- 著者
-
中山 知紀
- 出版者
- 東北大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2008
本研究の目的は,液体水素-超電導機器の複合化によって,クリーンで高効率にエネルギーを利用できるマイクログリッドの実現可能性を示すことである。本研究によって,地球環境問題やエネルギー資源の枯渇の問題を解決できる水素-超電導社会の実現を促すことができる。このために,太陽光発電や風力発電などの再生可能であるが変動が大きな自然エネルギー源からの電力を有効に貯蔵・再利用するための水素貯蔵や超電導磁気エネルギー貯蔵装置(SMES),燃料電池(FC)による発電,一般電力機器,水素製造機,およびパイプラインによる液体水素輸送,超電導直流送電などからなるシステムモデルを作成した,作成したマイクログリッドモデルにおいて,高品質な電力供給が可能であることが分かった。さらに,省エネルギーが期待される液体水素と超電導によってエネルギーを輸送する,液体水素-超電導ハイブリッドエネルギー輸送システムを提案した。FCによる電力換算500MW相当の液体水素と2.7GW超電導ケーブルの複合エネルギー輸送システムを設計し,総合損失を求めた。検討の結果,ハイブリッドエネルギー輸送システムは,従来のCVケーブルよりも損失を低減できる可能性を示した。また,貯蔵性のエネルギー源である液体水素とFCの組み合わせにより,電力需要のピークが送電容量を超える際に,4時間程度,最大2倍程度のピーク電力を補償できることが分かった。また,変動の大きな自然エネルギー発電源からの電力を平滑化するためには何らかのエネルギー補償装置が必要だが,高効率・高応答性を持つSMESだが,初期設置コストが高価であるため,コストを低減することは重要である。本研究では,SMES容量を低減するための手法としてカルマンフィルタによる電力変動予測を行い,電力の変動成分を適切に分解しFCとSMESに分担させることでSMES容量を低減させることに成功した。