著者
禰屋 光男
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

自然環境の高地滞在と人工低酸素環境への曝露を併用したトレーニングがエリート競技者の総ヘモグロビン量や最大酸素摂取量の変化に及ぼす影響を検討した。研究対象者が限定されたため、統計学的な有意性は認められなかったが、平均値として、総ヘモグロビン量の増大が見られた。大学生中長距離選手では同様の形態でこれらの増大が過去の研究で認められたため、エリート競技者でも同様の効果が生じるかさらなる検証が必要と考えられる。また、2回の10日間の高地・低酸素暴露による総ヘモグロビン量の増加の可能性を検討したが、連続的に21日間滞在する場合に生じた総ヘモグロビン量の増加は認められなかった。
著者
山田 晋
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

草原生植物の生育地である二次草地とよく管理された二次林を対象に,結実種子を含む刈り取り残渣という新たな植生復元材料を用いた生態緑化技術の開発を実施した。多数の種と種子量が得られる刈り取り時期は,二次草地で10-11月,二次林で10月となった。約800g/m2の残渣を撒き出すことで出芽個体数が最大化し,かつ飛来する雑草の出芽を抑制できた。3月に種子を播きだすと,その後の結実種子の出芽率は最大化するが,出芽後の雑草との競合も高まり,個体の残存率は低下した。7月に播きだしを行うと出芽個体数は低下するが出芽後の雑草との競合が緩和され,発芽適温域が高い種に対してはこの時期の種子導入が適すと考えられた。
著者
川名 尚 井上 栄 山口 宣生 吉川 裕之 加藤 賢朗 白水 健士 本藤 良
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1990

1.単純ヘルペスウイルス(HSV)のPCR法による検出 昨年度に確立したPCR法を用いて臨床検体からのHSVゲノムの検出を試みた。臨床検体は、女性性器より採取した。外陰や子宮頸部から綿棒にて擦過して得たものを、培養液にてすすぎ検体とした。これらを遠心後、上清を培養R-66細胞に接種してウイルスの分離を行った。沈澱よりDNAを抽出し、PCR法にてHSVゲノムの検出を行った。分離されたウイルスは、螢光標識マウスモノクローナル抗体を用いて固定と型の決定を行った。 臨床検体の検討に先き立ち、新鮮分離株 HSV-1 50株、HSV-2 34株の計84株についてPCR法を用いて検討した結果、全例に陽性所見を得た。また、型分けについても100%一致した。以上より、このPCRの系は、本部で分離されるHSVの株は、1型、2型共にほとんど検出できることが判明した。臨床検体は、妊婦、性器ヘルペスなどから得られた94例について検討した。1型分離陽性が5例、2型分離陽性が13例であった。これらについて、PCR法を行った所、1型につては5例全例、2型については、9例(69%)に陽性所見が得られた。 一方、分離陰性の76例中8例(11%)に陽性所見が得られた。分離陽性でPCR法陰性になった例は、ウイルスDNAが十分とれてなかった可能性が考えられる。一方、分離が陰性でもPCR法が陽性であることからPCR法の方が感度がより良い可能性が示された。2.ヒトパピローマウイルス(HPV)のPCR法による検出 昨年度確立したコンセンサスプライマーを用いる性器に感染するHPVの検出法を外陰部や子宮頸部の病孝に応用し、本法の高い感度と特異性が証明された。
著者
佐藤 健
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2013-04-01

真核細胞内の小胞輸送において、小胞体(ER)からの輸送小胞(COPII小胞)の形成は、小胞体出口部位(ER exit site)と呼ばれる小胞体上の特定のサブコンパートメントで行われると考えられており、このコンパートメントの動態が、小胞体からの小胞輸送を時空間的に制御していると考えられている。このコンパートメントの形成機序、およびこのコンパートメントが受ける高度な時空間的制御のメカニズムについて解析を行った。平成26年度は、小胞体出口部位形成のダイナミクスを解析するために、前年度までに構築したCOPII小胞形成反応を人工脂質平面膜系で可視化する実験系を用いて、人工脂質平面膜上に形成されるクラスターの形成をCOPIIコートのアセンブリーの指標にして解析を行ったところ、Sec12 はクラスターから排除され、またSar1が局在するクラスターの辺縁部にも局在しないことが明らかとなった。また、COPIIコートのサブユニットであるSec13/31は、GTP存在下においてもクラスター上に留まっていることから、この実験条件下では脱コートは起こっていないことが示された。これらの結果から、COPIIコートのアセンブリー過程の新たなモデルを提唱した。また、これまでにER exit siteの形成に関与することが示唆されているSec16について機能ドメインの解析を行ったところ、Sec16のN末端領域は、Sar1のGTPase活性を調節することにより、小胞体膜上におけるCOPIIコートのアセンブリーを促進することを明らかにし、Sec16はCOPII小胞形成の単なる足場としてだけではなく、COPIIコートのアセンブリーにも積極的に関わっている可能性が示唆された。
著者
林 秀弥
出版者
東京大学
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.157-185, 2004-03-18

本稿は,独占禁止法上の企業結合規制における「有効な牽制力ある競争者」概念の再構成を目的とするものである.「有効な牽制力ある競争者」概念は,八幡・富士合併事件同意審決以来,実務上重要な問題であるとされながら,型どおりの批判が多く,理論的な分析が本格的になされることはあまりなかったように思われる.そこで,本稿は,「有効な牽制力ある競争者」概念について,立法史,判審決,経済理論および比較法という4つの観点から多角的に理論的研究を試みようとする.そもそも,競い合いは一人でできるものではなく,競争者がいてはじめて行われるものである以上,競争者の存在とその行動様式に関する評価は,競争効果分析において本来無視できないはずである.問題は,いかなる基本的考え方の下に,いかなる要件を立てて,どのように評価するか,であると考えられる.本稿は,独禁法の素人が抱くであろうこのような素朴な疑問に立ち返って,「有効な牽制力ある競争者」の概念に関して上記4つの視点から総合的に法学的検討を行うものである.
著者
今村 明恒
出版者
東京大学
雑誌
震災豫防調査會報告
巻号頁・発行日
vol.101, pp.1-"29-3", 1927-03-30

付録3頁
著者
王 雪萍
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究は中国政府の外交部档案館档案資料などの一次資料と中国政府の対日業務担当者への聞き取り調査を通じて、学術的に中国の対日外交の展開方式を分析し、また建国直後に形成された外交業務方式が現在の日中関係への影響についても分析した。1952年に中国の対日業務統括者として廖承志が指名された。周恩来との信頼関係を背景に、中共中央と政府機関の各部門が連携したタスクフォース的な性質を有する対日業務グループが形成された。本研究は廖承志を中心とした対日業務方式を明らかにし、今日への影響も分析した。
著者
飯野 要一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究は、野球の投球動作と卓球のフォアハンドストロークについて、力学的エネルギー利用の観点から効率的な動きの特徴を明らかにすることを目的とした。関節トルクパワーをもとに算出した力学的エネルギー消費と全身の運動エネルギーに対する末端の運動エネルギーの比に着目した。全身の位置エネルギーを利用できる投球ではその利用による運動エネルギーの生成が、末端の位置エネルギーを増加させる必要のあるフォアハンドでは体幹の位置エネルギーの増加させすぎないことが効率性の高い動きであることが示唆された。また、投球においては体幹上部の運動エネルギーが投球腕に伝わる割合が末端へのエネルギーの集中度を左右した。
著者
上田 卓也
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1992

1989年川口らはカンジダ酵母でるCandida cylindraceaのlipaseIの遺伝子で普遍暗号ではロイシンであるCUGがセリンに変化していることを発見した。我々は変則暗号の成立メカニズムを探る上で良い材料と考え、Candida cylindraceaのCUGが解読するセリンtRNAとその遺伝子を構造解析を行なった。その解析結果から、この遺伝子がアンチコドン部分にイントロンをもち、この事によってUCN系のセリンのtRNAから一回の変化によってCUGコドン対応できるように変化した進化の経路が示唆された。またCandida cylindraceaのIipaseIの遺伝子の偽遺伝子の配列を解析しセリンの部位を比較したところUCGがCUGに変化している偽遺伝子を見いだした。このことは変則暗号UCGがUCGから由来である考え方が妥当であることを示している。さらに大沢研究室と共同研究の結果、カンジダ酵母でCandida cylindracea以外の5種類の株でこの変則暗号が使用されていることを明らかにした。またこれらの株を5SリボソームRNAの配列から系統樹を作製し、酵母の中でCUGがロイシン→セリン→ロイシンの経路で変化していることを明らかにした。また変則的なCUGをセリンに使用する株の一つであるCandida zeylanoidesのゲノム上に、このtRNA遺伝子と相同性が高く恐らく同一のtRNA遺伝子を起源とすると思われるセリンのtRNA遺伝子を発見した。このセリンのtRNAはUCGのコドンに対応するtRNAであり、我々のセリンtRNA由来であると言う考え方を強く支持した。
著者
田中 展
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は,結合節の回転特性に着目した柔軟構造モデルを構築し,新たな力学特性を発現する空間構造体を提案・開発することである.上記の研究目的に即し,2011年度は結合節の多回転特性を表す3次元モデリングの開発に取り組んだ.また並行して,双剛性特性をもつ新規構造体を発見した.2012年度は,得られた新規構造体の研究に重点を置き,柔剛特性を発現するセル構造を提案し,その設計開発に注力した.
著者
西秋 良宏 門脇 誠二 加藤 博文 佐野 勝宏 小野 昭 大沼 克彦 松本 直子
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010-04-01

主として二つの成果があった。一つは、最新の考古学的知見を収集・整理して新人がアフリカを出てユーラシアに拡散した年代や経緯、そしてネアンデルタール人と置き換わっていった過程をできるかぎり詳細に跡づけたことである。もう一つの成果は、脳機能の違いに基づく学習能力差が両者の交替劇につながったのではないかという「学習仮説」を考古学的観点から検証したことである。従来、強調されてきた生得的な能力差だけでなく、歴史的に形成された社会環境の違いが、学習行動ひいては適応能力に大きく作用していた可能性を指摘した。
著者
渡辺 健太郎
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012

集光型太陽電池モジュールの高効率化・低コスト化を実現するために、軽量小型化を目指した新規光学素子の設計を行った。また、太陽光の集光環境下での応用に適した低電流大電圧化を目的とし、モノリシック直列接続太陽電池セル開発した。さらに、より実用化に適した構造を検討するために、集光太陽電池ミニモジュールを試作し、フィールド試験設備を用いた評価試験を実施した。
著者
坂本 良太
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本年度は、ビス(ジピリナト)金属錯体ナノワイヤとナノシートの光捕集系としての利用価値の実証を行った。ナノワイヤに関しては、液液界面合成法による結晶性ナノワイヤ作成に成功した。このナノワイヤは適当な有機溶媒中で超音波することで繊維一本一本に剥離できる。実際に単離されたナノワイヤ繊維はAFMにより観察された。このナノワイヤとカーボンナノチューブと共役させた複合材料は、カーボンナノチューブ単独に比べより優れた熱電変換特性を示した。また、当該ナノワイヤを半導体透明電極に塗布することで、光電変換の活物質層として利用できることを見出した。以上の研究成果をChemical Science誌に論文として発表した。ナノシートに関しては、界面合成法による大面積ナノシートの作成を達成した。液液界面法を用いることで厚さ6-800 nmのナノシート積層体を、センチメートルオーダーのドメインサイズにて合成できる。一方で、気液界面合成法を用いることで、単~数原子層ナノシートが合成でき、やはりこの種のナノシートとしては大きな、マイクロメートルオーダーのドメインサイズが実現できる。本ナノシートの構造決定をTEMの電子線回折により行った。本ナノシートについても光電変換材料への応用を行い、Nature Communications誌に論文を発表した。一連の研究成果は、ビス(ジピリナト)金属錯体からなるナノワイヤ・ナノシートが人工光合成光捕集系として利用できる可能性を示すものである。
著者
阿部 邦昭 泉宮 尊司 砂子 浩 石橋 邦彦
出版者
東京大学
雑誌
東京大學地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.159-175, 1994

1993年7月12日,北海道南西沖で発生した地震(M3=7.8)は北海道奥尻郡,島牧郡などの日本海沿岸一帯に大津波をもたらし,多数の犠牲者を出した.この津波は日本海全体に波及し,新潟県の海岸部もこれにさらされた.そこで新潟県の海岸で痕跡調査を行い,最大水位の地理的分布を得た.その結果,府屋,瀬波間,柏崎,直江津間でそれぞれ2-3mと高く,新潟西港,間瀬間で1.0-1.4mと低くなっている.佐渡では外海府で高く,内海府で低い.外海府では特に弾崎先端から10km以内で高く,2.6-3.1mである.これに対して内海府では0.8-1.2mである.両者の中間に位置する両津では1.1mでこれも低い.粟島でも外海測で3mに対して,内海側では1mで,外側で高くなっている.この最大水位分布の特徴を1983年日本海中部地震津波,1964年新潟地震津波の同県における最大水位分布と比較してみると,この津波は北北西,ないし北西方向から来襲したとして説明されるのに対し,日本海中部地震津波は北北東から入射したとして説明される.一方,新潟地震津波は県内に波源域があって入射方向は観測点によって異なるが,東西方向に放射された波が振幅が大きかったとすると説明できる.本州海岸の水位分布をみると,佐渡の遮蔽効果が認められるのにたいして,粟島の背後では周囲より高いことから,島による収束効果が働いたためとみられる.この違いは島のサイズの違いによると考えられる.また県内の験潮所で得られた験潮記録を送付してもらい,第一波の伝搬時間を求め,波面を逆算した.これにより第一波は北西方向から来襲していることが確かめられた.最大水位分布の特徴を説明する津波の来襲方向と第一波の来襲方向は一致している.また地域ごとに最大水位と遡上距離の関係を調べた結果によると,最大水位は遡上距離に無関係に一定値を取る.A field survey was conducted along the coast of Niigata Prefecture for the 1993 Hokkaido Nansei-oki Earthquake Tsunami of July 12, 1993. The maximum trace levels were measured with help of interview data. As the result a geographical distribution of the maximum height was obtained along the coast of Niigata Prefecture, Japan. A shadow- effect of Sado Island was observed at Maze on Honshu and focusing effect of Awashima Island was observed at Kuwagawa on Honshu.
著者
蒲島 郁夫 池田 謙一 小林 良彰 三宅 一郎 綿貫 譲治
出版者
東京大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
1993

93年総選挙における投票行動を起点にして、その後の政治変動と、選挙制度改革が、有権者の政治的態度にどの様な影響を及ぼしているかを正確に知るためには、同一有権者に繰り返し質問するパネル調査が必要である。われわれ研究グループは、93年総選挙直前から96年総選挙直後まで、7回にわたって全国的なパネル調査を行い、有権者の意識と行動の変容を探った。7回に及ぶ全国的なパネル調査というのは世界的にも類がなく、その上、これらの調査が日本政治の重要な時期をカヴァーしているのは極めて貴重である。この一連の調査の結果、政権交代をもたらした有権者の投票行動と、その後の政治変動が有権者の政治意識にどのような影響を与えたかを明らかにすることができた。研究発表の全容については別紙を参照されたいが、前年度に引き続き本年度も、科学研究費出版助成を受けて、(1)蒲島郁夫『政権交代と有権者の態度変容』、(2)三宅一郎『政党支持の構造』、(3)蒲島郁夫他『JES IIコードブック』の3冊の研究書を出版した。
著者
渡邊 克巳 MOUGUNOT Celine
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

平成22年度は本研究課題「プロダクトデザインにおける顕在的・潜在的要因の認知科学的研究」というテーマの中で、前年度に見いだした知見「聴覚刺激を与えられた群の方が、対応する視覚刺激を与えられた群よりも、有意にオリジナルなスケッチ及びデザインを作成する傾向」に関して、追加の調査を行い、外部発表を行った。また、その結果集まったスケッチやデザインのアイデアを表現する際に、日本では「オノマトペ」が多用されることを発見し、平成22年度は、日本特有の言語表現である「オノマトペ」がデザインにどのように生かされているのかを調べる研究をスタートした。前年度と同様のパラダイムを用いて、例えば「楽しいメガネ」をデザインする場合と「うきうきする眼鏡」をデザインする場合などを比較し、作成されたスケッチを第三者に評価させた。その結果、オノマトペを使って表現したデザインとそれ以外のデザインでは、特定の差が見られることが明らかになった。この差が具体的に何に起因するのかは、今後の分析によるところが大きく、最終年度である平成23年度では、さらなる考察を加えて外部への発表を重点的に進めた。本研究の成果は、外部のデザイン専門学校と協力して行ったものであり、これからの研究を展開する上での基盤作りともなった。これらの結果は、複数の国際学会で発表され、その内2つは招待講演となっている。また、研究内容をまとめたものは、英文書籍およびフランス語での出版につながっている。
著者
武尾 実 市原 美恵
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は,比較的単純な噴火形態を繰り返す火道システムの確立した火山を対象に振動現象の観測データから,火道浅部の内部状態を推定する方法を確立し,一連の噴火活動中での噴火様式変化の推定に結びつけることを目的とした.本研究期間中に,2011年霧島新燃岳の噴火が発生し,準プリニー式噴火,マグマ湧出,ブルカの式噴火という異なる噴火に対する火口近傍で地震,地殻変動,空振という多項目の観測データを得ることに成功した.これらのデータを解析することで,ブルカノ式噴火に先行する傾斜変動の時間的変化と傾斜変動継続時間の関係から,火道内部でブルカノ式噴火の直前に進行するプロセスを解明した.また,微動と空振が同じ励起源から発生するメカニズムを,粘性の異なるアナログ物質を用いた実験により再現した.さらに,微弱な火口活動のシグナルを検出する手段を確立し,火山活動のモニターリングのレベル向上を図った.
著者
新 秀直
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究の目的は充電池を医療機器に応用することで,電池廃棄物の削減等を図ることにある。本研究では,充電池管理システムの開発を行なった。また,実際に病棟で使用されている送信器で充電池を使用しその問題点を検証した。その結果,使用条件によって,大幅に連続作動時間が変わるため運用上注意が必要であることが示唆された。今後,医療機器の開発の側面からも充電池が安全に使用できるように検討することが必要である。
著者
小林 宜子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、イングランド国王ヘンリー八世の忠臣であった人文主義者ジョン・リーランド、および彼と親交のあった宗教改革期の複数の好古家の文学的活動に焦点を絞り、彼らが試みた国民文学の伝統の創出とカノン形成の企てを考察したものである。また、彼らの活動の根底にあった国民主義的な人文主義の思想がエリザベス朝の詩人たちを経てトマス・ウォートンの『英詩史』へと継承されていった過程を辿ることにより、宗教改革期から18世紀後半に至るまで連綿と受け継がれることになった英文学史観の批判的な再検証を試みた。
著者
中村 祥
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

本研究では、深部低周波微動(DLFT)の発生メカニズムを解明することを目的とした。2006年東海地域で名古屋大学と共同で行ったDLFTのアレイ観測の結果を解析し、連続的に発生している微動の短いスケールの時間変化を得ることに成功した。その結果、震源の移動は基本的にプレートの走向に平行な方向で、時速約40kmの移動とほぼ同じ位置での発生とを繰り返す様子が得られた。また、初動が不明瞭で微動の開始終了をはっきりとは定義することは困難なDLFT波動継続時間を見積もる方法を開発した。見積もられた波動継続時間の間の各アレイ観測点でのエンベロープ振幅積分をEAI値と呼び、微動の大きさの指標とした。その結果、検測された微動の多くが波動継続時間45秒前後を持ち、かつその波動継続時間においては他の波動継続時間と比較してEAI値が広い範囲にわたることが示された。この特徴的波動継続時間の存在は、DLFTのメカニズム示すうえで重要な性質である。EAI値から地震モーメントヘの変換を行い、DLFTの単位面積あたりのモーメント解放量を推定した。その結果、1日の活動でおよそ7.5x10^5(N m/m^2)という結果が得られた。DLFTと比較することでその特徴的性質を得るため、2004年紀伊半島南東地震の余震観測の際に設置された海底地震計(OBS)に記録された低周波の微動について解析を行った。決定された震源は、トラフ軸に垂直な方向に分布する。震源分布は超低周波地震の震源にほぼ平行で、相補的な位置に広がる。この結果から、この微動が超低周波地震とは別の現象であることが示された。震源が相補的に分布することは、トラフ近傍の物理過程を考えるうえで非常に重要な結果であり、共に安定、不安定すべりの遷移域である沈み込み帯深部との対応から、この現象が「浅部低周波微動」である可能性が示唆される。成果を博士論文にまとめた。