著者
越野 剛 田村 容子 村田 裕和 今井 昭夫 梅津 紀雄 杉村 安幾子 久野 量一 坂川 直也
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

一年目は「前期社会主義」と「人の移動」、二年目は「後期社会主義」と「翻訳・翻案」、 三年目は「ポスト社会主義」と「ノスタルジー・記憶」をテーマにした研究会を国内で開催 する。各年度ごとに1名程度の海外の関連分野の専門家を招へいするほか、最終年度には日 本国内で国際シンポジウムを開催する。研究成果は国内外の学会で積極的に発表し、日本語および英語で論集として刊行する。
著者
池澤 優
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究は死をめぐる宗教学的視点からのアプローチ、死者儀礼、死者崇拝、死生観などについてどのような研究がなされているか、全体像を把握することを可能にするような資料の整理を、できる限り偏らない統合的な視点から提供することを目的として開始された。本年度が研究の最終年度に相当する。本年度は前年度から引き続いて、資料の収集とその整理を行ったが、特に最終年度であることに鑑み、研究成果を報告書の形にまとめることに力点を置いた。本研究は、その目的に従い、二つの課題が設定されている。一つは、様々な研究分野・方法論における現在の死の状況に関する議論を広く収集し、それをビブリオグラフィー化すると同時に、各文献が基本的に生と死についてどのような見方を内包しているかを整理する作業である。研究報告書の第一部と第二部がそれに相当する部分である。第一部は本研究によって収集・整理した文献のビブリオグラフィーであり、第二部はそれらに対して行った整理の、いわばサンプルである。これらによって、死にかかわる宗教学的研究として、どのような文献が存在するのかを検索し、それらがどのような性格のものなのか、広く現在の研究状況を把握することが可能になっている。本研究のもう一つの課題は、様々な文化における死および死者に関する宗教的な現象・行為・観念の事例を収集し、人類文化全体として、それがどのような構造を持ち、またどのような可変性を持つのかを俯瞰できるような整理を試みることである。当然のことながら、単独の研究者が多くの文化に関してこの作業を行うことは不可能であり、先ず、研究代表者が専門とする文化について、一種のサンプルを提供するのが現実的である。研究報告書の第三部がこの部分に相当する部分であって、中国の古代から中世にかけて、死者の在り方がどのように変化していったか、それが何を表していたかを論じた。本研究担当者の視点が基本的に宗教学というディシプリンからのものである以上、本報告にも一定のバイアスが含まれることは否めないであろう。しかし、宗教的な死生観が死後の存続や他界の信仰といった表面的な特性によってのみ捉えられるべきではなく、死という破壊を有意義なものに変換するすることにより、生をも有意義なものにする営みでもあったこと、それ故に我々にとっても看過することのできない現代的な意義を有するものであることを示すことができたと思う。
著者
岡部 繁男 橋本 浩一 渡辺 雅彦
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2013-06-28

学習や経験依存的な脳機能は、生後の臨界期に獲得され、この時期に脳回路はシナプスリモデリング・刈り込みを受ける。イメージングと電気生理学により、臨界期の回路改変へのグリアの影響を解析した。大脳皮質ではミクログリアが組織体積を複数の領域に区切り、それによって錐体細胞樹状突起をシナプス動態の異なる領域に分節することが明らかになった。一方で小脳の登上線維の刈り込みにおいてミクログリアが重要な役割を果たすことがミクログリア特異的なCsf1r-cKOマウスの関与により明らかとなった。ミクログリアによる制御は貪食以外の機序による可能性が高く、抑制性シナプスの機能を介して影響を与える可能性を示唆した。
著者
尾上 圭介
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

漫才、落語の音声資料を収集して文字化し、これに既存の落語活字資料を加えて、その談話構造を分析した結果、次のような見解を得た。1.落語は、(1)演者による<素材紹介>行為と(2)演者による場全体の<共感形成>行為とが重層して成立するものであり、(1)と(2)の重層は<下げ>において集約的に見られるのみならず、落語のテクスト全体において見られる。2.漫才の談話論的構造も基本的にはこれと同じである。笑う対象としての<素材>は、ボケ側の発言内容や、そういう発言をすることによってそこに形成される一つの人間像、また二人の会話の進展そのものによって構成される。それを笑うべきことだとする場の<共感形成>は、ツッコミ側の発言によって実現される。3.場全体が笑うための<素材>を効率的に構成するために、漫才において長年にわたって練り上げられた会話の運びの型がいくつもあり、その中には(A)通常の日常会話の中にもあり得る運びのタイプと、(B)漫才を代表とするような笑いの話芸の中でしか現れないような運びのタイプとが認められる。4.大阪方言では、会話を笑いにもちこむための努力と工夫が通常の会話の中でも濃厚に為される傾向が強い。それは(B)タイプの会話が日常化していると言うこともできる。5.上記(4)のことの根底には笑いを求める大阪人の気質があるが、そのような言語行動上の顕著な傾向の背後には、大阪人の気持ちの動き方、発想様式、美意識にかかわる9個の特徴が指摘できる。
著者
大森 房吉
出版者
東京大学
雑誌
震災豫防調査會報告
巻号頁・発行日
vol.88, pp.1-61, 1919-03-30
著者
星野 太佑
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、乳酸が骨格筋ミトコンドリア増殖を引き起こすのか、摘出筋を用いた実験系とC2C12筋管細胞の電気刺激の系で検証した。その結果、摘出筋に対する10mM乳酸刺激は、ミトコンドリアの新生を抑制した。しかし、この時乳酸添加24時間後では、培地中の乳酸濃度が25mMを超えており、非生理学的な高い乳酸濃度であった。電気刺激による乳酸濃度の増加は、C2C12筋管細胞のPGC-1alphaのmRNA量を増加させた。以上の結果から、筋収縮に伴うような乳酸濃度の増加は、転写制御を介してミトコンドリアの新生を引き起こす可能性を示唆した。今後、乳酸濃度の濃度応答性の違いをさらに検証する必要がある。
著者
塚谷 文武
出版者
東京大学
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.141-161, 2008-03

雇用税額控除(Work Opportunity Tax Credit)は,アメリカ連邦政府が定める「経済的困窮者」(economically disadvantaged person)や,「障害者」(disabled person)を雇用する雇用主に対して,支払った賃金の一部について企業の税額から税額控除を認める制度である.WOTCは,1990年代アメリカの福祉再編過程において,就労を促進することで自立を促す福祉改革の一環として導入された.1996年福祉改革において拡充された勤労所得税額控除(EITC)が福祉受給者の就労を促進する一方で,WOTCは雇用主に対して福祉受給者を雇用するインセンティブを与えていた.税制を通じた雇用促進へのインセンティブ策は,小売業,ホテル・モーテル業などの労働集約型産業への就労を促進する効果をもっていた.WOTCが機能するうえでは,Goodwill Industriesのような地域サービスプロバイダーが,雇用主,福祉受給者を労働市場において結びつける重要な役割を果たしていた.今後,これら3者の関係の全体像を提示することで,アメリカ的な福祉改革のより具体的な姿が明らかにされるであろう.
著者
松本 洋一郎 德永 保 吉川 潔 辰巳 敬 真壁 利明 橋本 周司 松尾 豊 坂田 一郎 上山 隆大 浦島 邦子
出版者
東京大学
雑誌
特別研究促進費
巻号頁・発行日
2014-04-01

シンガポールは一人当たりGDPではわが国を超え、大学ランキングでも台頭しているが、わが国における政策研究は限られていた。本研究では、シンガポールの科学技術政策(特にバイオメディカル推進策)について、文献調査や現地での専門家への聞き取り等によって明らかにした。シンガポールでは産業政策のために科学技術政策が実施されているといっても過言ではない。著名研究者を大量に誘致するなどし、旧来から行われてきた多国籍企業誘致を先端科学分野の研究開発へ拡充する形で、成功を収めてきている。大学政策においては、テニュア制度や会計、財務など、モデルとする米国の事例から徹底的に学ぶ姿勢が見られた。
著者
岸本 美緒
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究では、身分制度の諸側面を通底する「身分感覚」に焦点をあて、社会的意識という視点から、中国身分制度の全体像を長期的な視野で再構成することを目指した。具体的には、明初から清代中期に至る時期の良賤身分の問題を取り上げて、多様な史料を用いて実証的な研究を行い、以下の諸点を明らかにした。(1)明清時代を通じて「賤」観念の核心は、他者に対する服役性・従属性という点に存在した。(2)明代初期には、法律上の「賎民」を特定の限定された集団に限り、民間で形成される従属関係を法律上の「賤」と切り離す政策が取られた。(3)明代後期には、社会的流動性の増大に伴って服役的な産業が発展し、従来の政策が破綻すると同時に「賤」をめぐる議論が活発化した。(4)清朝に入り、18世紀前半の雍正帝の時代には、被差別集団の戸籍の廃止や契約による奴婢化の容認など、身分をめぐる幾つかの改革が同時になされたが、それらはいずれも、社会的流動性の増大を肯定するとともに、そこに生ずる上下格差を新たな身分制度のもとに秩序化しようとするものであった。(5)清朝のこのような政策は、社会的身分をめぐる激しい競争の一因となり、賎民の身分上昇を抑えようとする既存の紳士階層によってしばしば冒捐冒考紛争(科挙資格や官職の保有を禁じられた賎民が身分を偽って科挙資格・官職の保有をはかったという理由で告発され、訴訟などに至る紛争をいう)が起こった。(6)清代後期に良・賤の判定基準をめぐり煩瑣な法令が制定されたのは、こうした紛争の頻発を背景としている。以上、同時期の日本の身分制度とは大きく異なる明・清時代の身分制度の特色と展開につき、大筋の枠組を明らかにすることができた。
著者
山本 陽子 渡邉 聡明
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では大腸特異的VDRKOマウスを作出し、炎症性腸疾患および炎症性発癌モデル実験をおこない、両疾患に対する大腸のVDRの機能解明をめざした。大腸特異的VDRKOマウスは炎症性発癌による死亡率が高かったが、生存したマウスについては両モデルともコントロールマウスとの差は認められなかった。これは両モデルにおいてコントロールマウスの大腸におけるVdr遺伝子発現が減少したためであると考えられた。一方コントロールマウスで高頻度に認められた脱肛および腸管の周辺組織への癒着は大腸特異的VDRKOマウスでは認められず、大腸のVDRがこれらの表現型に関与していることが示唆された。
著者
渡辺 美知子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

言い淀んだとき,日本語では「エート」などのフィラーが頻繁に用いられる。フィラーは文節境界によく現れるが,その出現率は境界直前の文節の係り先までの距離が長いほど高くなることが明らかになった。これにより,フィラーは後続発話生成の負荷と深く関連する現象であることが示唆された。すなわち,これから伝えようとするメッセージが長く複雑なほど,スムーズな言語化が困難になり,フィラーの出現率が上昇すると考えられる。一見ランダムに現れるように見える言い淀みの背後にある規則性が示された。
著者
大津 透
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1999

講談社の『日本の歴史』シリーズのなかで、第6巻「道長と宮廷社会」を執筆して、日本の古代国家の形成のなかで、東アジア世界で中国文明を吸収して文明化をとげたが、その到達点が10-11世紀の藤原道長に代表される摂関政治にあることを解明し、江戸時代まで続く宮廷社会の成立の歴史的意味を考えた。律令制が変質して、律令国家の第二段階となるだけでなく、白氏文集に代表される漢文学の流行、作文など漢詩の作成をうけて『源氏物語』『枕草子』などの王朝文学が花開き、藤原行成など三跡が和様書道を完成させ、藤原公任が『和漢朗詠集』を編み、漢詩と和歌のアンソロジイを作り、日本の古典的な美意識を規定した。日本における古典とは、一義的には中国における儒教の経典であるが、それが律令国家の展開の中で日本で吸収定着するなかで、この時代に日本にも古典と呼びうる独自な作品や美が生まれたのである。また編集も兼ねる第8巻では天皇制についての多角的な議論を行っている。調査としては、中国寧波の天一閣で発見された北宋天聖令の田令・賦役令の比較研究を進め、具体的な唐令の復原作業を進めている。また龍谷大学所蔵の大谷探検隊が西域より将来した大谷文書のうち、唐西州の退田文書、欠田文書、給田文書からなる均田制関係文書群について、副葬時に四神に青龍の形をなして七枚以上張りあわされていたことを解明し、多くの断簡接続を発見した。大谷文書の整理に貢献しているだけでなく、唐律令制の土地・民衆支配が解明され、日本の田令の特質も明らかになるであろう。
著者
堀之内 末治
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

グラム陽性細菌である放線菌は、菌糸状に生育して最終的には珠玉状胞子を着生する複雑な形態分化を行う。放線菌中に見出されたカルシウム結合タンパク質CabAは、遺伝子破壊などのデータからカルシウムバッファーまたはトランスポーターとして機能すると推定された。CabBと名付けたタンパク質は放線菌に広く分布し、2個のEFハンドモチーフを有する。CabBは真核生物のカルモジュリンと高い相同性を示す。なお、カルモジュリンは相同性のあるドメインが2個連なったダンベル構造をとっているが、CabBはその1個分の大きさを持つ。CabBについて以下の知見を得た。(1)S.ambofaciensとS.coelicolorにおいて、cabBは培養期間を通じて単一の転写開始部位から転写された。(2)CabBは放射ラベルのCaを用いた実験で、高いCa結合能が確認された。CabBは2個のEFハンド有することから、2個のCaイオンを結合すると推定された。(3)CabBはCa結合により、そのα-ヘリックス含量が大幅に増加することをCDスペクトル分析で確認した。(4)cabB破壊株では、胞子の発芽に違いが見出され、また高濃度カルシウム培地での生育が遅れた。したがって、CabBは、放線菌の増殖、胞子発芽に関係することが推定された。CabBと相互作用する菌体内タンパク質の同定やその分子機構の解明は今後の興味ある課題である。
著者
濡木 理 伊藤 耕一 MATURANA ANDRES 加藤 英明 石谷 隆一郎
出版者
東京大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2016-04-26

光感受性チャネル:光駆動性カチオンチャネルであるチャネルロドプシンは励起光(480nm青色光)の照射によってイオンを流入させることができるため、「光遺伝学」と呼ばれる手法のツールとして神経生物学の分野で広く用いられている。平成28年度にはこのチャネルロドプシンのイオン流入の分子機構を明らかにするため、SACLA自由電子レーザーを用いた時分割構造解析を行い、励起光照射した後1, 50, 250, 1000, 4000マイクロ秒後における構造変化を明らかにした。その結果、発色団レチナールにおけるall-trans型から13-cis型への異性化に伴ってチャネルロドプシン内部に構造変化が生じ、イオン透過経路におけるinner gateと呼ばれる狭窄部位が広げられるように変化することがわかった。音感膜タンパク質:Transmembrane channel-like protein1/2 (TMC1/2) は,聴覚や平衡感覚の受容に関わる機械刺激受容チャネルの有力候補である.鳥類や爬虫類に由来するTMCホモログの発現・精製に成功し,熱安定性が向上して均一性高く発現するコンストラクトの同定に成功した.現在ネガティブ染色による電子顕微鏡観察を試みている.ニワトリ由来Prestinに関しては,さらにコンストラクトの改変および発現・精製系の検討を行った結果,細胞質ドメイン欠損変異体について大量かつ均一に精製することに成功した.これと並行して,ヒト由来Prestinのクローニングも新たに行い,さまざまな細胞を用いての発現条件の検討を行った結果、HEK293S細胞にて良好な発現が確認された.この発現系を用いて界面活性剤や緩衝液などの可溶化条件の検討および120種以上のコンストラクトの比較検討を行った結果,熱安定性が向上して均一性高く発現するコンストラクトの同定に成功した.

2 0 0 0 OA 大日本史料

著者
東京大学史料編纂所 編
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
vol.第6編之5,
著者
MARIANNE SIMON・O 月村 辰雄 中地 義和 野崎 歓 塚本 昌則
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、フランスにおける16世紀以降の視覚詩を研究対象として、文字の視覚性を特徴とする。視覚詩の歴史、視覚詩の視覚性、作者と読者の関係、フランスの視覚詩の国際的な位置づけといった四つの視点から、文学とイメージの関係性について考察するものであった。なかでも、近年発見された新しい資料をもとに、20世紀の詩人ピエール・アルベール=ビローとピエール・ガルニエの作品研究を進めた。
著者
貞広 幸雄 奥貫 圭一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では,複数の空間オブジェクト分布間の相互関係を分析する手法を開発し,その実際の適用を通じて実用性の検証を行った.空間分割構造,ポリゴン分布,点分布の3つの空間オブジェクト分布について,位相関係,階層関係,補完関係,隣接関係という4種類の空間関係を抽出し,可視化する手法を開発した.いずれの手法も,離散構造をグラフとして取り扱い,その中で典型的なパターンを抽出するコンピュータアルゴリズムを用いている.
著者
中村 圭介 石田 浩 佐藤 博樹 仁田 道夫 石田 光男 本田 由紀
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

1.ホワイトカラーの業績管理の方法には三種類ある。第一の方法は売上高、利益率・高、費用など経営指標を部、課レベルに分割し、その達成状況を定期的にモニターし、進捗の遅れを発見した場合にその原因を探り、対策を講ずるというものである。第二の方法は経験的に割り出された目標値(たとえば開発にかかる時間等)を実績値と常に比較し、乖離が発見された場合にその原因を探り、対策を講じるというものである。第三の方法は、スタッフ部門などでみられるが、具体的な数字目標なしに定性的目標(定性的な年度計画など)の達成状況を定期的にモニターするというもので、もっとも緩やかな方法である。これらの方法で部門の成果を定期的に測定し、計画の遅れや乖離を発見し、対策を考案、実施している。これが部門別業績管理の仕組みと実際である。いわゆる成果主義的人事管理は、こうした部門別業績管理のありようを前提として設計され、目標達成に責任を負える立場にいる者(課長以上の管理職)を対象にしている場合にのみ、順調に機能する。もっとも、部門別業績管理の仕組みがきちんと出来上がっていれば、それと別の論理によって人事管理制度をつくりあげることは可能であり、私たちの事例でもそうしたケースはみられた。2.成果主義的人事管理はホワイトカラー個々人を評価することにつながり、これに呼応するように自らのキャリアを自らが開拓するホワイトカラーも増えつつある。社会人大学院は彼らにとって貴重なステップをなす。社会人大学院修了者の半数以上が外部労働市場への志向をもち、定着志向の者であっても企業内でのキャリア展開に大学院教育の経験が反映されていることを認めている。3.今後、本を2冊程度、刊行する予定である。