著者
細川 武稔
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

北野天満宮の神仏習合については、神宮寺だった東向観音寺(京都市上京区)について、引き続き所蔵史料の分析をおこなった。その結果、この寺が一条家の祈願寺となるきっかけを作った一条輝子について、詳しく調べることが必要になった。輝子は岡山池田氏の出身であることから、岡山県立図書館(岡山市)・林原美術館(岡山市)などで情報を収集した。中世の北野天満宮に関連して、足利義満が京都の北山で構築した空間について分析し、中世都市研究会大会において発表した。そこでは、義満が北山を選んだのは、足利氏が深く信仰する北野天満宮と、足利氏の墓所等持院に挟まれた地域だったからであると述べた。また、北山天神森の天神社(現在の敷地神社)が北野天満宮との関係で語られていた事実を指摘した。発表の準備段階では、京都市歴史資料館・京都府立総合資料館などで文献を読み込んだり、現地でのフィールドワークをおこなったりした。京都における三十三所観音については、中世の成立・近世の復興について分析を進めた。中世については、室町幕府の奉行人である飯尾氏の関与について調べた。当時の貴族の日記や五山禅僧の漢詩を分析することによって、飯尾氏が積極的に三十三所の確定に関わり、一族の菩提寺を三十三所に組み入れていったことなどがわかってきた。近世については、京都市歴史資料館・京都府立総合資料館で文献・史料を渉猟するなどして、巡礼順序が変更された事情などを考える材料を集めた。また、文政11年刊の『恵方巡京図』に、三十三所観音巡礼が記されていること、人吉藩の歴史書『嗣誠独集覧』に、近世の復興に真如堂の僧が関わったという重要な記事があることなどを見出した。
著者
高櫻 綾子
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

幼児が日常的に交わす発話には幼児間の関係性が反映すると考えられる。なかでも「ね」発話(e.g.一緒に遊ぼうね、ね~仲間に入れて)は幼児にとって身近な発話である反面、情動や意図が暗黙的に込められることから、遊びや会話を成立させるには「ね」発話を間主観的に理解し、相手との関係性に応じた相互作用を交わす必要がある。そこで本年度は保育園の3歳児クラス20名を対象に1年間(各月2回)の参加観察を行って得たデータをもとに「ね」発話に着目して幼児間における親密性について検討した。まず「ね」発話を用いた相互作用と親密性形成との関連を検討した結果、呼びかけの「ね」発話により相手の注意を喚起し、語尾につける「ね」発話によって聞き手への配慮を示すことで、相手からの応答を引き出しやすくなり、二者間での間主観的な理解を促進することが明らかとなった。またこうした相互作用が親密性形成の基盤になると同時に、二者間での親密性の深化に伴い、第三者によって生起された事象に対する情動や意図についても互いの内的状態を間主観的に把握することを示した。さらに3歳児は「ね」発話を実際に使用し、相手の反応を得る中で「ね」発話の使い分けを獲得することを明らかにした。特に親密な二者間と第三者との間では、遊びの開始や内容を呼びかける「ね」発話に差異が認められた。また「ね」発話同様、3歳時期の会話に多用されている終助詞「よ」と比較した結果、自らの意図を明確に伝えたい文脈では「よ」を使用し、相手に配慮を示し、共感を得る中で遊びや会話の成立を図ろうとする文脈では「ね」発話を使用することが明らかとなった。よって3歳児は「ね」発話を手掛かりに互いの情動や意図を間主観的に把握するなかで親密性を形成し、相手との親密性やその場の状況に応じて「ね」発話を使い分けることが明らかとなり、「ね」発話が幼児間における親密性を捉える指標になることを示した。
著者
横山 ゆりか 伊藤 俊介 長澤 夏子 横山 勝樹 中村 佳甫
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

場所愛着に関する研究はいくつかあるが、いずれも戸建を中心とした住宅や古い既成住宅地域を対象とした研究である。本研究では、戦後郊外に面開発されてきた比較的新しい計画住宅団地とその周辺地域に対する愛着の醸成について考察する。同一県内に異なる時期に開発され、計画の異なる2つの住宅地を対象とし、居住者の大人と子どもにプレイス・アタッチメントを問う計量的・質的調査を行った。その結果、住民の入居時期と年齢層によって異なる愛着の状態が形成されている実相を示し、それを反映した研究手法が地域のプレイス・アタッチメント研究に今後求められることを明らかにした。
著者
会田 勝美
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

1.新しい光情報入力系の同定 魚類における網膜以外の新しい光情報入力系の分子基盤を明らかにするために,アユにおいて光受容能を持つことが示唆されている脳から光受容タンパク質の一つであるロドプシンのcDNA全長塩基配列を決定した。その結果,脳深部に発現しているロドプシンcDNAは網膜ロドプシンcDNAと塩基配列が完全に一致した。一方,魚類において光受容能を持つことが知られている松果体からは,エクソロドプシンcDNAがクローニングされた。この結果、脳内には異なる2種類のロドプシンが発現していることが判明した。2.生物時計機構の分子生物学的解析 メラトニンは環境の明暗情報ならびに時刻情報を伝達するホルモンである。魚類におけるメラトニン合成分子機構を明らかにするために,アユ網膜および松果体からメラトニン合成の律速酵素アリルアルキルアミランシフェラーゼ(AANAT)のcDNAクローンを2種類得た。RT・PCR法により,2種類のAANATのうち,AANAT1が網膜にAANAT2が松果体にそれぞれ特異的に発現していることを確認した。さらにリアルタイム定量的PCRによるAANAT1とAANAT2のmRNA定量法を開発し,網膜中のAANAT1と松果体中のAANAT2のmRNA量の様々な光条件における24時間変動を調べた。その結果,通常の明暗条件下は,網膜および松果体においてAANAT1とAANAT2のmRNAはそれぞれ生物時計によって制御されていることが判明した。3.メラトニン受容体の分子生物学的解析 縮重プライマーを用いたPCR法によりアユ脳に存在するメラトニン受容体のcDNAクローニングを試みてのところメラトニン受容体をコードしていると考えられるcDNA断片は得られていない。
著者
北田 暁大
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

当該研究については、①ドイツにおける日本サブカルチャーの受容者へのインタビュー、識者との意見交換、②ドイツでの雑誌、マンガ研究などの資料収集、③、日本コンテンツに知悉したドイツ人識者を交えたシンポジウムの実施、④それを踏まえた日独ウェブ調査の列案・実施ろ分析、といった研究計画に記載した内容を首尾よく実施したうえで、2014年には、関連する比較文化社会論をめぐるワークショップをドイツ(ライプツィヒ大、ボン大)にて開催、また、成果に関連する内容をエアランゲン大学のシンポジウムにて発表した。④の計量調査から、社会意識と文化受容の関連性の日独の差異を、とりわけ歴史意識・認識に定位して明らかにした。
著者
高取 吉雄 永井 一郎
出版者
東京大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1999

昨年度の成果に基づき、筒型内固定体^<1)>および挿入器具^<2)>の改良を行なった。筒型内固定体のサイズは、外径19mm、内径15.5mmとし、筒体の長さは20mmと25mmの2種類を作製した。また、解剖用遺体での挿入実験から、挿入器具の柄はある程度長くないと、力を加えるハンドル部分が大腿内側に衝突することが明らかになった。このため、六角レンチなどの柄を長くし、300mmとした。これにより、比較的スムースに挿入できることがわかった。正確な挿入は、ガイドワイヤーを使用し、X線透視下で行なうことで可能と考えられた。註1)筒型内固定体この内固定材は、上下が開放した筒状の構造で、外壁にネジ山を有する形状とした。素材は生体親和性の高いチタンを選択した。使用に際しては、大腿骨頭の内下方から骨頭頂点を向けて挿入することを想定している。挿入された筒型内固定体は、罹患大腿骨頭内の頚部に近い側では、骨を筒の内部と外部に分断する。一方、関節面に近い部位では連続したままの状態である。大腿骨頭の中央に、壊死骨と健常骨の分界面が存在する場合には、内固定体の挿入により、壊死骨の形状は半球状から筒の内部の骨を加えた茸状に変化し、分界面の形状は単純な面ではなくなる。また壊死骨と健常骨とは筒型内固定体の外部のネジ山で固定される。この結果、大腿骨頭は、地滑り様の移動あるいは陥入を起こしにくくなると考えられる。2)挿入器具骨頭下リーマー、内固定体リーマー、タップ、六角レンチを試作した。この他、挿入手術用開創鉤、関節包用剪刀などについても試作した。
著者
前川 宏一 半井 健一郎 牧 剛史 千々和 伸浩 浅本 晋吾 石田 哲也 石原 孟 三島 徹也 石橋 忠良 田辺 成 坂田 昇
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2011-04-01

①ナノ流体モデルを拡張展開し,雨水の急速侵入,降雨後の蒸発散を高精度で評価可能とした。PC暴露試験体の曲率等の推移と水分計測から検証を重ねた。②水分準平衡と構造モデルを連成させ,中高層RC建物と原子力施設の中長期固有振動数の変化を予測できた。③浅地中ダクトの遅れせん断破壊を数値解析で予見し非破壊検査から現象を確認した。地盤との相互作用から長期せん断破壊が評価可能であることを示した。④ASRゲル,腐食ゲル,常温液状水,氷晶の混合移動を考慮できる数値解析モデルを開発した。⑤ASRに伴う構造損傷と凍結融解に伴う損傷に相互作用が強く表れること,これが部材のRC床版疲労延命化に寄与する機構が解明された。
著者
國友 直人 矢島 美寛
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

この研究では経済変動の中でも時間とともに変化している動的変動を分析する手段として統計的時系列分析の中でも非正則時系列理論及びマクロ経済データや金融データを計量的に分析する計量経済分析への応用可能性を検討した。非正則時系列理論としては特にエルゴード性を持たない非定常時系列理論及び非線形時系列理論を検討し、計量経済分析との関連を特に以下の問題を中心に検討した。(i)新しい非線形時系列モデルとして定常同時転換(simultaneous switching)時系列モデルを開発し、さらに非定常時系列へと拡張した。経済時系列の変動における非対称性の例として市場データと金融資産価格の変動を分析を計画し、農産物市場データ及び日経インデックスのスポット・レート及びフューチャー・レートを使って比較分析を行い興味ある結果を得た。(ii)最近の計量経済分析では単位根と呼ばれている非定常時系列をしばしば用いるようになっているので、その分析方法を検討した。特に多次元時系列において構造変化が存在するときの非定常性の検出方法を提案した。新しい点は構造変化点が複数ある場合及び変化点がある個数以下であるがその個数は事前にはわからない場合も考察した。(iii)経済時系列理論における弱従属の場合ではスペクトル密度関数の連続性を仮定して様々な議論が組み立てられている。時系列が強従属である場合にはスペクトル密度関数が発散するのでその場合の理論を考察し、経済分析への応用可能性を検討した。(iv)経済時系列では観察値が欠落している場合があるが、最近しばしば実証分析で利用されている非定常性の検出方法についての結果を得た。
著者
金森 修
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

フーコーが1970年代に模索的に使用した生政治・生権力という概念は、その後生物学・医学の急速な進展による日常生活の変化に伴い、新たな含意を獲得するに至った。本研究はその事実を背景に、アメリカ的な生命倫理学をメタ的に対象化して現代的な特質や偏向を探るという目標を掲げた。当初は比較的理論的な問題設定、クローンや臓器移植などの問題群への注視を想定していた。だがこの研究期間中思いがけずに福島第一原発の大事故が勃発したので、放射線障害の多寡や、それを巡る日本社会の多様な政治的・思想的発言の分析に思いの他重点が置かれることになった。人間の生命をどうしても二次的に捉えがちな我が国の政治風土の剔抉ができた。
著者
近藤 侑貴
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

植物の肥大成長を支える分裂組織として、形成層が知られている。形成層は、維管束幹細胞を有しており、分化・分裂を繰り返すことで、維管束領域の拡大に貢献している。継続的な肥大成長の実現にあたっては、これら幹細胞が維持され続ける必要があり、そのためには幹細胞の分化・分裂の制御は極めて重要となってくる。維管束幹細胞の維持に関わる因子として、CLEペプチドの一種であるTDIFとその受容体TDRが知られている。TDIF-TDRは幹細胞の自己複製の促進と分化の抑制という二つの異なる生理的な機能をもつことがわかっているが、それらがどのようにして維管束幹細胞の維持に貢献しているのか、その詳しい分子メカニズムはよく分かっていない。そこで、本研究では、TDIF-TDRのシグナル伝達経路に着目をし、幹細胞の維持機構にせまることにした。まずはじめに、Y2Hスクリーニングより、あるキナーゼ群(TDR-Interacting-Kinases》がTDRと特異的に結合することを明らかにした。遺伝学的解析から、TIKがTDIF/TDRのシグナル伝達において、幹細胞の分化の抑制の経路にのみ関与し、自己複製促進の経路には関与しないことが示唆され、TDIFの二つの機能は下流経路に分けられる可能性が考えられた。これまでにTDIF下流の自己複製促進には、WOX4と呼ばれる転写因子が関わることが知られている。そこで、次にTIKとWOX4の遺伝学的解析を明らかにするため、TIKの阻害剤及びwox4変異体を用いて、胚軸の維管束の表現型を解析した。TIK阻害剤処理単独では、木部と節部の間に存在する幹細胞が維持されなくなるtdr表現型が約3割程度でみられるのに対し、wox4変異体背景でTIK阻害剤を処理すると、約8割程度の個体でtdr表現型が観察された。以上の結果から、幹細胞の維持においては、幹細胞自身の増殖の制御と分化の制御の両方が重要であることが示唆され、植物幹細胞維持の制御機構を分子レベルで明らかにしたはじめての例である。
著者
佐藤 光秀
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

光合成と粒子食の両方を同一生物がおこなう混合栄養は海洋プランクトンにおいては極めて普遍的な現象である。本研究は、種々の手法を用いて研究例の少なかった外洋における混合栄養性プランクトンを定量した。古典的な蛍光標識細菌添加法、および食胞の染色とフローサイトメトリーの組み合わせによる結果は互いによく相関しており、後者の有用性が明らかになった。また、混合栄養生物は貧栄養な亜熱帯海域で相対的な重要性が高まっており、栄養獲得戦略として粒子食が有効にはたらいてる可能性がある。また、同位体標識した餌生物を取り込ませ、超高解像度二次イオン質量分析で観察することにより混合栄養生物を定量する条件を検討した。
著者
見上 彪 前田 健 堀本 泰介 宮沢 孝幸 辻本 元 遠矢 幸伸 望月 雅美 時吉 幸男 藤川 勇治
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

本研究の目的は猫に対する安全性、経済性、有効性全てに優れる多価リコンビナント生ワクチンを開発・実用化することである。以下の成績が得られた。1.我々は猫ヘルペスウイルス1型(FHV-1)のチミジキナーゼ(TK)遺伝子欠損株(C7301dlTK)の弱毒化とそのTK遺伝子欠損部位に猫カリシウイルス(FCV)のカプシド前駆体遺伝子を挿入した組換えFHV-1(C7301dlTK-Cap)の作出に成功した。C7301dlTK-Capを猫にワクチンとして接種した後にFHV-1とFCVの強毒株で攻撃したところ、猫は両ウイルスによる発病から免れた。しかし、FCVに対する免疫応答は弱かった。2.そこで、更なる改良を加えるために、FCVカプシド前駆体遺伝子の上流にFHV-1の推定gCプロモーターを添えた改良型組換えFHV-1(dlTK(gCp)-Cap)を作出した。培養細胞におけるdlTK(gCp)-Capのウイルス増殖能はC7301dlTKとC7301dlTK-Capのそれと同じであった。dlTK(gCp)-CapによるFCV免疫抗原の強力な発現は関節蛍光体法及び酵素抗体法にて観察された。加えてdlTK(gCp)-Capをワクチンとして接種した猫は、C7301dlTK-Cap接種猫と比較した場合、FCV強毒株の攻撃に対してその発症がより効果的に抑えられた。3.猫免疫不全ウイルス(FIV)のコア蛋白(Gag)をコードする遺伝子をFHV-1のTK遺伝子欠損部位に挿入したC7301ddlTK-gagを作出し、In vitroでその増殖性や抗原の発現を検討した。この2価ワクチンは挿入した外来遺伝子の発現産物が他の蛋白と融合することなく、自然の状態で発現するように改良されたリコンビナントワクチンである。培養細胞での増殖性は親株であるC7301とほぼ同じであり、イムノブロット解析により、C7301ddlTK-gagは前駆体Gagを発現していた。
著者
川島 博之
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

都市近郊農民が、宅地用として農地を販売し利益を得ることは、農工間格差の是正に役立つ。インドにおける農地の売買について、インターネットを利用して情報を集めるとともに、現地調査を行った。
著者
多部田 茂
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

海底熱水鉱床開発の社会受容性に関してアンケート調査を行ない、非専門家は専門家より開発による波及的なリスクをより大きく感じていることなどを明らかにするとともに、環境影響と経済性を統合的に評価する指標を用いて許容しうる環境影響の大きさを求めた。また、環境リスクを専門家アンケートに基づいて定量化し、開発事業のリスクを定量的に分析した。さらに、リアルオプション分析により、意志決定の柔軟性を考慮した事業性評価が有効であることや、環境調査を早い段階で行い不確実性を減少させた場合のほうがより事業が継続する確率が高いことを示した。
著者
辛島 理人
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

社会改造と植民地/アジア:この二つが、戦時期(1930年代・1940年代前半)の帝国日本において、どのような関係にあるか?両者の連関を解明することがこれまでの研究の目的であった。そのような問いの事例として戦時期の植民政策学者に焦点をあててきた。これまで、上記のような問題を現代の「東アジア共同体」論との比較の中で検証しようとする小林英夫氏(早稲田大学)や米谷匡史氏(東京外国語大学)、石井知章氏(明治大学)らの共同研究に参加してきた。最終年度の2009年度は、その成果を『一九三〇年代のアジア社会論』(社会評論社)というかたちで出すことができた。また、同時期にオーストラリアを訪問・滞在していた小林英夫氏・江夏由樹氏(一橋大学)・Mariko Takanoi氏(カリフォルニア大学)らと同地で共同討議を行った。
著者
飯田 敬輔 鈴木 基史
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

比較研究から明らかになった点は多数ある。投資仲裁についていえば、確かに国家のゲートキーピング作用がないため、多数の案件が付託される傾向が強いが、しかし企業はこの仲裁に頼る以前に国家と直接交渉を行い解決に努めるため、これらの仲裁に持ち込まれるのは、ほとんど交渉では解決不可能な案件である傾向が強い。多くの国家は仲裁勧告を履行するが、それができない国家は長期にわたり引き延ばし工作をしていることが明らかとなった。国際司法裁判所については、確かに経済問題のほうが解決する傾向は強いが、意外なことに境界紛争、特に海洋の境界紛争についてはそれが特別協定により国際司法裁判所に付託され、かつ判決履行の確率も高いことが分かった。
著者
山本 晃生
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,人肌触感の再現提示を念頭に,様々な触感要素の提示技術を研究した.人肌の再現には,肌表面のぺたぺたとした粘着感,あるいは,汗ばんだ際の濡れ感,といった触感の再現が重要であると考え,こうした触感の発生要因を検討し再現提示手法を提案した.また,皮膚に触れた際には,柔らかい感触の中に骨などのゴツゴツとした感触が感じられる.このような異物感を伴う柔らかさ感の提示を行うための手法を提案した.