著者
小清水 貴子 松岡 文子 山本 光世 艮 香織 小倉 礼子 河村 美穂 千葉 悦子 仲井 志乃 仲田 郁子 中村 恵美子 松井 洋子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.51, pp.65, 2008

<B>研究目的</B><BR> 保育の学習は、母性の保護や子どもの成長・発達がメインである。平成12年高等学校学習指導要領解説(家庭編)では、「少子化の進展に対応して、子どもがどのように育つのかに関心をもち、子どもを生み育てることの意義を理解する学習を重視するために、子どもの発達と保育に関する内容の充実を図った」と述べられている。しかし、少子高齢社会を迎えたいま、中・高校生が小さい子どもとかかわる機会は減少している。生徒たちにとって、赤ちゃんをイメージし、小さい生命に対して自分と同じ命の重みを感じることは難しい。また児童虐待など子育ての困難さから、将来、子どもをもつことに否定的な生徒もいる。そのような生徒たちが、生命について考え、子どもを生み育てることの意義を理解するためには、保育の学習で何を取り上げ、どのような視点に立った授業をすればよいだろうか。<BR> そこで、死から生をとらえ直す授業として『誕生死』を教材にした授業を行い、その実践報告を通して保育で生徒に何を教えるか、保育の学習目標を明らかにすることを目的とする。<BR><BR><B>研究方法</B><BR> (1)メンバーの一人が『誕生死』(流産・死産・新生児死で子をなくした親の会著、2002、三省堂)を教材にした授業実践を報告する。(2)実践報告を聞いて教材や授業の視点について議論する。(3)議論を通して自身の保育の授業を振り返り、メールを利用して意見交換を行う。その後、メンバーが記述した意見をもとに議論・考察を行い、学習目標を検討する。<BR><BR><B>結果と考察</B><BR><U>(1)『誕生死』を教材とした授業実践の概要</U><BR> 授業は平成18年6月、高校2年生の選択科目「発達と保育」で実践した。『誕生死』から一組の夫婦の手記をプリントして、教師が読み聞かせを行い、読後に感想を記述させた。多くの生徒が、出産が必ずしも喜びをもたらすものではないことに気づき、生命の重みを感じていた。また、母親だけでなく父親や祖父母の胎児に対する愛情の深さを感じた様子だった。<BR><U>(2)実践報告後の議論</U><BR> 報告者は生徒の反応に手応えを感じたことから、一教材の提案として実践を報告した。しかし議論では、教材としての妥当性について賛否両論に分かれた。賛成意見では、夫婦の感情が手記に溢れてインパクトが強く、生徒の心に響くなどがあがった。反対意見では、逆にインパクトが強過ぎて生徒の心の揺らぎを受け止めるのは難しいなどがあがった。議論から、生徒に何を教え、考えさせるか、個々の教師が授業を振り返り、学習目標を明らかにすることが必要であることが分かった。<BR><U>(3)教材選択と教師が設定する学習目標</U><BR> 議論後の各自の振り返りから、保育学習の課題として「教材選択と妥当性」と「保育の学習目標」の二つの論点が明らかになった。「教材選択と妥当性」では、教師および生徒の問題意識、教師と生徒との関係性、教師の年齢や生活経験など教師自身のもつ背景が関係していることが分かった。「保育の学習目標」では、とくに生命の誕生に関する学習において、性感染症や中絶などの恐ろしさから生徒の行動抑制に重きをおく授業や、生徒自身の性をみつめることに重きをおく授業など、幅広い学習目標が設定可能である。どのような目標を設定するかは、生徒の実態から教師自身が必要と考える目標を明確にすることが必要である。<BR><U>(4)保育で何を教えるか―私たちが考える保育の学習―</U><BR> 保育では、誕生前より誕生後の子どもの発達にウエイトが置かれている。しかし、人の一生をトータルにみていくことが家庭科独自の視点である。そこで、家庭科教育の中でしか扱えない、誕生前後をつなぐ「性」「生命」を視野に入れた授業が必要である。
著者
星 良美 赤塚 朋子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集 第60回大会/2017年例会
巻号頁・発行日
pp.91, 2017 (Released:2018-03-06)

【目 的】 中学校の技術・家庭科の授業が少ないことから、技術または家庭科のどちらかの教諭が、配置されるか配置されないことが多い。家庭科の免許状をもった非常勤講師の配置がされることもあるが、他教科の教師が臨時免許状をもち担当していることも多い。また、家庭科の免許状をもった正規教員が配置されていても一校に一人が多く、毎日の校務に追われ教材研究などもままならないのが現状である。さらに家庭科の学習内容は時代と共に変化する内容であり、新任教員や臨時免許状教員に対するカリキュラムを作成する必要性を感じていた。 技術・家庭科の学習指導を進めるにあたり、家庭や地域社会における身近な課題を取り上げて学習したり、学習した知識と技術を実際の生活で生かす場面を工夫するなど、生徒が学習した知識と技術を生活に活用できるような指導が求められている。 そこで、中学校家庭科教員の実態を調査し、カリキュラムを作成するための課題抽出を研究の目的とした。【方法】 学校統計基本調査による教員配置の実態把握、家庭科担当者へのアンケート調査、臨時免許状教員へのインタビュー調査をおこなった。【結果と考察】1.教員配置 家庭科を専門外とする教員が、家庭科の授業をしている現実がある。「平成27年度学校教員統計調査」(2015年3月27日)によると臨時教員免許状による教科担当教員の割合は技術・家庭科が29.3%と教科の中で一番高い値を示している。全体の3割近くが臨時教員免許状で授業が運営されている。 家庭科を専門外とする教員が、家庭科を教えられるのは、教育職員免許法、第二章、第五条、六項の「臨時免許状は、普通免許状を有する者を採用することができない場合に限り、第一項各号のいずれも該当しない者で教育職員検定に合格したものに授与する」となっている。これにより免許外教科教授担任制が活用されているからである。家庭科では、この免許外教科教授担任制が全国的に導入されていることを確認できる。2.アンケート調査の結果<家庭科の学習内容について> 家庭科の教えやすい学習内容を質問したところ、新任教員、常勤教員、非常勤講師、臨時免許状教員とも「食生活と自立(1)中学生の食生活と栄養」であった。教えにくいところは新任教員、常勤教員、非常勤講師は「家族・家族と子どもの成長(2)家庭と家族関係」が41.2%であったのに対して、臨時免許状教員は、「衣生活・住生活と自立(2)住居の機能と住まい方」が52.2%であった。また「身近な消費者生活と環境(1)家庭生活と消費」は臨時免許状教員は50%、新任教員、常勤教員、非常勤講師41.2%と教えにくい学習内容として値が高かった。<授業形態について> 新任教員や常勤教員、非常勤講師は、調理実習、被服製作実習の学習活動が多いのに対し、臨時免許状教員は「ワークブックの穴埋め」を「よく行う・何度か行う」が95.2%で、授業形態で一番高い値を示した。これは家庭科の非常勤講師の「ワークブックの穴埋め」を「よく行う・何度か行う」が93.2%と同じような高い値を示している。<意見より> 家庭科を臨時免許状で教えている先生の日頃の授業についての意見からは、「家庭・家族をもっていれば家庭科を教えられるという、教科に対する周囲の考え方がある」「家庭科を教えて初めて家庭科の重要性をしみじみ感じている」や「授業や実習をやる前の準備がすごく大変だと感じている」「生徒の学びはとても多く、他教科では見られないような生き生きした姿を見せてくれる子が多いのでやりがいを感じる」などがみられた。3.インタビュー調査 臨時免許状で教えている先生方にインタビューを行い、「すぐできる授業の展開例があると授業がもっとやりやくなるのでほしい」「臨時免許担当教員の研修内容をもっと充実してほしい」 以上のことから、課題が山積している教科の姿が浮き彫りになった。
著者
山本 奈美 諸岡 浩子 長石 啓子 高木 弘子 渡邉 照美 福田 公子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.49, pp.6, 2006

<br>【目的】<br> 平成11年3月に告示された現行学習指導要領では、職業に関する専門教育としての家庭科は、生活関連産業の各分野で必要とされる資質や能力の育成を重視するという趣旨が明確にされた。これまでに、生活関連産業の高度化、サービス化、消費者ニーズの多様化等を踏まえて内容の改善が図られつつあり、さらに職業に関する専門学科としての家庭科を明確に位置づけるためには、日本版デュアルシステム導入の可能性を提言しておく必要がある。家庭に関する専門学科の中では、調理師養成課程をもつ専門学科は生徒数の減少が小さく、中国地方5県を調査した結果からも明確なキャリアパスに基づいて専門教育と職業を直結させた特色ある取組をしている様子がうかがわれた。そこで、今後の家庭に関する専門学科の発展の方向性を探るために、岡山県内のA高校調理科を事例として、カリキュラムと授業実践にかかわる実態やそこで学ぶ生徒の意識を調査し、日本版デュアルシステム導入の可能性について検討した。<BR>【方法】<br> 調査対象校は、岡山県内の私立A高校の調理科である。平成17年10月から12月にかけて、資料収集及び授業観察、アンケート調査を行った。さらにその詳細を把握するために、調理科担当教員及び外部講師、校外実習受け入れ先の担当者から聞き取り調査を行った。授業観察は、1~3年の調理実習をそれぞれ観察し、指導者の発言に着目して分析を行った。生徒に対するアンケート調査は、調理科1~3年生の150名から回答を得た。質問項目は、調理科への志望理由、調理科での学習内容に対する意識、卒業後の進路希望とした。<BR>【結果】<br> 調理科の教育課程は調理師養成施設の設置基準に基づいているため、調理師として要求される技術や能力が最低限保障されているものと考えられた。それに加えて、A高校の調理科は約20年の実績の中で教育内容の改善を重ねるとともに、マイスター・スクールなど学校独自の特色ある取組によって他校との差別化をはかり、生徒にとって魅力ある教育内容が準備されていた。調理実習の授業では外部講師を積極的に活用し、調理科教員による基本的な指導のうえに、外部講師によってより専門的な指導が行われていた。また、外部講師の活用は単なる技術指導だけでなく、生徒の職業意識の向上にも役立っていた。アンケート調査からは、多くの生徒は高校入学時にすでに職業を見据えた進路選択をしていることが分かった。また、調理科での教育内容に対する生徒の役立ち感は高く、調理技術の向上や調理科で学んだ経験が生徒の自信につながっていた。1年次の春休みから3回に分けて行っている校外実習は、生徒が調理師としての仕事を直接的に体験する機会であるとともに、受け入れ先のホテルとしても労働力の確保、雇用の面からメリットがあると受け取られていた。<BR> 日本版デュアルシステム導入の検討にあたり高等学校における調理師養成制度をみると、学校側は調理技術の習得など基礎的部分の指導を担当し、ホテル側は校外実習の場を提供することにより一定レベルの技能を身に付けた人材を確保しやすくなるなど、「日本版デュアルシステム」的な理念や仕組みに通じるものがすでに成立していると考えられた。これをさらに充実・発展させるために、また第1報も踏まえた他の家庭に関する専門学科での日本版デュアルシステムの導入に向けた今後の課題として、1.学校と企業の間でコーディネート機能を果たす組織の必要性、2.教員の資質能力及び人事管理と研修の在り方、3.企業実習の方法・形態及び評価の在り方、4.学校と企業の役割分担を踏まえた教育課程の編成、5.生活関連産業で求められる資質や職業能力について検討し、その担い手を育成する家庭に関する専門学科の社会的認知や肯定的なイメージ形成をどうはかっていくか、などが挙げられる。
著者
鈴木 明子 赤崎 真弓 西野 祥子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.46, pp.2, 2003

【目的】 子どもたちひとりひとりが家庭生活における意思決定をどのような基準で何を考えてどのように行っているのか、その実態を明らかにし、傾向を把握することは、児童・生徒の日常行動をふまえた家庭科カリキュラムの構築と授業設計のために必要不可欠である。本研究では「食事を主体的に準備して食べる」という状況における意思決定の背景を探ることを目的とした。【方法】 日本家庭科教育学会が2001年に実施した『家庭生活についての全国調査』の意思決定場面「休日にあなたが自分で昼ごはんを用意しなければならないとしたら、どんなことを気にかけますか」を用い、11項目について重視する順序を問うとともに、その判断基準や考え方を尋ねる自由記述形式の9つの下位質問項目を設定し、無記名自記式集合調査を行った。併せて休日の昼食などの実態について質問した。 調査時期は2002年9~11月、調査対象は九州地区の小学校4年生93名、小学校6年生105名、中学校2年生93名および高等学校2年生81名、計372名であった。男女の割合は各学年ともほぼ同数であった。 意思決定項目への順位づけの結果を分析し、特徴的な集団の自由記述から、意思決定の背景およびその問題を探った。【結果】 意思決定において重視する項目の順序には、4つの学年各々で有意差がみられた(フリードマンの検定、4学年とも〆0.01)。食事を主体的に準備して食べるという状況下での意思決定の際の基準やプロセスは多様であることが確認できた。このことをふまえてカリキュラムの構築および援業設計を行う必要がある。 しかしながら、夜業を行う際には学習者の意思決定の集団的特徴を知ることも必要である。何らかの傾向を探るために、中学生以下で1番重視すると答えた人数が最も多かった(高校生では2位)「自分で料理ができること」について、その該当者の自由記述を分析した。その結果、同じ項目を意思決定の順位づけの際上位にあげなかった(10および11番目に選択)者と同様に、手間をかけて食事を用意することを特に肯定する記述はみられなかった。該当者は2番目には「おなかいっぱいになること」や「後かたづけが簡単なこと」を気にすると回答した者が多く、このことを裏付けていると思われる。一方、野菜を食べることの大切さや添加物の問題を気にしている者もいたが、調理技能との関連について記述している者はほとんどみられなかった。児童・生徒たちの行動は、健康や環境を意識し、よりよい食生活を営むための必要性から発生しているというよりも、食べるということに対する欲求が大きい誘因となって起こっている場合が多いと推察する。 また、「野菜がたくさん食べられること」と「肉がたくさん食べられること」をそれぞれ1番目および2番目で重視すると答えた者の特徴を比較した。前者は女子に多くみられ、"野菜はいろいろな性質をもっている"、"野菜の栄養素は他で補えるものが少ない"、"身体にいいものが入っていないと不安"など栄養バランスに言及した記述も多く、「自分で料理ができること」も順位づけの上位であった。しかしながらその該当者の中にも、「添加物が少ないこと」を"気にしない"と記述した者が半数近くおり、意思決定の多様な傾向がみられた。また、後者の該当者は男子に多くみられ、「おなかいっぱいになること」を意思決定の順位づけの上位にあげた者が比較的多かった。 家庭科教師は、児童・生徒には多様な意思決定プロセスがあることをふまえ、軽業において、より質の高い健康な食生活を目指して何をしなければならないのかを考えさせる場面を設定することが必要である。
著者
荒井 紀子 鶴田 敦子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会誌 (ISSN:03862666)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.39-46, 1996-08-20 (Released:2017-11-29)
参考文献数
4
被引用文献数
6

The purpose of this study was to know how the new coeducational homemaking education in senior high schools, started in 1994, related to students' life and views especially on gender equity. 1490 questionnaires were analyzed. 1. Girls had more equal views on gender issues than boys. 2. Both sexes had equal views on the opportunities of work and wages; however, on gender roles they had relatively conservative views. 3. Both sexes tended to think the skills for independent living, housekeeping and child bearing were required for females, while the ability for earning money and helping other people were required for males. 4. Boys who had learned coeducational homemaking education and had practiced well on housekeeping had more equal views on gender issues.
著者
坂口 りつ子 北村 祥子 豊永 家壽子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会誌 (ISSN:03862666)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.42-49, 1981-12-15

We investigated how people who nurse children think about the existing state of the formation of basic habits on infants. As people who nurse children, we chose three different groups : mothers, nursery attendants and kindergarteners, and students of nursing school. The results were as follows : 1. They thought that training at nursery school or kindergarten was proper, and that home training was indulgent. 2. Half of them admitted that they trained their children properly at present. 3. Few of them denied corporal punishment, but at the same time, many of them kept rational training in mind. 4. They made light of training as a member of society. The results were significantly different among the three groups.
著者
矢野 由起
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会誌 (ISSN:03862666)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.290-301, 2015-02-01 (Released:2017-11-17)

小学校家庭科における食の安全に関する学習内容の変遷と課題を明らかにするため,小学校家庭科教科書の記述を分析した。結果は次の通りである。(1)学習指導要領で調理実習題材に指定することによって,調理技能を身に付けるだけではなく,その食品の選び方や扱い方についても同時に学んできた。(2)教科書における野菜の洗い方に関する記述は,野菜の栽培方法,野菜の食べ方,中性洗剤の安全性に対する評価などの変化に応じて書き換えられてきた。(3)小学校家庭科教科書における食の安全に関する記述は,それぞれの時代における問題や課題に応じて,また,新しい科学的知見を取り入れながら,書き換えられてきた。(4)食品の安全な選び方や扱い方を学ぶためには,食の安全に関する内容を調理の目的として,あるいは食の文化として学習指導要領に位置づけることも考えられる。
著者
武藤 八恵子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会誌 (ISSN:03862666)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.17-24, 1997-12-20 (Released:2017-11-29)
参考文献数
4
被引用文献数
1

Though menu learning is important, many classes in schools have problems. This study researched the changes that have taken place in description of the menu in the course of study, teachers manuals and text books for elementary schools, junior high schools and senior high schools since the end of World War II. Their objectives of learning contents were investigated. The results are the following: Contents and elements of menu learning have been simplified. Emphasis has been focused on food groups and the nutritional value of foods. If you try to teach just the nutritional value of food. There will be a problem that you cannot follow other kinds of elements of food life. Also, the contents of their elements are explained ambiguously, not described theoritically.
著者
山田 美砂子 鈴木 敏子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.54, pp.13, 2011

【研究の目的】 2009年改訂の高等学校学習指導要領では、必修家庭科に「共生社会と福祉」という項目が設けられた。家庭科において家族や地域社会などで、多様な人たちが共に助け合って生きていくという「人と人との関係性」がより強調されるようになったと思われる。本研究対象の高校生はその成長過程で、生活上の困難さや孤立感を味わいながら成長してきている。障害者としての彼らは「共生社会や福祉」という言葉を、「健常者とは違う自分たち」が健常者と言われる人たちから支援を受けるという面から受け止めてきた。多様な人たちが共に支え合う「共生社会」とはどのような社会か。「福祉」といわれる用語の中に込められた本来の意味は何か。支援を受け続けてきた当事者からの視点で、生徒と共に「共生社会や福祉」の意味を見直したい。題材として「子どもを生み育てる」授業の中で、「児童虐待」「赤ちゃんポスト」に関する報道を取り上げ、彼らと共にその意味を考える授業を構築することを目的とする。<BR>【研究方法】 授業実践校では必修家庭科は「家庭基礎」を各学年1単位ずつの計3単位行っている。現在、改訂学習指導要領の「共生社会と福祉」の視点から各学年のカリキュラムを作りつつある。本報告は2010年度の3年生(12名)の後半に行った「『子どもを生み育てる』ことの意義を考える授業」である。<BR>・題材として「児童虐待」と「赤ちゃんポスト」に関する以下の3点の報道を取り上げた。(1)児童相談所の児童虐待相談対応件数の推移(厚生労働省発表)の新聞報道(朝日新聞2010年7月28日)、(2)2010年7月末に発覚した「大阪の2児放置死事件」報道(朝日新聞2010年8月22日)、(3)熊本の慈恵病院の「赤ちゃんポスト」の番組「アレ今どうなった?」(NHK2009年6月1日深夜)<BR>・新聞記事やテレビ番組のビデオを見ながら自由に討論させ、出された意見を記録し論点をまとめていく。「赤ちゃんポスト」についての授業では、Y国立大学生10名が参加し意見を交換した。<BR>【研究の結果】 (1)の虐待相談対応件数の推移では、望まない妊娠や育児放棄など、親となることに責任を持てない大人達を批判する意見が多く出された。(2)の「大阪での2児放置死事件」の報道に対しては、初めは母親としての無責任さを痛烈に批判する意見が出されたが、一面的な批判に終わらせないために論点を次の3つに絞り話し合わせた。1.若くして子どもを生むことについて、2.母親だから責任を持てということについて、3.離婚し育児は母親一人が背負うことについて、である。ポイントを整理することによって、母親の状況を考える視点が出てきた。3の離婚することによる母親の負担に関しては、多様な家庭背景を持つ生徒たちから様々な意見が出された。(3)の「赤ちゃんポスト」についてのまとめの授業では、聾高校生と大学生に「設置に賛成か反対か」を敢えて決めさせ、意見を発表させた。聾高校生は賛成・反対が全く半数ずつに分かれたが、大学生は賛成:反対が9:1であった。賛成者の意見は、設置によって子どもの命が救われるからということであったが、聾高校生の反対の意見は親に捨てられてしまう子どもの気持ちが考えられていないと言うものであった。これまで設置の賛否が論じられるとき、子どもからの視点、特に「困難な子育て」状況に置かれてきた当事者の視点から考えられることは少なかった。困難な成長過程を経験してきた生徒達の発言にはその視点があった。この授業を経て障害者として感じてきた18年間の思いを「自分史」という形で綴らせた。一般社会の中で共に歩むことへの疑問を感じながら、生徒達は障害者も含めた多様な人たちが共に支え合う「共生社会」への構想を描きつつある。さらに実践を重ね生徒と共に目指すべき「共生社会」の意味を探っていきたい。
著者
柴 静子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会誌 (ISSN:03862666)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.39-46, 1997-08-20 (Released:2017-11-29)
参考文献数
33

In this study the significance and situation of 13 Textbook and Curriculum Libraries in Japan, which were opened in 1947 with many U.S.gift textbooks and reference books for teachers, was cleared from a position of home economics education.The main method of research was to use the documentary records of Japan which were in possession of the libraries of Kagawa University and Hiroshima University and the records of U.S.A., partly as an investigation of the actually perused U.S.home economics education books.The purpose of this first report was to grasp the outline of the library and the design and background of its establishment.The results were as follows: 1.In the summer of 1947, American Education Libraries which were located in 13 educational institutions throughout Japan were poened with 337 U.S.gift books.Later, their names were changed to Textbook and Curriculum Libraries and were increased further with Japanese books. 2.The American Education Library was brought to Ministry of Education from the U.S.War Department as a part of the educational policy for Occupied Areas.The design of the library was to expedite the step of revamping textual materials which was the main part toward a democratic education. 3.The War Department Textbook Committee selected the gift textbooks based on a standard criteria.In those books, five kinds of homemaking textbooks for high schools were included and four of them were sent to Japan.
著者
土屋 みさと 堀内 かおる
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集 第45回日本家庭科教育学会大会
巻号頁・発行日
pp.10, 2002 (Released:2003-04-02)

(目的)近年、制服のブランド化など「制服のファッション化」が進む一方、私服を制服のように着こなす高校生も増えている。高校生の服装規範意識の変化に対応し、被服教育も新たな教育的意義が問われている。そこで本研究では、制服や日常着にみられる服装規範と高校生のファッション観を明らかにし、今後の被服教育への示唆を得ることを目的とした。(方法)制服や服装規範に関するアンケート調査を2001年6月∼7月及び10月に実施した。対象は首都圏の高校生男女2002名である。有効回収率は88.5%、データはパーソナルコンピュータに入力し、集計ソフトSPSSを用いて分析した。(結果と考察)現在の高校生のファッション観の特徴として、(1)今だからこそできる自由な服装への指向、(2)自由さをあえて制限するような「枠」への依拠、の2点が認められた。高校生たちは、「自己主張」の一表現形態としておしやれをとらえながらも、準拠枠となる一定の服装規範を必要としていた。「枠」によって制限され服装が無個性化した中で、あえてその服装をわずかに変えることで個性を表現しようと試行錯誤している姿が見いだされた。したがって今後の被服教育においては 自分らしさを表現する力の育成が重要である。生徒の個性を表現しようとする意欲を尊重し、自らを主張する力の育成を通して、生徒が自己を見つめ直し、ひとりひとりが独自の自己表現力を身につけることが必要だと考える。
著者
中西 雪夫 柳 昌子 財津 庸子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.46, pp.3, 2003

【目的】 <br>家庭科では住まい方に関心をもったり、室内環境を整えよりよい住まい方.を工夫したりする能力を育成しようとしている。学習主体である児童・生徒は、現実の生活やマスコミなどの情報の影響を受けて様々な住まい観をもつと考えられる。本研究では日本家庭科教育学会の「家庭生活についての全国調査」の結果を踏まえながら、さらに児童・生徒の意識に踏み込んだ調査を 実施し、住生活についての具体的な教育狭題を得ようとするものである。<br>【方法】<br>全国調査の住生活に関する意思決定の10項目それぞれに下位質問項目を作成し、自記式質問紙法で九州地区の小学絞4年生93名、6年生108名、中学.絞2年生115名、高等学校2年生106名、合計422名に実施した。質問は「もしもあなたが一人で使える部屋をもらえるとしたら、どんなことを大切にしたいと思いますか」と尋ねた後、「もう少しくわしく答えてください」と求めた。回答は単語のみ、箇条書き、文章と様々であったが、コード化して整理・分析した。<br>【結果】<br>1 部屋と空間との関わり<br>(1)好きなように部屋をかざること 「何をどんなふうに飾るの?」と尋ねたところ、ポスター等「何かを貼る」という回答と、好きな物など「何かを置く」という回答が多かった。「貼る」では小4、小6女子が、「置く」では小6男子、中2女子が高かった。高学年になるにつれて家具の配置、部屋の色使いなどと回答は多様化している。<br>(2)片づけて整理・せいとんすること 「片づいた部屋ってどんな部屋?」に対し、きれい、整理された等、肯定的記述と、ゴミが無い、ごちゃごちゃしてない等、否定的記述に分かれた。肯定の中では「きれい」が全体として25%前後と高く、とくに中2男子、高2男子が高かった。否定の中では「散らかってない」が20%前後と高く、小6女子、中2女子が高かった。<br>(3)そうじをして、清潔にすること 「清潔か清潔じゃないかってどうやったらわかるの?」に対し、ごみやほこりが無いことという記述が多く、とくに小5男子が高かった。「わからない」の回答は男女とも小4に多かった。<br>(4)風通しをよくすること 「なんのために風通しをよくするの?」に対し、換気や温度調節の記述が多く、気分転換などの回答もあった。<br>(5)部屋の位置および部屋の佐用期限についての希望 これは地区独自の設定項目である。「家の中のどのあたりがいい?」に対し回答は多様であり、配置は「2階」が多かった。また「その部屋はいつまで使いたい?」に対し、「自立するまで」は学年進行とともに高くなった。<br>2 部屋と人間関係<br> (1)ひとりでのんびりすること「ひとりでのんびりするってどういうことをするの?」に対し、「寝ること」と答えたものは学年進行とともに増え、男子、とくに小4男子に多かった。読書など「動きが少ない活動」は小6が最も多く、どの学年でも女子が圧倒的に多かった。「動きが多い活動」を答えたものは少数であったが、低学年、男子に多い傾向があった。(2)静かに勉強すること 「静かでないってどんなこと?」に対し、「うるさいこと」というように反対語に言い換えた答えが最も多く、男子に多く見られた。「テレビの音」は、高杖を除くと女子の方が多く、学年では小6と中2が高かった。「人の話し声」はどの学年でも女子に多く、とくに小4女子が飛び抜けていた。(3)友だちをよんで楽しくすごす 「楽しくすごすために何をしたいの?」に対し、「ゲーム」は低学年、男子が多く、とくに小4男子が飛び抜けていた。「おしやべり」と答えたのは逆に高学年、女子で多かった。ゲームと限定せずに「遊ぶ」と答えたのは低学年女子に多かった。(4)部屋にいても家族のようすがわかる 「どうして家族のようすが知りたいの?」に対し、「知りたいとは思わない」は高学年ほど多かった。「何をしているのか知りたい」は小学生と高2女子に多かった。「安心する」など情緒面の答えは小学生に多く、中2女子にも多かった。「わからない」と答えたのは、小4男女に多かった。(5)パソコンやテレビなどをひとりで使う 「みんなでテレビを見るのとどうちがうの?」に対し、「好きな番組を見られる」という回答が最も多く、小6を除いて女子の方が多かった。ひとりで見ると「寂しい」という答えは小4男女にみられたが、他の学年ではほとんど見られなかった。(6)ドアにカギをつけて家族が入らないようにする 「どうしてそう思ようになったの?」に対し、全体では「カギをつけようと思わない」が多かったが、中学生には少なかった。カギをつけたい理由で「家族が勝手に入ってくるから」は中2が飛び抜けていた。「見られたくない物・事がある」はどの学年でも女子が圧倒的に多かった。
著者
青木 香保理
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.51, pp.97, 2008

【目的】<br> 城戸幡太郎は1951~1954年に小山書店(後に、生活百科刊行会)から刊行された『私たちの生活百科事典』(全20巻)の編集を行っている。同事典は、城戸による家庭科教科書である『わたしたちの生活設計』と連動する著作であり、「大項目、中項目、小項目等に分類し、小・中学校の教科内容を全部包含する」新しい《事典》で、家庭科のみならず教育課程の全体を視野に入れた新しい構想の具体化として編集された。 本報告では、_丸1_小山書店と『私たちの生活百科事典』の刊行に纏わる経緯、_丸2_事典としての特色と、事典の内容・記述の特長を中心に行い、城戸が構想した『私たちの生活百科事典』の構造をもとに、城戸の生活把握について述べる。<br>【方法】<br>文献研究による。<br>【結果】<br>_丸1_小山書店と『私たちの生活百科事典』の刊行に纏わる経緯<br> 『私たちの生活百科事典』(小山書店)の刊行の経緯は、小山久二郎(おやまひさじろう、1905-1984)著『ひとつの時代-小山書店私史-』(六興出版、1982)に詳しい。同事典刊行後の1955~1956年に、『わたくしたちの生活百科事典 学生普及版』が出されている。『私たちの生活百科事典』は、1951年に第5回毎日出版文化賞(毎日出版文化賞は1947年に創設)企画部門賞を受けている。同事典は、書店・読者・出版社の三者をつなぐ、書物の選定購入に関する読者の便宜の増進と販売をめぐる合理化と共同化により刊行される。_丸2_事典としての特色と、事典の内容・記述の特長『私たちの生活百科事典』は大項目式の事典である。事典は日常生活の必要から誕生し、社会の進展に伴いその形態は多様化した。知識の膨大化と知識を表す言葉の増加によって、言葉をアルファベット順に並べて説明する単語引きの事典(小項目式事典)のボリュームは増す一方だった。近代になると、事典に入れる内容は一層増大したため、事典は字引(dictionary)と百科事典(encyclopedia)に分化する。百科事典の多くは小項目式か中項目式の事典で、項目をアルファベット順や五十音順など単語で引く仕組みになっていた。これらの事典は、わからない事柄を単語で引くことができる点で便利である。しかし、複雑化する現代の生活にあって、知ろうとする事柄を事典で引くことができたとしても、膨大な知識の寄せ集めに終始しかねない。そこで、城戸は現代の生活に対応する「新しい内容と構成をもつ事典」が必要と考えた。「新しい内容と構成をもつ事典」の目的と概略について、城戸は以下のように述べている。<br> われわれは、生活が複雑になればなるほど、その複雑な知識を、一貫した思想で系統づけ、しっかりした理論で分類し、新しい知識の価値を自分の力で判断する力をもたなければならない。そのためには、知識の整理統合および判断の基礎を、つねに'生活'におかなければ、自分のものとはならない。こう考えてくると、これまでにあらわれた事典のほかに、まったく新しい内容と構成をもつ事典の出現が、どうしても必要になってくる。 城戸は、知識の整理統合および判断の基礎を「生活」において知識の系統化・価値化をはかるためには、知識をばらばらに並べる小項目式ではなく、ひとつの問題を項目として設定した大項目式が妥当と考えた。大項目式を採用した事典(第1巻~第16巻)では、生活と切り離すことのできない問題を取りあげ、各巻の題目とする。編集にあたっては、知識や情報の体系性、事柄の関連性などが総合的に把握できるように内容と構成を組織化する。一方、最終巻(第17巻『百科の使い方:総索引』)は特定の事柄について調べることができる小項目式を採用する。「どの巻のどのページには、どんな事項がのっているか、一目でみつけられる」ように工夫されている。子どもの生活経験に基づき、子どもの関心や疑問を出発点として、単語・単元・問題を関連づける索引により分析と総合が繰り返され、調査の方法を身につけることが目指された。
著者
立山 ちづ子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.47, pp.21, 2004

目的<br>消費生活センターなどへの消費者からの相談件数が昭和45年度に比べ平成14年度は18倍に増加し、約1,048,000件となった。近年は販売方法、契約・解約に関する相談が70~80%を占め、また20歳代未満と70歳代以上がふえている。とりわけ、子どもの相談が平成8年度は10,010件であったが、平成14年度は34,046件に増加している。なかでも15~17歳の高校生期で平成13年度以降急増している。熊本県は自己破産率が毎年全国5位以内に位置し多重債務者が多い県といわれる。本研究ではこの原因を探り、さらに多重債務を防止するために、高等学校家庭科「消費と環境」での学習重点事項を明らかにすることを目的とする。<br>方法 1 熊本県における多重債務者の原因の特徴を関係機関で調べた。2 「家庭経済」に関するアンケート調査を家庭科授業時間に配布し回収する方法で行った。調査期間は平成15年11月~平成16年1月。調査は熊本県、東京都、山形県の高等学校の普通科〈進学が多い学校と少ない学校〉、工業科、農業科、商業科の1~2学年、女837人、男745人、合計1,582人。<br>結果と考察<br>? 多重債務の原因は「熊本クレ・サラ・日掛け被害をなくす会」の相談者からの調べでは(1)生活費の不足による負債の発生、(2)ギャンブル・浪費による負担の発生、(3)悪徳商法の被害による負債の発生によるものが多い。職業別でみると1位パート・アルバイト28%、2位会社員24%、3位自営業15%で多い。多重債務家庭の子どもへの直接的な影響は1位債権者からの執拗な電話〈82%〉であり、その結果として子どもは学習意欲を消失〈80%〉、親を信頼できなくなる〈58%〉、などの事態が出ている。「やみ金」と立ち向かうためには、法律的知識学習が必要であるとされている。<br>? アンケート調査結果と考察:1 高校生の収入は毎月定額の場合、3都県ともに5,000円が最多である。定額を家族からもらう者は3都県比較で山形県が多く、熊本県が最も少ない。2 携帯電話の1ヶ月の支払額は5,000円が3都県ともに最も多い。その支払い者は熊本・山形では「家族」が70%を超え、東京が58%で少なく、「私」が支払う割合は東京が27%で多い。3 小遣い帳の記入者が多いのは東京・男で9%、少ないのは山形・男で2%である。3都県ともに少ない。4 わが家のことを知る者が多いのは東京・男で、収入について38%、支出について22%であり、支出について知る者が少ないのは熊本・男で15%である。家計の収支を高校生はあまり知らない(知らされていない)、とりわけ熊本・男で少ない。5 クレジットカードの貸し借りを「してはいけない」の回答率が高いのは東京・女54%。「してもよい」の回答率は熊本・男6.3%が最多であり、熊本・女は2.4%で少ない。6 年利29.2%の1年後返済金(概算)の正解率は東京・男73%、最小は山形・女42%である。3都県ともに利息計算力をつける必要がある。7 身近に多重債務者を知る者の最多は熊本・女35%、最小の山形・男18%である。その原因の第1位は3都県女男で「サラ金利用」で、続いて連帯保証人、ギャンブル、やみ金利用、リストラ、生活費の不足である。8 借金返済不能の場合の相談相手は、1位「家族」で最多の熊本・女で70%、最小の東京・男で46%である。熊本では家族で解決しようとする傾向が強いようである。2位に「消費生活センター」、3位に「弁護士」で熊本・男8%、東京・男7%であり、法律を活用する意識が3都県ともに低い。 9 結婚式は3都県ともに1位は「シンプルで祝儀金で間に合う程度」で46%〈東京・男〉~35%〈熊本・女〉、2位に熊本の女・男ともに「豪華に、自分の貯金と祝儀金で」26%で多い。熊本県は派手にする傾向が強い。10 18歳の契約の回答は3都県ともに三分され、契約の権利と責任の理解が不十分である。11 連帯保証人は債務者が「支払えない場合には支払う」の回答が3都県ともに最多で、熊本・女88%~山形・男58%であり、正解の「貸し手の請求で支払う」は山形・男で18%~東京・女で6%と少ない。連帯保証人の役割の認識がとても低い。多重債務を防止するための学習重点事項として、(1)本人・わが家の家計の実態把握と記録の習慣化(2)地域の生活慣行のふり返り(3)関連の相談機関の活用方法(4)契約やクレジット、連帯保証人については具体的な事例を通しての理解が重要であることなどが示唆された。
著者
青木 幸子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.53, pp.11, 2010

【目的】<BR> 男女平等は世界共通の課題である。今年度は、1979年の「女子差別撤廃条約」の採択から31年、85年の批准から25年とちょうど節目の年に当たり、しかも国連女子差別撤廃委員会への第6回報告書に対する最終見解の受理等と併せて、我が国の今後の取り組み課題について見直しを図っていく時期でもある。<BR> 政府においても第3次男女共同参画基本計画の策定準備が進められており、「男女共同参画社会基本法」に謳われた21世紀社会の喫緊の課題としての男女共同参画の新たな方針を検討中である。<BR> 固定化された男女の役割分担への意識や行動は、以前に比べると薄らいできたが、経済状況の悪化による環境整備は難しい局面を迎えており、男女平等への道のりは険しい状況にある。<BR> 一方、平成生まれの子どもが大学生となり、彼らは小学校から高等学校まで男女共学で家庭科を学んできた。家庭科に男女別学の時代があったことを知り驚いている状況があり、それほどまでに男女平等は彼らにとっては「当たり前」のことである。<BR> 1998年の教育職員免許法の改正により「総合演習」が大学の教職科目として新設された。爾来、「ジェンダーと教育」講座を開講してきたが、そのうち2年間をかけて『男女平等を考える教育カルタ』を製作した。<BR> 昨年度の大会において、このカルタを家庭科の授業で活用し、女子中学生のジェンダー観の涵養に果たすカルタ教材の効果を分析した。その結果、カルタ教材を使用した授業は、生徒の性差意識に揺さぶりをかけ、自らのジェンダー観をリセットする契機としての効果が確認された。<BR> 今回は、この「教育カルタ」を活用し、男女平等を当たり前と認識している教員を目指す大学生のジェンダー意識を分析し、「教育カルタ」の教材としての汎用性について検討することを目的とする。<BR>【方法】<BR>1.対象者;T大学「家庭科教育法_I_」履修者(大学2年)81名<BR>2.調査時期;平成21年12月~平成22年1月<BR>3.研究方法<BR> * 「家庭科教育法_I_」の授業中にカルタ大会を実施し、学生はワークシー トを作成する。<BR> * 授業後にジェンダーチェックを行なう。<BR> * ワークシートの記述内容とジェンダーチェックシートの得点から大学生の ジェンダー意識の涵養に果たすカルタの効果を分析する。さらに、中学生 の結果との比較分析を行ないカルタ教材の汎用性について検討する。<BR>【結果と考察】<BR>1.気になったカルタは、44枚中33枚とカルタ全体の75%に及んだ。選ばれ たカルタは、中学生の結果に比べると分散傾向にあることが確認され た。<BR>2.授業のワークシートの分析から、大学生は、考える>意思表示>分かる >気づく、の順で学びとっていることが確認された。これは、意思表示 > 気づく>分かる>考える、の順で学びとった中学生の学びとは明らか に異なり、学び手の発達段階や経験から多様な学びとりができることを 期待させる結果となった。<BR>3.ジェンダーチェックシートの分析から、固定的な性別役割分担の考え方 には反対する傾向が強いが、身体的・生理的特性に関する項目について は、固定的な性差観にとらわれる傾向が強い。<BR>4.本カルタ教材について汎用性が期待できるが、より多くの学びを提供で きる多角的な視点を持ったカルタの必要性が確認された。
著者
若月 温美 中山 節子 冨田 道子 藤田 昌子 中野 葉子 松岡 依里子 坪内 恭子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.53, pp.17, 2010

[目的]<BR>本研究は、社会環境の激変の中で進行する格差社会において、どのように生活経営を考え、暮らしをつくりかえていけばよいのか生活経営領域を中心としたカリキュラムを検討することを目的とするものである。本報告では、セーフティネットをどう構築していけばよいのかを探求する授業実践分析を中心に報告を行う。最後に、授業実践分析結果を踏まえながら、本研究の授業設計やカリキュラムの構築の課題を明かにする。<BR>[方法]<BR>対象校は、千葉県の私立高校(B校)と東京都の私立高校(C校)の2校である。対象学年は、B校1年生、C校2年生である。授業実践時期は、2010年1月~2月である。両校ともに4時間の授業計画で、導入で『ホームレス中学生』<SUP>1</SUP>を教材として用い、そこから住まいに住むために必要なこと(B校)や生きていくために必要なこと(C校)を考察させた。次に、派遣社員やネットカフェ難民の実態をVTRで視聴させ、格差や貧困の問題を身近な課題であることを理解させた。B校の対象者は格差や貧困の問題が自分の生活課題として捉えることが難しいことが予想されたため、VTR視聴後に自分自身の生活設計を考えさせた。両校ともに、最後に社会的排除を生み出す社会構造について解説し、ホームレスやネットカフェ難民、派遣社員などの厳しい生活実態から抜け出すためには何が生活資源として必要なのか、また資源を得るためには何が課題となるのかを考察させた。これらを踏まえて、自分自身の生活資源について考えさせ授業のまとめとした。<BR>[結果]<BR>導入の『ホームレス中学生』を取り上げた授業後の記述内容から、「住むこと」や「生きること」に必要なこととして、B校では、基本的な最低限度の生活を維持するのに必要な「物的資源」に関する内容やお金や仕事など「経済的資源」に関する内容が最も多く記述された。次に人や関係性に関する「人的資源」の内容が多く、具体的な記述としては「家族」よりも「近所の人」や「友達」などの記述が多くみられた。また、「個人の努力や能力、運、夢」など個人の資源や能力の問題として捉える記述も見受けられた。C校では信頼関係、頼れる人、家族、友人、つながりなど「人的資源」が最も多く記述され、続いて知恵、知識、資格などの「能力的資源」、「経済的資源」が続いている。その他、生きる希望、プラス思考などの「精神的資源」など、より多くの種類の資源があげられた。派遣社員やネットカフェ難民の実態については、両校ともに「初めて知った」や「大変だと思った」など驚きの反応が観察され、授業後の感想からは、これらの実態から漠然とした不安を抱きながらも自分の将来についてや仕事を得ることの重要性を客観的に見つめようとする様子が伺えた。社会的排除を生み出す社会構造の把握については、生徒の発達段階やこれまでの記述内容などを考慮し、それぞれ独自に工夫した教材を用いたことが効果的であった。自分自身の生活資源を考えることは、労働や福祉の諸課題、転落しやすい社会をどう変えていけばよいのかなど幅広い議論に発展することが明らかとなった。雇用労働環境が厳しさを増し、高校生の就職や進路も益々深刻な問題となっている中、自分がどうすればよいのかわからず悲観的あるいは消極的な状況に留まり続ける生徒の支援が今後の課題である。<BR>[課題]<BR>カリキュラム全体の課題としては、時間数の確保である。これまでカリキュラムの内容を厳選し、6~8時間計画のカリキュラム試案を提示した。<SUP>2</SUP> 試案を部分的に複数の学校で実施したが、時間数に関わる具体的な課題が見え、カリキュラムのコアを定めることがさらなる課題として明らかになった。<BR><BR>1 田村裕(2007)『ホームレス中学生』ワニブックス、田村 裕(2008)『コミックホームレス中学生』ワニブックス<BR>2 日本家庭科教育学会2009年度例会 分科会5配布資料
著者
都甲 由紀子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集 第60回大会/2017年例会
巻号頁・発行日
pp.65, 2017 (Released:2017-08-13)

1.研究目的・背景 スェーデンの絵本作家エルサ・ベスコフの代表作、『ペレのあたらしいふく』(小野寺百合子訳、福音館書店、1976年)について、家庭科教材として検討する。この絵本に描かれているのは、ペレが子羊を育てて毛を刈り、大人たちと労働力の交換をしながら、毛を梳いて糸に紡ぎ、糸を染めて布を織り、服を仕立て、服を着るまでの物語である。現在、家庭科の教科書には衣服材料の種類や衣服の入手、手入れの方法は掲載されているものの、衣服の製作工程についての記述は少なく、繊維材料から衣服がどのように作られているかについて学ぶ機会が限られている。しかし、衣服の製作工程から学べることは衣生活の内容に限定されるものではない。この絵本にはペレの行動のみが淡々と記述されており、手作りの衣服製作の工程はもちろん、付加価値の概念、労働力の交換、貨幣経済の成立、科学技術の発展、家族関係、ジェンダーなどの要素を読み取ることができる。この絵本の内容を、衣生活の範囲にとどまらない家庭科の学習に関連づけて、教材として提案することを本研究の目的とした。2.研究方法 描かれている衣服製作の工程について、交換した労働力と照らし合わせ、それぞれの工程の技術、社会背景にも着目して整理することとした。衣生活(布を使った製作実習の導入)・消費(貨幣経済の原点)・環境(大量生産大量消費との対比)・家族(家事労働・職業労働・ジェンダー等)の場面で学習する可能性のある題材として、家庭科の教材化を具体的に検討した。学習指導要領と家庭科教科書における被服・消費・環境・家族に関する学習内容よりこの絵本教材によって学習可能な内容を整理した。さらに、中学校における授業実践により教材としての有効性を検証した。3時間の構成とし、最初の1時間でこの絵本やICT教材を組み合わせて衣服の製作工程を説明し、次の時間に授業者が染色した刺繍糸を使用して刺繍の実習をし、最後の時間には衣服を手作りすることと大量生産することのメリットとデメリットを整理させ、生徒たちに豊かな生活を送るために必要なことを考えさせた。授業後に記入させたワークシートの記述を分析した。3.研究の結果 絵本の中で描かれている衣服の製作工程は羊毛を原料とした事例であるが、これを一般化した。繊維原料の用意、繊維材料の入手、繊維材料の梳毛、紡績(繊維を糸に)、染料の入手、糸の染色、機織(糸を布に)、縫製(布を服に)の段階が描かれていることを示した。染色の場面はペレ自身が行っており、染料はテレピン油のおつかいのお釣りで購入しており、貨幣経済も登場しているという点で特徴的である。染料は合成染料であることがうかがわれ、科学技術の発展の背景が存在する。このことを踏まえ、染色について重点を置いて授業実践を行なった。初回授業後の生徒の感想記述には、40名中30名の生徒が衣服の製作工程を理解することができたことについて言及しており、「衣服の製作工程を初めて知った」「絵本を使って楽しくわかりやすく知ることができた」という記述が見られた。3時間を通しての感想記述には、「衣服の製作工程を理解した」、「衣服を作る大変さがわかった」、「衣服を大切にしたい」、「衣服を手作りしてみたい」「手作りすることと機械で作ることのメリットデメリットが分かってよかった」、という記述が見られた。5.考察 『ペレのあたらしいふく』は衣服製作が身近に行われていた時代の絵本であり、衣服は購入すること以外に入手する選択肢がないと捉えている現代の日本の子どもたちにとっては学びのある内容の絵本であることが示された。衣生活の内容としては、衣服の製造工程を理解させ、布を使った製作の意欲を高める実習の導入に使用する教材として有効であることが示唆された。衣服製作工程を理解した結果として環境配慮や資源の有効活用に目を向けさせることもできた。今後はさらに、消費・家族の内容とも関連づけ、家庭科を総合的に学習できる教材として提案したい。
著者
堀内 かおる
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会誌 (ISSN:03862666)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.25-33, 1995
参考文献数
34
被引用文献数
1

The objective of this study was to clarify the process on the controversy concerning abolishment of Homemaking in elementary schools in early postwar period, Japan. GHQ/SCAP recordswere analyzed and it was found that Ambrose, E. V. , the elementary Educationists working at Education Division of CIE was the person who suggested the reform on Homemaking Education in elementary schools. One of the problems in regard to abolishment was the treatment of Homemaking teachers. Ambrose recognized that Homemaking teachers were afraid that they may be dismissed if Homemaking Education was abolished.
著者
佐藤 安沙子 藤田 智子 阿部 睦子 菊地 英明 桑原 智美 西岡 里奈 倉持 清美
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.61, 2018

【目的】<br> 近年、学校現場における安全・衛生面への配慮が期待されている。中学校家庭科の学習指導要領には、「安全と衛生に留意し、食品や調理用具等の適切な管理ができること。」(文部科学省,2008)とある。田中他(2015)は、大学生の食の衛生管理の実施状況は、下準備・調理時、後片付け時で特に意識が低いことを指摘している。さらに、河村他(2006)によると、生徒にとって調理実習は、楽しい時間であると同時に、調理技能の習得を目指すものであることが明らかとなっている。これらのことから、小・中・高等学校家庭科で衛生管理について学んでいるはずであるが実践されておらず、学校での調理実習においても衛生管理に意識が及ぶことは少ないと考えられる。<br> 本研究では、小・中・高校生の食の安全における衛生管理に関する意識を調査する。学校種間の衛生意識の相違と、ICTを活用した衛生管理に関する授業と調理実習での実践前後の衛生意識の変化を明らかにする。それを通し、授業での衛生管理の扱い方を検討する。<br>【方法】<br>(1)調査対象および調査方法<br> 調査は、東京学芸大学附属小・中・高等学校の児童・生徒を対象に、2017年9~11月に2回行った。1回目は、409名(小5:102名、中2:149名、高2:158名)を対象に、無記名自記式質問紙調査を実施した。2回目は、248名(小5:100名、中2:148名)を対象に、食の安全における衛生管理に関する授業実践と調理実習の後、1回目と同様の調査を実施した。なお、高校では2回目の調査は行わなかった。質問紙調査の有効回答率は、全て100%であった。<br>(2)質問紙調査内容<br> 食の安全における衛生管理について、「家庭」と「学校での調理実習時」の2つの状況において気を付けている程度を5件法で質問した。質問項目は、下準備・調理時、食事時、片づけ時などである。<br>(3)授業実践の概要(小・中学校)<br> ICTを活用した衛生管理に関する授業と調理実習を行った。<br>・小学生:衛生を意識した手の洗い方についての授業を行った。蛍光剤入りローションを手に付け、手洗いの様子を撮影し、手洗い方法や洗い残しについて検討した。調理実習は青菜をゆでた。<br>・中学生:バナナケーキの調理を通して、衛生を意識した食材の扱い方と手洗いについて、授業を行った。バナナの皮を触った後、触れた箇所をシールと映像で記録し、食材の菌の繁殖や手洗いの重要性について検討した。調理実習は煮込みハンバーグである。<br>【結果】<br> 衛生管理に関する授業前の学校種間の意識について比較をした。その結果、家庭においてはほとんどの項目において、「大変気を付けている」と回答した者の割合が、小・中・高の順に高かった。学校においては、小・高・中の順に高かった。これは、小学生は保護者や教員からの衛生管理への意識付けが高いことが考えられる。また、生肉の取り扱いに関しては、家庭・学校ともに中学生よりも高校生の方が気を付けている者が多かった。中学生はまだ学校で生肉を扱った経験がなかったことが影響していると考えられる。<br> 次に、授業前後の意識について比較をした。中学校では、ほぼ全ての項目で気を付けている割合が高まった。特に、手洗いに関する項目は大幅に増加していた。これは授業で重きをおいた、食材に触れた後の手洗いに関する学びの効果であることが考えられる。一方小学生では、意識変化があまり見られなかった。小学生は、衛生管理に関する授業前から意識が高かったことに加え、衛生に関する授業において食材を扱っておらず、具体的な調理場面における衛生意識との関連付けが難しかったことが考えられる。<br> なお、本研究は東京学芸大学平成29年度教育実践研究推進経費「特別開発研究プロジェクト」の研究成果の一部である。
著者
浅井 玲子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会誌 (ISSN:03862666)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.169-175, 2007
参考文献数
13
被引用文献数
3

The purpose of this study is to investigate the relationship between high school students' study experiences and their recognition of senior citizens' roles. The results were as follows: High school students' recognition of the senior citizens' roles was analyzed using factor analysis. Four factors were extracted including "Life perspective role," "Emotional help role," "Discipline and socialization role," and "Cultural legend role". There was a significant difference between students who studied senior citizens' roles and those who did not. The study experience in which the students had direct contacts with senior citizens showed the highest scores of directly get in touch. Factors that increased the score concerning students' recognition of senior citizens' roles were "Exchange experience between Senior citizens in community and students," "Exchange experience between senior citizens in nursing home and students" and "Interviewing senior citizens." The exchange program in home economics education was effective to improve students' understanding about senior citizens.