史を超えて、社会状況の中での考察を可能にするものである。<BR><B>分析・考察</B><BR> <B>1</B> 当時の家庭科教育への疑問<BR>(1) 元家庭科教師たちは、その成長過程における家庭・社会環境の複合的な影響により、精神的な自立・自律心や、批判的に思考できる力を育くんでいった。これには、戦前からの伝統的性別役割観に基づいた女性の進路・進学の閉塞性への反発や、戦中・戦後の激動を中国で過ごした際の、差別と被差別の双方をみた経験に基づく、平等への志向が根底にあった。<BR>(2) この批判的思考力が、女子だけの家庭科履修や生徒たちの生活現実から遊離した当時の家庭科の教育内容への疑問につながっていった。<BR><B>2</B> 教師たちの学び合いと授業づくり<BR>(1) 元教師たちは、自主的な学習会や地域および全県的な研究会で出会い、個々に有してきた上記の疑問を、互いの学び合いの中で、単なる疑問から授業の創造の段階へと移行させ、自主編成の指導資料を作成するまでに至った。<BR>(2) 元教師たちの授業づくりには、大きく二つの特徴がみられた。一つは、女性への道徳教育の色合いが濃い、理論を有しない非科学的な家庭科の教育内容からの脱皮と、生徒の生活現実から出発し生活に帰結する家庭科の授業の創造である。<BR>(3) 個々の元教師たちの実践を支えたのは、家庭科を学びたいという男子学生の存在と、実際に男女共学を授業のなかで進める中で感じた手応えであった。<BR><B>3</B> 元教師達の根底にある教育観等<BR>(1) 男女共学家庭科の実現は、教師は教科書に書かれている知識・技術の伝達者であるという考え方から、教師が授業の創り手であるという考え方の転換だと捉えられる。<BR>(2) 家庭科の男女共学実現のための元教師たちの活動は、戦後の民主的な家庭を目指した男女平等実現への運動という側面と、家庭科が科学的理論体系を備えた教科となるための教科論の探求という側面を持っていると考えられる。<BR>