著者
村上 存
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

従来のカラー・ユニバーサルデザインは、色覚異常者にとって識別が可能な色の組合せのみを用いるアプローチが多い。いま色覚異常者が識別困難な2色C1, C2の組合せを考える。一方の色C1を明度を上げた色と下げた色のディザで近似表現すると、正常色覚者にはディザの合成によって元のC1、C2の2色の組合せと同様に見える一方、色覚異常者にとっては無地色C2と、C1の明暗ディザパターンに知覚され、両者が識別できる可能性がある。本研究はこの仮説に基づく、新しいカラー・ユニバーサルデザイン技術を提案、検証した。
著者
関 貴子 (荒内 貴子)
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

(1)意識調査の結果分析(株)日本リサーチが保有する社会調査パネルを用い、日本の人口動態に基づいて抽出した20~75歳未満の市民4,000名を対象に、郵送自記式調査票による調査を実施した。調査にあたっては、東京大学医科学研究所倫理審査委員会の承認を受けた(承認番号:23-70-0323)。日本の一般市民対象に行った意識調査データセット(2012年に実施、n=2,150、有効回答率53.8%)を分析した。「研究で用いられる遺伝情報の管理に関して、あなたがもっとも懸念すること」を1つだけ挙げてもらったところ、「どのような研究に用いられるかわからないこと」(32%)が最も多く、次いで「誰によって利用されているかわからないこと」(27.5%)が挙げられた。メディアでよく取り上げられる「外部に流出すること」や「あなた個人が特定されるかどうか」といったセキュリティに関連する理由は、それぞれ17.6%、13.7%となっており、研究の用途や利用者に比して低く抑えられていた。(2)クリニカルシークエンスに関する文献調査クリニカルシークエンスとは、次世代シークエンサーを用いるゲノム解析の臨床応用のことである。米国では、次世代シークエンサーを医療機関で利用することに関して、医学的な妥当性の判断のみならず、その倫理的法的社会的課題についても様々な議論が巻き起こっているため、現在の議論を整理するための文献調査を行い、日本で取り組むべき課題を整理した。(3)考察国内の一般市民意識調査結果から明らかになったのは、個人遺伝情報管理のセキュリティにかかわる課題よりも、誰がどのように利用するのか、そして研究結果は開示されるのかといった点が大きな関心事である。しかしながら、文献調査より、次世代シークエンサーの臨床応用が先行した米国では、既に研究結果の開示に関する試行が始まっているが、対応は様々であることが明らかになった。日本でのクリニカルシークエンスはまだ本格化していないが、異なる社会規範やリテラシー環境のなかで、日本ではどのような問題が生じうるのかについて、早急に検討が必要である。
著者
島 知弘
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

細胞質ダイニンは、モーター活性を担う重鎖が二量体を形成して働いている。昨年度、私は別々に精製した単量体重鎖2つを二量体化させることに成功し、これによって二つの重鎖間の制御の実態を研究することが可能になった。本年度私は、まず一方の重鎖をATPと結合できずモーター活性のない、いわゆる「死んだ」変異体(P1T変異体)に代えたヘテロ二量体を作成した。P1T変異体はそれ自身では微小管から解離せず動かないはずであるが、このヘテロ二量体は1分子で微小管上を長距離運動した。この挙動はキネシンなどでは報告されておらず、ダイニン特有のものである。P1T変異体はATPと結合しないため、ATP加水分解に伴う力発生が起こらない。つまりこの結果は、細胞質ダイニンのプロセッシブな歩行には、片方の重鎖のATP加水分解過程の進行や力発生が不要であることを示している。一方の重鎖の力発生なしで二足歩行するという現象は、2つの重鎖が交互に力発生を繰り返して進むという従来型のモデルでは説明できないので、この野生型/P1Tヘテロ二量体ダイニンの運動様式を詳細かつ定量的に調べることで、分子モーターの新たな動作機構を発見することができるかもしれない。したがって今後は、光ピンセットやFIONAを用いて、野生型/P1Tヘテロ二量体ダイニンが微小管上をステップする様子を計測することで、野生型およびP1T変異体各重鎖のステップサイズ・Dwell time・力などを明らかにすることが必要とされる。またP1T変異体はそれ自身では、微小管から解離しないにもかかわらず、野生型とのヘテロ二量体になるとプロセッシブに動くことができるということから、二つの重鎖の間に機械的な張力がかかっており、片方の重鎖がもう一方の重鎖を微小管から引き離すような仕組みが存在していることが示唆される。この機械的な張力の伝達部位としては、二つのダイニン重鎖が結合している尾部末端が最も可能性が高いと考えられたが、尾部末端に柔軟なリンカーを挿入し、尾部末端を介した張力が伝わらないよう設計した二量体組換えダイニンが、リンカーを挿入していないものと同様にプロセッシブに運動することが確認された。この結果は、ダイニン重鎖の尾部末端以外の領域に、機械的な張力を伝達できる程度の強い重鎖間相互作用を示す部位が存在することを示唆している。今後は、新たなダイニン重鎖相互作用部位を同定することによって、細胞質ダイニンのプロセッシブな運動を達成させている重鎖間の制御の実態を解明できるものと期待される。
著者
大森 房吉
出版者
東京大学
雑誌
震災豫防調査會報告
巻号頁・発行日
vol.88, pp.34-39, 1920-03-31
被引用文献数
1
著者
藤田 豊久 ドドビバ ジョルジ 定木 淳 村上 進亮 岡屋 克則 松尾 誠治
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

リサイクルによるレアメタル回収新技術として以下の選択破砕、物理選別、化学処理の技術を研究した。RFIDによる部品管理、ラマン分光による黒色材料のソーター選別、リサイクルの前処理として水中爆砕と機械破砕を組み合わせた選択的材料剥離、電子基板の炭化法による臭素除去と共に銅薄膜の回収および実装部品の熱処理と物理選別によるタンタルとニッケル回収、リチウムイオン電池からのコバルトとリチウム回収、廃超硬工具からのタングステン回収、液晶ディスプレイからのインジウム回収、研磨材中のジルコン回収、吸着法によるレアアース、ホウ素回収技術を開発した。また、一部は従来技術と比較し、循環型社会に取り入れる検討を行った。
著者
市 育代
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

酸化ストレスは動脈硬化発症と進展に深く関与している。セラミドはアポトーシスを誘導する生理活性脂質で、細胞内のセカンドメッセンジャーとして機能していることが知られている。我々は以前、ヒトの血漿セラミドが動脈硬化の脂質マーカーと相関関係にあることを報告している。そこで本研究では、酸化ストレスにおけるセラミド代謝の変化を動物実験によって明らかにするために、四塩化炭素による劇症肝炎時に誘発される酸化ストレスが、肝臓だけでなく、他の臓器においてもセラミド代謝に影響をあたえるかについて調べた。組織のセラミドは、液体クロマトグラフィー質量分析計(LC-MS/MS)を用いて測定した。次に、ストレプトゾトシンによる糖尿病ラットにおいて、各臓器でセラミド代謝の変化がみられるか、またセラミドの蓄積が糖尿病の合併症に関与しているかについて検討した。肝臓のセラミドには変化はみられなかったが、血漿と腎臓のセラミドは糖尿病ラットで増加した。またセラミドの産生酵素であるスフィンゴミエリナーゼ(SMase)活性は、血中の分泌型SMaseが有意に増加した。このように、酸化ストレスを介した過度のセラミド蓄積は動脈硬化の発症因子のひとつであることが示唆された。
著者
柴田 憲治
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

単一の自己組織化量子ドットを用いた単一電子トランジスタ、単一光子発生器などの量子情報処理デバイスは、1つの電子や光子に情報機能を持たせるため、超低消費電力エレクトロニクスの有望な技術と言われている。本研究では、(1)10 nm級InAs(インジウム砒素)量子ドットの位置・形状制御を実現することによって、単一量子ドット機能デバイス作製の歩留まりの飛躍的な改善を達成した。更に、(2)精密に制御された自己組織化InAs量子ドット構造の単一電子・スピン状態の解明を行った上で、(3)それらの物性を応用した超伝導トランジスタや、単一スピン操作素子、THz光エレクトロニクス素子などの例証実験を行った。
著者
中里 成章 鈴木 董 山本 英史 大木 康 桝屋 友子 板倉 聖哲 大石 高志
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

本プロジェクトは、ネットワークの態様と文化表象の生産の2点に着目して、東アジア、西アジア及び南アジアのエリートの比較研究を行い、アジアのエリート研究のための新しい視点を構築することを目的とした。また、画像による研究と文献による研究を結合し、アジア研究の新たらしいスタイルをつくることも目標に掲げた。研究成果の概要は次の通りである。1.新しい視点の構築。アジアの前近代社会の発展の中に近代性を見いだし、伝統と近代という二項対立的な枠組み自体を否定して、エリート研究の新しいモデルを構築しようとする方向。その逆に、近代化論を洗練し精緻にすることで、エリート研究の新たな展開を図ろうとする試み。また、下層エリートの文化生産の様態の研究を進め、それを媒介にしてエリート文化を民衆文化に接合し、両者の相互作用を明らかにしようとする問題提起。大略この3つの視点から方法上の試みが行われた。2.ネットワークの態様。さまざまな研究が行われたが、特に成果があったのは、系譜の比較史的研究であった。系譜に記録された親族ネットワークをめぐって、系譜編纂の主体、系譜の虚構性、記録形式の変化の歴史的意味、親族組織が系譜作成に先立つのか、その逆か、等々の視角から活発な討論があった。この成果は論文集『系譜の比較史』として近く刊行する予定である。3.文化表象の生産。オスマントルコやインドに見られる言語世界の多元的構造が、文化表象の生産にどのような意味をもったか。近代のアジアにおいて文化生産の基本的な制度的枠組みをなしていた検閲制度の実態はいかなるものであったか。また、デザインのような商品化された文化生産は、アジアではどのような歴史をもつのか等の問題に関する研究が行われた。検閲に関する成果は『東洋文化』86号の特集「日本の植民地支配と検閲体制」として既に刊行した。4.画像と文献の研究の結合。テキストに書かれた戯曲の場面を挿絵としてヴィジュアル化するときにいかなる問題が生じるか、等々のテーマに関する新鮮な研究が多数行われた。
著者
武内 和彦 TRUDY Fraser TRUDY Fraser FRASER Trudy
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本研究の主要目的は、国際的な平和と安全に対する現代の脅威に対応する国連システムの効率性について調査を行うことである。本年度はオーストラリア・メルボルンのロイヤルメルボルン工科大学で開催された「People and the Planet」というワークショップに参加し、本研究成果を発表し、レビューを受けることができた。本年度も英国パルグレイブ・マクミラン社から出版予定の「The UN Today : Human Security in a World of States」の執筆に引き続き取り組んだ。原稿は査読審査段階であり、現在校正作業を行っている。最終原稿は平成25年9月1日に出版社に提出し、引き続き編集を行う予定である。国連大学サステイナビリティと平和研究所のヴェセリン・ポポフスキー博士と共同で取り組んでいる「グローバルな立法者としての安全保障委員会」というテーマのプロジェクトでは、安全保障委員会の立法的決議の知識基盤を構築することを模索し、安全保障委員会の立法行動が国連加盟国と国際的な安全と平和に与える影響について評価する。平成24年夏には、ニューヨーク市立大学ラルフ・バンチ国際研究所の所長であるThomas Weiss氏が開催した専門家諮問会議に参加し、平成25年3月にはセント・アンドルーズ大学のグローバル立憲政治研究所の所長であるAnthony Lang氏による「著者のワークショップ(Authors Workshop)」に参加した。現在、このプロジェクトの論文に取り組んでおり、ラウトレッジ社から出版される「Global Institutions」シリーズとして出版される予定である。
著者
菊川 芳夫
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

格子カイラルフェルミオンの生じるゲージアノマリーの厳密相殺を示すための局所的コホモロジー問題を解くために,格子上のChern-SimonCurrentの局所性およびゲージ共変性に着目し, FieldTensorによる展開法を用いる解法を提案した。2次元SU(N)理論については,この方法が有効であることを示し,数値的な検証を行った。
著者
伊藤 啓
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

昨年度解析を始めた、1050色の色票を色名に従って被験者に分類してもらい、「ある色名の範囲内に感じられる色」と「その中でもっともその色らしいと感じられる色」の分類を行う実験で、L錐体を持たないP型(1型)色覚の人に続き、M錐体を持たないD型(2型)色覚の人の解析を行った。D型ではP型よりもC型と知覚が一致する色の種類が若干多かった。3つの色覚タイプを合計すると、赤・ピンク・オレンジ・クリーム・黄色・緑・水色・青・黒ではどの色覚タイプでも同じ色名に感じられる色域が見つかったのに対し、茶色・ベージュ・黄緑・薄緑・青紫・薄紫・紫・赤紫・灰色ではどの色覚タイプでも同じ色名に感じられる色域の範囲が狭く、これらの色で共通の色認識を得る困難さが判明した。また、これまでの知見をベースにして分かりづらい配色を分かりやすい配色に自動的に置き換えるシステムの試作として、昨年度までに作成したどの色覚でも比較的分かりやすい配色セットを用いて、近隣の色域の色をこれら20色の方向ヘシフトさせるアルゴリズムの開発を始めた。境界部の色の扱いが難しく、まだ安定して動作するシステムには至っていないが、今後引き続き検討を継続する。並行して、テレビ放送局からの依頼を受け、従来から各放送局で使用色が統一されておらず、しかも混同しやすい色があると視聴者からクレームが寄せられていた津波・大津波警報の画面表示について、より見やすい配色の検討を行った。このシステムには津波注意報・津波警報・大津波警報の3色の表示色と、陸地・海の2色の背景色の、合計5色が必要であり、しかも注意や警戒感を呼び起こすことができる色の範囲は限られている。数十種類の試作画面を被験者によって比較検討した結果、黄・赤・赤紫の表示色と灰色・濃紺の背景色を用いた組み合わせが最適と判断され、実際に放送局の警報システムに組み込む検討が始められた。
著者
青柳 正規 岸本 美緒 馬場 章 吉田 伸之 越塚 登 大木 康 長島 弘明 今村 啓爾 田村 毅
出版者
東京大学
雑誌
特別推進研究(COE)
巻号頁・発行日
1999

本研究プログラムは、人文科学の基礎となる「原資料批判の方法論」に関する再評価と情報科学と連携した新たな資料学の構築を目的としている。この目的遂行のために象形文化資料のデジタル画像とその記載データに基づく象形文化アーカイブを構築する一方で、積聚された文書資料による研究を併用し、歴史空間の復元とその解析について、以下のような成果をあげた。A.古代ローマ文化および日本近世文化を中心とした象形文化アーカイブを構築した。特に、ポンペイとローマに関するアーカイブの完成度の高さは、国際的に注目されている。B.アーカイブ構築過程に置いて、その媒介資料となるアナログ写真とデジタル画像の比較研究を行い、資料の色彩表現に関してはアナログ写真が優れていることを明らかにした。C.象形文化資料の記載について、多言語使用の可能性を研究し、複数の言語システムを活用し、成果をあげた。D.稀覯本などの貴重文献資料のデジタル化を行い、資料の復元研究を行った。たとえば、1800年ごろに活躍した版画家ピラネージの作品をデジタル化し、そこに表された情景を現代と比較し、新古典主義の特質を明らかにした。E.こうした象形文化アーカイブを活用し、共時的研究を行った。特にポンペイに関するアーカイブ構築によりポンペイ遺跡内における地域的特徴を明確にし、新たな社会構造に言及するまでに至った。F.日本近世文化に関しては、回向院周辺の広場的空間復元研究を行った。上記した数々の実績を基礎として、今後も古代ローマに関する象形文化資料を中心とした収集・公開を進め、研究を推進する予定である。このため、現在の研究組織を継続させるのみならず、象形文化研究拠点のハード・ソフトの両面で改善をはかり、国際的な「卓越した研究拠点」として成長させることが期待されよう。
著者
松田 暁子
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

平成24年度は、会津若松と郡山をフィールドに、それぞれ以下のようなことを研究し、明らかにした。まず会津若松に関しては、簗田氏の家の経営について検討した。特に、商人司としての側面がどのように変化するのかに注目して研究した。その結果、簗田氏は18世紀以降、商人司が本来持っていた商人を統括する権限を喪失し、一介の町役人として存在していたことが明らかになった。ただ、町役人としての職務の中に、会津若松を通過する商人の荷物の改めがあるところを見ると、商人司としての職務が町役人のそれの中に引き継がれていることがうかがえる。また、簗田氏はこの時期、小規模ながら町屋敷経営を行っており、こうしたところから収入を得ていたものと思われる。次に郡山に関しては、永原家の経営分析を行った。永原家は城下では比較的大規模な酒造屋であった。しかし、18世紀末に一時、酒造経営を休止する。そして、それと時を同じくして酒造仲間内の役職である酒造改役を降板する。このことから、酒造屋経営の盛衰と酒造仲間内での地位のあり方は、相互に連関しあっていると評価できる。また、郡山の株仲間と町についても分析を試みた。その結果、近世半ば以降、郡山では株仲間の種類と町域との間に関係性は見られないことが判明した。以上の点から、地方城下町の社会構造の一端を、家の経営・仲間組織・町の三つの要素から明らかにし得たと言える。
著者
吉田 修一郎 高橋 智紀 西田 和弘 中野 恵子 鈴木 克拓 小田原 孝治
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

有機物連用、酸化還元処理による水田土壌の膨潤収縮量や間隙構造の変動レンジについて不攪乱土壌および調整土壌の分析に基づき解析した。有機物連用により稲麦輪作に伴う酸化還元の変動レンジは拡大するが、高水分領域での膨潤収縮特性への影響は風乾調整試料でのみ認めた。また、湛水等の還元環境のもとでは、水ポテンシャル一定条件下であっても、時間の経過とともに体積比および含水比が増加する粘弾性的な挙動が認めた。還元処理は、間隙径分布を全体的に増加させ、練り返しは、狭い範囲に間隙径分布を収斂させる働きがあることを認めた。酸化還元の影響下にある水田土壌の膨潤収縮特性の解析における粘弾性モデルの有効性を提示した。
著者
田岡 和城
出版者
東京大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

CMMoL患者からOCT3/4、SOX2、KLF4、L-MYC、LIN28、p53-shRNAを導入し、iPS細胞(CMMoL-iPS)を樹立した。CMMoL-iPS細胞由来血球は造血能の亢進を示しており、表面抗原の特性も再現した。CMMoL-iPS細胞を免疫不全マウスの皮下に移植すると、奇形腫内で造血幹細胞が生じ、その細胞を免疫不全マウスに2次移植したところ、CD13陽性の単球細胞やCD34陽性細胞のCMMoL様細胞が産生され、CMMoLヒト型マウスモデルを樹立することに成功した。CMMoL-iPS細胞由来血球はERKの活性化を来しており、RAS阻害剤やMEK阻害剤により増殖が阻害された。
著者
瓜生 吉則
出版者
東京大学
雑誌
東京大学社会情報研究所紀要 (ISSN:0918869X)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.135-153, 1998
著者
内田 智士
出版者
東京大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

劇症肝炎、脳梗塞、心筋梗塞など様々な難治性疾患に過剰な細胞死が深く関わっている。遺伝子治療を用いることで、細胞死を抑制する因子を生体へ持続的に供給することが可能である。従来、遺伝子治療ではDNAの導入が行われてきたが、本研究ではより安全性の高い方法であるメッセンジャーRNA (mRNA)導入を用いて、細胞死を抑制する治療を行った。劇症肝炎モデルマウスを用いた実験で、mRNA導入がDNA導入と比べて高い治療効果を示したことから、本治療戦略の有効性が示された。
出版者
東京大学
雑誌
東京大学海洋研究所大槌臨海研究センター研究報告 (ISSN:13448420)
巻号頁・発行日
vol.24, 1999-03-25

平成10年度共同利用研究集会「水生生物の異時性の関する研究の現状」(1998年10月15日~16日)での講演要旨
著者
馬場 靖雄
出版者
東京大学
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.27-48, 2005-03-30

ニクラス・ルーマンの社会システム理論を踏まえて,近代社会を機能的に分化した社会ととらえ,そこにおける「法の支配」の意味について論じる.法を初めとする機能分化したシステムは,それぞれ独自の二分コードを用いて,社会内のあらゆる事象をテーマとして扱う.システムの外にある社会的環境(法にとっての道徳など)もまた,コードを通して,システム内において扱われる.この意味で機能システムはそれぞれ閉じられており,法が扱いうるのは法から見た社会的環境のみである.したがって法の支配が及ぶのは,法自身が投影した社会の範囲内でしかない.しかしこのように閉じられたシステムが相互に影響しあうなかで,いくつかの制度は改変され難いものとして固定されるに至る.基本権はそのひとつである.
著者
大矢 忍
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

1.高濃度MnドープGa_1-xMn_xAs(x=10%〜20%)におけるキュリー温度の成長温度依存性の測定:成長温度を高温化することによって、キュリー温度を172.5Kまで増大させられることを明らかにした。(III-V族強磁性半導体における最高値は、英国ノッティンガム大学グループの173K。本研究の値は世界第2位。)2.MnデルタドープAlGaAs/GaAsヘテロ構造におけるプレーナーホール効果を用いた面内磁気異方性定数の決定:プレーナーホール効果の詳細な測定を行い、磁壁のピンニングエネルギーを考慮したストーナーウォルファース単磁区理論を用いて、強い面内一軸異方性を有するMnデルタドープ層の面内磁気異方性定数を求めた。3.MnAs微粒子を含むGaAs障壁ヘテロ構造におけるバリスティック伝導の実証:MnAs/GaAs/GaAs:MnAs強磁性トンネル接合において、GaAsのMnAsに対する障壁高さがlmeVと大変低く、電子がバリステッィクにGaAs障壁をFNトンネルすることを明らかにした。FNトンネリングを用いた半導体への高効率スピン注入の可能性を示唆している。4.MnAs微粒子を含む磁気トンネル接合における磁気抵抗効果と静磁場による起電力の観測:MnAs/AlAs/GaAs:MnAs強磁性トンネル接合において、低温において静磁場による起電力を観測した。起電力は、数分〜数十分もの程度の非常に長い緩和時間を有していることが分かった。5.GaMnAsをべ一スとした量子ヘテロ構造におけるトンネル磁気抵抗効果の増大を目指した研究:GaMnAs量子井戸2重障壁ヘテロ構造において、上部障壁層にAlMnAsを用いることによって、GaMnAs量子井戸のキュリー温度を増大させて、TMRを増大させられることを示した。