著者
境 毅
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

地球の核に相当する数100万気圧での実験を可能にするために集束イオンビーム加工機を利用した技術開発を行った。この技術を用いて核を構成する鉄-軽元素系合金について地球中心圧力を超える373 GPaまでの実験に成功し、極限状態での結晶構造、密度、圧縮率といった物性を測定した。またマントル鉱物間の鉄-マグネシウム元素分配関係について圧力依存性および組成依存性をマントル最下部条件まで明らかにした。
著者
今村 文彦 後藤 和久 松本 秀明 越村 俊一 都司 喜宣 牧 紀男 高橋 智幸 小岩 直人 菅原 大助 都司 嘉宣
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

千年に一度程度発生する低頻度巨大津波災害であるミレニアム津波ハザードの事例を取り挙げ,災害史学から明らかにされる史実に加え,地質学・堆積学・地形学・地震学など科学的な手法に基づいて補完することで,沖縄および東北地方でのミレニアム津波ハザード評価を検討した.まず,八重山諸島において津波で打ち上がったサンゴ化石(津波石)の分布調査および解析により,1771年明和津波に加え,850,1100 yrBPの2期存在する可能性が示された.さらに,仙台平野でも学際的な調査を行い,869年貞観地震津波に加え,1260や2050yrBPされた.2011年東日本大震災で得られた津波被害関数などの検討も実施した.
著者
箕浦 幸治 今村 文彦
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

大規模な砂の堆積・移動現象がみられた2011年東北日本太平洋沖地震津波(以下3.11津波)による堆積物運搬の様式を粒度組成と堆積相および珪藻群集から類推し,津波による上げ波と戻り流れの水理作用を解明するための堆積学的条件を解明した.3.11津波発生直後に仙台湾沖の海浜と沖浜で採取した多くの採砂泥試料の組成解析により,系統的な海側細粒化と淡水汽水珪藻類の沖浜での再堆積が認められた.この現象は堆積物の移動と集積を試行する水槽実験装置の再現結果と調和しており,溯上津波のエネルギー散逸を反映する重要な基準として扱い得る可能性が明らかとなった.
著者
須田 燕 徳永 幸之 湯沢 昭
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

本研究は、昭和62年7月に開業した地下鉄南北線により、仙台市の交通形態の変化、及び土地利用の変化を実証的に調査し、地下鉄の影響を総合的に把握することを目的とした。そのため地下鉄開業前(昭和62年6月)に交通実態調査を行い、また開業後1年を経過した昭和63年6月にも同様な調査を実施した。また土地利用の実態調査としては、地下鉄沿線の商業、住宅の床面積の変化、及び地価についても行った。その結果、自家用車利用者の地下鉄への転換は、地下鉄駅周辺の徒歩圏で、かつ目的地が都心部の場合は若干見られたものの、全体としては数パ-セントの値となっている。従って、地下鉄利用者の大部分はバス利用者からの転換であり、結果的にバスと地下鉄との競合関係となっている。土地利用の変化としては、特に地下鉄の両端のタ-ミナル周辺の土地利用が急激に変化し、また地価も高い水準となった。また長町周辺ではマンションの建築も進んでおり、今後もこの傾向は続くものと思われる。地下鉄開業による商業立地への影響を定量的に検討するため、Huffモデルによる商業地選択モデルを作成した。これは旧仙台市、旧泉市を73ゾ-ンに分割し、各ゾ-ンの人口、小売業床面積、年間小売業販売額のデ-タを用い、地下鉄開業による時間短縮効果が商業施設の立地に与えた影響をインパクトスタディを使用して検討を行うものである。その結果、地下鉄開業による正の効果が地下鉄の両端タ-ミナルに顕著に表れ、また都心部を含む沿線においても小売販売額の増加が見られた。さらにその開発したモデルにより、現在建設中の地下鉄の延長、計画中の地下鉄東西線についても検討を行った結果、MRTの整備により地下鉄沿線への商業施設の集中がさらに進み、地域内の隔差が今まで以上に進むことが予測された。
著者
菅野 学
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

アキラル芳香族分子に円偏光レーザーパルスを照射してπ電子の芳香環に沿った回転を誘起できる。このときのπ電子の回転方向は円偏光レーザーの角運動量(偏光軸の回転方向)で一意に決定される。これに対し、採用第1,2年度目において、角運動量を持たない直線偏光レーザーパルスによってキラル芳香族分子のπ電子回転を実現できることを示した。このときのπ電子の回転方向は分子の空間的配置に対する直線偏光レーザーの偏光方向に依存して分子内座標系で決定される。π電子回転が分子の振動周期と同程度の数10fsほど持続すると、π電子回転と分子振動が互いに影響を及ぼし合う可能性がある。そこで、採用第3年度目において、直線偏光レーザーパルスと相互作用するキラル芳香族分子のモデル2,5-dichloropyrazine(DCP)を用いた非断熱核波束動力学シミュレーションを行った。DCPは厳密にはキラルでないが、π電子の感じるポテンシャルが環に沿った回転方向に依存するために直線偏光レーザーパルスによるπ電子回転制御が可能である。DCPは最適構造において点群C_<2h>に属し、光学許容擬縮退^1Bu励起状態を持つ。この^1Bu状態の線形結合がπ電子回転の近似的角運動量固有状態|+>と|->を与える。|+>または|->の一方を支配的に生成すればπ電子は芳香環を回転する。^1Bu状態を結合させる既約表現A_gの基準振動モードである環呼吸振動と環変形振動のモードを自由度とした2次元ポテンシャル曲面上の非断熱核波束動力学シミュレーションにより、分子振動の振幅がπ電子の回転方向に著しく依存することを明らかにした。また、この振幅の違いが断熱ポテンシャル曲面の間の非断熱遷移過程における核波束の干渉効果に起因することを示した。この結果から、フェムト秒スケールの分子振動を分光学的に観測することでアト秒スケールのπ電子の回転方向を特定できると期待される。
著者
中山 知紀
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は,液体水素-超電導機器の複合化によって,クリーンで高効率にエネルギーを利用できるマイクログリッドの実現可能性を示すことである。本研究によって,地球環境問題やエネルギー資源の枯渇の問題を解決できる水素-超電導社会の実現を促すことができる。このために,太陽光発電や風力発電などの再生可能であるが変動が大きな自然エネルギー源からの電力を有効に貯蔵・再利用するための水素貯蔵や超電導磁気エネルギー貯蔵装置(SMES),燃料電池(FC)による発電,一般電力機器,水素製造機,およびパイプラインによる液体水素輸送,超電導直流送電などからなるシステムモデルを作成した,作成したマイクログリッドモデルにおいて,高品質な電力供給が可能であることが分かった。さらに,省エネルギーが期待される液体水素と超電導によってエネルギーを輸送する,液体水素-超電導ハイブリッドエネルギー輸送システムを提案した。FCによる電力換算500MW相当の液体水素と2.7GW超電導ケーブルの複合エネルギー輸送システムを設計し,総合損失を求めた。検討の結果,ハイブリッドエネルギー輸送システムは,従来のCVケーブルよりも損失を低減できる可能性を示した。また,貯蔵性のエネルギー源である液体水素とFCの組み合わせにより,電力需要のピークが送電容量を超える際に,4時間程度,最大2倍程度のピーク電力を補償できることが分かった。また,変動の大きな自然エネルギー発電源からの電力を平滑化するためには何らかのエネルギー補償装置が必要だが,高効率・高応答性を持つSMESだが,初期設置コストが高価であるため,コストを低減することは重要である。本研究では,SMES容量を低減するための手法としてカルマンフィルタによる電力変動予測を行い,電力の変動成分を適切に分解しFCとSMESに分担させることでSMES容量を低減させることに成功した。
著者
舟山 裕士 増田 高行 中村 正孝 佐々木 巌
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

1.移植腸管浸潤リンパ球サブセットおよび接着分子発現の部位的検討【方法】経時的に屠殺し摘出したgraftをPLP固定後凍結切片上で免疫組織学的に各種リンパ球サブセットおよびICAM-1、LFA-1につき発現部位の相違につき検討した。【結果】MHCclassII抗原(Ia)は拒絶群で早期に粘膜固有層および陰窩上皮に発現した.ICAM-1は対照群と異なり血管内皮および間質細胞に強く反応し拒絶後期にはむしろ反応性は低下した.LFA-1は元来白血球の表面抗原であるが拒絶群の血管内皮にも一部反応性がみられた.特に、拒絶時には血管に接着し凝集像を示す白血球に強い陽性像がみられた.2.小腸保存と粘膜バリア【方法】移植前に1,4,8次間のEuro-Collins液または生食液にて冷保存したgraftで移植後のbacterial translocationを血中エンドトキシン濃度で検討した.【結果】Euro-Collins液で保存したgraftでは血中エンドトキシン濃度の上昇はみられなかったが、生食液で保存した群では8次間保存群で血中エンドトキシンは高値を示した.したがって、短時間の保存であれば生理食塩水で十分と考えられたが、保存時間は4時間を超えるべきではないと考えられた.3.移植におけるPCO-OH(過酸化リン脂質)の白血球刺激作用について【方法】30分阻血、最灌流30分後の小腸においてLTB4拮抗剤、allopurinolを前投与し粘着障害について検討した.【結果】LTB4拮抗剤、allopurinolの両者において粘膜障害を抑制したが、PCOOHの産生はallopurinolの前投与群でのみ抑制された.PCO-OHの過酸化に関わるラディカルは白血球に由来すると従来いわれていたが、むしろキサンチンオキシダーゼ系でありPCOOHは粘膜障害産物由来というよりは白血球活性化因子の一つであることがこの実験から明らかとなった.【研究のまとめと今後の展望】小腸移植における拒絶では早期にClassII抗原の発現とともに血管内皮上にICAM-1の発現があり、第1相とともに白血球の活性化が起こることが明らかにされたが、それとともにPCCOHが白血球の強い活性化因子であることが判明した.PCOOHは拒絶モニタリングに有用てあるばかりでなく、PCOOH産生を抑制することにより拒絶による粘膜障害を軽減する効果があることが期待される.
著者
須藤 祐司
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、全年度の知見を基に、Cu-Al-Mn系超弾性合金の高強度化およびその応用を目指し、本合金の低温時効硬化現象を詳細に調査し以下の知見を得た。[1.超弾性特性] Cu-Al-Mn-Ni合金において、集合組織および粒径ならびにベイナイト変態を適切に制御することにより、1000MPaの超弾性プラトー応力かつ4%程度の超弾性歪みを示す高強度超弾性合金のが得られる事が分かった。時効処理によりベイナイト変態した超弾性合金のマルテンサイト変態誘起応力の温度依存性dσ/dTは、焼入れまま材のそれよりも小さく、その値はクラジウス-クラペイロンの関係より予測される値と一致する。本合金のdσ/dTはTi-Niのそれに比べ、約1/3程度であり、温度が変化する環境にておいてもほぼ一定の超弾性回復応力が得られる。[2.疲労特性] 時効処理により高強度化したCu-Al-Mn系超弾性合金の疲労特性を引張サイクル試験により評価した所、従来合金に比し、疲労強度が極めて高く優れた疲労特性を示すことが分かった。これは、ベイナイト変態による析出硬化により母相が強化され転位が動きにくくなったためと考えられる。集合組織、粒径、析出硬化を適切に制御することによりTi-Niに匹敵する疲労特性を示す。[3.応用] 上記の知見を基に、加工熱処理による組織制御を駆使し、剛性傾斜型のガイドワイヤー(GW)の試作を試みた。本剛性傾斜型GWは、従来Ti-Ni超弾性GWに比し、優れた突き出し性、トルク伝達性を示し、操作性に優れる。また、高強度・高超弾性歪みを有する合金を用いた制震部材の開発を検討し特許出願を行った。
著者
宮城 光信 松浦 祐司 石 芸尉 佐藤 俊一 岩井 克全
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

高強度・超短パルスのレーザ光の照射に生体組織のアブレーションは,生体に対して,安全・無痛など,従来に無い効果が期待される.そこで本研究では,誘電体内装金属中空ファイバを用いることにより,近赤外波長帯でのフェムト秒レーザ,及び高出力Nd : YAGレーザ用のフレキシブル伝送システムを構築することを目的として次の研究を行った.1.超鏡面・高強度を有する銀中空ファイバの製作法:従来の銀鏡反応の見直しを行った結果,塩化スズ水溶液を用いて前処理を行うことにより,銀薄膜の表面粗さが低減されることが明らかになった.また,ポリマー保護層を付加した高強度ファイバについても検討を行った.2.誘電体ポリマー膜の成膜機構の研究と一様成膜の実現さまざまな成膜条件を実験的に検討することにより,その成膜機構を明らかにし,より高い一様性を持つ,ポリマー薄膜の生成を実現した.3.銀中空ファイバ内面の超平滑化の検討銀鏡反応の際に,塩化スズ水溶液や,ポリシラザン溶液などを用いた各種の前処理を行い,母材ガラスチューブ内面の活性化を図ることにより,生成した銀薄膜の表面粗さが従来の1/3以下となる,5nm以下を実現した.4.GWクラスNd : YAGレーザ用中空ファイバの製作と評価内面を平滑化した中空ファイバを用いて,尖頭出力がMWからGWクラスのNd : YAGレーザパルス伝送を試みた.5.ポリマー内装中空ファイバの超低損失化の検討ポリマー内装中空ファイバのポリマー薄膜形成時に,有機溶剤雰囲気中での成膜を行うことにより,ポリマー薄膜の均一化,および表面の超平滑化をはかった.6.QスイッチNd : YAGレーザ用中空ファイバの評価とパワー耐久性の改善低損失化した中空ファイバを用いて,尖頭出力がMWからGWクラスのNd : YAGレーザパルス伝送を試みた.
著者
小川 陽一
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

日本国内に現存する日用類書の調査を行ない、当該研究に役立ちそうな日用類書を中心に、写真版等による収集を行った。それらの収集資料によって、日用類書そのものの内容・性格の調査・分析を行った。その結果、これらの明代日用類書が、明代社会における広範な皆層の人びとの日常生活の具体的な面を、即物的に反映しているものであるが知られた。これらをふまえて、明清小説-『金瓶梅』『酲世姻縁伝』『紅桜夢』などに描かれた日常生活の場面の現解や解釈を深めることができた。その結果、これらの小説が深く広く明清の人々の日常生活に立脚して成立していることが窺われるに至った。このようにとらえると、明清小説が日常生活を反映した今日的小説のイメ-ジを与えるが、実際には、因果応報や輪廻転生の物語構造や占メの充満が見られて、かなり特異である。小説のこのような状況もまた日用類書に具体的かつ濃厚に見られるもので、その点でも両者は共通した性格を示す。このことによって、明代・清初の人々の生活内容、現実の質が推測され、今日とはかなり異質であったことが知られる。明清小説はそのような社会に密着したという意味では「日常的」「現実的」なのだが、今日的小説とはかなり異質であると把握すべきであろう-という見通しをもつに至った。
著者
マッケナ キースパトリック
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

プロジェクトの提案課題(1-3)に則して、以下に個別の結果をまとめる。1.手法の開発:HfO_2におけるカチオン欠陥と正孔との相互作用をモデル化するために、CONによるアプローチを拡張した。この手法は自由電荷キャリアの生成につながるカチオン欠陥からの正孔の熱的解放を記述することができる。そのような効果をモデル化できることは、光エレクトロニクスや光触媒への応用を伴うp型酸化物の性質を理解する上で重要である。本研究はNature Materialsへの投稿を準備中である。2.酸化物表面における電子-正孔捕獲:MgOの表面らせん転移による電子捕獲を、水素との相互作用を含めてモデル化してきた。これまでにない数の原子をフルに量子力学レベルで取り扱うために、埋め込みクラスタ法によるアプローチを用いた。これにより、転移が強力な表面電子トラップとして働くだけでなく、表面の水素が転移と出会うことによってプロトンと電子に解離することが示された。この予測はFritz-Haber研究所のH-J.Freund教授のグループによって最近行われた実験と一致する。3.酸化物界面における電子-正孔捕獲:正孔ドープされた条件でのHfO_2粒界の非平衡融解を分子動力学法によってシミュレーションした。このアプローチにより電気的なバイアス下でのHfO_2多結晶膜を突きぬける漏れ電流の効果をシミュレートできる。電流は温度上昇を引き起こし、酸素欠陥の拡散や、粒界の電気抵抗のスイッチングを引き起こす。これは不揮発性でエネルギー消費の少ない情報記憶デバイスへの応用に結びつく重要なテクノロジーである、酸化膜における抵抗スイッチングに対する直接的なモデルを与える。このように、本研究プロジェクトでは応用面と手法面の両方において多くの重要な結果を生み出すことに成功した。WPI-AIMRの職を辞するためプロジェクトを早期に終了することになったが、むこう数ヶ月のうちに本課題を謝辞に引いたインパクトの高い論文を多く出せると期待される。
著者
持田 灯 富永 禎秀 佐藤 洋 吉野 博 高橋 正男 青木 泰伸 清水 敬二
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究では、産業廃棄物(酸性白土から石鹸等の化学製品を製造する過程で生成される土塊(粒径5〜30mm)。無害)を散布することにより、地表面の粗度長を大きくして地表面付近の風速を減じ、飛砂発生を制御するという新しいタイプの飛砂防止対策の実用化を図った。(1)沿岸部の飛砂の実態調査・沿岸部の砂地における飛砂の現状を、風速・風向・飛砂量等の長期測定等により調べた。(2)飛砂に関する風洞実験・風洞内に砂を敷き詰め、風速を段階的に増加させることにより、限界風速・限界摩擦速度等に関するデータを採取した。・次に、風洞床面上に砂を敷き詰め、産業廃棄物の土塊を散布し、その飛砂防止効果を確認した。(3)CFDによる飛砂メカニズムの解明・CFDにより、上部風速と地表面の粗度及び砂面限界摩擦速度等の関係、周辺の地形や建物の影響等について系統的に検討した。(4)飛砂防止工法の最適化・上記(2)、(3)の結果をもとに、本飛砂防止工法で散布する土塊の粒径、散布密度、散布位置の最適化を行った。(5)現場測定による本工法の有効性の検証・実際の砂地造成地に、産業廃棄物である土塊を散布し、風速・飛砂量の測定結果により、本工法の飛砂防止効果を確認。また砂地緑化の効果を確認するために、砂地や砂浜に種子を植え、生育状況を観察した。(7)効率的な施工方法の検討・今回の飛砂防止方法では、土塊をいかに均一に安価に散布するかも重要な問題となる。ここでは建設工事用のクローラダンプを応用した施工方法を開発し、試験施工によりその有効性を確認した。
著者
安田 延壽 余 偉明 山崎 剛 岩崎 俊樹 北條 祥子 松島 大
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

仙台市内の代表的幹線道路である国道48号線(北四番町通り、幅員27m)において、都市キャニオン(道路)内の窒素酸化物濃度(NOとN02のモル和)の高度分布を測定し、その特徴を明らかにしていたが、さらに乱流輸送理論に基づいて、その法則を明らかにした。高度約1.5m以下では、濃度は高さに依らず、等濃度層を成している。それより上空では、窒素酸化物濃度は、高度zの対数1nzの一次関数で表される。即ち接地気層と同様の対数則が成立する。等濃度層は、発生源が地表面より数十cm高いところにあることと、走行する車両によって強制混合されることにより形成されるものである。対数則層の濃度の高度分布より、摩擦濃度が決定される。この摩擦濃度は、等濃度層上端の濃度の関数であることが、大気境界層理論および観測により明らかになり、定式化された。さらに、一般には大気の温度成層は中立ではなく不安定あるいは安定成層をなす。この効果を、接地気層の理論に基づいて取り入れ、窒素酸化物の鉛直輸送量の日変化および地域分布を計算することが可能になった。広域に渡って窒素酸化物の鉛直輸送量を計算するためには、地上付近での窒素酸化物濃度のデータの他に、大気安定度に関する情報が必要である。この問題に対して、従来から東北大学気象学研究室で開発されてきた熱収支モデルをさらに改良して用いた。特に、東北地方では冬季には積雪があるので、そのような場合に対する熱収支モデルも開発し、窒素酸化物の鉛直輸送モデルに組み込んだ。これらの理論体系から、窒素酸化物の鉛直輸送量が評価された。1991年〜1998年の8年間の平均では、発生源である道路の場合、幅27m・長さ100mの道路より、N02換算で、年間625kgの窒素酸化物が上空に輸送されている。道路から離れた地域では、ほぼその1/3であった。
著者
土佐 弘之
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

昨年度から今年度にかけて、内戦や抑圧的な権威主義・全体主義体制の下での虐殺など著しい人権侵害行為に対して、和平後または民主化後、どのような対応をすべきかといった、いわゆる「(民主化)移行期における正義(transitional justice)」問題についての研究を進めた。南アフリカの真実和解委員会などの真相究明委員会形式のものや旧ユーコスラビア国際刑事裁判所との国際刑事裁判所形式のものなど、各事例について文献サーヴェイをしながら、復讐/赦し、記憶/忘却といったアポリアを軸に、それぞれの事例の位置づけや移行期をめぐる正義の問題についての理論的整理を試みた。その成果の一部は、「移行期における正義(transitional justice)再考」といった論文として公刊する機会を得た。そこでの結論を繰り返すと、以下の通りである。過去に関する集合的記憶が社会的構築物である以上、過去をどう取り扱うかの選択肢について、私たちは一定程度の選択の幅をもっている。もちろん、それは様々な制約がある中での選択の幅ということであるが、本研究では、移行期における正義という問題、つまり過去の人権侵害という問題を取り扱う際、とられる選択は、どのようなバイアス性をもっているかといったことについて、和平・民主化プロセスのパターンとの関連で検討した。次に、復讐へと傾斜したものについては赦しの方向へ、忘却へと傾斜したものについては記憶の方向へといったようにそれぞれ、いずれも何らかの形で不十分な対応を改めていく必要性がでてくることについて、ジャック・デリダの二つのテクストを手引きにしながら理論的な検討を行った。もちろん、内戦後の社会再建ということを視野に入れた場合、こうした狭義の矯正的正義だけではなく、法的正義(法の支配)、回復的正義、さらには配分的正義など、複数の正義を同時に追求することが必要そうしたことを妨げているマクロ・レベル(特に世界システム・レベル)の構造的制約を取り払っていくことが必要であることも確認した。構造的な制約が少しずつ取り払われ、沈黙を強いる抑圧的な構造的権力を解体していくことができれば、語りによる歴史物語の書き換えの動きも活性化し、記憶再編の可動幅、さらには共有化される記憶の地平も広がっていく。「記憶の政治」の新たな展開は、信頼関係の再構築を促し、結果としては、内戦再発といった形での「絶対的な敵対関係」の暴走を食い止める可能性ももっている。そうした意味でも、「記憶の政治」そして「移行期の正義」の問題に対する的確な対応の模索は、単に過去にどう取り組むかという問題であるだけではなく、未来の社会を、どうデザインしていくかという問題ともなっていることを確認した。以上が、本研究の要旨であるが、以上のような研究を進めていく過程で、それと関連する形で、社会構築主義的アプローチによる国際関係論研究(批判的安全保障研究など)の分野を開拓する研究作業を進め、単行本『安全保障という逆説』などを公刊した。
著者
石川 有美 阿部 俊明
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

糖尿病網膜症の治療評価マーカーや新規治療薬の検討を行った。まずバソヒビンに注目した。(1)血漿中のバゾヒビン濃度と網膜症は相関はないが、増殖性の変化が強いほどバソヒビン濃度が低い傾向だった。(2)hypoxia-inducible factor(HIF)でGFP誘導される網膜色素上皮細胞を作成し培地中に眼内液を添加すると血管内皮細胞増殖因子(VEGF)とGFPは発現が有意に相関することが判明した。糖尿病網膜症眼内にはHIF を誘発する因子が有意に多く含まれていた。
著者
丸山 宏 潘 立波 金 敬雄 柳田 賢二
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究は、中国とロシアの極東における国境地域および国境付近に住む少数民族の精神文化および言語文化が、社会主義の新中国およびソビエトが成立して以降、特に1970年代末から1980年代にかけて市場経済の導入と社会体制の変動が起こる中で、どのように構造変動しているのかを解明しようとしたものである。本研究は平成11年度と12年度の2年間にわたり行われた。初年度は、関連文献の国内外における調査と収集を行った。2年目において研究代表者の丸山宏は、9月に中国内モンゴルに赴き、聞き取り調査と文献収集を行い、エヴェンキ族、オロチョン族、ホジェン族などのツングース系民族について、現代史における生活の変化を跡づけることを試みた。1949年から90年代初までの各民族自治旗の民族人口比率の激変、社会制度や生活様式の変化にともなうシャマニズム文化の断絶、漢族との婚姻率の高さや民族語教育の不備による言語文化の喪失などの諸問題について、その変化の実態を整理することができた。柳田賢二は、中国の朝鮮族居住地域で資料収集した他、極東から中央アジアに移住させられたロシアの高麗人の言語がロシア語の影響下で変容している実態を考察し、将来において極東ロシアの朝鮮系の人々の言語と比較するための予備的基礎作業を行った。金敬雄は中国朝鮮族の言語の変遷に関して、新中国成立以降、文革期を経て、韓国との国交樹立以後までを時期区分し、特に中国語と韓国の朝鮮語からの特徴的な語彙の受容から新しい朝鮮語が成立しつつあることを検討した。潘立波はホジェン族の民間英雄叙事文学である伊瑪堪を取り挙げ、1930年代の記録と90年代の記録を比較し、民間文学の記録という領域における時代性とその異同点を整理した。
著者
川上 彰二郎 大寺 康夫 佐藤 尚 花泉 修 ペンドリー J.B. ラッセル P.st.J.
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

1.偏光分離素子の高性能化単位セル構造の最適化により,消光比,動作波長域,斜入射特性を改善した。また,ARコートにより反射損失を低減させることにより,挿入損失を低減した。2.可視域フォトニック結晶の創生TiO_2/SiO_2を用いた可視域フォトニック結晶を作製した。さらに,これを用いて,複屈折性を利用した波長板や回折格子型偏光分離素子を試作し,動作を確認した。3.バンドギャップ拡大の研究自己クローニング法による変調杉綾と垂直孔形成により,完全バンドギャップが得られることを理論的に示した。さらに,これを実現するために反応性エッチングを含んだプロセスを提案し,原理的に可能であることを実験により示した。4.新しい導波路構造の提案・設計・解析新たに,格子定数・格子方位変調型の導波路構造を提案し,設計、解析を行い,その構造の有効性を確認した。これらは,自己クローニングのみで面内導波路が形成できるという利点を持つ。5.機能性材料とフォトニック結晶の複合技術の開発研究II VI族及びIII V族化合物半導体として,それぞれCdS,InGaAlAs系半導体を自己クローニング型フォトニック結晶と複合させるプロセスを開発し,発光特性の評価を行った。
著者
松澤 暢 岡田 知己 日野 亮太
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

最近の摩擦構成則による数値シミュレーションの結果によれば,プレート境界は地震時に高速にすべるだけでなく準静的にもすべっており,それは特にカップリング域の先端付近で顕著となることが予測されている.東北地方太平洋沖においてこの準静的すべりを地震観測から捉え,かつその付近の物性を解明することが本研究の目的であった.本研究により,小繰り返し地震(small repeating earthquake)が東北地方太平洋沖で発生していることが明らかになった.この小繰り返し地震データを用いてプレート境界における準静的すべりの時空間分布を詳細に明らかにすることに成功し,カップリング域の深部先端付近では,プレート間相対速度と同程度の速度で準静的すべりが進行していることが明らかになった.これは,カップリング域と非カップリング域の間の遷移領域を地震学的に捉えたことに相当する.GPS観測点は陸域にしか存在しないため,海溝付近での準静的すべりの状況を調べることはGPSデータ解析では困難であるが,小繰り返し地震解析からは,三陸沖の海溝付近ではかなり頻繁に準静的すべりが発生していること,また,M6以上のプレート境界型地震はすべて大規模な余効すべりを伴っていることも明らかになった.海溝付近の構造についても知見が得られつつある.海底構造探査の結果と地震活動の比較により,沈み込んだ海洋性プレートのLayer2の不均質性が地震発生の状況を支配しているというモデルが提示され,また,海底地震観測による高精度の震源分布と構造探査の結果との比較から,三陸沖ではプレート内部で発生している地震がかなり多いこともわかってきた.これらの結果は,プレート境界のカップリング状況が,プレート境界面の性質のみならず,ある程度厚みをもった領域に支配されている可能性を示唆している.
著者
今村 文彦 高橋 智幸 箕浦 幸治
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本研究では、地滑り津波の発生機構の解明および解析手法の確立を目的とし、非地震性津波の発生する可能性のある地域を評価する手法を提案することを目指している。今年は、現地調査、水理実験、数値モデルの開発を行ったので、異化に実績を報告する。まず、現地調査の対象地域は地中海沿岸であり、ここでは非地震性津波の多くがエーゲ海を中心とし歴史的なイベントが多い。昨年の1999年トルコ・イズミットおよびマーマラ海での調査に引き続き、トルコ共和国エーゲ海沿岸での調査を実施した。ダラマンにおいては、津波の堆積物を発見し、3層構造、各層の中にも2から3の異なる構造を持つことが分かった。これは、地震による液状化、津波の数波の来襲を示唆している。その他の地域では、津波による堆積物を確認することは出来なかった。次に地滑り津波発生モデルの基礎検討として、地滑りが流下し水表面に突入し、津波を発生する状況の水理実験も実施し、既存のモデルとの比較を継続して実施した。斜面角度、底面粗度、乾湿状態などを変化させ、土石流の流下状況と津波の発生過程を観測し、モデル化を行った。実験で明らかになった点として、押し波に続く引き波の存在があり、これは土砂の先端波形勾配に最も関係していることが分かった。さらに2層流のモデルの適用性を検討し、抵抗のモデル化(底面摩擦、拡散項、界面抵抗)をさらに改良した。最後に移動床の水理実験も同時に実施しており、陸上部に堆積する土砂のトラップ条件と水理量との比較検討を行った。津波の遡上後、引き波で砂が戻る前に、トラップ装置を落下させ、砂の移動がないように工夫し、陸上部において、詳細に体積量を測定することが出来た。流速の積分値と堆積量がもっとも関係あることが分かった。