著者
平木 敬 笹田 耕一 定兼 邦彦 牧野 淳一郎 井田 茂 稲葉 真理
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2009-04-01

本研究開発では、関数型オブジェクト指向言語であるRubyを拡張し、HPC向け高生産言語としてHPC Ruby言語を確立した。また、Rubyの特徴である計算環境の統合を生かし、HPC情報環境における新しいソフトウェア体系を実現した。HPC向け新言語の普及のため地球科学分野、天文分野、離散最適化分野においてRuby言語モデルを用いて問題定式化し、Rubyの科学技術計算位おける優位性を示した。分散実行環境の実証研究では、日米欧を100Gbpsインターネットで結び、その90%を高効率利用する通信方式を確立し、実験により実証した。これらの成果を総合し、Rubyを中心とした科学技術計算の体系を確立した。
著者
針原 伸二 清水 宏次
出版者
東京大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1999

前年度は,主に現代人の歯を用いて,歯からDNAが抽出できるのか,また抽出したDNAからどのような遺伝子の解析が可能なのかについて,技術的に検討した.今年度は実際に江戸時代人骨の歯の試料を用いて,DNAの抽出と解析を試みた.青森県八戸市新井田遺跡から発掘された人骨から,異なる個体のものと判断できる36本の歯の試料を得た.前年度に,現代人の試料で試みた方法と同様に,それぞれの歯根部を切断して,破砕し,EDTA溶液中にてしばらく脱灰した後,プロテイナーゼ処理して,フェノール法にてDNAを抽出した.土中にて長時間を経た試料からの抽出であることもあり,DNAを定量分析したり,電気泳動での確認は不可能であったが,ミトコンドリアDNA(mtDNA)のPCR増幅は,36個体中30個体で可能であった.増幅したのは,mtDNAの中で長さの変異のみられる,領域V(non coding region V)を含む120塩基の部分である.2回の増幅により,予想される長さの断片を得ることが確認された.長さの変異は,9塩基対の欠失として報告されているが,今回増幅が認められた30個体中,3個体で増幅された断片が短く,欠失の変異があると考えられた.性別判定は,Y染色体特異的反復配列の部分をPCRで2回増幅し,断片の有無を確認した.36個体中,断片が検出されたのは10個体であった.X染色体中に1箇所しかない配列の増幅による,X染色体の検出は未だに成功していない.細胞中,多くのコピー数のあるmtDNAや,反復回数の多いY染色体特異的配列ではPCR増幅が可能であったが,ゲノム中に1箇所しかないDNA部分の増幅については,さらに技術的な改良が必要と思われる.
著者
鈴木 崇彦 細井 義夫
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

ラット新生児より採取した心筋細胞に2Gy、5Gy、10Gy、20Gy、および50GyのX線照射を行い、エンドセリン(ET)遺伝子mRNAの発現量について、RT-PCR法を用いて検討を行った。その結果、X線の10Gyから50Gyの線量において、照射2時間後より8時間後にかけてETmRNAの発現量の増加を認めた。定量的評価の結果、増加量は最大270%という結果が得られた。心筋細胞は50GyのX線照射によっても、24時間後の細胞生存率の低下は観察されず、培養心筋細胞はX線による細胞障害に対し強い抵抗性を示すことが分かった。次に、ETのmRNAの発現上昇が、ETペプチドの産生上昇につながるかどうかを検討するため、培養心筋細胞に20GyのX線を照射後、12時間、24時間後の培養液を採取し、その中のET分子についてELISA法を用いて定量を行った。しかし、培養液中には有意な量のET分子の産生は認めることが出来なかった。一方、X線照射後の培養細胞自身をET特異的抗体を用いた細胞免疫染色を行ったところ、わずかではあるがETの存在が認められた。このことは、X線照射によって、心筋細胞はETを産生するものの、その量は極めて少ないことが推察された。しかし、1個の細胞での産生量が少ないといっても、心筋の組織レベルになれば、血管を収縮させるのに十分量のETが産生されることが予想されたため、ラットの新生児胸部へのX線照射により、組織中にETの遺伝子およびペプチドの産生上昇が認められるかどうかについて実験を行った。ラットの3日齢の新生児の胸部に対し、20GyのX線を照射し、24時間後に心臓を摘出し、mRNAの発現をRT-PCRにて測定した。その結果、mRNAはやはり上昇するという結果が得られた。次に組織切片におけるETの産生について組織免疫染色を行ったところ、ETペプチドの産生は認めることができなかった。現時点では、細胞レベルならびに個体組織レベルではX線照射によりET遺伝子の発現上昇がおこることは間違いないと思われ、個体レベルでは、その後のさまざまな要因によりETペプチドの産生につながる可能性があると考えられる。ヒトの場合、X線照射後、心筋梗塞を引き起こす患者は約2割であり、また、発生までの時間経過も患者それぞれにばらつきがあるため、さらに検討が必要であるが、ETにより血管平滑筋の増殖が高まることを考えると、X線照射に先立って、ET受容体遮断薬を一定期間投与することが、平滑筋増殖を抑制し、放射線による心筋梗塞発生の予防につながる可能性が考えられる。
著者
能登路 雅子 藤田 文子 シーラ ホンズ 吉見 俊哉 谷川 建司 土屋 由香 矢口 祐人 梅崎 透
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

本研究は冷戦期を中心にアメリカの文化外交の実態を学際的に解明することを目的とし、特に1940年代から70年代にかけて米国国務省が民間人や民間機関、ハリウッド映画産業や航空機産業などの企業と緊密な連携を保ちつつ、日本を含むアジア地域で積極的な文化外交を展開した実態を3年間を通じて明らかにした。本研究が特に注目したのは文化外交の政策的内容よりも実践レベルにおける当事者の意識・行動とその調整・抵抗といった変容のプロセスである。第二次大戦後、戦略的重要性を高めたアラスカ・ハワイの州昇格の際にアメリカ政府が製作した広報映画の分析も研究成果のひとつであるが、太平洋地域における植民地統治と文化的影響に関する幅広い研究を進めたことも本プロジェクトの学術的貢献としてあげられる。特にサイパンとパラオ共和国における実地調査を通じて、スペイン・ドイツ・日本・アメリカによる統治が現地に残した文化とアイデンティティにおける多層な影響力をポストコロニアルの視点から理解し、文化外交が一国の国益を超えた文化混淆をもたらす実態を長い歴史的スパンで、またローカルな文化実践との関連で捉えることができた。
著者
粕谷 大智
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

【目的】腰痛ガイドラインでは、治療者の対応(指導、共感、励まし)などが、治療成績や満足度を向上させるというエビデンスがある。しかし、腰痛患者の健康や疾病に対する考え方、理解度、性格などが治療の効果を左右する可能性があり、腰痛患者の信念体系を把握した上での対応が求められている。また、慢性腰痛患者が健康や疾病に対してどのような信念体系を持っているかということを知るには、その患者個人にあった介入を実施するためにも重要なことと考える。今回、慢性腰痛患者の健康統制感と身体所見との関係を調査し、心身健康科学からみた慢性腰痛患者の特徴と介入後の変化について検討した。【対象と方法】慢性腰痛と診断された49例を対象とした。評価法は、健康統制感尺度(JHLC)と患者立脚型慢性腰痛症患者機能評価尺度(JLEQ)と不安評価尺度(STAI)とVASと身体所見との関係を調査した。介入は、(1)セルフケア、(2)患者教育、(3)鍼灸治療(4)カレンダーを用いて、課題が出来たら印をつけてもらった。調査は介入前・介入後1・2・3ヶ月時のJHLCの推移と、それぞれの指標との関連について検討した。【結果および考察】初診時と3ヵ月後の各指標の変化は次のとおりであった.(1)腰痛を表すVASは初診時54.6±13.1が3ヶ月には34.5±15.3と有意に改善していた。(2)JLEQ(腰痛QOL尺度)は78.9±18.5が67.3±17.3と有意に改善していた。(3)STAI(特性不安)は36.3±7.5が31.9±8.3と有意に低下していた。(4)JHLCは5つの下位尺度(Internal、Professional、Family、Chance、Supernatural)の中で、は内在的統制(internal)の尺度のみが有意に増加した。(5)VASの初診時と介入3ヶ月時の変化量を基準変数とした重回帰分析の結果では、QOL、STAI、身体所見変化量の寄与率が強く、JHLCの項目では、Professionalの変化量に寄与率が強い傾向であった。以上の結果より、自分の健康をコントロールできるのは自分自身であるという内在的統制(internal)が高い患者、またはinternalを高めること。外在的の因子では医療従事者(Professional)の関わりが、より効率的な保健行動向上の可能性が示唆された。
著者
上別府 圭子 西川 亮 柳澤 隆昭
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

小児脳腫瘍経験者とその保護者138組を対象に、質問紙・医師調査票・認知機能検査による多施設共同横断的観察調査を行なった。特に18歳以上の小児脳腫瘍経験者のいる研究参加者の家庭は、社会経済的地位の高い家庭が多い傾向が見られ、経済的理由によるフォローアップロスの可能性が示唆された。91名(66%)が1つ以上の晩期合併症を有しており、35名(25%)が複数の晩期合併症を有していた。成人後も高頻度に受診を必要とする者が多かった。今後さらに、心理社会的・認知的側面の分析を行なう予定である。
著者
金子 拓 黒嶋 敏 堀 新 黒嶋 敏 堀 新 岡田 正人 桐野 作人 杉崎 友美 矢部 健太郎 和田 裕弘
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、織田信長の家臣太田牛一が著述した『信長記』(別称「信長公記」「原本信長記」「安土記」など)自筆本・写本の史料学的検討を目的とした。国内各所蔵機関に伝来している『信長記』を調査し、その一覧表を作成するとともに、史料編纂所において未撮影の写真による撮影・紙焼写真購入を進め、それらをもとに内容を検討し書写伝来の系統を明らかにした。これらの成果は、研究代表者金子の単著『織田信長という歴史』、連携研究者堀新が編者となり、研究協力者桐野作人・矢部健太郎・和田裕弘が寄稿した『信長公記を読む』、研究協力者杉崎友美の論文「「信長記」の筆跡論」などとして公表した。
著者
名倉 豊
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

現在、最も安全な輸血とされている自己血輸血の問題として凝集塊形成による返血不能や、返血時の発熱反応・血圧低下などの非溶血性副作用の発生が挙げられる。これらの主な原因として、自己血中に含まれる白血球の関与が考えられる。同種血輸血製剤による非溶血性副作用の防止策として、赤十字血液センターでは全ての同種血製剤に対して、保存前白血球除去を導入している。本研究では、自己血の保存前白血球除去(以下、白除)の有用性について検討を行った。その結果、白除処理により白血球および血小板は効率よく除去されていた。一方、赤血球は白除処理の影響を受けず、高い回収率であった。白除した自己血では凝集塊形成を認めず、返血時に問題も認めなかった。自己血中のサイトカイン・ケモカイン濃度を測定したところ、白除処理により、不変のものから顕著な減少を示すものまで様々であった。さらに、これらのサイトカイン・ケモカインが血小板凝集塊形成に及ぼす影響を検討するため、白血球の存在下及び非存在下において血小板に添加し、凝集塊形成を評価した。その結果、白血球非存在下で血小板凝集は認めないものの、白血球の存在下でサイトカイン・ケモカインを添付すると血小板凝集が認められた。また、血小板と白血球の接着について検討を加えた結果、サイトカイン・ケモカイン処理により、接着率が増加した。このことから、サイトカイン・ケモカイン刺激による血小板凝集には、白血球の存在必要不可欠であることが確認された。したがって、自己血の保存前白除により、白血球および血小板が効率よく除去され、これらが産生するサイトカイン・ケモカイン濃度の上昇を防止することが可能であり、その結果として凝集塊形成の抑制及び非溶血性副作用の防止が可能と考えられた。自己血の安全性向上に、保存前白除の導入は重要と考えられる。
著者
川戸 佳 木本 哲也
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

(合成研究1)脳海馬における性ステロイドの合成経路の解明 成熟ラット海馬で「テストステロン□DHT(男性ホルモン)□3a,5a-androstanediol」の代謝系を発見した。質量分析法で高精度測定したところ、エストラジオール(E2;女性ホルモン)の海馬内濃度は約5nMで血中より有意に高かった。精巣を除去しても海馬内DHEA濃度は維持されており、海馬内でのこれらのステロイドの合成が確証された。(合成研究2)脳海馬におけるストレスステロイドの合成経路の解明「プロゲステロン□デオキシコルチコステロン(DOC)□コルチコステロン(CORT)」の代謝経路を確証した。mRNA解析の結果P450c21やP4502D4、P45011b1、P45011b2が確認された。海馬内CORT濃度は約500nMで血中の約半分だった。副腎を除去しても海馬内CORT濃度は血中より高いままで、海馬内CORT合成が確証された。(作用研究1)海馬のシナプス可塑性に対する女性・男性ホルモンの急性神経作用の解明 多電極同時電気生理解析でDHTがCA3でLTDを強化することを明らかにした←□u梠テ甥ぢ、a型古典的エストロゲン受容体(ERa)アゴニストPPTは30分でLTDを増強したが、b型受容体(ERb)アゴニストDPNでは増強は見られなかった。ERaがシナプス部位に局在することも免疫電顕観察で発見した。(作用研究2)海馬のスパイン構造に対する脳ステロイドの急性作用の解明 単一神経細胞に蛍光色素を注入しスパインを可視化して形態解析を行った。E2は2時間でCA1でthinスパインを増加させ、全スパイン密度も1.5倍に増大させた。CA3ではスパイン密度が70%程度に減少した。これらはERa又はERbの阻害で抑制され、MAPK経路により媒介されていた。DHTも2時間でCA1 thinスパイン、全スパイン密度を増大させた。(作用研究3及び4)CORT経路で合成される脳ステロイドの急性神経作用CORTはGRを介してLTPを急性的に抑制した。CORTで抑制されたLTPはE2の同時投与で回復した。PPT及びDPN投与実験等よりE2の作用はERa、ERb両方により媒介され、ERK/MARK経路を介することが明らかとなった。以上より、成獣ラットの海馬で女性・男性ホルモンやストレスステロイドが合成され、急性的に神経シナプス可塑性や神経シナプス構造を変動させることが示された。
著者
新居 洋子
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本年度は、昨年度におけるフランスでの史料調査の成果などをもとに、二本の論文を発表した。「18世紀在華イエズス会士アミオと満洲語」では、満洲語文法を解説した"Grammaire Tartare. Mantchou"や、満洲語・フランス語辞典Dictionnaire Tartare-Mantchou-Francoisといったアミオ著作、さらに乾隆帝『御製盛京賦』や満文『武經七書』といった満洲語典籍のアミオによるフランス語訳について、分析を行った。分析にあたっては、アミオが用いた満洲語および漢語の文献、またアミオより前の在華イエズス会士による満洲語関係著作も参照し、アミオ独自の満洲語観について探ると共に、こうしたアミオの満洲語観と18世紀当時のフランス知識界との関わりについて検討した。「イエズス会士アミオのみた乾隆帝と清朝官僚」では、乾隆帝および阿桂や于敏中ら清朝官僚による政治について、アミオが行った報告を取り上げた。アミオは、しばしば邸報を拠り所として、乾隆朝の為政に関する報告を行っている。本論文では、これらのアミオ報告を、当該時期の『上諭〓』、『起居注』、『實録』などと対照、分析し、さらにこうしたアミオ報告と当時のフランス思潮との関わりを明らかにした。また昨年度に引き続き、本年度もフランス国立図書館写本室での史料調査を行った。アミオの報告の多くは、18世紀在華フランス人イエズス会士の報告を編纂したMemoires concernant l' histoire, les sciences les arts, les mceurs, les usages, &c. des Chinois全16巻(1776-1814)の中に収録され、当時のフランス知識界において広く読まれた。しかしこの二回の史料調査で、(1)アミオ報告の原文史料と、(2)Memoiresに収録されたものとを比較した結果、報告によっては(1)から(2)への過程で文章がかなり削られていることが明白になった。このことから、アミオ報告の原文史料の重要性だけでなく、(1)と(2)の間に介在した人々(Memoires編纂に携わったフランス国務卿ベルタンら)の意図を探る必要性についても、認識を新たにした。
著者
MULLER Albert
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

研究の期間、研究代表は完全に機能的にオンラインウェブ辞典サービスの作業を終了した。このウェブ辞典サービスで、ユーザは漢字と複合語の意味を捜し求めることができる。現在のところ、それはWWWで最も高度なアカデミックな漢・英辞典である。合計で1万1073の単漢字、および3万1911の語彙を含んでいる。URL:http://www.buddhism-dict.net/dealt
著者
井村 祥子
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

クラシックバレエのピルエットについて,モーションキャプチャーシステム及び床反力計を用いて,ロシア人男性プロバレエダンサー5名及び日本人女性プロバレエダンサー10名のデータを取得し,逆動力学の手法により回転の生み出し方について調べた.平均回転数は男性4回転,女性2回転であった.動作開始時の両上肢の水平面内の回転で,全回転分の角運動量が得られた.女性ダンサーはこの時上体が正面から回転し, それを引き止める支持脚のトルクが回転を妨げる.よって開始時は下肢や上体を回転させず,床からのトルクを上肢に伝える必要がある.また回転数を上げるには,上腕を体幹に引き付け遊脚の位置を下げて対処する.
著者
瀬地山 角 中西 徹 幡谷 則子 後藤 則行
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

地域別に重要なネットワークを抽出し,発展途上国の都市貧困層のコミュニティ形成の国際比較分析を行い,東アジアでは,近年の社会変動の中で構成単位である家族におけるジェンダー関係の相違が決定的役割を持つのに対して,コロンビアでは,市政府,市議会議員とコミュニティ住民の間のネットワーク・コーディネーションがコミュニティ資源を深化させ,フィリピンでは二者間関係の連鎖が広域コミュニティの形成を促進しているという発見を得た。
著者
中村 仁彦 山根 克 高野 渉 神永 拓
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2008

人間の身体と運動の記号モデルと自然言語モデルを接続することによって,世界や他者の理解を行い,それに基づいて自己の行動を決定する計算システムを構築した.人類の祖先がたどったものとは異なる経路をたどって,まだきわめて限られてはいるが, われわれが世界や他者を理解するのと類似の方法をロボットが獲得した瞬間である. これを再帰的に行うことによって, 他者の行動決定のモデルを推論する自己のモデルを推論するなど,いわゆる「こころの問題」に接近することができる.この過程で,人間の深部身体感覚や神経活動の推論の計算基盤を構築し,これらをヒューマノイドロボットへ実装するために,カに敏感なアクチュエータと駆動系,外乱の機敏に反応して随時にステップを変更する歩行制御系を開発した.
著者
大串 和雄 月村 太郎 本名 純 SHANI Giorgiandr 狐崎 知己 千葉 眞 武内 進一 元田 結花 SHANI Giorgiandrea 酒井 啓子 竹中 千春
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は、現代世界の武力紛争と犯罪について、グローバル化、アイデンティティ、デモクラシーという3つのテーマを軸にしてその実態を解明するとともに、実態に即した平和政策を検討した。武力紛争はアイデンティティとの絡みを中心に研究し、犯罪については東南アジアの人身取引をめぐる取り組みと、中央アメリカの暴力的犯罪を中心に取り上げた。平和政策では平和構築概念の軌跡、「多極共存型パワー・シェアリング」、移行期正義における加害者処罰の是非を中心に検討し、それぞれについて新たな知見を生み出した。
著者
畠山 昌則 谷口 維紹 瀬谷 司 大島 正伸 松岡 雅雄 下遠野 邦忠 東 健 秋吉 一成
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010-04-01

新学術領域研究「発がんスパイラル」は、単一の微生物感染による発がんを中心に、がんの発症・進展に関わる微生物側因子の役割を明らかにするとともに、発がん微生物感染が局所に誘起する炎症・免疫応答が発がんを加速する機構の本態を解明し、革新的ながん予防・がん治療法開発への道を拓くべく平成22年度に開始された。本取り纏めでは、新学術領域研究「発がんスパイラル」の研究成果を以下のように取りまとめた。1.領域研究報告書の作成研究代表者ならびに連携研究者による会合を2回行い、過去4回にわたり発刊したNews Letterの集大成として、5年間の成果をまとめた領域研究報告書を発行した。報告書では、発がん微生物が保有するがんタンパク質の作用機構、微生物がんタンパク質と宿主生体応答系の相互作用ネットワーク、「発がんスパイラル」場形成を担う免疫系細胞の同定とゲノム不安定性を増強するエフェクター分子の作用機構、自然免疫系細胞のがん細胞認識とがん細胞破壊を促進する分子群の同定、など本領域研究から得られた多くの新たながん生物学的知見を記述するとともに、新規ナノゲルやDNAワクチンの開発を通して拓かれつつある「向がん」から「制がん」への宿主応答ベクトル変換を誘導する次世代のがん予防・治療法開発へのプロセスを記載した。インパクトの高い国際一流誌に報告された研究成果も報告書内に別刷として収集した。2.領域公式ウェブサイトの運営:ウェブサイトを通じ、社会・国民に向けた積極的な情報公開を維持した。これまでに公開してきた情報に加え、新たに「研究成果」として過去5年間に進めてきた基礎研究の成果の社会への還元状況を発信した。さらに領域公式ウェブサイトから、各研究者個別のウェブサイトへ相互リンクを図り、利用者はリンク先からさらに詳細な情報を得ることが出来るように工夫した。
著者
三浦 逸雄 呉 凱 顧 銘 芳鐘 冬樹
出版者
東京大学
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.349-367, 2003-03-10
被引用文献数
1

This survey aims to discover how international students get information and use library services for their study and daily life. The questionnaire survey was conducted in Dec. 2001 and 478 completed questionnaires (23.5%) were returned. The questionnaire falls into three categories: (1) Questions about satisfying their information needs; (2) Questions about using libraries in the University; (3) Questions about personal data. The main findings of the survey were as follows: (1) Most valuable information resources for students are collections of libraries in the University and Internet; (2) Main information resource about students'homeland is Internet; (3) As well as WebOPAC, circulation and copy services of the libraries are used frequently, but reference service, ILL, online databases, and user instructions are used infrequently; (4) Services for international students (book corner for the international students and scholars, satellite television system, and foreign newspaper corner), provided by the General Library, are used scarcely; (5) Most of the respondants want strongly the libraries to strength the collection of English books and journals for their learning and research.
著者
嶋田 正和 鷲谷 いづみ
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

カワラノギクの3階層のメタ個体群構造(全体個体群/地域個体群/局所個体群)をセル状格子モデルで表現し、セル間の相互作用としては3段階の種子散布を考慮した。また、洪水の時空間特性として、規模・頻度・地域間同期性・地域内での洪水の生起位置を考慮した。各セルの中の個体数動態は、3つのステージ(小ロゼット・大ロゼット開花個体)に分けた推移行列モデルで記述した。種子の発芽・定着率は、丸石河原が生成されてからの経過年数に伴い侵入する多年草の被陰によって減衰するものとし(パラメータは被陰速度β)、さらにある一定の年数(パラメータは生息地劣化時間dtime)を経過すると全く定着できなくなるとした。行列モデルのパラメータ推移は本研究による野外調査、及び様々な先行研究によって報告されているデータを用いて推定した。絶滅リスクの評価基準には100年後の絶滅確率(全試行回数のうち、絶滅が生じた割合)を用い、感度分析によって、それぞれのパラメータが絶滅リスクに与える効果を評価した。解析の結果、本モデルは実際の局所個体群の動態データをよく記述した。さらに、被陰速度β、生息地劣化時間dtimeの効果が絶滅リスクに大きく影響することが確認された。また、洪水の時空間特性として、洪水の生起位置の変動が絶滅確率に非常に大きな影響を及ぼし、洪水の位置が固定化すると絶滅確率は顕著に高まった。このように、本研究により、カワラノギクメタ個体群の存続に特に重要と思われる要因が明らかにされた。