著者
伊藤 将太郎
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.59, 2016

<b>【目的】</b><br> 「家庭科は男女ともに学ぶ教科」という認識が浸透している一方で、家庭科を教える教員、また家庭科教員を目指す学生は、未だ女性が多い。そこで、男性家庭科教員、また家庭科教員を目指す男子学生は著しく少ない傾向にある理由・要因の追求を行う。所属する研究室に同様の目的で調査された卒業研究の結果があり、これらと比較することで、家庭科教員を目指す男子学生の現状と時系列の変化を知ることができるのではないかと考えた。また、今回の調査では、男子学生と共に学んでいる女子学生との比較を行い、より多面的に男子学生の実態に迫ることを目的とする。&nbsp;<br> <b>【方法】</b><br><b> 調査1:</b>「日本教育大学協会全国家庭科部門 会員名簿2014年度版」に記載されている教員養成系48大学49校を対象とし、家庭科に関する学部・学科・コースに在籍する(していた)男子学生数の調査を往復はがきで行った。同時に、H26年当時、すでに採用予定であった男子学生数(=H27年度採用)ならびに卒業生の中で中・高家庭科教員をしている人数をそれぞれ尋ねた。&nbsp;<br><b> 調査2:</b>調査1で回答のあった大学に協力をお願いし、男子学生・女子学生、各145名 計290名を対象に実態把握と意識調査を行ったところ、計117名から回答を得た(回収率40.3%)。内容は、学生自身の学習環境や状況、学習意欲等の6つのカテゴリーに分けた設問アンケートを郵送にて行った。<br> <b>【結果および考察】</b><br> <b>調査1:</b>男子学生数は、回答のあった大学で集計するとS63年度32名(49大学)、H13年度146名(43大学)、H26年度130名(35大学)という数字であり、S63からH13の増加数に比べると、H13からH26の変化は多いとは言えなかった。また、中・高男性家庭科教員数に関しては、回答校においてH17~26年度の10年間で計45名という結果であり、合わせても年間平均約4~5人しか中・高の家庭科教員になっていないということが分かった。<br><b> 調査2:</b>①家庭科についての印象は、以前の回答結果より「内容が面白く、興味が持てる」と感じている男子学生が増加していることが分かった。中・高の家庭科の授業を受けてきたことで、家庭科の良さを感じる者の割合が多くなっている。②科目別の興味関心度は、食物・保育分野に関する関心度が男女共に高く、「被服学」「被服製作実習」「被服実験」の3科目については、いずれも女子の方が関心が高く、男子学生の方が低い。③男性の家庭科教員の必要性については、約50%が「中・高で必要である」、約40%が「分からない又はどちらともいえない」であった。「必要である」の理由は、これまでの学習経験から、教員の男女差が気になっているというものが男女共に多い傾向であった。「分からない・どちらともいえない」の理由としては、男女の軸では考えていないというものが多かった。ただし、男性教員がいれば、何かしらの効果や影響を与えるのではと期待を込めた意見も見られた。④卒業後の進路は、中・高の家庭科教員になりたいという意欲は、男子学生の方が高く、将来中・高の家庭科教員を目指している学生が70%程度見られた。家庭科教員になりたいとする男子学生の理由は、「家庭科が好きだから」が一番多く、「男性家庭科教員が少ないから」という理由も多い。男性家庭科教員を増やしていきたいという気持ちも含まれていると考えられる。⑤男性家庭科教員が少ない要因は、『男は仕事、女は家事』という性別役割分業意識がまだ根強く残っていることを挙げ、「家事=家庭科=女子」のイメージが定着していると考えている。家庭科に女性教員が多いことで、家庭科に男性というイメージがもたれにくく、女性の世界へ飛び込む抵抗感が拭えない。また、「採用数や家庭科授業時数の減少など教育界の変化」も要因の一つだと考えている者がいた。授業数が少ないことで、(高校までの男子生徒に)興味を与える機会が少なく、家庭科の印象が薄く魅力が伝えきれず、仕事として家庭科を見る視野を充分に提供できていないという指摘もあった。
著者
土屋 善和
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.60, 2017

1.本研究の目的<br /> 中央教育審議会(2016)の答申では、今後の学校教育においてアクティブ・ラーニングの視点である「対話的な学び」「主体的な学び」「深い学び」を実現できる学習の必要性が説かれ、それらの学習により「学びに向かう力・人間性等」「知識・技術」「思考力・判断力・表現力等」の3つの資質・能力の育成を目指すことが示されている。そして、「思考力」の中でも、問題解決や意思決定に関わり合理性と創造性を伴う「批判的思考」は、複雑化・多様化する社会を生きる上でも、またよりよい生活を追究するためにも不可欠であり、生活を創造する力を目指す家庭科においても育むべき資質・能力と言える。<br /> 授業の中で批判的思考を促すためには、自分とは異なる価値観に触れることや意見を吟味・検討することなどが必要となるが、単なる意見交換の場面を設定するだけでは不十分であり、物事を深く考える場面が重要となる。そして、それぞれの生徒が深く考えるためには、深く考えるべき問いとアクティブ・ラーニングでも示されている協働的かつ対話的な学びを可能とする学習活動が有効であると考えられる。上述した教育政策を反映させた次期学習指導要領が示されている中、家庭科においても、アクティブ・ラーニングの視点を取り入れた批判的思考を促す授業を検討する必要がある。<br /> 以上を踏まえ、生徒が深く考える協働の場面を設定した批判的思考を促す授業を構想し実践した。そして本研究は、授業分析をもとに深く考える協働の場面における批判的思考を促す授業の在り方を検討することを目的としている。<br />2.研究方法<br /> 授業は2017年2月下旬から3月上旬にかけて、1クラス1時間で実施した。対象は附属中学校3年生の4クラスである。<br /> 本時では、よりよい消費生活をめざして「環境に配慮した消費行動」から「よりよい生活」へのつながりを考える協働の場面を設定した。まず生徒は環境に配慮した消費行動について、衣・食・住に関連する内容で付箋に記入をした。その後、生徒はそれらの消費行動の効果や影響について模造紙上に記入し、環境に配慮した行動が最終的に「よりよい生活」に行き着くように効果や影響をつなげて考えていった。また、他の班の模造紙をみてコメントをする時間も設定した。<br />なお、本研究では、グループで作成した模造紙、学習後の振り返りなどを分析・考察し本時の効果を検討した。<br />3.結果及び考察<br /> グループで作成した模造紙から、1つの消費行動について深く掘り下げているグループや1つ1つの消費行動が「ゴミ削減」や「エネルギー削減」といった影響や効果でつながっていることを示しているグループ、消費行動から考え出された効果や影響が1つのみであまり深く掘り下げられていないグループとグループごとに傾向があることが分かった。本時における協働の場面が、生徒にとって1つ1つの消費行動がどのようなことにつながっていくのかといった効果行動の意味や影響に気づく契機となると考えられた。<br /> また振り返りをみると、生徒は身近な行動を社会的な環境問題につなげることで、自身の行動の重要性や必要性を再認識した様子がうかがえた。本時が生徒にとって普段の生活の問い直しと価値づけにも寄与したと考えられる。また、「ゴミが減るとどうなるのかとか、(ごみが減る)という意見の次の意見が大切だと思った」といった生徒の記述もみられた。消費行動を深く掘り下げて考える場面を通して生徒は、行動自体の良し悪しではなく、行動をすることによる影響や効果に目を向けて考えることの大切さに気づいたと推察された。<br />4.今後の課題<br /> 大半の生徒は自分の生活場面を想定した環境に配慮した消費行動を具体的に示すことができた。しかし一方で、環境に配慮した消費行動の意味や根拠等について深く考えられた生徒は少なかった。今後の課題は本時より得られた示唆をもとに、それぞれの生徒にとって深く考えることができる協働の場面となるための手立てと批判的思考を促す授業を検討することである。
著者
福田 豊子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集 第59回大会・2016例会
巻号頁・発行日
pp.103, 2016 (Released:2017-01-13)

「家庭科」を英語で「ホーム・エコノミクス(Home Economics)」と表す。「生活経済学」と訳すことも可能なこの教科の名称について、改めて考えたい。本論の目的は「経済学」としての「家庭科」の理念に立ち返り、その存在意義を再確認することである。 方法として、「生活経済学」の研究成果に依拠しながら、今日の日本の「経済学」のパラダイム転換を試みる。教科の新たな方向性を探ることも視野にいれたい。   「ホーム・エコノミクス」という教科名については、これまで「生活科学(Life Science)」や「人間環境学(Human Environment)」あるいは「家族と消費者の科学(Family and Consumer Science)」等の概念が、新しい名称として候補に挙がってきた。 そもそも「経済」という言葉は「経世済民(世をおさめ民を救う)」からきたものだ。お金の流れだけでなく、人々の生活がスムーズに流れるような社会の仕組みを表現している。その本来の意味からすれば、今日の日本で主流の「経済学」は、金融に偏重した狭義の「経済」に傾倒したものであるといえよう。本来の「経済」にはアンペイド・ワークも含まれている。また、貨幣が介在しない交換契約や贈与契約も立派な経済活動といえるが、これらはGDPには計上されにくい。 家庭科の教科書でさえ「生産領域としてのワークと消費領域としてのライフ」を明記しており、家庭が生産の場でもあることに気づきにくくなっている。家庭内の家事・育児労働はGDPの3分の1ともいわれる。このアンペイド・ワークが産業や社会全体を支えている。家庭における生産活動がシャドウ・ワークとして隠れたままでは、人間の生きる営みの半分しか見ていないことになる。 貨幣の役割には「価値尺度」「交換手段」「貯蓄」などあるが、現代の日本は、価値を測る尺度が貨幣しかない社会といえるだろう。それ以外にどんな尺度があるか、例えばOECDはBLI(Better Life Index)をよりよい生活の尺度として利用している。 また、エントロピーという「無秩序の度合い」を表す概念も価値を測る尺度として使用可能である。生きる営みはエントロピーを低める活動の維持である。生き物にとっては、エントロピーを低める活動に価値がある。エントロピーを低める事物に価値があり、高める事物に価値がないと判断できる。貨幣を補足するものとしてエントロピー概念を利用するなら、戦争は武器を製造・輸出する国や企業が儲かるが、戦地の建物や人々の生活を破壊するのでエントロピーを高める行為である。原発は、経費が安くて価値があるように思えるが、廃棄物がエントロピーを高めるのでそうではないかもしれない。貨幣の金額だけで価値判断をしないで、エントロピーを高めるか低めるか、ということを補足的に価値尺度として使用することで、より厳密にその事物の価値を測ることができるのではないか。 経済のグローバリゼーションは、貧富の格差を拡大している。経済大国は消費者として大きな責任をもつ。狭義の経済学で考えると、戦争や核エネルギーは得な選択と思えるが、広義の経済学で考えると、地球全体のエントロピーを高めるので損な選択となる。この広義の経済学を浸透させるには、ホーム・エコノミクスがふさわしい。 持続可能な社会をつくるための教育ESD(Education for Sustainable Development)は、家庭科の使命とも繋がっている。地球の訴える危機感を子どもたちに伝えていかねばならない。 家庭科の歴史には、時代の政治が大きく反映している。「道徳」に寄生してでも生き残っていくような戦略が必要である。その一つが新たな経済学の提案かもしれない。ホーム・エコノミクスからライフ・エコノミクスへ、人間主体の経済学へと進化を遂げることも可能である。
著者
畦 五月
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.59, 2016

<b></b><b>目的 </b>調理実習は小中高校の家庭のカリキュラム内容の一つに位置付けられ、小学校学習指導要領ではその手法としてグループ学習が明記されている。本報告では、調理実習を指導者提示の課題に対して、個々のグループがそれに適した献立を作成し実習する問題解決的な手法で行った。その結果としてグループでの協働の営みが、多様な人と仕事をするために必要な社会人基礎力の育成へ如何なる影響を及ぼすかを検討した。 <b>方法</b> 広島県内B大学在籍の学生で、「子どもの食と栄養Ⅰ」(講義)を終了し、「子どもの食と栄養Ⅱ」(実習)受講者を対象とした。この授業は調理実習を主体とする授業である。実習は幼児のための献立作成とその実習を目的としているが、グループで献立を作成し食材を購入し目的に適合した調理をするという一連の作業を学修者自身が企画・運営することも指導者として目標とした。授業1回目と授業終了時にアンケートを配布して、その場で記入し回収する方式を採用し、その回答の提出は自由で、回答内容は一切成績には影響しないことを口頭と文面双方で伝えた。 調査内容は①居住形態 ②実習前後の料理頻度と料理への関心 ③実習課題に対する試行錯誤の取り組みについて経済産業省による『社会人基礎力』(『アクション』『チームワーク』『考え抜く力』)の概念を基に作成した19項目、グループ活動での自己認識や関係性の7項目などを4段階で評価してもらった。分析にはSPSSを用い、クロス集計後カイ二乗検定を、分散分析後多重比較を行った。 <b>結果 </b>回答率は98%、その属性は自宅生43.5%、単独56.5%、男性4.2%、女性95.8%であった。居住形態と実習前の料理頻度(<i>p</i><0.01)は有意であったが、実習後には居住形態と料理頻度は有意ではなくなった。しかし実習への意気込みと食への関心度(双方とも実習後評価)は有意(<i>p</i><0.01)となり、実習の教育効果が認められた。既習の家庭科及び家庭での知識と実習への役立ち度は、共に平均点3.26を示した。 調理実習に問題解決的な学修を導入した結果、学修に対する意気込みと意欲の向上が図られること、さらにこれらの要因には仲間の存在が有意に関連することを畦(2013)は明らかにした。そこで、本報告ではグループ活動の学修効果をさらに検証するため、『社会人基礎力』の3能力の育成状況を詳細に検討した。 『アクション』『シンキング』『チームワーク』の3能力を構成する12の下位能力のうち、『アクション』の中の「働きかけ力」が最も低い2.96の平均を示した。逆に高い能力は『チームワーク』の「柔軟性」の3.43、『アクション』の「主体性」の3.31であり、全体平均は3.19であった。分散分析による3能力内での群内有意差が確認された(順に<i>p</i><0.01、 <i>p</i><0.05 、<i>p</i><0.05)。さらにその中でも特に『アクション』の「主体性」と「働きかけ力」(<i>p</i><0.05)、『シンキング』の「課題発見」と「計画力」(<i>p</i><0.05)、『チームワーク』の「発信力」と「柔軟性」(<i>p</i><0.05)が有意であった。対象は、主体性・柔軟性を持ち課題発見力を発揮しながら学修したが、計画力が不足し、相手への働きかけ力や、意見の発信力が低かったことが裏付けられた。 次にグループ内での自己認識や関係性を確認する7項目と『社会人基礎力』との関連を調べた。特に自己認識を問う項目の「仲間から期待される存在」「仲間の中で役割を担う」「仲間に対して何かできる」に対して、『アクション』『シンキング』『チームワーク』の11の下位能力は有意性を示した。一方で、関係性評価である「仲間とのつながりが深まる」「責任の公平性が保たれる」「グループで貢献度した」と『社会人基礎力』の下位能力間では有意な下位能力が極めて少なく、特に『シンキング』とは全く関連性はなかった。以上から、調理実習でのグループ学修では『シンキング』に関連する活動を意識し、学修者の変容に関与するような視点を学修内容に導入設定する必要があると考えられた。
著者
長澤 由喜子 渡瀬 典子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, 2014

<b>目的</b>&nbsp; &nbsp;平成19年改正学校教育法に規定され,現学習指導要領で育成が求められる「思考力・判断力・表現力等の活用する力」は,法的な縛りをもって登場していることから,学習指導要領の次期改訂においても現行より踏み込んだかたちで提示されることが想定される。家庭科においては評価規準の設定例においても,「思考力・判断力・表現力等の活用する力」として,学習内容のまとまりABCDの指導事項ごとに育成したい力が具体的に示されているわけではない。このことが,基礎的・基本的な学びが教科目標の実践力につながりにくい状況に少なからずかかわっていると考えられる。<br>&nbsp; &nbsp;そこで本研究では,「思考力・判断力・表現力等の活用する力」に着目し,授業実践を通して学習内容のまとまりABCDごとの活用力の具体化について検討することを目的とする。<br><b>方法</b>&nbsp; &nbsp;岩手大学教育学部附属小学校における平成25年度家庭科年間指導計画に基づく題材の中で,研究目的に即して適切な分析が可能な学習題材を検討した結果,「C快適な衣服と住まい」は生活経験を活かしやすく,「D身近な消費生活と環境」との関連も図りやすいことから,Cの題材を取り上げることとした。具体的には,C(2)イ「季節に変化に合わせた生活の大切さが分かり,快適な住まい方を工夫できること」に係る住生活題材を実践対象とした。自然の力を活用する力の見取りには夏季・冬季ともに「ダンボールルームの計画」の学習シートを用いた。夏季・冬季共通に分析対象とした児童は6年生の28名(男子13名,女子15名),実践期日は夏季2013年5月,冬季11月~12月である。 <br><b>結果</b>&nbsp; &nbsp;今回改訂の学習指導要領において住生活分野の対象題材で活用力として問われているのは,「日光や風などの自然の力をいかに活かして住まい方を工夫できるか」である。夏季・冬季それぞれの学習シートに書き込まれた表現から読み取った快適エレメントに係る分析結果及び活用力に係る考察は以下に要約される。 <br>(1)活用力をみる上で前提となる基礎的・基本的な知識・理解の実現状況についてみると,夏季の場合は28名中11名,冬季の場合は16名が基礎的・基本的な知識・理解が十分とは言えなかった。<br>(2)夏季で基礎基本が十分ではなかった11名について冬季における位置づけを検討すると, 11名中,冬季にも同じく基礎的・基本的な知識・理解が十分ではない判断された児童は8名であった。<br>(3)夏季に日射しのコントロールの記述がない児童は,冬季においても日射しの暖かさの利用に目が向いていなかった。<br>(4)夏季に風通しの記述がなかった7名のうち5名は,冬季においても換気に係る記述が見られず,気泡断熱シートや目貼りテープ等の隙間風防止の手段を例外なく用いていた。<br>(5)実践題材の学習シートから活用力として読み取らなければならないのは,「課題解決的な要素として何を対象としているか」及び「解決策をどうデザインしているか」であり,「基礎基本の要素に係るデザイン」をいかに見取るか,その具体的な視点を活用力として明示する必要がある。<br>(6) &nbsp;上記(1)(2)に示すように,活用の前段としての基礎基本が整わない状況で,課題解決としての家庭実践に実践題材における活用力を求めることができないことから,「ダンボールルーム」の学習シートを用いた効果的な活用力の育成について,上記(3)(4)(5)の結果を踏まえ,見直しの視点を示した。 <br>&nbsp; &nbsp; 以上,今回は「快適な衣服と住まい」の住生活題材に着目したが,内容のまとまりABCDそれぞれに検討が必要である。今後,ABCDそれぞれの実践課題を踏まえた上で,さらに分野ごとに効果的な活用力の育成について実践的な検討を重ねたい。
著者
奥谷 めぐみ 鈴木 真由子 大本 久美子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.59, 2016

<b>【目的】</b><b></b> <br>&nbsp;&nbsp;発表者は日本家庭科教育学会第58回において、情報社会における生活課題に焦点を当てた中学校家庭科の授業開発・実践の成果を報告した。デジタルコンテンツの売買に焦点を当て、実物との契約の仕組みの違いを扱うことで、消費者としての自覚、権利意識の育成を図ることができた。 しかし、生徒の生活経験や家庭環境によっては、デジタルコンテンツを身近な商品として捉えられず、一部の生徒にとって理解が困難な題材となってしまったことが課題として挙げられた。<br> &nbsp;&nbsp;そこで、デジタルコンテンツ購入のプロセスを動画化することが有効であると考えた。本研究では、ヴァーチャルな商品との関わり方を考え、市場における事業者側の意図について理解を促す動画教材の開発・評価を目的とする。 <br> <br> <b>【方法】</b><b><br></b> &nbsp;&nbsp;K中学校の中学生第2学年118名を対象に、全2時間分の授業実践を行った。1時間目を平成27年11月24日(火)に、2時間目を12月9日(水)、12月15日(火)の2日間に分けて実施した。<br>&nbsp;&nbsp; 分析対象は授業前アンケート(平成27年11月)と、授業時のワークシート、グループワークの結果、授業後アンケート(平成28年2月)である。 授業のワークシートからは、動画から読み取れることや課題を話し合った結果を、事前と事後からは普段の消費行動と、デジタルコンテンツへの意識についての変容(回収数109名/回収率92.4%)について分析することとした。結果分析は、Microsoft Excel2013及びIBM SPSS statistic22.0を用い、アンケート及びワークシートの記述内容を分析した。<br> <br> <b>【結果】</b><b><br> </b>(1)授業前後の消費行動とデジタルコンテンツに対する意識の変化<br> &nbsp;&nbsp;デジタルコンテンツに対する意識と日頃の消費行動に関する9項目の質問を設定し、「全くそう思わない~とてもそう思う」の5段階で回答を求めた。授業前後において同一の質問を行い、t検定によって平均値を比較した。うち6項目に有意差が見られた。特に、顕著(p<0.001)に差が見られたのは「商品やサービスを購入する時、作っている人のことを考える」や「商品やサービスについての不安や疑問があった時、企業や消費生活センターに相談することができる」といった項目であることから、事業者と消費者との関わりに視野を広げ、事業者側の意図を知る必要性を認識できたと考える。<br>&nbsp;&nbsp;また、「デジタルコンテンツにお金をかけることは良くないことだ」も肯定的な方向で変容があった。時間的、経済的に適切な情報技術との付き合い方を伝えるという点では、デジタルコンテンツ=悪としない、設問や内容に工夫が必要であったと考える。 <br> <br> (2)動画教材から読み取られた特色と授業の評価<br>&nbsp;&nbsp; ワークシートには、中学生に高額請求を受けた事例を挙げ、事例のみを聞いた状態でのトラブルの原因と、動画を見てから新たに考えた原因の2つの記述を求めた。事例のみの原因は「友人との競争意識」、「現金を使っている感覚がなかったから」等、消費者側の経験や感情に則した記述がみられた。動画からは「規約や確認画面、ペアレンタルコントロールの確認」や「ランクアップやゲームオーバー等プレイを続けさせたくなる仕組み」に関する記述がみられた。利用者側の問題だけではなく、サービスそのものにお金を掛けたくなる仕組みがあることに気付いていた。<br>&nbsp;&nbsp; また、授業での説明は分かりやすいものだった88.1%(N=109)、動画は見やすいものだった89.8%(N=108)、動画は自分の生活に身近なものだった85.1%(N=108)と、授業理解に関する肯定的な評価は概ね8割を超え、動画教材が理解を促す一助になったことが伺える。 <br>&nbsp; &nbsp;今後は、動画のポイント、問いかけ、解説等を加え、どのような教師でも利用でき、生徒の理解を促す仕掛けを持った動画教材に改善する必要がある。<br>&nbsp;&nbsp;本研究は、JSPS科研費26381267の助成を受けたものである。&nbsp;
著者
河村 美穂 山地 瑞紀 松岡 文子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集 第57回大会・2014例会
巻号頁・発行日
pp.59, 2014 (Released:2015-01-10)

研究目的 家庭科の時間が減少するなかにあって、調理実習では調理技能の習得は難しいと考えられるようになっている。本研究は限られた調理実習でも適切な指導法により確実に包丁を使う技能を習得することを可能するための方策を考えたい。なぜなら包丁を使う技能は生徒にとって料理ができると実感しやすい技能であり、その後の食生活を主体的に営むための基盤となると考えるからである。限られた時間の中で効果的に包丁を使う技能を習得する方法を示すことができれば、その後の生活で有用となるためにどのような学びが必要なのかが明らかになり、調理実習という家庭科固有の授業の意義もより一層明確にできると考えた。 そこで、本研究では中学校の家庭科授業において2回のりんごの皮むき調査を実施し、中学生の技能実態を測定し、技能の習得に関わる要因を探究することを目的とする。具体的には、食生活領域の授業の一環として冬季休業前後に2回の包丁指導(兼調査)を行い冬季休業中の課題も含めて生徒の学びの実態を多面的に検討する。研究方法 公立中学校1年生60名(男子33名女子27名)を対象として、食生活領域の学習に1.包丁の使い方(リンゴの皮むき・技能調査事前)2.冬季休業中の皮むき・料理課題 3.フルーツポンチをつくる実習(含リンゴの皮むき・技能調査事後)を組み込み実施した。技能調査は各班にビデオカメラを固定して授業時間内に録画し、この録画記録をデータとしてA親指の位置、B手の動き、C皮のむき具合についてそれぞれ3段階の評価基準を設けて評価した。さらにこの授業の前後で家事の参加度、料理の頻度、調理技能に対する認知について質問紙調査を行った。本授業の授業記録及び冬季休業中の課題記録からも可能な範囲でデータを収集した。データ収集に際しては、研究目的とともに事前に生徒に説明し了承を得て行った。実施時期は、2013年12月~2014年1月である。結果と考察収集したデータの分析結果のうち次の3点を示す。1包丁技能に対する認知(質問紙調査)得点:調理技能のうち包丁技能の認知得点だけは有意に得点が上がった。2技能評価(録画記録)得点:事前事後で有意な差はなかった。3むいたリンゴの廃棄率:事前事後で有意な差はなかった。  そこで、事後の技能評価得点(9点満点)をもとに日常生活で有用な包丁技能の習得という観点から対象者を4群に分けて習得の実態を詳細に検討した。A群:包丁技能が十分と考えられる群(9点/9点満点)B群:ほぼ大丈夫だがもう少しの群(8~7点/9点満点)C群:不十分な技能である群1(6点/9点満点・前後差無)D群:不十分な技能である群2((6~0点/9点満点・前後差有)以上の群ごとに比較すると廃棄率は事前事後とも大きな変化は見られず、包丁技能に対する認知はD群以外の3群で事後に有意に高い得点を示した。  ここで特徴的なD群は、技能に対する認知得点が事前で高く事後に変化がなかったが、実際には事前から事後へと技能評価得点3項目すべてにおいて有意に低下した生徒により構成されている。この得点の低下、つまり下手になるという状態は録画記録を分析した結果、むく手の親指を刃先にのせず刃をスムーズに動かせないという現象として認められた。  ちょっとやってみて器用にできたと思っても、それが継続的に身についた技能となるためには、自分の技能の状態を正しく認識することがカギとなる。偶然できたことを評価するだけではなくどのようにしてできたのかを科学的に理解するということが大切なのではないだろうか。
著者
鄭 暁静 大竹 美登利
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, 2013

1.目的 今日、家族・家庭生活には様々な課題があり、日本と韓国はこれらの状況が類似している。家庭科教育はこうした家族・家庭生活に関する課題を主に扱っており、どのような内容を取り上げどのように学ばせるかは、教師の家族・家庭生活意識に影響されることも多い。また、その授業内容や方法によって生徒の学びは相違し、生徒の家族・家庭生活意識に与える影響は大きいと考えられる。そこで、本研究においては、日本と韓国の家庭科教師を対象に、教師の家族・家庭生活意識及び授業実態を調査し、日本と韓国の家族・家庭生活領域の教育の実態の違いを明らかにすることを目的とした。2.研究方法 (1)調査方法:日本の普通科高等学校(2000校)と韓国の一般系高等学校(1500校)の家庭科教師宛にアンケート用紙を郵送し、返送してもらった。 (2)調査期間:韓国は2013年3月上旬発送、日本は5月上旬発送し、それぞれ3週間後を締め切りとして返送してもらった。 (3)調査対象:有効回収数、韓国209名、日本570名であった。 (4)調査内容:学校の雰囲気、男女平等意識、結婚・家族生活意識及び授業の内容など。3.結果 (1)学校の雰囲気は家庭科教師自身の男女平等意識や家庭生活観に影響を与えるものと考えられる。そこで、学校の雰囲気について「周囲と違う意見を言いにくい雰囲気がある」など、9つの項目について尋ね、「全くそう思わない」(1点)、「そう思わない」(2点)、「そう思う」(3点)、「とてもそう思う」(4点)の4選択肢の中から1つを選ばせ、4段階評定尺度によって平均値を出し得点化した。その結果、「教員間の意思疎通がうまく取れている」、「教員会議などで活発な議論が交わされている」、「男性教員の方が女性教員より管理職から信頼されている」の項目においては韓国の方が得点が高く、日韓の間に1%水準で有意な差があった。一方、「新しいことをはじめにくい雰囲気がある」の項目は日本の方が得点が高く、日韓の間に1%水準で有意差があった。 (2)男女平等意識をはかるため、「能力や適性は男女で異なる」など、11の項目について、4段階評定尺度によって得点化した。その結果、「女性の校長、教頭を増やした方がよい」という項目において、日本の方が得点が高く、日韓の間に1%水準で有意差があった。 (3)結婚生活に求めるものの重要度について「精神的な親密さ」など、10の項目について尋ね、4段階評定尺度によって得点化した。その結果、「経済的な安定」以外の全ての項目において韓国の方が得点が高く、中でも「性的満足度」、「子どもを生み育てること」、「趣味が同じであること」、「社会的な地位を築くこと」、「同じ人生観、価値観を持っていること」、「親や周囲の期待に応えられること」の項目で1%水準で有意差があった。 (4)家庭科の授業内容の中で、現在、重点をおいて教えている内容について、複数回答で尋ねた。その結果、韓国は「配偶者の選択と結婚」が75.0%、「妊娠と出産」が63.0%、「家族の関係と家庭の機能」が54.2%など、結婚・家族に関しての内容が多く扱われていた。一方、日本は「食事と健康」が91.7%と突出して多かった。また、今後、重点をおいて教えたい内容について、複数回答で訪ねた結果、日本と韓国両国とも1位は現在と変わらないが、韓国は「高齢者・障害者の問題」、「共生社会と福祉・社会的支援」が、日本は「職業・キャリア教育」、「生活設計」が新たに注目されていた。
著者
楢府 暢子 阿部 睦子 亀井 佑子 志村 結美 仙波 圭子 仲田 郁子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.59, 2016

【研究目的】<br>&nbsp;&nbsp; グローバル化が進展する中、世界の人々と共に生活していくためには、日本や地域の伝統、文化についての理解を深め、他国の文化も理解し、共に尊重する態度を身に付けることが重要である。中央教育審議会答申(2008)においては、家庭科の関連事項として、「衣食住にわたって伝統的な生活文化に親しみ、その継承と発展を図る観点から、その学習活動の充実が求められる」と明記された。&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp; <br>&nbsp;&nbsp; 本研究は、家庭科教育における日本の伝統的な「生活文化」に関する教育内容・教育方法について現状を検討し、小・中・高等学校の授業を創造し、実践し、検証して授業提案を行っていくことを目的とする。本研究では、「人間がよりよい生活を営むために工夫し、努力してきたもの」を「生活文化」と考え、「文化」「歴史」「伝統」「地域」などをキーワードとし、主に衣食住に関する事項を取り上げている。<br>&nbsp;&nbsp; 本報では、第58回大会、平成27年度例会に引き続き、全国の国立大学法人附属小・中・高等学校の教員対象調査から生活文化に関連する授業分析の報告をする。<br><br>&nbsp;【研究方法】 <br>&nbsp;&nbsp; 全国の国立大学法人附属小学校・中学校・高等学校の家庭科担当教員に2014年3月に「生活文化」に関する授業調査を行った。結果、小31校、中29校、高9校、計69校から回答を得た。その中の先進的な授業実践から一事例を取り上げ、報告と分析を行う。具体的には、国立大学法人A中等教育学校の学校設定科目である6年生(高校3年生)対象の選択科目「生活文化」の実践内容と2001年度受講生25名と2015年度受講生12名の授業後の感想の分析等である。<br><br>【結果及び考察】<br>&nbsp; &nbsp;国立大学法人A中等教育学校では、平成10年公示の学習指導要領で生活文化の伝承と創造が取り入れられたことを受けて、6年生(高校3年生)の選択授業に「生活文化」を設置することとした。科目設置のねらいは、伝統行事や社会的慣習の意味や内容を体験的に理解させるとともにその背景となる先人の知恵や考え方を知ることによって、生徒自身が生活文化の重要性に気付き、それらを現代の生活の中で自分たちなりの工夫をしながら継承していくことである。<br>&nbsp; 2単位の通年のこの授業では、実習と講義を隔週で行った。調理実習では、季節の食材や行事に関連したものを取り上げ、それに関連する講義も併せて行った。具体的には、草餅、梅干し、おはぎ、おせち料理、クリスマス料理などである。実習内容は、日本だけでなく、海外の行事や慣習も扱った。調理実習だけでなく、手紙の書き方、冠婚葬祭のマナーなど日常生活におけるしきたり、心遣いについても扱った。調理以外に水引き、祝儀袋、しつらえなど日常生活に見られる伝統技術の実習も行った。<br>1年間の授業後の生徒の感想からは、「日本の生活文化について正しく理解していなかったことがわかった」や「常識がないことに気づいた」など自分自身に対しての気づきが多く認められた。また、各授業内容について、「ためになった」、「楽しかった」など肯定的な評価がほとんどであった。この授業全般に対して、「生活に役立つ、日本人として知っておくべきこと」など、必要性を認めていた。<br>&nbsp;&nbsp; 今後の課題は、今までの調査等を踏まえ、A中等教育学校を含めた具体的な授業事例の分析から、種々の条件の中で実施できる授業提案につなげていくことである。また、国立大学法人学校授業調査において、どの校種でも生活文化を学ぶことで培える力として「自分自身の生活課題に気づく」を挙げる教師が半数を超えており、生活課題の気づきに焦点を当てた授業内容の検討を合わせて行いたい。
著者
倉元 綾子 高橋 桂子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集 第56回大会・2013例会
巻号頁・発行日
pp.58, 2013 (Released:2014-01-25)

【目的】家庭科は生活課題を取り扱うことから,問題解決能力(現実の領域横断的な現状に直面した場合に,認知プロセスを用いて,問題に対処し,解決することができる能力。問題解決の道筋が瞬時には明白でなく,応用可能と思われるリテラシー領域あるいはカリキュラム領域が数学,科学,または読解のうちの単一の領域だけには存在していない。PISA)の育成に大きな役割を果たすことが従来から指摘されてきた。また,平成20年度学習指導要領改訂では家庭科に「生活の課題と実践」が加わったことから,問題解決型の授業がますます重要視されてきている。本報告では,韓国・家庭科における実践的推論プロセスにもとづく授業の導入について明らかにする。【方法】ユ・テミョン,イ・スヒ著『実践的問題を中心とする家庭科の授業-理論と実践』(2010年,ブックコリア)および韓国教育課程に関する文献資料などを分析した。【結果】(1)韓国の家庭科では,2007年の教育課程改正以後,問題解決型学習,プロジェクト学習,実習中心学習,特に実践的推論プロセスの本格的導入が進められている。(2)『実践的問題を中心とする家庭科の授業-理論と実践』は,新教育課程に向けて,プログラム開発・実行・評価など家庭科教員の教授能力を高めることを目的としている。(3)同書は,第1部 実践的問題を中心とする家庭科の授業の理解,第2部 実践的問題を中心とする家庭科の授業の設計,第3部 実践的問題を中心とする家庭科の授業の実際から構成されている。(4)第2部 実践的問題を中心とする家庭科の授業の設計は全5章から構成されている。授業の中心的観点の明確化,実践的問題の開発,シナリオ製作,授業における質問の開発,評価のための質問項目の開発などを具体的に扱っている。実際に授業を開発し実施するうえで訓練を必要とする部分についても多様な事例を用いて具体的に説明している。(5)第2部の各章(節)は以下のとおりである。第1章 授業の観点(教育プロセスを重視した授業設計,教師の授業観点,実践的問題を中心とする授業と能力形成を中心とする授業の事例),第2章 実践的問題開発(教育プロセスを基礎とする実践的問題の構成,子どもの個人・家族・家庭生活の実態を基礎とする実践的問題の構成,米国の実践的問題を中心とする教育プロセス),第3章 実践的問題のシナリオ製作(直接製作した実践的問題のシナリオ,新聞資料を活用した実践的問題のシナリオ,写真資料を活用した実践的問題のシナリオ,映像資料を活用した実践的問題のシナリオ),第4章 質問の開発(三つの行動体系と関連した質問,推論段階にともなう質問例,実際の授業での質問の構成例),第5章 評価のための質問項目の開発(評価における二者択一的観点,二者択一的評価ツール)。(6)同書第3部 実践的問題中心家庭科授業の実際は2つの章から構成されている。第2部を基礎にして,実践的問題を中心とする授業の中心的要素が授業過程全体を通してどのような役割を果たしているのか,授業を作る過程を通じて実践的問題を中心とする授業を理解するようにしている。さらに,実際に授業を開発し実施する過程の理解を助けるために事例を通して具体的に説明している。(7)第3部の各章(節)は以下のとおりである。第1章 実践的問題を中心とする授業のプロセス(実践的問題を中心とする授業の準備,実践的問題を中心とする授業の流れ),第2章 実践的問題を中心とする授業の開発と実施(授業の観点,実践的問題の開発,実践的問題を中心とする授業の実施)。(8)『実践的問題を中心とする家庭科の授業-理論と実践』の実践編は豊富な事例と具体的な説明を用いて,実践的推論プロセスにもとづく授業に取り組むことができるようにしている。
著者
西島 真美 吉原 崇恵 松村 千有紀
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集 第50回大会・2007例会
巻号頁・発行日
pp.64, 2007 (Released:2008-01-08)

【目的】 高度な情報・消費社会を背景に、現代の子ども達は幼い頃から、たくさんの物から欲しいものを選べば手に入る便利で快適な生活を送っている。これからの家庭科教育には、単なる物の購入に関する知識や決定だけでなく、主体的に生きる決定をも含む意思決定能力の育成が期待されている。昨年は、より適切な意思決定をするための方法、「意思決定プロセス」を生徒に分かりやすく行わせるワークシートを提案した。そして今年は、日常の授業の中で意思決定プロセスを導入した実践を行った。意思決定の際、一人ひとりの価値観や資源などが影響するため、決定までのプロセスが最も重要である。今年の研究では、より適切な意思決定をするための意思決定プロセスを1.解決すべき問題をはっきりさせる。2.問題解決に必要な全ての事実を集める。3.解決方法を思いつくだけあげる。4.起こりうる結果や成り行きを考える。5.意思決定する。6.決定を実行する。7.結果を評価・判定する。の7つの段階に整理した。この意思決定プロセスを、TPOに応じた実践的な意思決定能力として生徒に身につけさせるためには、生徒のもつ価値項目や資源を育成することが求められる。今年の研究では、実践的意思決定能力育成のために6、7、の段階を充実させること、そのことによる_丸1_生徒同士の関わり合い_丸2_繰り返し行わせることの有効性を明らかにする。さらに、意思決定プロセスを身につけることによる生徒の学びの可能性についての一考察とする。 【方法】(1)昨年度の実践についてまとめ、新たに生徒の感想を分析することで、本研究の課題を明らかにした。(2)本年度の授業実践内容を記録し、生徒の価値項目の変化における全体の概況を分析した。研究対象は、三島市立Y中学校の2年1組(2006年11月10日~12月13日)の、食生活に関する授業である。特に、お弁当作りの実践における意思決定プロセスを追跡した。毎回のワークシートへの記述を分析の資料とした。(3)生徒の学びの過程を個人カルテとして作成した。そして価値項目の変化の過程が似ている生徒をグループ化し、それぞれの学びの特徴や課題について考察した。(4)全単元の終了後にアンケートを実施した。そして生徒の学びの可能性と今後の課題について考察した。 【結果と考察】 お弁当作りの意思決定プロセスは、授業での実践1回と、家での実践2回の計3回である。全体の概要としては、生徒達は3回の実践を追うごとに新しい価値に気づき、価値意識を広げることができた反面、価値項目がお弁当の質に関する価値である健康や安全へと集中した傾向があった。さらに本研究の課題に対しては以下のような考察をすることができた。1)実践の中で、ほとんどの生徒が友達のアドバイスを参考にしており、栄養バランスをよくするために品数を増やしたり、添加物の摂取を控えるためにおかずを変更したりする姿が多く見られた。価値項目の変化とも照らし合わせ、生徒同士の関わりは、ア.自分の決定に対する批判的思考を育て、意思決定の再検討を助ける。イ.新しい価値項目への気づきを助け、価値項目を増やす事ができる。という二点から有効な学習過程であるということが言える。2)繰り返しの実践の中で、生徒達はバランスの整ったお弁当を作るようになったり、時間のないときには工夫して作ることができるようになっている。同時に、多くの生徒は、価値項目を量的・質的に変化させていることがわかった。このことから、ア.毎回の反省・イ.友達のアドバイス・ウ.授業などで身につけた知識や技能を次回の意思決定に生かす・エ.価値意識の定着・オ.自覚しその必要性に気づく必要性に気づく・カ.知識や技能の向上という6点から、有効であったと言える。3)多くの生徒は、意思決定プロセスの考え方の日常生活での生かし方を具体的に考えることができていた。同時に、時間やお金といった身近な資源に気づき、その必要性を自覚して主体的に学び生活する態度に広がる可能性を見ることができた。
著者
長山 知由理
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, 2012

1.序論 最初に循環器系として,神経・血管カップリングを提案したい1).神経・血管カップリングによって,循環器系から神経系を推定できる.心臓の機能を計測する方法として,ECGなどを挙げられる.肺の機能である心拍数についても,成人した健常者では目安値があるため疾病の診断などにおいて活用されている.このような心臓機能や肺機能などの循環器系は,神経系と連動していて神経パルスとECGや心拍数は同期している.神経・血管カップリングはガウス関数であり,ニューロンの活動は正規分布をしている. 神経により動くものには視覚系や聴覚系の他に,神経パルスにより行動になるので歩行機能を良く結び付ける.脊髄には,CPG(Central Pattern Generator)という生体を制御する仕組みがある.このことによって,身体全体のバランスを維持するように歩行することができる. 2.目的 神経・血管カップリングによって正規分布を描いた知覚系・運動系の成果から,脳システムに関する家庭科について検討する.このようなニューロンの活動について利用することで,生徒に情報教育に関する深い知識・理解を与えることを目指したい.   3.方法 中学校の生徒116人に対して,アンケート調査を実施することになった.生徒には,インフォームド・コンセントを実施した.質問項目は,a.衣生活のこと,b.食生活のこと,c.住生活のこと,d.消費生活のこと,e.家族のことに分類した各およそ20問の質問用紙に5段階評価で答えさせることをした.アンケート調査の結果は,各段階の人数をカウントした後にパーセント表示した.   4.結果 オレンジ色には女性が似合うのだと回答した生徒が多く見られて,既にあるジェンダーの研究とほぼ同じような結果が得られた.このことから,本研究で実施したアンケート調査は参考になる程度のサンプル数であったのだと言える.その他にも睡眠を促す色とされている緑色には,夏らしいイメージがあることが統計的に分かった. 生徒は環境,福祉,国際,安全,情報のテーマ中では,『安全』に対する興味・関心が最も高い結果であった.また別の項目では,生活に欠かせないものとして衣・食・住と水道・電気・ガスを挙げる生徒が目立った.このように『情報』や電話とインターネットに関しては,なくても困らない生徒が目立った結果であり,教育的問題を感じられた.   5.考察 水道・電気・ガスなどの住宅設備には生徒も関心を持っているようなので,是非とも情報教育の方針を取り入れたいものだ.水道・電気・ガスを最も利用するキッチンの設計では,関節可動域への配慮を欠かせないだろう2).関節可動域とは身体の動作域のことで,脳システムから推定される神経パルスなどで評価される.人体採寸などの実験・実習は,家庭科教育全般に関する実践の際に取り入れたいものだ. またインターネットによる消費電力の管理などの最新技術によって,日常生活の快適詩・利便性は拡がる.省エネ(節電・節水)は,生活に欠かせないものである水道・電気・ガスについて環境課題と関連させて指導できる可能性があるように思う.家庭科で電話やインターネットについて環境問題の観点から指導することで,アンケート調査の結果を改善していきたい.   6.結論 電話やインターネットについて,生活に不可欠でないのだと感じている生徒が目立ったことを受けて,改善させるための授業計画を練った.神経・血管カップリングの成果から,脳システムを取り入れることでペースメーカーへの理解を深められる.更に電磁波に関する課題を知らせた上で,調査結果から躍度によるキッチン設計について授業実践した.以上のことから,単なる興味を実生活で実現するために,家庭科に情報教育という方向性を与えられた.   文献 1)Buxton RB et al. Neuroimage 2004. Vol. 23, pp. 220 – pp. 233 2)AIST 人体寸法・形状データベース
著者
萬谷 恵三子 佐桑 あずさ
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集 第56回大会・2013例会
巻号頁・発行日
pp.44, 2013 (Released:2014-01-25)

【研究目的】 東日本大震災後、中学校段階における防災教育は、「地域の過去の災害や他の地域の災害例から危険を理解し、災害への日頃の備えや的確な避難行動ができるようにすること」、「学校、地域の防災や災害時のボランティア活動の大切さについて理解を深めるようにする」という方針が文部科学省により示された。中学生は災害時に活動の担い手となる事が期待できるが、防災という視点で有益となる地域情報は日常生活の中では得にくい状況であると考える。 そこで本研究では、災害時に中学生が地域で活動できる具体的な内容とそのために必要な地域情報を理解するための授業計画・実践を行い、防災力を育む事を主眼においた中学校家庭科の授業開発を目的とする。【調査方法】(1)自宅から防災拠点校までの避難ルート、安全または危険な箇所、災害時に必要な人的資源の情報を1つにまとめた地域防災マップを作成した。授業は2012年12月から2013年の1月の期間に、横浜市内の中学校2年生130名を対象に行った。(2)家庭、学校、地域における防災対策や意識についてアンケート調査を実施した。また授業前と授業後で防災チェックシートに記入させ、授業評価を行った。【調査結果】(1)防災意識と対策の実態 家庭内で食糧や衣料品の備蓄や家具の転倒防止対策は50%以上が「している」と回答しており災害に備えている事が分かった。また家庭で避難方法・連絡の取り方について話しているかについては「はい」と「いいえ」が50%の同率であった。学校での防災教育で具体的に学びたい内容としては「災害時にとるべき行動」「非常食」などの被災後の対応や生活に関する事が多く、次いで「地域で起こりやすい災害」「地域の安全・危険な場所」など身近な場所の実態に関する内容となった。地域で発生しそうな災害については「家の倒壊」が最も多く、次いで「地すべり」「がけ崩れ」の順に多かった。地域の避難場所については80%の人が知っているが、食糧・道具の備蓄状況や避難訓練・防災訓練の実施状況については50%以上の人が「わからない」と回答しており、中学生にとっては得にくい情報であることが分かった。(2)授業後の防災チェックシートから見る意識の変化  防災意識についての自己評価は、[自然災害や被災後の生活の不安]、[自然災害についての知識]、[自身・家庭・地域の防災意識]、[自身・家庭・地域の防災対策]、[災害について話し合うことの必要性]、[地域の理解]、[災害時の自身の役割]に関する合計30項目とした。30項目に対し、授業前と授業後に「とてもそう思う」から「思わない」の5段階で回答を求め、平均値を出し比較した。授業後に評価が低くなったのは9項目、高くなったのは21項目であった。 評価が低くなった項目は、「被災後の生活」「地域の自然災害」「自然災害」への不安、「自身・家庭・学校の防災意識」、「日頃から被災した場合の行動・地域のことを家族と話す必要性」、「地域がすき」である。防災知識を得た事で、より学校や家庭での防災対策の必要性を感じると同時に災害に対する不安は少なくなったと考えられる。 最も評価が高くなった項目は、「地域の安全な場所・危険な場所を知っているか」「地域に住んでいる人とコミュニケーションをとれているか」であり、次に「災害時に役に立てる」「災害について友達や学校で話し合うことの必要性」であった。地域防災マップを作ることを通じて地域への理解が深まり、またグループで災害時に中学生ができることについて話し合う事で自身の役割について考えた事が評価につながったと考える。 防災に関して自身、学校、地域についての理解が深まり、話し合う必要性を確認できた一方で、家庭内で災害や被災後の生活について話し合う必要性についての評価が低くなった。学んだ事を家庭でも共有し、具体的な対策へも発展させる授業展開について今後検討する必要がある。
著者
得丸 定子 川島 名美子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集 第48回日本家庭科教育学会大会
巻号頁・発行日
pp.36, 2005 (Released:2006-01-13)

【目的】ペットロスは正常な適応反応であるが、飼い主が受けるストレスは様々で、情緒的・身体的症状が現れることもある。日本ではペットロスに関する一般の理解はあまり進んでおらず、文献や研究論文等も少ない。ペットロス・ケアに関しても、欧米諸国の知識や方法を直訳的に取り入れている現状である。 そこで本研究では、個人の性格・価値観・ペットの飼育経験等の観点から、ペットへの接し方・ペットロスの諸症状・対処法等について分析し、日本人の感性に合ったペットロス・ケアや学校教育における「いのち教育」の取り組みに資することを目的とした。【方法】本調査『ペットとペットを失うことに関するアンケート』(無記名、自記式)は、2004年4月_から_同年6月に実施した。調査対象は、新潟県・群馬県・千葉県・大阪府から各1大学、合計4大学679名である。調査内容は、「心理尺度に関するもの」82項目を中心に、「属性と信仰している宗教の有無に関するもの」「ペットの飼育経験に関するもの」「ペットの位置づけ・価値観に関するもの」「ペットを失った時の状況と対応に関するもの」の、計116項目と自由記述である。分析は因子分析(主成分分析、バリマックス回転)、分散分析、多重比較、比率の差の検定、KJ法を行った。 【結果・考察】1.因子分析結果心理尺度に関する質問項目について因子分析を行い、8因子を抽出。各因子名は第1因子“抑うつ型”、第2因子“協調・努力型”、第3因子“理解・共感型”、第4因子“自信型”、第5因子“宗教肯定型”、第6因子“情緒型”、第7因子“個性尊重型”、第8因子“内向型”とした。2.因子とペットロスとの検討各因子により、ペットの位置づけ・価値観、ペットロス時の心身の状況、対処法の違いが明らかになり、心理傾向により、具体的なペットロスへの対処法の手がかりが示された。3.「性別」「宗教」「飼育経験」とペット・ペットロスとの検討“性別”では、女性の方が男性よりも情緒的なペットロス反応を示した。ジェンダーバイアス的な価値観や子育てが影響し、感情を認めたり表出したりする段階で男女差が生じているものと考えられる。“信仰心”では、信仰心の高い人はペットロス時に悲嘆が身体症状として表れたり、他に傾聴を求めたり、ペットの安楽死反対論が示された。 “ペットの飼育経験の有無”では、飼育経験がある者の方が、ない者よりもペットを「守るべき存在」、「心の安らぎ」と捉えていた。これらの結果は、ペットの飼育を実際に経験することが、ペットの存在感を認識させることを示している。“ペットの喪失経験の有無”では、ペット喪失経験により「後悔」を覚え、ペットが自分にとって「心の安らぐ大切な存在」であったことに気付き、「守るべき存在」であると認識していることが示された。また、ペットの喪失経験者の方が未経験者よりも代わりのペットを欲している結果が示されたが、「代わりが欲しい」とは、なくしたペットと外見や習性などが同じ代替のものではなく、ペットという存在や、そこから得られる安らぎが欲しいと感じているものと考えられる。 以上の結果は、日常生活で死別経験が乏しくなっている現在の子どもにとって、ペット飼育や死別で経験する出来事、心理体験は「いのち」の重さを実感できる重要な教育内容を持つことを示している。4.自由記述の検討ペットを亡くした時の感情については「悲しみ」や「怒り」などの情緒的反応が回答の約半数を占めた。次に否定的反応が多く、内容は後悔と罪悪感の反応が大部分であった。ペットを亡くした悲しみから立ち直ったきっかけについては「時間の経過」が最も多かった。
著者
得丸 定子 川島 名美子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集 第49回日本家庭科教育学会大会
巻号頁・発行日
pp.10, 2006 (Released:2007-02-11)

【目的】 近年ペットロスという用語は一般化してきたが、わが国における学術研究論文数は一桁以内でまだ少ない。欧米では1984年から学術論文が発表されているが、ほとんどが米国の学術誌である。ゆえに、本研究では昨年本研究大会で発表した日本の大学生対象の調査項目と同一の調査を米国中西部の大学生を対象に行い、「いのち教育」を実践するための資料を得ることを目的とした。 【方法】 アイオワ大学の共同研究者の多大な援助を得て、調査「Questionnaire Concerning Pet and Pet Loss」を、2004年3月~同年6月にかけて、アイオワ州の3大学、ミズーリ州1大学の合計4大学の学生194名(有効回答率78.4%)対象に実施した。調査内容は「心理尺度に関するもの」82項目を中心に、「属性、信仰する宗教とその有無」「ペットの飼育経験」「ペットの位置づけ・価値観」「ペット喪失時の状況と対応」の計116項目と自由記述である。分析は因子分析(主成分分析、バリマックス回転)、分散分析、多重比較、比率の差の検定、KJ法を行った。 【結果】 1.因子分析結果 心理尺度に関する質問項目について因子分析を行い5因子抽出された。因子名は第1因子”自尊・自信型“、第2因子”努力・前進型“、第3因子”共感・協力型”、第4因子”抑うつ型“、第5因子”宗教肯定型”とした。 2.因子とペットロスの関連性の検討 心理傾向を表す上記5因子を高群と低群にわけ、それらの高低群と「ペットの位置づけ・価値観」「ペットを失った時の状況」「ペットを失ったときの自分自身の対処法」とを多重比較を行い、有差を検討した。その結果、心理傾向とペットの位置づけやペットロスの状況、対処法との関連性が得られ、各人に応じたペットロス対処を行うことへの手がかりが示唆された。詳細な結果は口頭発表で行う。 3.「性別」VS「ペットの位置づけ・価値観、喪失時の状況・対応」 性別では、女性のほうが男性よりもペットを失ったとき「誰かに話を聞いてほしい」「我慢せずに泣けばよい」「普段と変わらず接してほしい」の項目で有意に高い結果を示した。 4.「信仰心」VS「ペットの位置づけ・価値観、喪失時の状況・対応」 調査対象者の約9割が信仰する宗教を明確に持っており、信仰心の低い人のほうが「ペットを飼えなくなった場合、捨ててしまいたい」と答えた人が多く、信仰心の高い人の方が「ペットを失った時、代わりのペットを飼いたい」と答えた人が多かった。 5.「飼育経験」VS「ペットの位置づけ・価値観、喪失時の状況・対応」 本調査ではペット飼育経験者150名、未経験者2名であり、検定が成立しなかった。 6.「ペット喪失経験」VS「ペットの位置づけ・価値観、喪失時の状況・対応」 ペットを亡くした経験のある人のほうがない人よりも「安楽死をさせる」が有意高く、「ペットを亡くした時、新しいペットの飼育を勧めてほしい」は有意に低かった。 7.自由記述 ペットを亡くした時の思いは「悲しみ、驚き、怒り、寂しさ」の情緒的な反応が72%で最も多かった。悲しみから立ち直ったきっかけは「新しいペットを飼った、他のペットを大切にする」が23%で最多であった。 【考察】 心理尺度では日本は8因子、米国は5因子であり、そのままの単純比較はできなく、日米比較の詳細は次発表で行う。米国では信仰を持つ割合や飼育経験が高いこと、ペットロス研究は日本と異なり約20年も前から取り組まれていることがペットロスとその対処との関連性に影響を与えていると考えられる。日米比較は次回行う。
著者
石澤 美代子 得丸 定子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, 2013

【目的】食育基本法(平成17年)や新小学校学習指導要領解説(平成22年)等において食育の重要性がうたわれている。この現状下、筆者らはその知識習得や日常の食生活への波及効果を期待し「食育すごろくゲーム」を開発し、平成23年1月、小学校6年生家庭科の授業において実践し好評を得た(第54回本大会にて報告)。今回、実施から1年以上経過した時の本教材の影響や印象を調べるため、中学1年生となった対象児童(以降生徒)にアンケートを行ったので、報告する。【方法】調査時期は平成24年3月で、授業実践から1年1ヶ月が経過していた。対象者は、授業実施小学校から全児童が進学する長野県T中学校の1年生72名のうち、他小学校から転入した生徒や授業当日欠席だった生徒を除く、62名(男子29、女子33名)である。調査は、授業実施の記憶やその内容、授業実施後食事について変わったことがあるか等6項目からなる記名式アンケートである。なお、アンケートの配布・回収は生徒の担任が担当し、当時の授業等について全く触れずに行ってもらった。分析は、集計数については独立性の検定を、自由記述についてはテキストマイニングにより行った。【結果】「去年1月に『食育すごろくゲーム』を使った授業を覚えていますか」の問いに、「覚えている」との回答は42名(67.7%)で、男子15名(51.7%)、女子27名(81.8%)であり、女子の方が有意(p<0.05)に多く覚えていた。「強く印象に残っているものは何ですか」の問いには、40名(男子15、女子25名)が記述し、最多ワードは「コマ(食品サンプル)」であった。「今でも覚えている知識は何か」の問いには、36名(男子15、女子21名)が記述し、最多ワードは「特にない」であり、次いで「三色群」であった。「またやるとしたら誰とやりたいか」の問いでは、複数回答で、「友だち」が33名(男子14、女子19名)、次いで「きょうだい」が11名(男子2、女子9名)、以下、祖父3名、祖母3名、母2名等と続いた。「授業をきっかけに食事のことで変わったことがあるか」の問いには、複数回答で、「1日三食食べるようにし欠食しない」が17名(男子6、女子11名)、「今までより料理を手伝うようにした」が16名(男子5、女子11名)、「家族と食事について話すことが増えた」が15名(男子7、女子8名)、「食事のことで注意されることが減った」が14名(男子7、女子7名)、以下「三色の群を気にして食べるようにした」、「今までより栄養や食事のことを気にするようになった」「今までより郷土食に興味がでてきた」「(ツールのひとつである)くりだし六角形に興味が出てきた」であった。【まとめと考察】1年以上経過したが、本教材を使った授業について67.7%の生徒が記憶しており、女子の方が有意に多かった。印象に残っていることは「コマ(食品サンプル)」であった。覚えている知識は「三色群(食品を三つの色の群に分けること)」が多くあったが、「特にない」との記述も多くあり、授業や教材を覚えてはいるが知識として習得されていない可能性が示唆された。また、授業をきっかけに食意識が向上したり、食についての家族との会話や料理手伝い等が増えたとの回答が多く、本教材による食生活への波及効果が示唆された。
著者
長山 知由理
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.54, pp.91-91, 2011

1.はじめに<BR>本稿は,人間・環境科学と家庭科教育を調和させることで,その領域が広義になることに目を向けたものだ.<BR> 専攻だった人間・環境科学では,生理学や生化学,構造力学や意匠学,高分子科学(水・熱・力に対する性質)やコロイド科学などを教わる.研究室に入ってからは,神経科学のようなこともやった.プログラムを書いて,ニューロリハビリに明け暮れる毎日だった.<BR> 大学院では,可塑性を数理モデルで検討していた.ニューロリハビリでの可塑性は,『運動などの外界(環境)が人間にもたらすこと』といった意味合いが強い.一方の保育では,『家族が幼児にもたらすこと』といった役割も多く1),家庭科教育で扱うことで新しい発見があった.<BR><BR>2.目的<BR> 現在の教育現場に求められていることは,活用型学力と呼ばれるものだ.家庭科での活用型学力とは,一言で表現するなら,授業で学んだことから社会をより良くしていける能力のことだ.もう一つの方向性は,e Learningでは得られない,生徒の言語能力の向上である.<BR> では実生活をより良くするとは,どういう意味だろうか.やはり少子高齢化,高度情報化,それから環境教育や防災教育といった,日本が直面している危機に,学校教育により立ち向かっていくことなのではないだろうか.そのような大きな課題に取り組むためには,やはり社会に開かれた人格を育成すべきだ.そのために,コミュニケーションを強調すべきなのだと考えている.ここでは特に,少子高齢化について述べる.<BR><BR>3.方法<BR> 遊ぶことで,幼児は成長していくけれど,どうしてなのか."遊び"は年齢を重ねていくと,徐々にグループでのものとなる.身体・心身の発育だけでなく,生活習慣も身に付けていく.この真似することとは,何か.<BR> 高齢になっても,新しくできるようになることもある.そんなお年寄りもいる地域と,学校や家庭という三角形の中で,その重心のように暮らしていることを伝えたつもりである.それは幼児も,中学生も同じだ.そして,可塑性,ミラー・ニューロンなどについて平易に説明してあげた.<BR><BR>4.結果<BR> 学活の時間に一担当クラスに行ってみると,『理科っぽいことも知っていて…』と言われて嬉しかった.生徒は一生懸命であるにも関わらず,中学生には難しい局面もあり,そこは改善していきたいと思っている.幼児の成長を画像化する技術(NIRS:近赤外分光法)があることは,脳波を計測したこともある生徒に対して,理解させるのは容易だった.しかし数理モデル2)まで理解させようとすると,急に難易度は高まった.少し工夫して次時に,人工知能(PCゲームでの対戦など)を思い出させて説明すると,生徒の理解度は高まった.<BR><BR>5.まとめ<BR> 保育に関わらず,何だかんだで,まずは生徒に関心を払ってもらうことから始まる.そして幼児のためのお菓子やオモチャ作りなど,実際に手を動かす"ものづくり"を通して,知識もモノになっていくのだろう.一緒に考える時間を持ちながら,将来の日本や世界の在り方をイメージさせられたら望ましい.<BR>
著者
小林 由実 川端 博子 薩本 弥生 斉藤 秀子 呑山 委佐子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, 2012

【目的】 伝統的・文化的な技術や習慣が伝承されにくく、関心も低くなっている中、2008年改訂の中学校学習指導要領の家庭・被服領域において「和服の基本的な着装を扱うこともできる」が明記された。しかし、教師自身の知識・技能が十分でない、教材の確保が困難といった理由から、和服に関する授業の実践例はまだ少ない。この様な現状をふまえ、ゆかたの着装を含む体験的学習を通してきもの文化を次世代に継承する家庭科の教育プログラムを開発し、その学習効果を検証することを目的とする。【授業実践】 本研究では、埼玉大学教育学部附属中学校(2年生4クラス173名)の協力を得て、2011年5月から4週にわたり50分授業を4回実施した。授業は、和服の基礎的内容の学習にはじまり、たたむ、帯を結ぶ、ゆかたを着装する体験学習へと、段階的に進めた。着装技能/ゆかた着装時の気持ち/ゆかたへの興味・関心の視点に関するアンケートと授業ごとの感想をもとに、授業の効果を考察した。【結果と考察】 着装技能の評価 ゆかたの着装技能について、「帯の結び方」等の3項目について8~9割の生徒が理解できたと感じていた。また、写真によるゆかた着装の生徒の自己評価では、「背中心がまっすぐである」等の全ての個別評価と、総合評価「外出できる出来ばえになっている」で有意な相関がみられた。「えり」「すそ」の評価項目では男女とも相関が比較的高い傾向となり、出来ばえに関連する要素とみなされる。男子においては「帯の形が整っている」の相関が最も高く、着付けにおいて帯結びの美しさが総合的な出来ばえに及ぼす影響は大きい。また、教師が同様の評価を行ったところ、5項目について自己評価と教師評価の間に有意な相関がみられた。特に帯に関する項目で、生徒と教師の評価基準が一致する傾向となった。 モデルのゆかた着装時における気持ち ゆかたの着付け体験は2~3人のグループ活動とし、そのうちの一人をモデルとした。授業の前後にモデルを対象にゆかた着装時の気持ちを評価させたところ、「うれしかった」等のゆかたのよさに関する5項目については、全てで高まった。「帯がきつかった」「歩きにくかった」の否定的な2項目においては授業後にはあまり変化せず、比較的低くとどまった。 ゆかたへの興味・関心 授業の前後に、ゆかたへの興味・関心(7項目)を評価させ比較したところ、男女ともに全ての項目で興味・関心が大きく向上した。事後調査においては、「和服について関心がもてた」等の項目で全体の約8割が「(やや)そう思う」と回答した。また、「家族と和服の話をした」の項目では全体の52%が「はい」と回答したことから、授業を通して生徒にきもの文化の継承に関わるきっかけを与えられたと考える。 自由記述の分析 授業後の感想を観点別に分析したところ、帯結びの体験では「帯の形」「長さ調節」「きつさ」が、着付け体験においては、「帯」「おはしょり」が困難な点として最も多く挙げられていた。これらの記述を参考に、要点をおさえた、より簡潔でわかりやすい指導につなげていくことが課題である。
著者
志村 結美
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, 2012

目的 現在、主体的に生き方を探究していくキャリア教育の重要性が叫ばれている。中央教育審議会答申「初等中等教育と高等教育との接続の改善について」(1999)において、「学校教育と職業生活との接続」の改善を図るために、小学校段階から発達の段階に応じてキャリア教育を実施する必要があると提言されて以降、小・中・高等学校において、キャリア教育の充実が喫緊の課題として図られてきた。中学校では職場体験活動が必修化し、大学等においても積極的にキャリア発達支援を行い、インターシップ等が実施されるようになった。しかし、子どもたちが将来就きたい仕事や自分の将来のために学習を行う意識が国際的にみて著しく低く、それに伴い、教科学習に対する興味・関心が低い状況であることが明らかとなっている(TIMSS調査2007・PISA調査2003,2006)。また、働くことへの不安を抱えたまま職業に就き、適応に難しさを感じているといった若者は依然として多く、若者の早期離職率が増加している等、未だに多くの課題を抱えたままである。 そこには、キャリア教育は、従来、「進路決定の指導」を目的とした進路指導、「専門的な知識・技能の習得」を目的とした職業教育で行われており、「キャリア発達を促す教育」としてのキャリア教育となった現在も、職業生活における自己実現を希求することに重きが置かれていることに問題があるとの指摘がされている。すなわち、職業生活、家庭生活、地域生活といったライフキャリアの視点からのキャリア教育の実践が希薄であると言わざるを得ない状況である。 このような現状において、キャリア発達を職業の有り様のみから捉えていくのではなく、ライフキャリアの視点から将来の生活の一部として、生活設計の中で職業の在り方を考え、自立という観点を直接的に捉える家庭科教育においてこそ、キャリア発達を促すことができるのではないかと考える。しかし、家庭科教育においてもキャリア発達を促す授業実践、カリキュラム開発はこれからの充実・発展が待たれている段階である。家庭科教員にも、ライフキャリアの視点からキャリア発達やキャリア教育を捉えることが難しい状況にあるのではないかと推察される。 そこで、本研究では、まず、キャリア教育に関する施策や先行研究からキャリア発達やキャリア教育の定義等の推移を明らかにし、ライフキャリアの視点から分析する。次いで、家庭科教育におけるキャリア発達を促す教育内容等を学習指導要領等から導き出し、ライフキャリアの視点から家庭科教育とキャリア教育の関連性を検討することを目的とする。また、本報告では、小学校で家庭科を担当している教員対象のキャリア教育の実施状況やその実施内容等に関する実態調査を踏まえて、小学校教員の家庭科に関するキャリア教育の捉え方の傾向を明らかにし、家庭科教育とキャリア教育の関連性を検討する一助とする。 方法 1.ライフキャリアの視点からキャリア教育に関する施策、先行研究等を分析し、家庭科教育との関連性を検討する。2.小学校教員対象調査は、山梨県と静岡県の計406校の小学校に在籍している家庭科主任、家庭科担当教員を対象にアンケートを郵送し、計146人の有効回答を得た(有効回収率36.0%)。調査期間は2009年8月~11月である。 結果及び考察 先行研究等では、ライフキャリアの視点でキャリア発達を捉えたものが多く認められ、その重要性が確認された。家庭科教育においてもキャリア発達を促す教育内容を多く内包しており、その関連性が明らかとなった。また、小学校教員対象調査では、約6割の教員がキャリア教育に関する教育を行っているが、実施している教科等は、総合的な学習の時間、特別活動、社会、道徳、家庭科の順であった。家庭科での実践は15%程度であったが、家族の一員として仕事を行うこと、また、衣食住に関する技能の習得等を通した実践等、幅広い教育内容があげられ、教員がライフキャリアの視点を持って、授業を行うことの重要性が明らかとなった。
著者
羽根 裕子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, 2013

<目的> 教員養成大学家庭科選修、専攻学生の授業における受講意欲向上を目指す取り組みを続けてきた。将来、教師という社会的にも重要な役割を担う職業に携わる学生が、自分自身の「衣生活」をどのようにデザインしようを考えているのかを調査し、授業において着装コーディネートの方法を学ぶことで、自己表現力を高め、教師としての「衣生活設計」をデザインする能力をもにつける目的である。2008年、「ファストファション」が登場し、不況に追い討ちをかけるように2011年、東日本大震災に見舞われた。日本の社会に浸透したのは、徹底的にローコストを追求する合理性なファションで、若い学生世代の感覚に合致していると思われる。震災後、復興や節約志向が続く日本に、「流行」という言葉が空々しく聞こえもするが、今、自分が置かれている環境の中で、どのような服装をコーディネートし、どのように自己表現をするのかを指導したいと考える。将来の衣生活設計における創造性をも高めたいと考える。教師として教壇に立つときに何をどのように着るべきかを考えさせることにより、積極的に授業に参加する意欲を向上させ、創造性、表現力を高める目的である。<研究方法> 「衣生活論」の授業において、ファッショントレンドを取り入れ、着装コーディネートをデザインする授業を行う。ファッショントレンドについてデザイン、素材、色彩の領域からその決定方法と詳細について理解させる。特にその年のトレンドが決定される要因にはバックグラウンドとして、流行が生まれる社会情勢、経済情勢などが大きく影響していることを認識させることが重要である。実際に自分自身の着装コーディネートにどのように取り入れたらよいかという指針になるからである。コーディネートの提案手順は、ユニバーサルファッションのデザインプロセスに従って教師の生活・社会環境の分析、問題点の抽出を行った。それらの問題点の解決点、改善点を把握し、要求されるデザイン要素を考察し、最終的に、教師に求められる機能的要素、心理的要素を充足するコーディネートを提案させた。<結果と考察> 学生たちは、教師は教壇で何を着るべきかを考えることで、自分自身の生活環境をより深く分析することが出来た。服飾による自己表現をすることで言葉以上の感情を伝達することができるとも認識した。自分自身を主張するだけでなく、対児童、対保護者、対同僚、対上司という複雑な人間関係を言葉以外のコミュニケーションスキルを駆使して保持しようとする考え方がデザイン提案に表現されている。学生が将来に向けて掲げた課題をまとめると下記のようである。・生活環境と衣生活の密接な関係を学ぶことができ、自分自身の毎日のコーディネートを見直そうと思った。・自分が楽しむだけのファッションでなく、社会的に自分自身を表現することが必要である。・自分自身の個性を表現できる服装コーディネートをすることで、精神的に充実感が得られる。・服装による個性の表現をしたい。教師の服装には制服や制限がないからこそ、衣生活設計が難しいと思う。・服装のコーディネートを変えることで、自分自身の内面を表現し、美しい自分でありたいと思う。将来、教師に  なった時の服装について考える必要があると実感した。・教師はタレントやアイドルではないが、イメージ職であると思う。 教師という存在が周囲からどのように評価されているか認識し、心理的側面から教師の衣生活を設計したい。 服飾教育における学生の自主性を育てる授業は、学生自身が将来良質な衣生活を営む力になる。教師という職業にコミュニケーション力が非常に重要であり、学生がその一端を担う服飾による表現(ノンバルコミュニケーション)が言語以上に重要であると理解できたことは大きな成果であったと考える。