著者
泉水 りな子 中間 美砂子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会誌 (ISSN:03862666)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.14-21, 2002-04-01 (Released:2017-11-22)
参考文献数
10
被引用文献数
1

家庭科と公民科の関連性を明らかにし,連携の方策を検討するため,家庭科および公民科教員の意見,教科教育学研究者の教育目標論,教科書キーワード,学習指導要領記述等の比較を行った。結果の概要は,次のとおりである。(1)教育目標については,(1)公民科教員の意見では,家庭科で目指している能力目標13項目のうち,公民科でも育成したい能力として,50%以上の者が,5項目をあげており,関連性が高い教科ととらえられている。(2)両教科の教育学研究者の資質目標には共通性がみられる。(3)学習指導要領で示されている資質目標は明確に異なる。(2)学習内容については,(1)両教科担当教員の意見はほぼ同傾向を示し,家族領域は家庭科で,経済領域は公民科で,福祉領域,消費領域は両教科でとされている。(2)教科書のキーワード出現頻度の比較では,家族領域のキーワードは,「家庭一般」での出現頻度のほうが高く,家庭科独自の領域といえる。福祉領域,消費領域のキーワードは,両科目間の出現頻度差が低く,重複部分が多い領域といえる。(3)学習指導要領では,かなり重複する部分がある。(3)学習方法については,(1)教科担当教員の意見では,家庭科教員のほうが体験的学習導入への意欲が高い。(2)学習指導要領では,両教科とも,体験的,学習を重視しているが,家庭科では,実験・実習を通した学習を,公民科では,資料を通した学習を重視するという点で異なっている。以上の結果から,家庭科と公民科目標,内容,方法の関連性が明らかとなり,今後の連携のあり方についての示唆をえることができた。稿を終えるにあたり,本調査にご協力くださった方々に厚くお礼申しあげます。なお,本研究は,1997年7月6日,日本家庭科教育学会第40回大会において発表したものを発展させ,加筆したものである。
著者
表 真美
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.60, 2017

【目的】本報告の目的は、マルタ共和国における家庭科教育の現状を明らかにすることである。<br /> マルタ共和国は、地中海中央に浮かぶ淡路島の半分ほどの広さの島に、約43万人が暮らすカトリックの国である。マルタ語、および英語が公用語であり、年間約180万人の観光客が訪れる観光立国である。我が国におけるマルタ共和国の教育に関する研究蓄積は極めて少なく、家庭科教育については紹介されたことがない。<br /> しかしながら、国際家政学会(IFHE)にはマルタ共和国の会員が複数名参加しており、2016年のIFHEアニュアルミーティングはマルタ共和国の首都バレッタで開催された。熱心に学会活動を行うIFHE会員をもつ国の家庭科教育について明らかにすることは、我が国の家庭科教育に何らかの示唆が期待できると考える。<br />【方法】本報告は、国が定める教育スタンダードおよびマルタ共和国への訪問調査により得た資料を元にしている。教育スタンダードはマルタ共和国教育省ホームページより入手した。また、2017年3月にホームエコノミクスセミナーセンター、中等教育学校、ジュニアカレッジ、およびマルタ大学を訪問し、大学教員、および家庭科教師への聞き取り調査、授業参観を行った。<br />【結果】得られた結果は以下の通りである。<br />(1)マルタの学校制度の概要は以下のとおりである。3~5歳に就学前教育、義務教育は、5~11歳(6年間)の小学校、11~16歳(5年間)の中等教育学校の11年間であり、その後、後期中等教育は、マルタで唯一の総合大学であるマルタ大学に進むためのジュニアカレッジ、芸術・科学・工学大学に進むためのジュニアカレッジ、および職業教育の3コースに分かれる。<br />(2)一方、マルタ教育省が示す学校教育カリキュラムは、①The Early Years Cycle(就学前教育1・2年と小学校1・2年:KG1、KG2、Y1、Y2)、②Junior Schools Years Cycle(Y3、Y4、Y5、Y6:小学校3・4・5・6年)、③Secondary School Years Cycle(F1、F2、F3、F4、 F5:中等教育学校1・2・3・4・5年)の3段階に分かれる。Secondary School Years Cycleには、マルタ語、英語、数学、宗教/倫理、社会科学、総合科学、物理、歴史、地理、ICT、PHE、表現芸術、PSCD、第2外国語の14教科が設置されている。PHEは、Physical EducationとHome Economics(家庭科)が含まれる教科である。F1、F2に半年間、週2単位時間(40分×2)の男女必修の家庭科、F3、F4、F5に半年間、週2単位時間2回の選択家庭科が位置づけられており、選択人数(試験受験人数)は、毎年120名ほどである。<br />(3)ホームエコノミクスセミナーセンターは、小学校の最上階に設けられ、所長1名と6名の家庭科教師、2名の職員で運営されていた。他教科も同様のセンターを持つ。複数のプログラムが用意されて国内の各学校に広報されている。学校の判断により、先生が児童生徒を連れてセンターを訪れたり、センターの家庭科教師が学校に行って出張授業をしており、保護者向けのプログラムもある。訪問当日は小学校4、5年生の2クラスの子どもたちが同時並行で、お金の授業、野菜と果物の授業を行っていた。小学校には家庭科が教科として設置されていないが、任意の教育が行われている。<br />(4)訪問した中等教育学校では、必修家庭科の調理の授業、選択家庭科の消費生活の授業を参観した。必修家庭科の授業は特別に支援が必要な5名の生徒が対象であった。学校独自のテキストが、特別に支援が必要な生徒向きに改良され使われていた。<br />(5)大学進学のためのジュニアカレッジには専攻科目の1つとしてHome Economicsが位置づけられ、マルタ大学では、教育学部「健康体育教育、消費者科学科」に家庭科教員養成課程がある。
著者
関川 千尋 木谷 康子 北川 敏子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会誌 (ISSN:03862666)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.33-39, 1993
被引用文献数
5

Teaching materials were developed for housing studies of home economics education in senior high school. The teaching material to be reported was a study sheet simulating how to use the living space in a small town house. Evaluation of the study sheet was performed by giving this to senior high school students (n=241) in Kyoto Prefecture, after taking lessons on housing. The results are summarized as follows : 1 The average achievement score of the training was high (75.9%) 2 The score varie with the viewpoints we had set. A good score was obtained on the basic rules of living such as the separation of the sleeping and dining space. On the contrary, scores on the consideration of movement and creativity were relatively low. We concluded that this space simulation study sheet could be accepted by senior high schoold students.
著者
河村 美穂 小清水 貴子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.48, pp.49, 2005

研究目的 数多くの実践がある調理実習に関しては、児童生徒の実習中の行動分析やグループにおける学びの様態について様々な知見が示されている。近年では、家庭科の学習を振り返る感想文分析から役立ち感と学習意欲の関連も明らかにされており、さらに生徒の側から学びの実態を明らかにすることが求められている。 そこで、本研究では生徒が調理実習の直後に何を学んだと感じているのかを生徒自身の記録から読み取り、さらに実施後約1ヵ月後の振り返りをあわせて検討することにより、生徒が調理実習で学んだことを明らかにすることを目的とする。研究方法表に示す調理実習3回を高校家庭科「家庭基礎」において実施し、実習直後に記述した実習記録をデータとして、生徒が学んだと考えることについて検討を加えた。○調査対象:国立大附属高校1年生(40名)。○調査時期:2005年1月_から_2月。○データの収集:毎回の授業後に生徒40名が記述した実習記録、 および、実習後約1ヶ月に記述した振り返りシートをデータとし て用いた。この他、生徒の実態を把握するために事前アンケート 調査を実施した。また、10班のうち2班を抽出し、実習中の様子 を観察、ビデオ録画、録音により記録し補足データとして用いた。全体的な目標<br>●1日に食べる食品の量と質を体験し、朝・昼・夕食に食べるものを理解する●包丁で切る技術を学ぶ。●料理にあう皿を選んで盛り付ける。●班で協力して作業を行い、時間内に手早く調理・試食・片づけをする。●食材を大切に扱い、できるだけ生ごみを出さないように工夫をする。<br>題材<br>オムレツ・ミネストローネ・ヨーク゛ルト・ロールハ゜ン・ハ゛ナナ<br>本時の目標●卵の調理性(熱凝固性)を理解する。(オムレツ)●食材の形をそろえて切ることを理解する。(ミネストローネ)●調理実習室に慣れる。<br>題材 スハ゜ケ゛ティミートソース・ク゛リーンサラタ゛・ハ゜ンナコッタ(いちご添え)<br>本時の目標●ミートソースを手作りする方法を知り、味わう。(スハ゜ケ゛ティ)●ハ゜スタのゆで方を知る。(スハ゜ケ゛ティ)●ゼラチンの調理性と取り扱い方を知る。(ハ゜ンナコッタ)●ドレッシングを手づくりできることを知る。(サラタ゛)<br>題材 肉じゃが・ほうれん草の胡麻和え・米飯・味噌汁(豆腐とワカメ)・うさぎりんごと木の葉りんご<br>本時の目標●混合だしの取り方を理解する。(肉じゃが・味噌汁)●調味料の浸透性を理解し、手順よく調味料を扱うことができる。(肉じゃが)●無洗米の扱い方を知る。(米飯)●青菜のゆで方を理解する。(ほうれん草の胡麻和え)●肉じゃがが簡単にできることを知る。(肉じゃが)●りんごの飾り切りができる。(りんご)<br>結果と考察<br> 生徒が調理実習で身についたと考えていることは、「実習した料理そのものの作り方」「その後に応用可能な知識・技能」「グループ学習としての学び」の3つに大別できる。「その後に応用可能な知識・技能」のうち多くを占めるのは「材料を切る」など包丁を使う技能であった。包丁を使う技能は、調理実習で多く使用されるだけでなく、生徒にとっては技能の習得を実感しやすいと考えられる。また、振り返りにおいて調理に対する自信を持つようになった生徒は、直後の記録においては「その後に応用可能な知識・技能」を多く記述していた。これは、調理を一つ一つの料理を作る方法としてではなく、複数の調理方法や知識・技能が複合して成立するものとして捉えていることを示していると考えられる。
著者
葭内 ありさ
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.60, 2017

<strong>目的 </strong><br /> 本研究は、高校家庭科において、知的障がい者通所福祉施設と外部連携し、知的障がい者の織ったさおり織を用い、ITを活用した交流を通じて、高校生の障がい者への理解を深め、多様性、ダイバーシティを尊重する視点の育成を試みたものである。 <br /><strong>背景</strong><br /> 2016年4月に「障害者差別解消法」が施行され、障がい者への合理的配慮を求める事が法的にも定められた。障がいの有無、ジェンダー、宗教、民族、人種、性的志向など個人の違いの幅による多様性を生かした共生社会を目指すダイバーシティ教育が一層求められるようになったと言える。一方で、中学迄の義務教育段階と異なり、高校段階では特別学級は設置されていない。義務教育段階でも、必ずしも特別学級との交流が図られている訳ではない中、高校段階に於いては教育の中で意識的に障がい者との交流を図らなければ、障がい者理解の機会を得る事は一層容易くない。<br /> そこで本研究では、対象を必修2年「家庭総合」3クラス120名とし、通常施設との交流に於いて人数や距離に制約のある点を、ITを活用することで克服を試み、必修科目に於いて全員で障がい者施設との交流を図った。特に、魅力的な個性を生かすさおり織を用いることを通じて、障がい者への視点を育むことに着目した。<br /> なお、さをり織は、城みさを氏が考案した、糸の緩さや糸の選び方、編み方において各自の個性を生かし自己を表現する、「差」を織り込む織物である。リサイクルの余糸を繋ぎ合わせたものが織用の糸として用いられているため環境にも優しい。障がい者施設の作業所でも多く取り入られている。<br /><strong>方法</strong><br /> 埼玉県の知的障がい者通所福祉施設と連携した。作業所で織ったさをり織を用いた服を高校生が作り、さらにその服を紹介する動画を班で製作し、福祉施設で上映会を行い、その際インターネットビデオ通話を用いて東京の高校と埼玉の施設を繋ぎ、施設見学や通所の障がい者、施設職員の方々と高校生との双方向の交流を行い、事前事後のアンケート調査と感想の分析を行った。<br /> なお、本研究は、2011年度より実践を重ねる、消費の背景に着目するエシカル・ファッションを用いた、消費者教育の一貫であり、家庭科教育学会において発表済みである(葭内、2014、岡山大学/葭内、2015、鳴門教育大学/葭内、2016、新潟朱鷺メッセ)。2016年度の本研究は、科学研究費奨励研究の助成により行った。<br /> 世界的に厳しい基準のGOTS認証を取得した有機綿花を、日本が誇る高い技術を持つ日本綿布社が織ったオーガニックコットンの布を用いた服をまず製作し、さをり織をアレンジした。動画は製作した服を紹介するのに留まらず、エシカル・ファッションのプロモーションイメージビデオとして製作した。動画は、ユニバーサルデザインを目指し、文字による説明を入れ、グローバル対応として可能な限り英語訳も加えた。10人グループで製作した動画は、クラスで中間発表会を行い、アドバイスを互いにすることで、内容の充実を図った。最終完成作品はクラス発表会を行い、生徒による相互評価やアドバイスを行い、各クラスで優れた動画2本が選ばれ、福祉施設で上映された。また、福祉施設併設のパン工房とカフェで販売されるクッキーをインターネットによる施設見学時に高校生が試食した。<br /><strong>結果</strong><br /> 高校生は、服の製作段階に於いて、さをり織を魅力的に感じ、個性豊かなアレンジの服が完成した。事前調査では、障がい者福祉施設への事前知識がある生徒の方が施設への関心がある割合が高く、知識と施設への関心は相関関係にあることがわかった。高校生の感想からは、通所の障がい者の作業の様子や生徒へのメッセージや感想、自分たちの作った動画への好意的な反応への喜び、その他の双方向の交流により、障がい者への理解を深め、多様性を認め合う共生社会への視点が育まれたことがわかった。
著者
池田 まどか 古川 恭子 鈴木 明子 赤崎 眞弓
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.44, pp.42, 2002

目的:昨年の報告において、保育実習の効果的な指導の工夫として、母親も同席した授業環境での乳幼児とのふれあい学習を提案した。本研究では、提案した保育実習における高校生の学びを人との関わり方および学習した内容の分析から明らかにするとともに、ふれあい学習の成果を検証することを目的とする。<BR>方法:分析対象は長崎県立N高等学校の乳幼児ふれあい学習に参加した生徒302名が反省や感想を自由に記入したプリントである。人との関わり、学習した内容を示した語句や文章を抽出&middot;分類し、「子ども理解」「将来親となる」などの視点で分析した。参加した母親の感想も考察の参考にした。<BR>結果:(1)提案したふれあい学習における生徒の学びには、「子どもと遊ぶ」「子どもを観察する」「育児体験をする」「子育て体験談を聞く」の4つがみられ、単独型の生徒と複合型の生徒が存在する。 (2)生徒の学習した内容は、育児の大変さ、子育てへの夫の協力の必要性、母親の偉大さ、乳幼児の心身の発達の様子や子どもの個人差や個性である。 (3)生徒の学びは子ども理解や子育て体験にとどまらず、自分と親との関係、将来親となる自分の姿を考えるという学びの広がりと、これまでの保育に関わる学習の内容を再確認し、乳幼児の心身の成長&middot;発達の様子を実感するという学びの深まりとがみられる。
著者
丸山 智彰 鈴木 真由子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.51, pp.67, 2008

【目的】<BR> 家庭科における「福祉」は、特別な支援を必要とする社会的弱者のみならず、すべての生活者(個人・家族・コミュニティ)を対象にした広義の概念と考える。その場合、「福祉」をすべての領域に通低する"視点"として捉える必要があり、そのためには、福祉の視点を取り入れた授業が検討されなければならない。<BR> 我々は2007年7月、教員養成系大学における家庭科専攻学生に対し、「調理実習」の授業において、試食時に食事介助体験を導入し、学習の意義や可能性について検討した<SUP>1</SUP>。介助体験について自由記述で回答を求めた結果、食事を快適にする介助技術や被介助者に対する配慮等の記述が散見された。また、中高生が食事介助を体験することは、福祉の視点を身につけるために有意義であるとの指摘があった。<BR> そこで、本報告は、高等学校における調理実習の試食時に食事介助体験を導入する可能性について検討することを目的とする。<BR>【方法】<BR> 大阪府立N高等学校における『家庭総合」の調理実習の試食時に食事介助体験を設定し、前後に自記式質問紙法調査を行った。<BR>1)事前調査<BR>1.調査期間:2007年10月<BR>2.調査対象:普通科2年生全クラス240名、回収数220票、有効回答数(有効回答率)203票(男子93名女子110名)(84.6%)<BR>3.調査項目:「食事介助の経験の有無」「食事介助に気をつける点」「高齢者のイメージ」等<BR>2)食事介助体験実習<BR>1.実習期間:2007年11月<BR>2.実施方法:介助役→被介助役→介助役をA、被介助役→介助役→被介助役をBとし、二人一組あるいは三人一組で実施<BR>3.メニュー:ロールパン、コーンポタージュ、サケのホイル焼き<BR>3)事後調査<BR>1.調査期間:食事介助体験実習と同日<BR>2.調査対象:回収数208票、有効回答数(有効回答率)206票(85.8%)<BR>3.調査項目:<BR>A「介助時の気持ち」「被介助時の気持ち」「被介助後の介助変化」等<BR>B「被介助時の気持ち」「被介助後の介助変化」「Aの介助変化」等<BR>【結果】<BR>・食事介助経験がある生徒は20名(9.9%)、被介助経験がある生徒は8名(3.9%)と少なかった。<BR>・高齢者について、ポジティブなイメージを持っている生徒75名(36.9%)に対して、ネガティブなイメージを持っている生徒は134名(66.0%)と3割以上多かった。なお、このうち両方のイメージを併記していた生徒も26名(12.8%)いた(重複カウント)。<BR>・「被介助時の気持ち」については、「食べにくい」「恥ずかしい」「自分で食べたい」「怖い」等の回答が多かった。<BR>・「被介助経験後の介助」は、被介助時に不快に感じたことを通じて「被介助者の経験をしたから」「自分がされて不安だったから」何らかの変化を伴ったとの回答がほとんどであった。<BR>・食事介助体験の感想には、「汁物は食べさせ難い(食べ難い)」等、介助技術に関する記述が多かったが、介助する側・される側の困難を体験し、相手の立場を思いやることの重要性の指摘も散見された。<BR>【引用文献】<BR><SUP>1</SUP>丸山智彰 鈴木真由子「調理実習の試食における食事介助体験導入の可能性~教員養成カリキュラムでの試みより~」生活文化研究 大阪教育大学 Vol.47 2007年(印刷中)
著者
日影 弥生 中屋 紀子 渡瀬 典子 長澤由喜子 浜島 京子 黒川 衣代 高木 直 砂上 史子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.46, pp.5, 2003

1.はじめに 第3報では、『家庭生活についてのアンケート』中の母親と父親の職業の視点から全国と東北のデータについて比較分析することを目的とした。2.方法(1)調査対象および調査時期対象者は全国では6959名(小4;1484名、小6;1514名、中21;1870名、高2;2091名)、東北では3070名(小4;621名、小6;792名、中2;686名、高2;971名)とした。なお、この人数はアンケートの全ての項目に回答した者としたため、第1報および3報とは異なる結果となった。(2)調査時期およびアンケート項目、これらは全国調査と同じであるため省略した。(3)分析方法アンケート項目の「あなたのお母さん(またはお父さん)はどのような仕事をしていますか。」の回答と他の項目とをクロス集計し、検定により有意差を調べた。3.結果および考察(1)母親と父親の就労の有無とその形態a)労働をしている母親と父親の割合母親と父親が労働してるかどうかの観点から、その割合をみた。その結果、両親が働いている家庭は全国S8.1%、東北61.7%、母親だけが働いている家庭は全国 3.0%、東北 4.9%、父親だけが働いている家庭は全国20.6%、東北18.6%となり、両親と母親だけが働いている家庭は東北の方が多く、父親だけが働いている家庭は全国の方が多い結果となった。この傾向は、各学年でもほぼ同様となったが、中学2年生の両親が働いている家庭は全国79.0%と東北62.8%となり、他と異なる結果となった。b)母親と父親の就労形態 両親ともフルタイム就労家庭は全国21.4%、東北29.3%、母親がパートタイム就労で父親がフルタイム就労の家庭は全国23.4%、東北17.1%、母親が無聯で父親がフルタイム就労の家庭は全国17.0%、東北14.3%となり、全国に比べて東北では両親ともフルタイム就労の家庭が多く、母親がパートタイム就労や無職の家庭は少ないことがわかった。(2)母親と父親の就労職業からみた子ども達の生活実態両覿の就労形態のうち代表的と思われる「両親がフルタイム就労」、「母親がパートタイム就労で父親がフルタイム就労」、「母親が無職で父親がフルタイム就労」の3つの形態の家庭について子ども達の生活実態を分析した以下は、t検定の結果、有意差がみられたものについて示した。「両親がフルタイム就労」では、東北の方が、朝ごはんを家族みんなと一緒に食べている家庭が多いこと、洗濯機で衣服の洗濯をし、とれたボタンつけをいつもする子どもが多いことがわかった。「母親がパートタイム就労で父親がフルタイム就労」では、朝ごはんの食べ方は全国では大人の誰かと一緒に食べている家庭が多いが、東北では家族みんなと一緒に食べている家庭が多いこと、また、全国の方が食事の用意をする母親が多いことがわかった。これらは、家族の人数や両親の通勤に要する時間などと関連することが推測された。
著者
吉原 崇恵 加賀 恵子 鈴木 裕乃
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.51, pp.80, 2008

目的 家庭科は体験的な学習をとおして、生活のしくみやよりよく生活するための知識や技術を習得することを目指してきたそのために実験や実習、そのほかの多様な体験的学習の方法も開発してきた。なかでも実習授業は子どもが気づき、考え、わかる、できることを育てる問題解決学習過程の中で、導入、展開あるいはまとめの段階において位置づけられ、豊かな教材と価値を生み出してきたと思われる。しかしながら、子どもたちの手が「虫歯」になっただけではない。「自分が傷ついたり」「他人を傷つけたり」する、またはその前段階の事例も多く、指導過程において危険回避の指導スキルが求められてきた。各教科書において「安全喚起マーク」のページやスペースを設けられているのも工夫の証である。ただしこの「安全喚起」の内容は、「ガスコンロのそばに燃えやすいものを置かない」「包丁は持ったまま歩き回らない」という表現になっている点が特徴的である。危険を予知し、回避する能力の育成とそのための指導の方策を追究しなければならない。そのために実習授業の観察記録をもとにKYTシートを作成し、危険箇所チェックと危険度の評価調査を行っている。昨年の報告では、大学生の教育実習経験者と未経験者で比較した。その結果、二者の間では大きな違いは見られなかった。今年度は中学生、小学生自身の危険予知の実態を把握することを目的とした。方法 調査内容は調理実習時間と被服製作時間における危険な場面をイラストによって想定したKYTシートを用いた。また危険度の評価をさせた。危険な場面の想定は次のとおりである。調理実習の場合。1.ザルから水をこぼしている。2.包丁の使い方がよくない。3.(調理台の)扉が開いている。4.まな板が机から出ている。5.火の傍に燃えるものがある。6.歩く時の包丁の持ち方が良くない。被服製作実習の場合。1.よそ見しながらアイロンを使っている。2.はさみを振り上げている。3.アイロンがコンセントにつながれたままになっている。4.ミシンの使い方。5.マチ針が出しっぱなし。6.ミシンの電源が入ったまま針を取り付けている。危険度の評価は高い順に4段階である。a.すぐにやめさせる。b.状況が変わると重大事故、状況を見て注意。c.いつか事故になるかもしれないので後で注意。d.事故にはならない。調査対象は小学校が浜松市公立小学校、附属小学校各1校(計132名)。中学校は附属浜松中学校、焼津市、藤枝市公立中学校(計205名)。対照として教員免許取得希望大学生(計42名)である。調査時期は2008年2月~3月。結果と考察 危険度a評価について調理場面では火の傍に燃えるものを置かない、歩く時の包丁の持ち方が多く指摘された。小中大学生ともに同様であった。被服製作場面ではミシンやアイロンの電源が入ったままについて多く、次によそみの作業、はさみの扱いが続いた。小中大学生ともにほぼ同様であった。危険度b評価は、状況を見る項目である。これは調理、被服場面のいずれにおいても小学生が多くあげており、調理では、まな板が机からはみ出ている、ザルから水をこぼしている、を指摘していた。同じく小学生が多くあげたb評価の被服場面ではよそ見しながらのアイロン使い、マチ針を出しっぱなしであった。大学生は他に比べてa評価項目が多く、小学生は他に比べてb評価項目が多くなっていた。大学生が指導的立場で考え指示が多くなるのではないかと思われた。子どものわかり方を把握すれば変化するかもしれないと考えさせた。小学生のb評価は自分の不安さが表れていると考えられる。同じ視点で見ると中学生が他に比べてaもbも少なくcの一般的注意、注意しないという評価が多くなっていることは自信、過信を示していると思われた。
著者
望月 朋子 河村 美穂
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.59, 2016

<b>研究目的</b><b></b><br><br>DeCeCoによるキーコンピテンシーが世界的な注目を集め、教育現場では関連した科学的リテラシーの育成が急務の課題とされている。PISA調査(2003)では科学的リテラシーを「自然界および人間の活動によってつくり変えていった自然の変化について理解し、意思決定できるために、科学知識を駆使し、問題を見分け証拠に基づく結論を引き出すことのできるような能力」と定義している。家庭科では、教科として成立して以来、生活を科学的に理解し、科学的知識を応用しながら生活を営むことを目指してきたが、PISAが定義したこの科学的リテラシーでは、十分に生活を科学するということを説明できないと考えられる。<br><br>そこで、本研究では家庭科における科学的リテラシーを「自然界および人間の活動によって変化した自然や生活、社会状況について理解し、必要に応じて意思決定するために、文化的、社会的、自然科学的な知識を活用し、自らの生活に即して問題を見分け、証拠に基づき生活がよりよくなるような結論を導く能力」と仮に定義する。本研究は、実際の調理実習の授業において文化的、自然科学的知識を学んだ生徒が、どのようにそれらの知識を捉えているのかということを生徒の授業記録を対象として探究し、明らかにするものである。<br><br><b>研究方法</b><b></b><br><br>対象とした授業は2016年1月~2月に実施した静岡県東部公立中学校2年生2クラス84名(男子44名、女子40人)「ちらしずしを作ろう」である。本研究では、授業前(2016年1月)と授業後(2016年2月)の2回に同一の質問紙調査を実施し分析データとした。調査項目は、以下の通りである。(1)食文化に関する設問(1問):どんなときにちらしずしを食べると「おいしい」と感じるか。それはなぜですか。(2)食品科学に関する設問(2問):①さやいんげんをゆでてからざるにとって水にさらす理由について書いてください。②うす焼き卵をきれいにつくるために大事だと考えること書いてください。いずれも生徒に自由記述させ、それぞれの設問の記述についてカテゴリーを生成、分類して検討を行った。<br><br>&nbsp;<br><br><b>結果と考察</b><br><br>設問(1)の「どんなときにちらしずしを食べるとおいしく感じるか」では、授業前には、行事、ひなまつり、お祝いのときが44人で、授業後には57人であった。その理由として、「ひな祭りのときにだいたい食べるから」、「お祝いするときに食べる料理だから」等行事の時に特別に食べる記述や「親せきなど、みんなが集まったとき」といった大勢で食べる場面を想定した回答が増加していた。<br><br> 設問(2)「さやいんげんをゆでたあとに水にさらす理由」には、授業前の回答は、「色が鮮やかに、濃くなる」4人、「食感がよくなる」14人、「わからない」42人であり、授業後はそれぞれ60人、10人、4人であった。<br><br>設問(3)「うす焼き卵をきれいにつくるために大事だと考えること」についての記述を分析したところ、授業前はとき卵をなるべくうすくひくというような「うすさ」に関することが29、こがさないように気をつける「焼き加減」に関すること21、「火加減」に関することが15であった。授業後は、卵を全部ではなく、何回かにわけてやくというような「うすさ」に関すること43、こげないように注意したという「焼き加減」に関すること24、卵を焼く温度を保つという「火加減」に関すること31、であった。記述総数は調理実習後に増加していた。以上のことから、調理実習を通しても食文化について理解可能であること、調理科学についてはゆでて水にさらすと色が鮮やかになる「さやいんげん」について理解しやすいこと、一方でうすやき卵を作ることに関しては、科学的な理解よりも作る手順をより必要なものとして学ぶことがわかった。
著者
青木 幸子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.61, 2018

<目的><br> 2011年3月11日の東日本大震災から7年が経過した。復興した町や人々の生活の様子が伝えられる中、避難生活を余儀なくさせられて人々もいる。災害遺構の保存が進む一方で、被災地の人々からは災害の風化を懸念する声も聞こえる。被害の爪あとは世代を超えて建物や人の心に受け継がれていく。<br> 家庭科は日々の生活を健康・安全・快適に営むために、実践的・体験的な学習活動により知識・技能の習得とともに、人や環境への影響を考えて自律的に生活を創造していく自立と共生の能力を育成することを目指している。現在、高等学校の約8割が「家庭基礎」を選択しており、4単位から2単位への履修単位減は、衣生活や住生活分野をはじめとした学習内容の削減、実習や交流体験、調べ学習・発表・話し合いなど生徒が主体的に取り組む学習活動の削減となって教育現場に大きな影響を及ぼしている。<br> このような授業時数の制約の中で、筆者は生徒が意欲を持って主体的に学習活動に取り組み、生活を体系的に理解し、学習成果を生活の改善向上に適用していく能力を習得するための一方策としてトピック学習による可能性を示唆してきた。トピック学習は、学習者の興味・関心や生活知を尊重して学習分野を固定せずに内容を構成し、学習者による個別・具体的な学習活動を特徴としている。<br> 本稿は、主に住生活分野で担われている防災対策を複数の分野にわたる取り組みを通して、生活の体系的な理解と多角的なリスク認識の可能性について、高校生を対象とした授業分析を通してトピック学習の効果を検証することを目的とする。<br><方法><br>1.埼玉県立高校Bにおいて、学校長・家庭科教員の承諾を得て、2年生を対象に「家庭基礎」で授業研究を実施した。<br>授業前に「『生活のリスク管理』に関する意識調査」「ひらめき連想調査」を、授業後に「『生活上のリスクを考える』学習終了後の調査」を実施した。3つの調査および調べ学習、発表、相互評価を取り入れた授業中のワークシートなどすべて提出した6クラス205票を有効票とし、分析の対象とした。<br>2. 生涯に起こる可能性のあるリスクのうち高校生に比較的身近なリスクを対象に事前調査を行い、リスクに関する意識について中学生を対象とした先行研究の結果と比較し、特徴や傾向について把握する。<br>3.事前調査およびワークシート、授業後の調査結果を分析し、災害のリスク要因について認識の変化と授業の効果を分析し、トピック学習の可能性について検討する。<br><結果と考察><br>1. 予想される生活上のリスクのうち、高校生は「生活への被害の程度」について10項目すべてが4段階評価で平均値3.0以上であった。自然災害のリスクは3.38と中学生の3.61よりは低かった。しかし、環境問題、インターネット上の問題、健康問題のリスク意識は、中学生を上回っていた。<br>2. 自然災害のリスクに対する備えとして、非常用の水・食料や非常持ち出し袋の準備、避難場所とルートの確認の認識は高かったが、家族での話し合いや防災訓練への参加は若干低かった。<br>3. 授業前の「ひらめき連想調査」において、授業内容に関するキーワードは一人当たり平均6.44個であったが、授業後のキーワードは8.29個であった。キーワードの増加は、災害に関連するリスクへの認識が拡大したことを意味する。また、授業内容を踏まえ、自身が関心のあるリスクを記した者が12名おり、キーワードは一人当たり6.58個であった。<br>4. 授業後の学習内容と学習方法に関する6項目の評価について、「とても効果があった」「やや効果があった」と肯定的にとらえていた生徒は92.7~99.5%であった。<br>5. 生活に根ざした内容と実感的理解を促進する主体的・体験的な学習活動を特徴とするトピック学習の効果が認められた。
著者
日景 弥生 青木 香保里 志村 結美
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会誌 (ISSN:03862666)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.125-135, 2017 (Released:2018-11-01)
参考文献数
10
被引用文献数
1

The purpose of this research is to clarify perspectives of teachers without the license of home economics education (LHEE) by comparing those with the LHEE. Perspectives of teachers with the LHEE were better than those of teachers without the LHEE. Additionally, the teachers with the LHEE thought that problem solving ability was more important, and they utilized resources such as homes and community which were the basis of students’ livelihood. However, teachers without the LHEE had almost no time to research materials for teaching some subjects in addition to home economics education, and they were able to take the line of least resistance such as worksheets. The quality of home economics education was influenced by difference between teachers with the LHEE and those without the LHEE. In order to ensure study opportunity, the boards of education need to prepare support system for teachers without of the LHEE, and reform teachers’ license system immediately.
著者
栗原 恵美子 和田 早苗
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.61, 2018

<目的><br> 平成29年3月に中学校学習指導要領が告示され、移行期間を経て平成33年度より全面実施される。実践研究してきた余熱保温調理の学習に関して振り返ると、新学習指導要領の基本理念、技術・家庭科の目標の実現、SDGsの実現、に合致する内容が多いことがわかった。<br> そこで平成33年度に向けて、今まで実践してきた内容を更に省察し、余熱保温調理の学習の効果と課題を明確にし、また家庭科教育及び学校教育で、SDGsへの意識を高める余熱保温調理の学習の可能性を提案すること、を目的とした。<br><br><方法><br> 先行研究として、保温調理に関する文献等にあたり、保温調理のメリット・デメリット等を調べた。その後、中学校家庭科調理室で保温実験等実施し、授業への展開を探り、授業実践研究を行った。<br> 学習後、生徒へ自主的な取り組みとして課した探究活動レポートを分析し、また振り返りアンケートを実施し、学習の効果等を明らかにした。<br> また実施上の課題解決の方策を検討すべく、協力を得られた教員にインタビュー調査を実施し、余熱保温調理学習の可能性を探った。<br><br><結果・考察><br> 第2次世界大戦中の余熱保温調理に関して記載している文献(沼畑金四郎著・宮崎玲子著等)があり、それらから「…助炭と称して、やかんを覆う綿入れカバー、鍋の保温におがくずや綿を詰めた保温箱…」等、当時限られたエネルギーを大切に使う様子が掴め、また先行研究・著書(香西みどり著『加熱調理のシミュレーション』)より「…沸騰を続けなくても比較的高い温度が保たれれば、温度に応じた反応速度で調理が進んでいく…」等の情報を得ることができ、授業実践研究に活かすことができた。<br> 都内の国立大学附属中学校調理室で諸条件の下実施した、温度降下測定実験(2014年5月)では、約1時間保温後は約98℃から約90℃、約2時間保温後は85℃前後、と充分調理に適する温度が得られることがわかり、授業実践に繋げることができた。<br> 授業では、市販の保温鍋と手作り保温鍋(鍋を新聞紙とフリース布地で包んだもの)の温度降下等の比較実験を実施し、生徒は調理したスープを試食した。「思っていたよりも温度が下がらず、多くの利点があると思った」等、授業後に回収した生徒のワークシートの自由記述から、驚きと楽しく学べた様子や意欲等みとれ、学習の効果が確認できた。<br> 長期休みに生徒が自主的・発展的に取り組んだ余熱保温調理レポート(2014年度実施 n=11)分析からは、保温方法として「発泡スチロールの箱」や「どてら」を利用する等の様々な創意・工夫が見られ、余熱保温調理のレポート発表後のワークシートでは「100年後も同じ空が見ていられるために」といった標語を記す等、持続可能な社会の構築に向けて、生活を工夫し創造しようとする実践的な態度がみとれ、余熱保温調理の学習の効果が確認できた。<br> アンケート調査(2017年3月実施 n=112)では、エネルギーを大切に使う意識は93.8%が高まったと答えている。<br> 一方実践研究をすすめる中、学校によっては、授業内での保温時間の確保や、食中毒の懸念といった余熱保温調理の学習の課題が明確になった。そこで複数校の教員(n=5)にインタビュー調査をし、実施可能な対応策として、休み時間を利用しての計測、総合的な学習の時間を利用、食中毒の直前学習等様々な方策が上がり、実施するために可能性を検討できた。SDGsに直接的・間接的に繋がる、可能性のある余熱保温調理の学習を、継続研究し、家庭科授業から教育の場全体に提案したい。
著者
中村 真理子 永田 智子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, 2014

【背景と目的】<br>&nbsp; 2009年告示学習指導要領における改善の基本方針,及び学習指導要領解説家庭編から,家庭科教育において&ldquo;生涯を見通す視点を明確にし,一生の中で家族や生活の営みを総合的にとらえる力&rdquo;が求められていることがわかる。<br>&nbsp; 一方,学習内容は大して減っていないにもかかわらず,必修科目の主流は2単位の「家庭基礎」であり,家庭科の授業時間は半減したといえる。そこで,学習内容の関係性を高めて一連の流れをつくり,少ない時間ながら内容の濃い授業にするために,ライフデザインを「家庭基礎」の主軸に据えることにした。ライフデザインとは多様な夢や目標を考えることで,生活設計に該当する。<br>&nbsp;&nbsp;「家庭基礎」の学習内容をライフデザインで包括するために,年度当初の単元「自分の生き方と家族(以降「導入単元」とする)」で,ライフデザインに直接関わる授業を実施し,生徒一人ひとりに「人生すごろく」を作成させる。この「人生すごろく」をベースとして,導入単元以降の授業を展開しようという計画である。<br>&nbsp; 本研究では,導入単元の効果を検証するとともに,その後の授業に生かす課題を把握するため,すなわち形成的評価のために,生徒が作成した「人生すごろく」を分析することとした。<br>【方法】<br>&nbsp; 導入単元において作らせた3クラス118人の「人生すごろく」を分析・評価した。<br>【結果と考察】<br>&nbsp; 導入単元の指導目標には「生涯発達の視点」「各ライフステージ課題の認識」「青年期の課題の理解」等があり,これらが達成されたかをみた。ほぼ全員ライフイベントを10以上あげ,分岐を設けていた。悪いこと(アクシデント)については,学生特有の留年や受験失敗等や日常起こりうる嫌なことが多かった。良いことに比べて記入が少なく,また分岐も乏しかった。人生にはどんなアクシデントが潜んでいるか,より現実的に「自分の将来」を考える必要がある。そこで「家庭基礎」のまとめの単元で,もう一度この人生すごろくを振りかえらせ,起こりうるアクシデントについて考えさせる必要がある。<br>&nbsp; ゴールは生徒に自由に設定させた。死を想定している生徒が27%,老年期を想定している生徒が48%であった。これらを合わせると75%の生徒が自分の老年期の生き方まで思いめぐらすことができたと考えられる。成人期までで終わった生徒については高齢者福祉の単元で補充する必要がある。<br>&nbsp; 青年期の課題である進学や就職はほぼ100%記入されていた。また,成人期の発達課題については,結婚が86%,「親になること」は70%の生徒が記入していた。そこで,単元目標はほぼ達成できたと考えられる。しかし,残り30%の生徒が親になることを想定できていないことが明らかになった。保育の単元で補う必要がある。<br>&nbsp; ライフイベントやすごろくのコマの設定等から,具体的に生徒の職業観・恋愛観・結婚観・家族観などを認識できた。「結婚や出産したら仕事は辞めるのが当たり前」と考える女子生徒が多かった。ジェンダー等について授業で説明したにもかかわらずこのような結果となり,性別役割分業意識の根強さが明らかとなった。<br>【まとめ】<br>&nbsp; 「人生すごろく」の分析から,導入単元の目標を達成できたことがわかった。さらに生徒の作品を詳細に分析することによって,「家庭基礎」各分野における指導に生かすための課題を把握できたことから,「人生すごろく」が形成的評価として活用できることがわかった。&nbsp;
著者
野田 知子 伊深 祥子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.53, pp.82, 2010

家庭科教育学会課題研究1-1のグループでは、「食に関する教育 ―行動変容を目指した授業の検討―」という課題に取り組んだ。課題研究では、授業において、生徒が自己効力感をもつことが、意識と行動の変容を起こすことになるのではないかという仮説を立てた。 <br>研究の目的<br> 自己効力感を高める授業の要素は何か、を明らかにする。<br>研究の方法<br> 授業後の自由記述調査により、自己効力感が高まったという結果を得た、授業「なぜひとりで食べるの」(授業者:伊深祥子)を研究対象として、授業内容を録音、文字化して、次の二つの方法で分析した。<br>A.授業後、5人の教師・研究者で構成される研究会で、授業内容を共有した上で、授業者が省察し、検討をした。その内容を授業記録の「教師の思い・判断」に記入、また、その時の「教室の雰囲気」、授業の中での生徒の発言に対して教師が「発言の意味を推測」して記入して検討した。<br>B.授業記録から、教師と生徒の対応の仕方の特徴を探った。<br>省察(reflection)を協同でおこなう意味<br> 「教師の思い・判断」について、授業者は「研究会で言葉にして初めて認識した」と述べている。授業の中で、教師はその瞬間にとっさの判断で生徒の言葉に応えたり質問したりしている。その時の思いは記録には残らない。そこで複数の教師・研究者との協議の中で、その時、なぜそのような言葉を発したのかを思いだし言葉にすることで、「教師の思い・判断」が明確になる。また同時に、そのことが授業者・協議参加者の学びになる。<br>授業の流れ<br> 【_丸1_自分の食卓の絵を描く _丸2_VTR「なぜ一人で食べるの」(NHK1999年)を視聴する _丸3_「一人で食べる子どもたち」について考えたことを書く _丸4_皆の書いた考えを印刷して配り、その中からふたつ選んで、共感・批判の意見を述べる】 分析した授業は_丸4_の授業である。<br>結果<br>1.参加型の授業である<br> 授業は、生徒の声が交流する授業、教師と生徒が応答する授業である。・「なんで?」という言葉が13回以上記録されている。・「こんなこと話し合っても意味ないじゃないの。何も変わらないんじゃないの」というような授業の意味を否定する意見も言える。<br> 生徒が主体的に自分の言葉で発言できることは自己効力感を高めることの土台となると考える。 参加型の授業ができる要素として下記の3点があげられる。<br> _丸1_積極的に考える生徒(「考える授業」に取り組む)<br> _丸2_意見・批判・共感等をじっくり考えさえ述べることの出来る時間<br> _丸3_入学時から取り組んだ教室の風土など<br>2.共感を示す教師・発言する生徒の存在をまるごと受け止める教師<br> ・・授業者は「一人で食べる事が多いので、全員で食べたら疲れちゃったんだね」など、生徒の発言に共感を示す対応をしている。「共感」という言葉が、1コマの授業の中で、教師13回、生徒5回記録されている。<br>・発言している生徒に対して、「Kの家は複雑な家庭だ。大丈夫かな?」<br> 「ちょっとKを助けよう」など、生徒の背後にある家庭状況なども考慮して応答している。<br> 生徒の多様な意見や生徒の存在を丸ごと受け止める教師、価値観の一方的な押しつけはしない教師の姿勢が、生徒の発言意欲につながり、生徒の声が交流する授業を成立させ、生徒の自己効力感を高めることにつながると考える。
著者
信清 亜希子 西谷 圭二 佐藤 園
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.82, 2009

[目 的-本継続研究の目的と本発表の位置づけ-]<BR> 平成20年に改訂された新学習指導要領では、各種調査結果の分析から「確かな学力」「豊かな心」「健やかな体」の調和的育成による「生きる力」の育成を基本理念としている。この中で家庭科は、特に「豊かな心」「健やかな体」の育成を担う教科として位置づけられ、わが国が抱える教育問題を解決する重要な役割を負っている。ところが、小学校家庭科は第5・6学年にしか課されていない。しかし、家庭科が前述した役割を持つ教科として学校教育に位置づけられている以上、家庭科でしか身に付けられない能力の育成は、全学年の子どもに保障されなければならない。そのためには、系統的に組織した家庭科の学習内容を小学校低学年から教科「家庭」として一貫して学ぶ方が、子どもにとってより意味があると考えられる。この課題解決のためには、昭和31年度版『小学校学習指導要領家庭編』で示された「家庭科が第5学年から課される三つの理由」と「教科成立の4条件」から考えるならば、第一に「家庭科を第5学年からしか学べない理由」を事実に基づいて検討し、小学校低学年からの家庭科学習実践の可能性を理論的・具体的に実証し、第二の課題となる制度・行政的に小学校全学年の教科として「家庭」が位置づけられ、目標・内容が学習指導要領に規定されなければならない。本継続研究は、この問題意識に基づき、第一の課題検討を目的として、平成20年度例会では、米国N.J.州初等家庭科プログラムにみられるカリキュラム構成原理を分析し、小学校低学年からの家庭科学習の論理的可能性を明らかにした。平成21年度大会では、米国初等家庭科プログラムを参考に、わが国の小学校低・中学年で試行する「食育」をテーマとした投げ入れ授業としての家庭科学習指導計画「なぜ、食べるのか?」を、科学的認識の獲得を目的とする「教授書試案」の形式で開発した。本発表では、その試案に基づき、平成21年度2学期に実践した結果を分析し、小学校低学年からの家庭科学習実践の可能性を検討したい。<BR>[方 法-小学校第2・4学年における家庭科授業の実践と分析-]<BR>(1)授業の対象者・実践者・実践年月日;○岡山市立西小学校第2学年(男子19名、女子15名、計34名)・西谷圭二(学級担任)・9月15日5校時 ○吉備中央町立大和小学校第4学年(男子11名、女子4名、計15名)・信清亜希子(学級担任)・9月30日6校時<BR>(2)授業の実施内容;時間の関係で、指導計画「なぜ、食べるのか?」(1.なぜ、食べるのか?・2.何を食べているのか?・3.何を食べるのか?どのように食べるのか?)の「1.なぜ、食べるのか?」を実践した。<BR>(3)授業の分析方法;授業記録(VTR、子どものワークシートの記述)に基づき、「家庭科が第5学年からしか学べない理由」から、1)この学習で子どもはどのような知識を獲得したのか・2)その中で、他教科の基礎的な理解と技能は応用されたのか・3)1)2)には、どのような子どもの発達段階の違いがみられたのか、の視点を設定し、分析を行った。<BR>[結 果-小学校第2・4学年における家庭科授業実践の結果と評価-]<BR> 学習全体を通して、両学年ともに国語(話す・聞く・書く)、第2学年では、算数(三位数の整数を含む減法)・生活科(植物の成長)、第4学年では、体育(保育・毎日の生活と健康)・算数(小数の減法)・理科(植物の成長)を応用して子どもは思考をし、本時のMain Question「なぜ、私たちの体はこれだけ大きくなったのか」「なぜ、私たちは食べるのか」に対する答え(知識)を導出していた。それらの知識は、本時の到達目標であった「空腹を満たすために食べる。」「自分の体を成長させるために食べる。」の他に、「たくさん食べ物を食べたから大きくなった。」「いろいろな食べ物を食べたから大きくなった。」「食べ物の栄養で大きくなった。」「好き嫌いなく食べたから大きくなった。」、「食べないと力(元気)が出ないから食べる。」「食べないと運動や勉強ができないから食べる。」「体を健康にするために食べる。」等に分類され、それらは、第2次「何を食べているのか?」、第3次「何を食べるのか?どのように食べるのか?」で分析的に学習する「食物の種類・量」「私たちが食物を食べる理由-健康保持・活力(活動・運動・勉強)を得る」に繋がる「子どものこれまでの経験から直観的に把握した知識」となっていた。
著者
駒津 順子 小松 恵美子 森田 みゆき
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.51, pp.76, 2008

<B><目的></B> 高等学校家庭科で実施する「染色」教材の開発研究を行ってきた。高等学校家庭科において「染色」の辿ってきた歴史を知るために、高等学校学習指導要領・教科書等における「染色」取り扱い科目及び領域の変遷について調査したところ、家庭科における「染色」は、「更正染」「手芸染色」「生活文化の伝承」の順に変遷し位置づけられていることがわかった。今の時代を反映した「染色」教材を開発するための視点を検討した結果、高等学校家庭科における「染色」の授業は、「生活スキルの向上により生徒に自信を持たせ、自己理解を深めさせることができる」と考えられた。今回は、実践的な教材開発のために、「染色」教材や「染色」研究についての論文検索を行い、先行研究を抽出して内容を比較検討した。それらを元に教材化のための予備実験を行った。<BR> <B><方法></B> 論文検索は学会誌5誌と商業誌7誌を対象とした。学会誌は、繊維学会誌、日本家政学会誌、日本家庭科教育学会誌、日本蚕糸学会誌、化学と教育、であった。また商業誌は、染色研究、染料と薬品、染色工業、色材、月刊染織α、京染と精練染色、考古学と自然科学、であった。論文検索には、国立情報学研究所(NII)のポータルサイトであるCiNii(NII論文情報ナビゲータ)を使用した。論文は発表年が2005年までのものを対象とした。論文の抽出および分類は13のキーワード(染色法、色素の合成、分解、洗浄、環境、廃液、堅牢度、拡散、天然染料、染色教材、染色領域、顔料、その他)を設定し、論文タイトルから読み取り該当するものを抽出した。なお、「繊維学会誌」と「日本家政学会誌」の2誌に関しては、CiNii掲載以前の論文についても検索対象とした。<BR> <B><結果></B> 学会誌の検索論文総数は18,087件であり、染色教材に関するものは日本家庭科教育学会誌が1件、化学と教育が43件であった。一方、商業誌の検索論文総数は4,901件であり、染色教材に関するものは月刊染織αが8件であった。日本家庭科教育学会誌から抽出された論文は生野ら<SUP>(1)</SUP>によるものであった(以下論文1とする)。この他に、大学紀要等で発表されている論文2<SUP>(2)</SUP>、論文3<SUP>(3)</SUP>、論文4<SUP>(4)</SUP>を加えた4件の論文を検討対象とした。論文1は玉葱、紅茶、紅花、藍の染色条件を検討し堅牢性も調べた上で標本を作成しており、実践的な教材を検討するには最も参考になると考えられた。論文1の染色材料の中で手に入りやすいものは玉葱と紅茶であった。教材としては媒染剤による色相の変化が大きい方が望ましく、また被服だけでなく家庭科の様々な科目で実践が想定できることから、玉葱を染色材料に選び、論文1の実験条件をもとに予備実験を行った。実験はすべて水道水を使用して行った。のり無し白布を試料布として、同一染液で布を換えて2回染色を行い、色の濃さを比較した結果、目視では1回目染液染色布と2回目染液染色布の差は見られなかった。媒染剤は5種類を検討した。鉄明礬と硫酸第一鉄アンモニウムは暗緑色、カリウム明礬は山吹色、塩化カリウムとリン酸水素二カリウム、及び未媒染は薄茶色となった。<BR> <B><引用文献></B>(1)染色教材への天然植物染料の適用-主として玉葱・紅茶の場合-、生野晴美、堀内かおる、岩崎芳枝、日本家庭科教育学会誌、34、31-36(1990)、(2)地域素材を用いた染色教材の開発-さくらの葉を用いた場合-、日景弥生、三國咲子、弘前大学教育学部紀要、80、71-78(1998)、(3)小学校家庭科と関連させた「総合的な学習の時間」の構築-草木染めの教材化-、後藤景子、橘高純子、京都教育大学紀要、107、115-122(2005)、(4)天然藍の染色教材への適用、浦野栄子、萩原應至、信州大学教育学部附属教育実践研究指導センター紀要、7、181-188(1999)
著者
山田 桂子 日景 弥生
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.44, pp.36, 2002

&lsaquo;目的&rsaquo;第1報で報告した測定項目をもとに、中学生とその保護者のジェンダー観を比較し、両者の意識の関連を検討することを目的とした。<BR>&lsaquo;方法&rsaquo;1. 調査対象と時期;第1報と同様である。2. ジェンダー観の比較;中学生とその保護者、それぞれのアンケート項目で近似した項目を比較した。さらに、中学生と保護者を男女に分け、それぞれ得点の高い者(以下バイアス群)と低い者(以下フリー群)から順に約20%を抽出し、各群を詳細に分析した。<BR>&lsaquo;結果および考察&rsaquo;1. 両者のジェンダー観の比較;アンケートの近似項目では中学生およびその保護者ともほぼ同じ傾向を示した。しかし、「運動会の応援団長はいつも男子がやる方がよい」では保護者の方がフリー傾向を示したが、近似項目である「PTA会長は男性の方が活動しやすいと思う」ではバイアス傾向となり、この傾向は母親の方が父親より顕著にみられた。これより、保護者が自分自身に直接的に関わるものとそうでないものとでは無意識のうちに違う判断をしていることがうかがえた。2. 両者のジェンダー観の関連;両親がフリー群の場合は中学生もフリー群が、両親がバイアス群の場合は中学生もバイアス群が多くなった。これより、父親と母親のジェンダー観が似ている場合、その子どもである中学生も両親と同じ傾向となることが示唆された。
著者
平本 ふく子 松本 仲子 上田 フサ
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会誌 (ISSN:03862666)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.57-61, 1983

On the use of the measuring spoon in cooking, we examined the measurement of salt in Report 1. Weights of sugar and soy sauce were measured with measuring spoons in regard to the following points, for this report. Sugar : the kinds and the states of sugar, and by the ways of measurment. Soy sauce : the kinds of soy sauce, and by comparison of the measured amount of a spoonful, half and one third of a spoon. The results are as follows. 1) The measured amount of sugar differed in the kind and the state of the sugar. 2) The measured amound of the sugar differed in free measurement. After guidance and training of exact measurement, the measured amount and standard deviation was much near the free measurement. 3) The measured amount of soy sauce was much the same weight for all kinds. 4) In the way of free measurement, the measured amount of half and one third of a spoon was smaller than that of the measured amount of a spoon. After guidance and training of exact measurement, the measured amount and standard deviation was much near that of the free measurement.
著者
葭内 ありさ 石原 愛子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, 2013

&nbsp; 本実践は、高校家庭科に於いて食領域の学習である配膳の方法を、保育領域の教材制作を用いながら学習し、さらに小学校・幼稚園と学校種を超えた連携授業として試みたものである。<br>&nbsp; 近年、正しい食事の配膳の理解に乏しい生徒が多いことが調理実習時の配膳の様子からも見受けられる。また、和洋中の食器の区別をせずに用いようとする生徒もいる。食生活の文化に関心を持ち、配膳を生活文化として継承していくためには、家庭のみならず学校教育での実践が必要である。このため、本校高校家庭科の授業では、生徒の配膳に対する意識を高め、正しい配膳方法を楽しんで習得するために、絵本制作を用いた実践を行い、その効果を検証した。 <br>&nbsp; 方法は、高校1年次夏から2年次冬にかけての1年間余りにわたって授業実践を行い、その前後に学習内容がどのように定着したか分析した。まず、1年次の生徒の夏休みの課題として、白無地の絵本を配布し、和食の正しい配膳についての絵本制作を行った。その後正しい配膳がどの程度理解できているかを調査した。絵本制作は、家庭科の保育分野の教材として長年扱われており、子どもへの理解を深めるために、布絵本の制作等が行われてきた。しかし、ここでは、特に配膳方法に注目した絵本を制作することで、生徒自身が工夫し考える中での食分野の学習の定着を主眼とした。 <br>&nbsp; さらに、この学習はその後2年次に続く保育分野の学習の導入としても構想した。絵本は、読み手を幼児と設定し、色彩豊かなもの、立体化したもの、くり抜いたもの、マグネットや布、マジックテープを用いたものなど、生徒それぞれの工夫と発想を生かした表現力豊かな作品が出来上がった。 また、絵本という素材をより効果的な授業題材とするために、附属校間の連携した取り組みを行った。附属小学校に依頼し、高校生が制作した絵本を、小学5年生に読んで貰い、それぞれの絵本に感想を書き、高校生へのフィードバックとした。さらに、小学生4人グループで1冊の絵本を、「幼児が興味をもてるか、わかりやすいか」、をポイントに選んで貰った。この試みからは、時に高校生の視点と小学生の視点が異なることがわかった。この際、事前に小学生にも高校生と同様の配膳知識の調査を行ったところ、給食で用いている、主菜副菜兼用皿の盛りつけの影響と見られる配膳方法を提示する児童もおり、給食での配膳指導が児童の知識に影響を与えている様子がわかった。<br>&nbsp;&nbsp; 高校2年次になってから、附属の保育所や幼稚園訪問実習を行う際に、制作した絵本を持参し、5歳児へ絵本の読み聞かせを行った。保育分野の学習の後、経験をふまえて、再度高校生は8人グループで配膳絵本の絵コンテを作成した。ここにおいては、観察した幼児を念頭に置き、配膳が幼児にもわかりやすく、読み聞かせに適した絵本の制作を目指した。この授業は、最初の絵本制作から1年以上が経過している。そこで、再度同じ高校生に配膳方法の定着の調査を行ったところ、約7割弱の生徒が正しい配膳を覚えていた。一方、教師からの座学のみでの配膳方法の学習を行った学年では、学習後3ヶ月経過した時点での調査でも定着率は低かった。<br>&nbsp;&nbsp; このように、絵本制作を通した配膳学習は有効であることが認められた。しかし、絵本制作を行っても1年後に配膳が身についていない生徒も認められる為、家庭での日々の実践の促しや、学校でのさらなる反復学習が必要と思われる。<br>&nbsp;&nbsp; なお、本研究は、お茶の水女子大学附属小学校・高校石原講師との共同研究として実施された。