著者
遠藤 基郎
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1998

1,吉書の儀礼空間の復元の基礎的作業。東大寺における吉書儀礼関係の収集を行った。未刊行史料として平岡定海氏所蔵の『東大寺別当次第』の存在を確認し、その原本調査に赴いた。寺院吉書は、長官である別当などが就任した際に行う拝堂儀礼の一環として行う場合が主である。これは公家が新しいポストに就任した際に吉書を行うことと共通する。また返抄吉書においては、読み上げ行為が伴っていたことが、史料上確認された。2,武家の吉書について。鎌倉幕府は当初公家吉書同様に返抄吉書を使用したが、室町幕府はそれとは異なり三箇条吉書と御内書吉書を使用している。この違いは、両幕府の性格の違いを示すものであるが、その解明は今後の課題である。また幕府吉書において、注目すべきは改元の際に行う点であろう。これは鎌倉幕府の段階から認められる。管見の限りでは、改元時に吉書を行うのは天皇と将軍のみに限定される。国家制度上の将軍の卓越した地位を物語る事実である。3,近世における吉書の実態。これについては,十分に検討することができなかった。朝廷あるいは旧仏教系寺院においては、中世以来の形式で継続的に行われている。これは彼らのアイデンティティーの有り様から当然の事態であろう。武家については、薩摩藩島津家で確認されるものの、幕府においては行われた形跡がないようである。また従来の研究による限りは、村落においてもその形跡が認められない。類似の現象は「書き初め」である。中世の吉書と比較した場合、これは、優れて個人的な所為であって、政治性は皆無である。これは「書く」行為の社会史的意義の変化を考察する上で興味深い現象であろう。*また本研究成果の一部は、2000年度歴史学研究会大会中世史部会報告(2000.5.28)において発表の予定である。
著者
大宮 勘一郎 香田 芳樹 和泉 雅人 フュルンケース ヨーゼフ 粂川 麻里生 斉藤 太郎 中山 豊 平田 栄一朗 縄田 雄二 川島 建太郎 大塚 直 臼井 隆一郎 桑原 聡 安川 晴基
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

現代の科学技術の進歩と発展に鑑みて、「人間」を再定義する必要は日増しに高まっているが、技術と人間との関係を近代思想として最も深く考え続けたのはドイツ思想であると言ってよい。本研究プロジェクトは、そのようなドイツの思想史に様々な角度から切り込んでゆくことにより、従来の人間観のどこが妥当性を失い、どの部分が維持・救出可能であるかを明らかにする作業に貢献をなし得たと考える。3回の国際シンポジウム、3回の国際ワークショップを行うことで、他文化圏の研究者らとの意見交換も活発に行い、議論を深めることができたのみならず、本プロジェクトの問題設定が国際的な広がりを持つものであることが確認できた。
著者
松吉 大輔
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

これまでの視覚的ワーキングメモリ研究は、ヒトは常に3-4個の物体を保持できると仮定してきた。しかし、申請者の研究は、その仮定が必ずしも正しくない事を明らかにした。具体的には、従来3個程度の物体を保持できていた人であっても、大量の物体を呈示された場合には2個程度しか保持できなくなることを見出した。また、高齢者においてはそれがより顕著であり、通常は2個の物体が保持できるにもかかわらず、大量の物体が呈示されると、1個しか保持できなくなることが明らかになった。そして、この記憶不全は、頭頂葉ではなく後頭葉の活動低下により媒介され、頭頂葉から後頭葉への信号伝達の失敗に起因している可能性を示した。
著者
苅部 直
出版者
東京大学
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.37-46, 2006-09-30

天皇論という視角から見た場合, 日本社会の1990年代は, その前代との変化が大きいのに比べて, そのあと, 2000年以降との違いはあまりなく, 90年代における特徴が, いまも持続していると言ってよい.言論界においては, かたやナショナリズムの復活を声高に唱える声, そして他方ではそうした動向を警戒する議論が盛んで, 天皇論も対立点の一つとなっている.だが論壇での議論の熱さに比べ, 社会一般の皇室に対する感情は, むしろ希薄なものと言ってよく, そのことがかえって.ナショナリズムと政治意識との関係に, ある不安定性をもたらしているのである.
著者
櫻井 健志
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

昆虫の超高感度な性フェロモン受容の分子機構の解明を目的とし、カイコガを対象として性フェロモン受容に関与することが報告されている性フェロモン受容体、フェロモン結合タンパク質、Sensory neuron membrane protein-1(SNMP1)の解析を行った。その結果、性フェロモン受容細胞の匂い応答特異性はフェロモン受容体のみによって決定していることを明らかにした。また、アフリカツメガエル卵母細胞発現系においてSNMP1がフェロモンへの応答を上昇させる作用があることを見出した。
著者
宮野 悟 角田 達彦 稲澤 譲治 高橋 隆 石川 俊平 小川 誠司 曽我 朋義
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010-04-01

システムがんの円滑な計画研究の遂行と、計画・公募研究間の有機的な連携を推進した。毎年、班会議、総括班会議、及び外部有識者による諮問委員会委員を開催し、研究方針の策定、研究進捗状況の把握と内部評価を行った。情報・データ解析系と実験系との研究マッチングをサイトビジット形式で行い、研究支援を行った。アウトリーチ活動としては、ニュースレターを計12発行し、ホームページ、及び多くの論文のプレスリリースを活用して研究成果を社会へ発信した。一般、中学生、高校生を対処とした公開講演会を7回開催した。また、毎年、ソウル国立大学癌研究所の主催するシンポジウムを通して国際交流を深めた。
著者
西田 周平 西川 淳 大塚 攻 澤本 彰三 佐野 雅美 宮本 洋臣 MULYADI RUMENGAN Inneke FM YUSOFF Fatimah MD ROSS Othman BH SRINUI Khwanruan SATAPOOMIN Suree NGUYEN Thi Thu NGUYEN Cho CAMPOS Wilfredo L. METILLO Ephrime
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

全海洋中で最も生物多様性が大きいが、人間活動や気候変動の影響も顕在化しつつある東南アジアの沿岸生態系を対象とし、動物プランクトンの種多様性に関する定量的知見を拡充した。既存試料の分類学的、遺伝学的、生態学的分析と補足的現地調査により、約20種の未知のカイアシ類を発見・記載し、既知種にも遺伝的に分化した隠蔽種が存在することを見いだした。また、既存の試・資料の分析・整理により新たに約16,000件の定量分布データを電子化した。ヤムシ類については、インド太平洋海域における種多様性の分布を明らかにするとともに、環境要因から種多様性(種数、多様度)を推定するためのモデルを作成・公表した。
著者
北川 貴士
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

東部太平洋で漁獲されたクロマグロの腹腔内にアーカイバルタグを装着し、2002から2004年の7-8月に合計300個体を放流し、これまでに再捕・回収された90個体のタグに記録された水温、遊泳深度、腹腔内温度の時系列データを解析した。クロマグロは表層混合層内で夜間は表層,昼間は摂餌のためより深い水深を遊泳しており,照度の昼夜変化に応じて,遊泳深度を日周期的に変化させていた。一方,水温躍層の発達する夏季は,躍層付近での急激な水温変化を避けて一日の大半を表層で過ごし,昼間は照度のなくなる水深まで5分程度の短時間の潜行を繰り返すようになった。夜間,クロマグロの平均遊泳深度と月齢とに有意な相関が認められた。しかし,摂餌はほとんど行なわれなかったことから,月の照度によって遊泳深度を変化させる行動は,捕食者から身を隠すためのものと推察された。またクロマグロは日出時と日没時にも必ず潜行を行ったが,摂餌は見られなかった。彼らの視細胞の明・暗反応の切り替えには多少時間がかかるため,急激な照度変化にさらされると,彼らは一種の盲目状態に陥ることが報告されている。よってこの鉛直移動は,朝夕の照度変化を避け,一定の照度環境を保つための補償行動ではないかと思われる。以上のようにクロマグロは時間的・空間的な照度変化を巧みに利用して,"食うこと"と"食われないこと"を満たしていると考えられた。東部太平洋の鉛直構造や餌分布様式ならびにバイオマスと本種の遊泳行動との関係や生息環境が本種の体温生理に与える影響を調べるため、平成17年3月から9月までアメリカ、スタンフォード大・ホプキンス臨海実験所、バーバラ・ブロック博士の研究室に滞在し、逐次再捕され回収に成功した遊泳水深、環境水温、体温などの時系列データの解析も行った。
著者
坂井 南美
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

最近の研究で、低質量Class 0原始星近傍の化学組成に多様性があることがわかってきた。本研究では、その1つの典型であるWarm Carbon-Chain Chemistry(WCCC)天体に着目し、その起源と、Class I段階への進化について観測的に調べた。主な結果は以下のとおりである。まず、WCCC天体IRAS15398-3359の近傍に炭素鎖分子に恵まれる若い星なしコアLupus-1Aを発見した。もう一つのWCCC天体L1527にも同様の星なしコアTMC-1が存在することを考えると、この結果はWCCCが星形成時の速やかな収縮に起因していることを支持する。第2に、WCCC 天体L1527について、炭素鎖分子の分布をPdBI干渉計によって高空間分解能観測で調べた。その結果、炭素鎖分子の分布は原始星近傍に集中しており、CH_4の蒸発によってWCCCが引き起こされていることが確かめられた。さらに、原始星へ落ち込むガスの中にも炭素鎖分子が存在することがわかった。このことは、炭素鎖分子が原始惑星系円盤にもたらされる可能性を意味する。また、実際に進化の進んだClass I天体で、WCCCの進化形と考えられる天体を探したところ、実際にその候補をL1527の近傍に見出すことができた。本研究により、WCCC天体が原始惑星系円盤に向けてどのように進化するかという問題に対して、重要な知見を得ることができた。
著者
山本 伸次
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

昨年度から引き続き、冥王代(40億年以前)の初期地球大陸進化を解読するため、西オーストラリア・ジャックヒルズ地域における礫岩サンプルから大量のジルコン鉱物を分離し、LA-ICP-MSによるジルコンのU-Pb年代分析、およびレーザーラマン・SEM-EDS・EPMAを用いてジルコン中に含まれる微小包有物分析を行った。1000粒を超える包有物同定をおこなっているが、未だマイクロダイヤモンドは検出されていない。ここにきて、本研究の当初の目的であったジルコン中のマイクロダイヤモンド包有物(Menneken et al., 2007)は、これらは作業中のコンタミネーションであったとする論文が2013年12月に出版され、Menneken氏提供のサンプルから確認された(Dobrzhinetskaya et al. 2014)。痛恨の極みであるが、一方で本研究の詳細な包有物同定の結果、冥王代ジルコン中にはこれまで見落とされてきた初生的なアパタイトが残存していることが判明した。アパタイトの微量元素濃度は母岩の化学組成を強く反映する為、ジルコン母岩の推定が可能である。これまでのところ、40億年以上の年代をもつ冥王代ジルコン315粒中に初生アパタイト14粒を見出し、それらのEPMA分析を行った。アパタイトのY203およびSrO濃度は負の相関を示し、それぞれ0.02-0.91wt%, 0.08から検出限界以下(0.04wt%)であった。特に、高いY203濃度(>0.4wt%)かつ低いSrO濃度(〈0,02wt%)をもつアパタイトは珪長質な岩石(sio2 >65 wt%)に限られることから、本研究の結果から、少なくとも42億年までには花崗岩が存在していたことは確実であることが判明した。さらに、ジルコン中の詳細な包有物分析の過程において、衝撃変成作用を被った特徴的な組織(granular-textureおよびplaner deformation features)を有するジルコンが、数は僅かではあるが存在することが判明した。従来、これらは隕石クレーター近傍や遠方のイジェクタ層から多数報告されているが、ジャックヒルズ堆積岩からは未だ報告されていないため、世界初の報告として日本地質学会にて発表した。上記2点の分析を進めることで、冥王代における大陸地殻の成長と破壊の具体的な描像が解読できるものと思われる。これは、当初の申請書記載の研究目的に他ならない。現在、この2点の結果について論文提出の準備を急いでいる。
著者
脇 嘉代
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

肝移植後の拒絶反応における抗HLA抗体の役割は不明である。本研究では肝移植における抗HLA抗体と拒絶反応、免疫抑制剤の減量との関連性について検討した。その結果、移植後に急性拒絶反応を発症した症例では、急性拒絶反応を発症しなかった疾患に比べて抗HLA抗体、中でも、ドナー特異的抗体の陽性率が高いことが明らかになった。更に、肝臓移植前と肝臓移植後早期の抗HLA抗体の有無を調べたところ、拒絶反応のリスクが低い症例では、移植前と移植後早期から抗HLA抗体が陰性である傾向が認められた。また、拒絶反応のリスクが高い症例では、移植前と移植後早期から抗HLA抗体が陽性であり、抗体価も高い傾向が認められた。移植前と移植後早期の抗HLA抗体が陰性、もしくは抗HLAの抗体価が低い症例では、抗HLA抗体が陽性の症例に比較して、免疫抑制剤を減量・中止できる可能性が高かった。抗HLA抗体の有無のみならず、その抗体価も拒絶反応のリスクと関連があることが示された。以上から、抗HLA抗体と拒絶反応の関連性が示唆された。
著者
長濱 浩平
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では骨形成性シグナル経路として、BMP、ヘッジホッグ、Wnt、Runx2に着目し、各経路に抑制的にはたらくシグナル分子(骨分化抑制シグナル)をsiRNAを用いた遺伝子ノックダウン技術により抑制することで、骨再生を誘導することを目指した。骨分化抑制因子11種に対して、それぞれsiRNAを作製し、ノックダウン効果を確認した。これらのsiRNAのうち、骨分化を誘導した組合せについては、現在動物モデルによる確認を進めている。
著者
満島 直子
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

本年度は、政治、道徳論に関する著作を中心に「怪物」の種類や扱いを調査することで、社会的次元の問題へ考察を進めた。この分野での怪物概念は、個人の内面、社会のシステム、真、善、美の三位一体論等のテーマを中心に、統一性(ユニテ)の理想を前提とするなどの基本的特徴を保ちつつ、自然科学や美学思想の変化と連動しながら、年代毎に推移していくことを確認できた。特に、目的論的理神論から唯物論的一元論への移行後、宗教的道徳基準が消失すると、様々な「怪物」の例が、理論の可能性や限界を見極める思考方法として利用されていくことになる。ディドロの著作において、通常と異なる性質をもつ人物の一部は、支配的立場や、非現実的立場に意義を申し立てるという形で著者の思考を活性化させたり、人間の自然な性質を取り戻させるオリジナリティを持つ人物、人類を進歩させる天才等として評価される。また、通常の多くの人間も、複数の矛盾する傾向を持つ点で怪物と考えられており、そうした矛盾の起源と考えられる、個人の自然な性質と社会との軋轢をなくすためには、自然法、宗教法、市民法の一致が必要とされる。しかしその実現は難しく、街、国家などの団体もまた怪物とされる事がある。ディドロは悪人への憧れももつ一方で、基本的には社会の為になる行動を評価し、種の幸福を顧みない人間は、賞罰などで修正不能な場合、共同体からの追放や抹殺が正当化されていく。但し、善悪の区別は困難で、ディドロ自身、自分が怪物なのだと考える一面があり、価値基準の設定の難しさが示されている。自然論において、稀な形も現象の必然的結果と説明されるようになると、必然のものに善悪はないとの発想から、身体や環境によって悪行へ決定付けられる個人への責任追求や、共通道徳の基礎付けが困難となる。このためディドロの怪物概念は、規範学において大きな問題を提起するテーマであることが明らかになった。
著者
中嶋 悠一朗
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

発生や病態にて観察される組織リモデリングは細胞の増殖、分化、移動、そして死といった様々な細胞の振る舞いを統合した現象である。その中で、細胞の「死」と「増殖」は最も基本的な振る舞いであり、組織を再構築し、恒常性を維持する上で互いに協調し合った両者のバランスが重要である。したがって細胞の死と増殖のバランスの破綻は発生異常にとどまらず、がんや神経変性といった疾患への関与が想定される。近年、組織リモデリングにおいて、カスパーゼの活性化を介した細胞死「アポトーシス」と細胞増殖が密接に関連し合うこと、その重要性が示唆されている。一方で、生理的条件下でアポトーシスと細胞増殖をつなぐメカニズムに焦点をあわせた研究はほとんどなく、生体内での両者の協調における細胞レベルの振る舞いや分子メカニズムに関して多くが未だ不明である。本研究では生理的に起こるアポトーシスを単一細胞レベルの解像度で可視化する系を構築し、組織内での時空間的なカスパーゼ活性化パターンを明らかにすることで、リモデリングにおけるアポトーシスの制御機構、そして周辺細胞との相互作用を解明することを目指した。これまでにショウジョウバエ蛹期における腹部表皮再構築を系として、FRET型のカスパーゼ活性化検出プローブを用いたカスパーゼ活性化パターンの詳細な記述を行った。本年度は、遺伝学的および人工的に周辺の増殖細胞に操作を施すことで、死にゆく細胞のカスパーゼ活性化パターンが増殖細胞との局所的な相互作用により制御されている可能性について検討し、実験的にその存在を示した。さらに増殖細胞の時空間的な細胞周期ダイナミクスとの相関を知るために、S/G2/M期をモニターする蛍光タンパク質プローブを導入し、細胞周期のS/G2期からM、G1期への進行が細胞非自律なアポトーシスを誘導するのに必要であることを見出した。本研究は組織リモデリングにおける細胞増殖とアポトーシスを結びつける細胞間協調の仕組みに新たなコンセプトを提示した。
著者
村田 茂穂
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2013-05-31

下記1-4の項目について研究を行った。1.プロテアソームサブユニットの転写を制御する機構の解明:ゲノムワイド siRNAスクリーニングにより、哺乳類細胞においてプロテアソーム機能低下時にプロテアソームサブユニット群の転写を一斉に亢進させる転写因子Nrf1を小胞体膜から切り離すことにより活性化させるプロセシング酵素DDI2の同定に成功した。この経路はプロテアソーム阻害剤による抗がん治療における同薬剤耐性獲得の主要な機構であり、DDI2阻害剤の開発によりプロテアソーム阻害剤との併用でがん治療において相乗的効果をもたらすことが期待できる。2.プロテアソームの分子集合機構の解明とその病態生理的意義の理解:胸腺プロテアソームサブユニットβ5tがFoxn1依存的に発現制御を受けることにより、胸腺皮質上皮細胞において胸腺プロテアソームが形成されることを明らかにした。3.プロテアソームの細胞内動態の解析:プロテアソームの細胞内局在に影響を及ぼす因子をゲノムワイドsiRNAスクリーニングにより解析を実施し、プロテアソームの核内局在に関与する経路を同定した。また、。プロテアソーム会合因子Proteasome Inhibitor 31-kDa (PI31)の条件付き遺伝子欠損マウスの解析により、in vivoではプロテアソームによるタンパク質分解を正に制御すること、精子の正常な発達に必須であることを明らかにした。4.プロテアソーム機能低下により惹起される病態生理の解析:プロテアソーム機能低下と相乗的に細胞死を誘導する経路を明らかにした。同経路にはすでに阻害剤がいくつか存在しており、プロテアソーム阻害剤との併用でがん治療において相乗的効果をもたらすことが期待できる。
著者
川人 貞史 増山 幹高 山田 真裕 待鳥 聡史 奈良岡 聰智 村井 良太 福元 健太郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

この研究では,政治制度と政治アクターの相互作用のダイナミックスを,民主政治の機能に焦点を当てて分析する.共通する研究課題として,(a)政治制度は民主政治の機能にとってどのような影響・効果を持つか,(b)政治制度がどのようにして形成・創設されたか.それが,政治制度の効果にどのような関連性を持つか,を設定して,明文,不文の政治制度ルールを分析する.
著者
小野塚 知二 市原 博 禹 宗? 榎 一江 木下 順 清水 克洋 関口 定一 松田 紀子 オムネス カトリーヌ オリヴァー ボビー
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、人が他の人の働き方を管理して、より効率的に成果を得るという近現代産業社会に特有の営為(すなわち労務管理)が、いかに誕生し、終焉を迎えつつあるかを、比較史の観点から明らかにした。労務管理は産業社会の初発の段階にはほとんど発生せず、自律的な集団作業に委ねられていたのに対して、そうした集団を可視化し、統御し、解体しようとする発想が19世紀末に登場するとともに、労務管理は生成した。仕事における集団の重要性の低下とともに労務管理の必要性も低下しつつある20世紀末以降の現状の歴史的な位置付けを試みた。
著者
岡田 知巳 海野 徳仁 伊藤 喜宏
出版者
東京大学
雑誌
東京大學地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.61-74, 2001

Northeastern (NE) Japan is located at a typical subduction zone, and many shallow inland earthquakes occur in this region. In recent years, several moderate earthquakes have occurred in the land area of NE Japan. The characteristics of these earthquakes are strongly related to tectonic features in this region. We investigated source processes of these earthquakes using empirical Green's function method. In Sendai city, a moderate (M5.0) earthquake occurred on 15 September, 1998. It was located at the deepest portion of an active fault-Nagamachi-Rifu fault. We used data observed by nearby strong motion arrays. The spatial extent of the rupture area corresponds to that of the aftershock area, and the aftershock activity was high in the area with a relatively small amount of slip of the main shock rupture. We also investigated the source process of the largest foreshock (M3.8). The rupture area of the foreshock does not strongly overlap the asperities of the main shock. Three earthquakes with magnitudes greater than 5 (M5.9 event at 3: 12, M5.4 event at 3: 54 and M5.7 event at 8: 10) occurred on 11 August, 1996 in the Onikobe area near the border of Akita and Miyagi prefectures. Two days after these events, a M4.9 event occurred in an adjacent region. These events were located close to each other, but their mechanism solutions are quite different; thrust-type faults for M 5.9 and M 5.4 events and strike-slip faults for M 5.7 and M 4.9 events. We used waveform data observed by the regional strong motion network (Kyoshin-net, NIED, Japan) and the broadband station network of Tohoku Univ. and JMA. The rupture areas of these earthquakes do not overlap and the areas with high activity of aftershocks are located at the edge of the rupture areas and in areas with little slip.