著者
村田 清高 西前 忠英 太田 文彦
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5Supplement3, pp.1044-1051, 1982-12-01 (Released:2013-05-10)
参考文献数
20

Eighteen ears of 14 patients developed sensorineural hearing loss associated with (A) pregnancy,(B) delivery,(C) puerperium,(D) menstruation and (E) administration of female hormones.Audiological examination revealed the following clinical aspects. 1) Hearing loss in (A),(B) and (C) occurred in the twenties and early in the thirties.2) Acute hearing loss of 9 ears showed unilateral, abrupt onset like sudden deafness. Sudden impairment of hearing occurred in pregnancy, immediately after delivery and in administration of progesterone and/or estrogen.3) Slowly progressed hearing loss of 4 ears developed bilaterally in puerperium or periodically in menstruation.4) Audiograms of (A),(B) and (C) showed high tone loss in most cases. Hearing impairment was slight or severe.5) Audiograms of (D) and (E) showed hearing loss of flat type. Hearing loss was moderate.6) Békésy audiogram showed type II configuration, SISI score revealed mostly positive.7) Pure tone audiograms of acute hearing loss were significantly improved, however restoration of slowly progressed impairment was poor.Effects of progesterone and estrogen on hearing loss were discussed in order to explain pathogenesis of these hearing impairments.It seemed unreasonable to regard the disease merely as side effects of female hormones.
著者
Stephanie DANIELS
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.505-509, 2004-11-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
27

ヒトにおいて、大脳皮質の嚥下機能にかかわる部位を同定する試みは、主として傷害実験の手法、すなわち卒中患者の責任病巣がどの部位にあるかをCTやMRIを使用して調べる方法に基づいて行われてきた。嚥下研究の領域にこれらのニューロイメージング技術が登場し応用されるまでは、嚥下障害の責任病巣は脳幹かまたは両側の大脳半球にあるという考えが一般的であった。しかし、ニューロイメージング技術の利用を通して、一側大脳半球の特定の皮質領域が嚥下動作に寄与しているという概念が確立されてきた。また機能のイメージング方法を用いることにより、健康成人における嚥下運動の局在の研究が進み、テント上の領域が重要であることが確認されている。多様な画像技術を駆使して、嚥下運動にかかわる特定の部位が同定され、それには島回も含められる。島回、特にその前方部は嚥下運動を伝達する多数の皮質および皮質下領域と密接に双方向性に結びついている。島回の前方部の障害によって嚥下障害が引き起されるが、その機序としてanterior efferent cortical pathwaysおよびまたはvisceral sensorimotor pathwaysが妨げられるたあとの仮説がある。動物実験、卒中患者が示す病変部位の研究および健康成人における機能イメージング研究は嚥下機能の皮質局在説を支持している。大脳皮質による嚥下機能の情報の伝達と調整は、ヒトが安全にかつ機能的に嚥下を遂行するために求あられる十分な生理学的および生化学的特性を維持していくのに非常に重要である。
著者
平出 文久
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.1022-1027, 1989-11-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
26

突発難聴を主訴として来院し, 初診時に突発性難聴と診断されたが, その後の精査により肝細胞癌の側頭骨転移癌によることが判明した1例を報告した. 患者は57歳の男性で, 1987年6月右突発難聴, 耳閉塞感が発現し, 近くの病院で突発性難聴と診断され, 副腎皮質ホルモン療法を受けたが症状は改善されなかつた. 耳X線検査で右内耳道近辺の不整像が観察され, 聴神経腫瘍などの脳腫瘍が疑われた. 同年8月精査を希望し当科を受診, CTおよびMRI検査により右側頭骨底から後面にかけて大きな腫瘍塊が認められた. 右骨部外耳道底に出現した小さな腫瘍の生検によりこれらの腫瘍塊は肝細胞癌の転移癌であることがわかつた. この症例ではほかに同側の顔面神経麻痺, 反回神経麻痺が認められたが, 突発難聴とともに多発性脳神経症状が発現した場合には側頭骨転移癌の可能性も考慮すべきである.

1 0 0 0 OA 菊池病の 2 例

著者
吉福 孝介 松崎 勉 西元 謙吾 朝隈 真一郎 大野 文夫
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.218-224, 2016-11-20 (Released:2017-11-01)
参考文献数
17

菊池病は、1972 年に菊池らにより報告された疾患で、組織球性壊死性リンパ節炎とも呼ばれている。数週間の頸部リンパ節腫脹と発熱を訴え、抗生剤が無効で、白血球数が低下し、LDH の上昇がみられれば、本疾患が強く疑われる。今回、われわれは、頸部腫瘤形成を主訴とした 27 歳女性と 17 歳男性の菊池病の 2 例を経験した。穿刺吸引細胞診にて確定診断後に、ステロイドを投与したところ、病変の速やかな改善を認め、現在のところ経過良好である。菊池病は約 4 %に再発がみられるものの発病後 1 − 2 カ月で治癒し、予後良好な病気とされている。しかしながら、高熱が持続し汎血球減少を呈し、不幸の転帰をとった症例などの重症例も存在することから、頸部リンパ節腫脹を来した症例に遭遇した際には、菊池病も念頭に置き、診療に携わる必要があるものと考えられた。
著者
三好 彰 中山 明峰 三邉 武幸
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.29-32, 2010 (Released:2011-01-04)
参考文献数
3
被引用文献数
1

舌のしびれ感を主訴として三好耳鼻咽喉科クリニックを受診した、三叉神経鞘腫の 1 症例を報告した。本症例の確定診断に至る、頭蓋底に的を絞った MRI 撮影は、神経耳科学的スクリーニングに基づくものであり、画像診断前の神経耳科学的診断の重要性について、改めて認識させられた。
著者
川嵜 良明 武田 憲昭 肥塚 泉 萩野 仁 松永 亨
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5Supplement6, pp.1266-1273, 1991-11-01 (Released:2013-05-10)
参考文献数
3

めまい患者における自律神経機能を検討するために, ノルエピネフリン, トリニトログリセリンを用いて薬剤による血圧の変化を惹起し, それに対する脈拍の変化をみることにより圧受容器反射の感度を測定した, めまい患者では, その障害部位によらず副交感神経機能低下状態にあり, メニエール病で発作から近い時期, 発病から近い時期, 発作の頻発する活動期に交感神経機能亢進の状態にあつた. また, めまい患者においてシェロングテストの陽性化には圧受容器反射の機能亢進が関与している可能性が考えられた.一方, R-R間隔のスペクトル分析でもメニエール病で正常人に比較して副交感神経機能が低下している傾向がみられた.
著者
林 伊吹 林 与志子 宇野 功 藤原 裕樹 高橋 宏明
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.666-672, 1997-09-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
10
被引用文献数
3

嚥下を観察する際, 嚥下開始の指標を決定するために, 舌骨上筋群表面筋電図を用いることが多い. これは, 被験者に非侵襲的であるため, 有用な方法とされている. しかし, 舌骨上筋群表面筋電図と実際の筋の活動とが, どのように関わつているかを確認する必要がある. 著者らは甲状舌骨筋とオトガイ舌骨筋に電極を刺入して得た筋電図と, 舌骨上筋群表面筋電図を同時記録し比較検討した.嚥下の際に, 舌骨上筋群表面筋電図波形上, 2つの波形変化を認めた. 最初におこる小さい振れと, それに続く大きい振れである. 前者をEMG1, 後者をEMG2とした. 筋電図の比較により, EMG1はオトガイ舌骨筋の活動開始点と, EMG2は甲状舌骨筋の活動開始点と強い相関を認めた.この結果より, 舌骨上筋群表面筋電図は嚥下開始の指標を決定でき, EMG1は嚥下第一期の開始を, EMG2は嚥下第二期の開始の指標を表すものと考えられた.
著者
三好 彰 中山 明峰 程 雷 殷 敏 時 海波 陳 智斌 鮑 永生 魯 春林 白川 太郎
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4Supplement2, pp.S147-S152, 2003-09-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
22

近年の日本におけるスギ花粉症などのアレルギー疾患増加が、回虫など寄生虫の減少に起因しているとの仮説に対して、実際の疫学調査の結果と文献による考察を行った。疫学調査の結果からは、寄生虫感染例でもスクラッチテストに陽性反応を示す症例の存在することが分かり、むしろ感染例の方が非感染例よりも陽性率の高いことすらあることが示唆された。文献的にも、この仮説を裏付け得るだけの論文は見当たらず、仮説は根拠に乏しいものと判断された。アレルギー疾患の増加が、寄生虫感染の減少に起因しているとはいえない。
著者
村上 大輔 澤津橋 基広 吉川 沙耶花 西嶋 利光 齊藤 章 加藤 昭夫 小宗 静男
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.30-38, 2012 (Released:2013-01-01)
参考文献数
16

花粉症に対する皮下免疫(減感作)療法は、唯一根治を期待できる治療法である。しかしながら頻回に注射が必要なことや重篤な有害事象が起こる可能性があるため、より侵襲が少なく、利便性が良く、安全な減感作治療法が期待されてきた。そこで簡便に減感作を行える新規経口免疫寛容剤 (スギ抗原 - ガラクトマンナン複合体) を用いて、花粉症患者に対する減感作治療の安全性、その効果について検討した。減感作中の有害事象は、5 名中 1 名で全身倦怠感を認めたのみであった。また、花粉飛散期での鼻症状、重症度スコア、VAS、medication score は、薬物治療群と比較して減感作治療群でスコアの改善がみられた。これらの結果から少人数のパイロット研究ではあるが経口免疫寛容剤 (スギ抗原 - ガラクトマンナン複合体) を用いた経口免疫療法は、重篤な有害事象を認めず、短期間での減感作治療効果が期待でき、花粉症に対する治療の一つの選択肢になり得ると考えられた。
著者
油井 健宏 加藤 久幸 岡田 達佳 櫻井 一生 山本 直樹 内藤 健晴
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.255-260, 2012 (Released:2013-11-01)
参考文献数
21

HPV 関連中咽頭癌は HPV 非関連癌に比べ、化学療法や放射線療法に高感受性で予後良好である。今後、HPV の検出が中咽頭癌の治療効果予測や治療方針決定に対する有用なバイオマーカーとなり得る。今回、68 例の未治療中咽頭癌のホルマリン固定パラフィン包埋ブロックからの最適な HPV 検出法とその手順の探索を行った。方法はリアルタイム PCR 法でハイリスク型 HPV の 7 亜型の検出、In situ hybridization 法 (ISH) で HPV 16/18 DNA の検出、免疫組織化学検査で p16 の発現を検討した。HPV 陽性率はPCR、ISH、p16 で各 37、32、44%、PCR で HPV 陽性 28 例の内訳は、16 型が 26 例 (93%)、56 型 1 例 ( 4%)、58 型 1 例 ( 4%) であった。3 種類の検出法のうち 2 種以上が陽性のものを真の HPV 陽性と仮定すると、感度と特異度は PCR (92%、93%)、ISH (92%、100%)、p16 (100%、86%)で、陽性的中率と陰性的中率は PCR (88%、95%)、ISH (100%、96%)、p16 (80%、100%) であった。HPV 検出法として、まず p16 でスクリーニングを行い、p16 陽性例に対し ISH で確定診断する方法が至適と考えられた。
著者
都川 紀正
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1Supplement1, pp.189-194, 1981-01-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
40

Pseudomonas infection has been increasing in number these days and pseudomonal otitis media have been found in the otolaryngological practice. Pseudomonal infections are caused by bacterial substitution phenomena, burns, tissue transplantations, major surgeries, endoscopic procedures, intensive radiation therapies and steroid therapy. We have great number of problems to treat this infection.The author applied hemagglutination (OEP-HA reaction) to 33 patients of pseudomonal chronic otitis media and obtained the results on specific antibody to this bacillus. OEP (=Original Endotoxic Protein) is protective antigen located in cell wall of pseudomonas aeruginosa and is found in the group specific in its protective antigenicity. Antibody titer in normal human sera is under 1: 80. The specific antibody titer in 65 strains (33 patients) was ranged from under 1: 40 to over 1: 2560. The rate of 17 positive strains (over 1: 160) was 26.2 %. The antibody titer of most control strains was within normal limit.
著者
調 重昭
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.451-452, 1977-05-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
5
著者
目須田 康 本間 明宏 西澤 典子 折舘 伸彦 堂坂 善弘 古田 康 福田 諭
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6Supplement4, pp.S286-S290, 2006-11-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
17

近年上咽頭癌放射線治療後晩期に嚥下障害を来した例を3例経験した。症例は男性2例女性1例で、治療時年齢は20-41歳。2例は上咽頭癌に対する標準的な放射線治療を、1例は放射線化学併用療法を受けており、治療後8-15年で嚥下障害を発症した。全例両側舌下神経麻痺を中心として咽喉頭の感覚運動障害を有し、1例では補助栄養として間欠的口腔食道栄養法 (OE法) を指導し、1例では誤嚥性肺炎をコントロールするため誤嚥防止手術 (喉摘) を必要とした。末梢神経線維は一般に放射線抵抗性とされるが、過去の報告では放射線障害による脳神経障害に起因した誤嚥性肺炎で死亡する例も存在する。近年上咽頭癌に対し放射線化学併用療法が積極的に行われており、予後の改善と引き換えに晩期脳神経障害を背景にした嚥下障害が増加する可能性があることを、嚥下障害を担当する医療者や頭頸部腫瘍治療担当者は銘記する必要があろう。
著者
押川 千恵 岸川 禮子 下田 照文 岩永 知秋
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.132-137, 2017-07-20 (Released:2018-08-01)
参考文献数
22

タマネギを摂取することにより耳下腺の腫脹を繰り返し、アナフィラキシー症状を呈したアレルギー性耳下腺炎を経験した。症例は 57 歳、男性で、カレーライス(卵、牛肉、ニンジン、タマネギ入り)を摂取後に両耳下腺の腫脹とともにかゆみ、呼吸困難を伴うアナフィラキシー症状を起こした。ステノン管からの唾液は漿液性で混濁は認めず、唾液中に多数の好酸球が認められ、CT、エコー検査にて耳下腺内の導管拡張所見がみられた。アレルギーが関与する反復性耳下腺炎としては、ステノン管から粘稠な線維素塊の排液を認める線維素性唾液管炎が知られているが、本症例では線維素塊の排液は認められず、アレルギー性耳下腺炎の診断とした。抗原特異的 IgE 検査ではヤケヒョウヒダニ、スギ、タマネギが陽性で、タマネギ経口負荷検査にて耳下腺の腫脹が誘発されたことより、タマネギが原因抗原と同定した。タマネギの摂取を回避し、抗アレルギー剤を適宜使用することで良好なコントロールが得られている。これまで食事と関連するアレルギー性耳下腺炎や線維素性唾液管炎の報告はあるが、原因抗原を同定できることは非常にまれである。頻度は少ないが、反復する耳下腺腫脹を認める場合は、本疾患を念頭に置いておく必要がある。
著者
安田 宏一
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.883-888, 1995-11-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
7

メニエール病患者の中に, ある時かなり激しく一側性の耳痛を訴える者がある. 耳鏡検査をしてみても, 耳痛の原因になるような異常を発見できない. このような患者の胸鎖乳突筋を指でつまむと, 耳痛側に一致して圧痛がある.1994年4月から2カ月間に, このような耳痛を訴えた者が12例あつた. 発作中の者が7例, 間歇期の者が5例あつた. 間歇期の者は, 半日の臥床, あるいは眠前にセレスタミンを1錠のむことで, 翌日には耳痛がとれていた. 発作中の者は, 4日間の臥床安静とセレスタミン1日4錠の内服で, 眼振と偏筒が消失し, 多くの者では耳痛も同時に消失した. なお耳痛のとれない者には, 耳痛側の胸鎖乳突筋と僧帽筋に, リンデロン2mgと1%塩酸プロカイン10mlの混合液を局注することにより, 耳痛は消失した.この耳痛の原因は, 前庭脊髄反射が胸鎖乳突筋で亢進したものと考える.
著者
菅村 真由美 今村 明秀 久保田 由紀子 宮城 司道 福崎 勉 加藤 寿彦 森園 哲夫 堤 正則 中川 尚志
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.163-167, 2007-05-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
13

海綿状血管腫は比較的まれな疾患とされていたが、MRI導入以来発見されることが多くなった。初発症状としては、てんかん発作、けいれん、頭痛などが多い。今回、われわれは脳幹部の海綿状血管腫の出血が原因でめまいを発症したと思われる成人男性症例を経験したので報告する。症例は53歳、男性で主訴はめまい、嘔気であった。初診時は末梢性の頭位めまいと診断された。発症後6日目に左注視障害、瞳孔不整が出現したため、MRIを施行したところ、脳幹部海綿状血管腫と診断された。本症例のめまいは、延髄海綿状血管腫に起因する出血により生じたものと考えられた。
著者
三枝 英人 愛野 威一郎 岩崎 智治 粉川 隆行 中村 毅
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.155-160, 2004-03-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
16

胃食道逆流症 (GERD) により咽喉頭異常感を呈した小児3例 (8歳女児、8歳男児および16歳男児) を経験した。全例とも特記すべき既往歴、家族歴を認めなかった。しつこい咳払いや異常感を訴えており、当初、心因性咽喉頭異常感症やチックとの鑑別が難しかった。しかし、喉頭内視鏡所見で披裂間部粘膜の発赤、腫脹を認め、さらに喉頭内視鏡の先端で同部位の触診を行うと、異常感を訴える部分と一致した。そこで、GERDにより咽喉頭異常感が発現している可能性を疑い、食道透視検査、上部消化管内視鏡検査を行ったが異常は認められなかった。このため、プロトンポンプ阻害剤 (lansoprazole 10-15mg/day) による診断的治療を行ったところ (8週間継続投与)、全例、喉頭内視鏡所見ともに症状の改善を認めた。小児においても、GERDにより咽喉頭異常感を呈することがあることが判明し、今後注意が必要であると思われた。
著者
近藤 隆 河辺 義孝
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.823-833, 1987-09-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
8

Eighty-one cases of head and neck cancer patients who died within the last five years were analyzed. The sites of primary tumors were as follows: 15 cases in the nasal and paranasal cavity, 13 cases in the tongue, 9 cases in the larynx, 7 cases in the thyroid, and 7 cases epipharynx, and 6 cases in the hypopharyngeal-cervical esophagus. 81.8% of the patients had stage III or IV cancer at the initial diagnosis and suffered from double cancers during the course of the disease. These patients had repeated hospitalizations and were treated surgicaly by tracheostomy, gastrostomy or ligation of carotid artery. In recent years, there has been increased interest in defining what constitutes good quality care for the terminal by ill cancer patient. Our analysis documents the complex problems these patients and their physicians face. These problems challenge the medical facilities caring for such patients to develop programs that provide the highest possible levels of care for head and neck cancer patients. Head and neck surgeon must consider the protocol of informing cancer patients. Cymprehensive care must be given after informing the patients of their condition.