著者
木村 富士男 谷川 亮一 吉崎 正憲
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.44, no.11, pp.799-807, 1997-11-30
参考文献数
6
被引用文献数
16

晴天静穏時の大気下層における水蒸気輸送と, それによる可降水量の日変化を調べるため, 1995年7月24日から29日までの6日間, 関東地方の3地点(丸沼, 前橋, つくば)において, オメガゾンデなどによる集中観測を行った. 過去の研究で, アメダスやレーダーの解析などにより, 夏期の北関東山地や中部山岳域では降水頻度が高いことが示されている. また理論的にも静穏日には山岳域に水蒸気が集まりやすいことが予想されているが, これらを確認するための, 晴天静穏日の山岳域における水蒸気量の観測は例が少なかった. 今回の観測の結果, 山岳域と平野域とで水蒸気量の日変化に顕著な違いがみられた. 山岳域の丸沼では, 局地循環によると思われる水蒸気の日変化が高度4500mまで及び, 午前中から夕方にかけて可降水量が増加した. 一方で, 山岳域の麓の前橋では, 午前中に可降水量の急減がみられ, その後次第に回復した. これらの結果から, 水平規模の大きな局地循環による水蒸気輸送と, 可降水量の日変化との間に密接な関係があることが明らかになった. さらに, 夏期の局所的な降水頻度の地域分布との関係についても示唆に富む結果が得られた.
著者
柴田 清孝
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.541-555, 1997-04-25
参考文献数
65

高層観測, ライダー, 衛星のデータは, 成層圏バックグラウンド硫酸エーロゾルが, 人為起源もしくは自然起源によって, 徐々にではあるが全球的に増加していることを示している. 本研究はこのような事実を受けて, バックグラウンドエーロゾル増加が放射過程のみでどの程度成層圏温度を変化させるかを調べたものである. 温度変化は季節変化を含む, 対流圏の条件と成層圏の力学加熱を処方するFixed Dynamical Heatingモデルで求めた. バックグラウンド濃度の2,3倍の変化(0.55ミクロンでの光学的厚さの変化は0.0087, 0.0174)に対して放射の変化, 従って温度変化は線形応答を示した. 2倍増に対する太陽, 赤外, ネット放射の放射強制力はそれぞれ-0.18, 0.03, -0.15 Wm^2であった. 3倍増に対して低緯度中下部成層圏は赤外放射が支配的であるため, 約0.15度の昇温があり季節変化は非常に小さかった. 一方, 高緯度は太陽放射が支配的で, 約0.15度の降温があり, 夏至冬至に最大で春分秋分に最小になる0.1度の振幅の半年振動が顕著であった. 緯度帯による差や南北半球の差も基本場の温度やその季節変化との関連において述べられている.
著者
中井 専人 川村 隆一
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.45, no.12, pp.895-905, 1998-12-31
参考文献数
30
被引用文献数
1

1992年6月5日09UTC(00UTC=09JST)から18日06UTCに梅雨前線付近に現れた74個のメソスケール雲クラスターの出現特性を調査した.雲クラスターの寿命と最大雲域面積との間には正相関があり, 平均値はそれぞれ12.4時間, 7.1×10^4km^2であった.これらは日本付近の雲クラスターについて過去に報告された値に近く, 熱帯や北米大陸上で報告された値より小さかった.メソαスケール雲クラスター(MACC)の多くは13時間以上の寿命を持ち, 前線付近に出現するものが多かった.また, 夜間から早朝にかけて多く出現する弱い傾向があった.メソβスケール雲クラスター(MBCC)は12時間以下の寿命を持つものが多く, 出現には日変化も前線との位置に対する依存性も明瞭ではなかった.MACCの多かった期間は, 雲クラスター出現域で前線の影響と考えられる強い鉛直シアーが見られた.MBCCの多かった期間は, 雲クラスターの出現域が前線から離れた亜熱帯高気圧の勢力下にあった.
著者
岡田 菊夫 甲斐 憲次
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.947-957, 1995-10-25
参考文献数
35
被引用文献数
9

中国北西部の張掖とその周辺において、1990年、1991年の春および1990年夏にエアロゾル粒子を採集した。粒子に含まれる元素(原子番号11以上)の重量割合は、電子顕微鏡とそれに付属のエネルギー分散型X線分析器を用いて調べた。また、この結果を使用して、粒子の分類を行った。なお、分析には、3試料(春)と1試料(夏)を用いた。春期において、鉱物粒子が半径0.1-6μmのエアロゾル粒子の97-98%を占めていることが分かった。鉱物粒子の60-70%がアルミノ珪酸塩を主体とするものであった。また、Caを多く含む粒子の割合は10-20%であり、そのうち、石膏(CaSO_4・2H_2O)と考えられるSを含む粒子が存在した。しかし、ほとんどの鉱物粒子中でのS/Ca重量比はO.1未満であった。また、炭酸カルシュウム(CaCO_3)を主に含有すると考えられる粒子がサブミクロン領域に集中して存在していた。夏期の風が強い状態(風速8ms^<-1>)で採集された試料においても、鉱物粒子がエアロゾル粒子(半径0.1-5μm)のなかで98%を占めていた。このことは、夏においても鉱物粒子が重要なエアロゾル粒子であることを示唆するものである。
著者
鵜野 伊津志 天野 宏欣 木下 紀正 荒生 公雄 村山 利幸 松井 一郎 杉本 伸夫
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.17-29, 2003-01-31
参考文献数
21
被引用文献数
6

地域気象モデルRAMSと結合した黄砂の輸送モデルを開発した.この輸送モデルでは,黄砂の発生源の特定に,NDVI植生インデックスと積雪被覆率データを利用し,発生条件には土壌分類に従った臨界摩擦速度マップを利用した.また,粒径別輸送,乾性沈着,湿性除去,重力沈降のプロセスもモデル内に組み込んだ.1998年4月10日〜25日にかけての東アジア域の大規模な黄砂エピソードに適用し,その輸送解析を行った.1998年4月14日〜15日に主にゴビ砂漠〜黄土高原で発生した黄砂は,寒冷渦に巻き込まれる形で日本列島を西から東に横断するように輸送されるのがシミュレートされた.寒冷渦の通過に伴い,ダストの鉛直分布は,最初に濃度の濃い層が高い高度に現れ,続いて低い位置へと変化することがモデルの鉛直空間分布から示され,これはライダー観測の結果を合理的に説明していた.大量の黄砂が寒冷渦の西側の沈降性の逆転層内にトラップされて輸送されたため,観測されたダスト層は2〜3km以下の比較的低高度であった.
著者
高野 洋雄 鎌倉 和夫 峯松 宏明 依岡 幸広 久重 和久 清水 栄一 佐藤 祐一 福永 昭史 谷脇 由彦 谷條 薫一
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.845-856, 2006-11-30

2004年8月30日,九州から中国地方を進んだ台風第16号により,瀬戸内海沿岸では記録的な高潮が発生した.これにより,高松港や宇野港などでは既往最高潮位を更新した.この高潮事例について,潮位データの解析を行い,高潮モデルを用いて数値実験を行った.その結果,今回の高潮に最も寄与したのは吹き寄せ効果であり,台風の移動に伴って高潮域が瀬戸内海を東進する状況を再現できた.特に,この過程の中で,高松付近では最大偏差の発生時刻が台風第16号の最接近時より2時間程度遅れて,大潮期間の満潮時刻とほぼ一致したことが既往最高潮位につながったことがわかった.また,瀬戸内海の形状と台風の移動に伴う風向の変化を考慮することにより,瀬戸内海における吹き寄せ効果を6つの海域に分けて考えることができた.さらに,海域毎で吹き寄せ効果と吸い上げ効果の寄与の比率の違いについても評価した.その結果,それぞれの効果の顕著なタイミングは,台風の位置や風だけでなく,地形などの影響も受けて,海域毎に異なることがわかった.
著者
米山 邦夫 藤谷 徳之助
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.291-304, 1995-06-15
被引用文献数
4

東経156度の赤道上におけるR/V「なつしま」停船観測によるラジオゾンデの観測結果を中心にして、TOGA-COARE集中観測期間中の、1993年2月5日〜14日の「なつしま」上空大気の特徴を調べた。2月6日から9日にかけて高度2〜4km付近に強い乾燥した西風域が存在し、時間と共にその領域が降下し、2月10日に高度2km付近でその存在が不明瞭になる様子が認められた。2月6日から9日の間は活発な対流活動は認められなかったが、2月10日には「なつしま」上空では深い対流が発達した。観測期間の前半には、高度800hPa付近に温度逆転層が形成され、その上空の乾燥した空気塊が対流活動を抑制していた。この空気塊は北東貿易風を起源として赤道域に侵入していることが示された。また、乾燥域の降下の原因として、乾燥域による対流活動の抑制の他に、乾燥域の周囲に存在した活発な対流雲群から生じる沈降流と関係していたことが示された。さらに、対流の発生した2月10日には下層の風向が北西風から西風に変化している様子が示された。この2月10日を境にして下層で見られた風向の変化は対流活動の変動と関係しており、上述の乾燥域の振る舞いとそれに関連する対流活動の変動が赤道太平洋上における数日スケールの大規模な大気変動と深く関係していることが示唆された。
著者
村上 正隆
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.50, no.9, pp.715-720, 2003-09-30
被引用文献数
2
著者
斉藤 和雄 村上 正隆 松尾 敬世 水野 量
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.797-813, 1996-12-25
被引用文献数
1

冬季北日本山岳域と日本海側平野部への降雪における地形効果と雲物理学的役割を調べるため、水物質の混合比と氷物質の混合比および数濃度を予報する2次元非静水圧モデルを用いて感度実験を中心とする数値実験を行った。東北地方とほぼ同スケールの単純化した地形と海陸分布を与えた実験により、日本海上での気団変質と降雪雲の発生、山岳域風上側斜面での降雪の集中と風下側での雲の消滅がシミュレートされた。雲頂高度は海上から海岸付近、内陸の順に増大し、雲頂温度の低下に伴って氷晶数の増大が見られた。降雪の分布への副次的な要素として海陸の粗度と温度差の影響を調べた。比較実験では、陸域風上側での降雪の集中には海陸の温度差による収束効果が寄与しており、粗度の違いによる摩擦収束の影響は小さかった。日本海上で変質した気団が山の高さだけ強制上昇させられることを前提に、強制凝結量の内どれだけが陸面での降水になるかを求めて降水能率を定義し、山の高さを変えて降水能率を比較した。実験では、山の高さが雲底高度を越えると降水量の急増が起こり、600m以下で40%前後だった降水能率は1000m以上では80%前後に上昇する。一方、氷相過程を取り除いたwarm rain processでは、山の前面で凝結した雲水の大部分は雨水へと転化する前に山岳後面の強制下降域に入ってしまい、降水量・降水能率ともに氷相を含む実験の1/3程度の低い値に留まった。氷晶生成項についての感度実験を行い、山岳域で氷晶生成を抑制することで陸域の降雪が減少することと、山が無くても陸域で氷晶生成を促進すると降雪量が増大することを確かめた。これらの結果は、冬季北日本の地形性降雪においては、一般に指摘されている地形強制上昇による水蒸気凝結のみならず、山岳域での雲頂温度低下に伴う氷晶生成の促進による天然の種蒔き効果-natural seeding-が、降雪量の増大に重要な役目を果たしていることを強く示唆している。日本海上の特定の場所で水晶生成を促進する実験を行い、人工的な種まきによる降雪の抑制あるいは促進の理論的な可能性を示した。
著者
中井 専人 遠藤 辰雄
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.183-199, 1995-04-25
被引用文献数
2

降雪雲が丘陵地形(出羽丘陵;稜線の標高約0.6km)を越える時の降雪と気流の特徴を明らかにするため、ドップラーレーダーとレーウィンゾンテによる観測を行った。1990年2月3日の寒冷前線の通過に伴って降雪雲が現れ、約5時間にわたって直径数十kmのエコーがいくつも出羽丘陵上を通過した。これらのエコーのエコー頂高度は丘陵上で低くなっていた。丘陵を通過する流れは'subcritical'であり、混合層上端の高度も丘陵上で低くなっていたと考えられる。観測されたエコーは大きさ5kmから10kmのセルを含んでおり、これらのセルの移動速度は丘陵上で3m/s増加していた。丘陵上から10km風上までの範囲で上空の降水強度の増加が見られ、降雪雲と地形性上昇によって形成された雲との間でseeder-feeder mechanismが働いていたと考えられる。丘陵風下においては下層に冷気がたまっていたため斜面を下降する流れが形成されず、昇華による降水量の減少が抑えられていた。丘陵風下においても反射強度の増加がみられたが、これは主に降雪粒子の併合成長と融解によるものであり、降水量はあまり変化していなかったと考えられる。この事例では降雪雲の振る舞いは丘陵による地形性の流れに強く影響されていたが、平均的な気流に対する降雪雲の影響はそれほど大きくはなかった。
著者
村上 正隆 Clark Terry L. Hall William D.
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
気象集誌 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.43-62, 1994-02-25
被引用文献数
7

新しい雲の微物理パラメタリゼーションを組み込んだ2次元3重ネステッド雲モデルを用いて、二つの事例について、日本海上での混合層の発達と対流性降雪雲の形成過程の数値実験を行った。一つは、集中観測期間中の1989年2月2-4日に、並の寒気吹き出しに伴って出現した雪雲である。この例は、雲の微物理構造について観測結果との詳細な比較がなされた。もう一つは、1990年1月24-26日の強い寒気吹き出しにともなって出現した雪雲である。この二例の比較を通して寒気吹き出しの強さが混合層の発達と雪雲形成に及ほす影響を調べた。モデルは、暖かい海面からの熱と水蒸気の補給(総熱フラックスは、1989年の例では439W/m^2、1990年の例では895W/m^2)と、それに続く対流輸送による混合層の発達をよく再現した。雲が形成されるまでの吹走距離、雲頂・雲底高度、混合層内での気温の増加等については、モデルと観測との良い一致が見られた。雲の力学及び微物理学的見地からは、上昇流、雲水量、雪水量などの観測値がよく再現された。また、雪雲中での霧雨(drizzle)の生成や、雲水の高濃度域と氷晶の高濃度域の一致という観測事実もよく再現された。モデルと観測結果の不一致の主なものは氷晶濃度で、モデルは観測値を約6倍過小評価した。一般的に、雲は大陸東岸から50-150km(寒気吹き出しの強さによる)風下で形成され、吹走距離とともに徐々に雲頂高度が高くなり、対流活動も活発になる。日本付近では、海岸から約30km風上側で雪雲の活動が強まり、その後、陸面からの熱と水蒸気の補給を断たれて徐々に衰弱する。これらの雲の中では、最初、主に過冷却雲粒の凍結によって氷晶が生成し、昇華凝結及び雲粒捕捉により成長する。代表的な降水粒子は、海上・海岸域ではアラレで、山岳域に進むにつれて雪へと変化する。山岳斜面上では、衰退しつつある上層の雪雲と地形による上昇流で形成された下層雲の間で顕著なSEEDER-FEEDERメカニズムが働いている。海上でも、ライフステージの異なる隣接する雪雲間で同様のメカニズムが働くが、山岳斜面上ほど顕著ではない。寒気吹き出しが強まる(低温になる)ことにより、雪雲の対流活動は活発になり混合層も厚くなる。昇華凝結核の活性化により、高濃度の氷晶が生成され、これら氷晶間での過当競争により雲粒捕捉成長が抑えられ、アラレの雪に対する比率が減少することが示された。
著者
堤 之智 牧野 行雄
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.1041-1058, 1995-12-25
被引用文献数
1

1987年から1991年にかけて行った日本上空の一連の航空機観測によって、若狭湾、遠州灘、その他いくつかの地域の上空で、対流圏オゾンの鉛直分布を観測した。そして観測されたオゾンピークの起源を探るために、それぞれのピークに対して流跡線解析とその流跡線付近の渦位分布を調べた。その結果、今回日本上空で観測されたオゾンピークのうちの多くは、日本西方で起こったトロポポーズフォールディングに起因していることがわかった。1989年1月21日に遠州灘上空で観測された2つの異なった高度、濃度のオゾンピークは、別のトロポポーズフォールディングを起源としていた。そして輸送中に拡散されながら、日本上空で層状構造をなしていた。同じ日に、同一のトロポポーズフォールディングを起源に持つ似た形のオゾンピークが約300km離れた地域で観測された。それらのオゾンピークは、高度は異なるが温位の傾きから、同じ対流圏オゾン層に属していたと考えられる。1990年8月8日に2つの異なった性質の大気が日本上空のそう離れていない2地点で観測された。1つは高濃度のオゾンと低濃度の水蒸気を含んだ大陸性の大気で、中国東北部から輸送されて来ていた。もう一つは、低濃度のオゾンと高濃度の水蒸気を含んだ海洋性の大気で、成層圏大気に出合わずまた都市域も通過せずに数日間海上を漂っていた。海洋性気団でも都市域や工業地帯を通過したものは、オゾンと水蒸気が正の相関、すなわちオゾン、水蒸気ともに高濃度を示した。1991年4月27日の筑波上空でのオゾンの鉛直分布はほぼ一様で70ppbvの高濃度を示した。これは、筑波上空の大気が鉛直方向の渦位勾配が緩やかなフォールデイング領域から来ており、しかもフォールデイングが起こって間もなく輸送されてきたためであろう。オゾン濃度と輸送された距離の関係から、対流圏中のオゾンの分布には成層圏からの流入だけでなく、輸送中の拡散も重要であると考えられる。
著者
安成 哲三 西森 基貴 水戸 哲司
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.517-531, 1998-08-25
被引用文献数
1

過去30年間(1964-93)の北半球における地表面と下部対流圏の気温変動を解析した結果、冬季と春季を中心に地表面のみならず、下部対流圏全体で顕著な昇温傾向が確認された。冬季には、中央シベリアとカナダ西北部・アラスカで昇温が顕著であるが、両地域における昇温の鉛直構造に大きな違いが見られた。春季には北米大陸北半部でのみ、下部対流圏全体にわたる昇温が顕著である。地表面から対流圏中部までの気温変動についての3次元回転EOF解析をした結果、地表面・対流圏全体で昇温するトレンドが最も卓越している変動であることが確認された。回転EOF解析の第2成分として、冬季には1976/77と1988/89頃に偏差が大きく変化する数10年スケールの長期変動が存在し、その空間特性は北米、北ヨーロッパおよびユーラシア東部で同じ変動傾向を示す波数3型の構造をしていることが示された。一方春季の第2成分は、10-13年周期の変動を示し、太陽活動の同じ周期帯の変動との関連が示唆された。
著者
岸保 勘三郎
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.423-424, 2001-06-30
著者
松野 太郎
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.1071-1073, 2011-12-31