著者
小田 達也 姜 澤東
出版者
長崎大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

海藻類中には、多くの有用な成分が含まれている。近年、昆布やモズクに含まれる硫酸化多糖体であるフコイダンはアポトーシス誘導、抗酸化、抗腫瘍、免疫賦活、血圧降下、血糖値降下など多彩な作用を示すことから、硫酸化多糖体のさまざまな利用法が期待されている。これまでの研究により、アルギン酸の工業的原料として広く用いられている褐藻類アスコフィラム・ノドサム乾燥粉末からフコイダンとは異なる画分として硫酸化多糖体アスコフィランが比較的高収率で得られることを見出している。アスコフィラム・ノドサムにおけるアスコフィランの存在は古くから知られたが、その生理活性に関する研究はほとんどなかった。そこで、我々はアスコフィランの生理活性を主にとして、様々な研究を行った。その研究成果により、アスコフイランはU937細胞に対するアポトーシス誘導、哺乳類MDCK細胞の増殖促進、サルコーマ180担癌マウスに対して延命効果、マクロファージRAW264.7細胞からの一酸化窒素(NO)及びサイトカイン(TNF-α及びG-CSF)放出誘導活性など多彩な生物活性を示すことを見出した。最近の研究により、アスコフィランはJNKMAPK経路及びERK MAPK経路を介してRAW264.7細胞におけるNADPHoxidase (p67^<phox>とp47^<phox>サブユニット)を誘導させ、RAW264.7細胞から活性酸素(ROS)放出を誘導することを見出した。さらに、in vivoで、アスコフィランをマウスの腹内に投与した後、マウス脾臓からnatural killer (NK)細胞はマウスリンパ腫細胞(YAC-1)に対する細胞傷害作用が上がることが分かった。さらに、固形腫瘍担癌マウスへのアスコフィラン経口投与により、腫瘍サイズの減少が見出された。
著者
増田 研 波佐間 逸博 宮地 歌織 山本 秀樹 野村 亜由美 宮本 真二 田川 玄 田宮 奈菜子 佐藤 廉也 野口 真理子 林 玲子
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究課題は日本のアフリカ研究者による初めての高齢者研究であり、かつ、人類学と公衆衛生学・保健学を組み合わせた方法論を採用したため、期間を通じてそのアプローチのあり方について模索を続けた。成果として書籍(編著)を公刊したほか、日本アフリカ学会におけるフォーラムの開催、日本アフリカ学会の学術誌『アフリカ研究』に特集を組んだことがあげられる。検討を通じて、都市部貧困層高齢者の課題、アフリカにおける高齢者イメージの解体、生業基盤によるケアのあり方の違いといった探求課題を整理できたことも成果である。
著者
安藤 悦子
出版者
長崎大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

<結果>上記研究テーマに基づき、半構成的インタビューガイドを用いてインタビューを実施した。対象者は16家族20名(男性8名・女性12名)。患者死亡からの経過年数は8ヶ月〜9年。インタビュー時間は35分〜125分であった。(1)ターミナル期にあるがん患者の家族が認知する看護師のケアリングは、【患者が人として大事にされる】【患者の身体的苦痛が和らぐ】【家族も気にかけてもらえる】【自由度を広げる療養環境】【物腰が柔らかい】などで、それらは【ちょっとしたことでも頼みやすい】【任せられる安心】を生み、【やらなければならない負担の軽減】【患者は幸せだった】という家族の満足感につながっていた。(2)逆にケアリングとならなかった看護師の関わりは、【患者の苦痛が軽視される】【心のない事務的な対応】【頼んでも拒まれる】などがあり、これらに対しては【仕方がない】【お世話になっているから我慢する】とあきらめていた。(3)直接的な看護師の関わりはなく、看護師不在でケアリングがないは、【医師との対立:治療方針・治療の場の決定】【医師への不信:説明不足】【抱えているものを分かち合えない存在】【自分たちでどうにかする】などがあり、最後まで看護師に役割を期待していなかった。特に【医師との対立・医師への不信】は患者の死後も、【後悔・怒り・わだかまり】を残した。<考察>家族にとっては第一義的に患者に対する看護師の関わりが家族へのケアリングとなっていた。これは家族が患者を自身の分身のように感じ、患者の苦痛や患者への応対の一つ一つを自分の痛みとして敏感に反応しているものと考えられる。逆に言えば、看護師の患者に対する関わりが、家族にとっては患者の死後も【患者は幸せだった】と家族の悲しみを和らげる糧となりうることが確認された。また、家族は看護師が考えている以上に、医療者に対して我慢やあきらめを強いられる立場にあり、これらが患者の思いを代弁したくてもできないストレスとなりうることを厳しく自覚することが求められる。看護師不在でケアリングがない【医師との対立・医師への不信】に対し、患者/家族-医師関係の調整において、看護師が患者/家族にとって資源となりうることを看護師側からアピールし、期待される存在として認知されることの重要性が示唆された。
著者
笠原 俊彦
出版者
長崎大学
雑誌
經營と經濟 : 長崎工業經營専門學校大東亞經濟研究所年報 (ISSN:02869101)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.21-56, 2003-06-25

Acconding to Weber, the Calvinistic pastor in his practice changed the idea of calling in its specific aspect while he was managing the idea in the doctrine and also in the original religious mind of its beliver: in making the idea of calling acceptable to rank and file, the pastor dropped from it the non-or even anti-profit moment and added in this place the con-profit one, thus directing the tremendous energy of the religious mind towards moulding the spirit of the modern capitalism as the ideal of ascetic ethic in the worldly life. The idea of calling so revised is found 'ideal-typically' in English Puritanism, especially in the work of Baxter. He stressed the ceaseless lure of wealth to moral corruption and neglection of ascetic life. However, though his hostility to property was much more strong and strict than that of Calvin himeself, Baxter's doubt was directed not to wealth as it was but to its degrading effect on morality, to idleness and enjoyment of life and resulting resignation of the efforts to holly life for the glory of God. For Baxter the toil in one's calling was on the one hand the means for asceticism : it was the prominent guard against all the temptation to unclean life ; it was on the other just the divine purpose of human life. A specific job as a calling was given to each person secretely by God, so it was his duty to search for this and work hard in this to contribute to the rational formation of society and to the 'common best' in order to be pleased bv God. The liberation from the old restriction and the freedom of the selection of one's job, which Luther could not had admitted, exerted then the amazing influence on constituting the rational labour system both in business and society as a whole. This idea of Barter familiar with utilitarianism shows a peculiar religious aspect, when he sets on it the motives of stableness and of order or method of one's job as his calling, - the motives which lead to the appreciation of the modern professinals. And the more methodically one's ascetic labour is executed the more it yields profit as its result, so became the profit to be used as a measure with practical importance of the degree of one's service to God, and then profit-making to be the very duty of a Puritan as a steward entrusted the assets of God, - the religious appreciation of profit-making, the brilliant glory for business man, which was the strong support of the ethic for the spirit of the modern capitalism.
著者
織田 芳人
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、1回の操作で折り畳みが完了する多面体を用いて、幼児用の知育玩具を開発することである。サイズとして、幼児が手に取って形体の変化・動きを体験できるような小型遊具と、幼児が内部に入って空間感を体験できるように開口部を設けた大型遊具を想定した。小型及び大型の試作モデルを用いて、幼児による操作実験、及び、保護者に対するアンケート調査を行った結果、小型及び大型の試作モデルは幼児用玩具として有効であると考えられた。幾何学形体に対する幼児の認知に関して2種類の実験を行った結果、小型及び大型の試作モデルは教育的有効性を有すると考えられた。したがって、この研究によって、1回の操作で折り畳みが完了する多面体を用いた小型及び大型の試作モデルは、幼児用玩具として有効であり、知育玩具としても有効であることを明らかにすることができた。
著者
五十嵐 章 WARACHIT Pai CHANYASANHA チャンチュ SUCHARIT Sup 長谷部 太 江下 優樹 CHANYASANHA Charnchudhi SAGWANWONGSE スラン
出版者
長崎大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

デング出血熱の発病機構と伝播に関する現地調査研究を、デング流行地の1つであるタイ国東北部ナコンパノム市において実施した結果、下記の知見が得られた。(1)デング患者のウイルス学的検査には、ELlSA記録計と抗原、酵素標識抗体などの測定用試薬が入手できればIgM‐ELlSAが適正技術である。それに対して、RT‐PCRは実験条件が整備されていない地方で日常検査に使用するには問題点が多い。但し、ウイルス分離は分離株の詳細な解析を行うために不可欠である。(2)6月に採取した患者血液検体からはデングウイルス1型、2型、3型が分離され、ナコンパノム市は依然としてデングウイルスの超汚染地域の1つであることが確認された。(3)患者プラスマ中のサイトカインに関して、不明熱患者に比べてデング患者ではIFN‐γが上昇しており、臨床的にデング出血熱と診断された患者の半数以上に見られた。(4)乾期に臨床的にデングと診断された患者は、デング以外の感染症の可能性が高い。(5)今回の調査において、乾期・雨期共に多数のネッタイシマカ成虫が採集され、その殆どはabdominal dorsal tergal pattern 1の黒い蚊であった。残念なことにネッタイシマカ雌成虫からデングウイルス遺伝子の検出は陰性であった。従って、当初予定していたabdominal dorsal tergal patternとウイルス感染率との関係、及びウイルス保有蚊の潜伏場所に関する知見は得られなかった。これらの課題は今後検討すべき価値があろう。(6)1〜2月の調査によって推定されたネッタイシマカの屋内潜伏場所にオリセットネツトを選択的に使用した結果、ネッタイシマカに対する防除効果が見られたことは、今後限られた経費と資源を有効に利用してデング媒介蚊防除を実施する上で重要な知見である。
著者
藤本 登
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、学校教育の教科学習の中でエネルギー環境教育を行う方法を示し、温暖化防止の観点から技術評価力や実践力を調べた。その結果、中学校におけるロボット教材を用いた技術科の授業として登坂型省エネルギーロボットの製作が提案された。また照明製作の授業で生徒の地球温暖化防止活動を活発化させるためには、照明比較実験などの体験活動のみならず、ふりかえり活動が有効であることが示された。さらに公立学校の光熱水量を調査し、使用量の多い項目を地球温暖化の授業テーマとする方法を提案した。また水がテーマとして選ばれた学校に対して、節水と省エネルギーの関係を理解させるために開発された水処理実験装置を用いた授業実践を行った結果、最大40%の節水効果が得られた。これに対し、高校生や大学生を対象とした原子力ワークショップから、専門家との対話や関連知識の提供のみではエネルギーや原子力の概念化は困難であることが示され、教師は専門的な知識より、ファシリテーター能力や解説能力が必要であることが連想法によって示された。また電源やエアコンを例として技術評価の能力を育成するための支援教材が、一対比較法を利用して開発された。この中で中学校技術科の授業実践では、2次元動作解析システムを利用した教材が、工具操作(鋸挽き)技能の向上と授業時数の短縮化に寄与したことから、教科に温暖化防止活動を入れることが可能になった。
著者
篠原 駿一郎
出版者
長崎大学
雑誌
長崎大学教育学部社会科学論叢 (ISSN:03882780)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.1-3, 2003-03-26
著者
松田 浩 木村 吉郎 河村 進一 森田 千尋 才本 明秀 森山 雅雄 出水 亨 牧野 高平 豊岡 了 上半 文昭
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

(1)非接触全視野非破壊試験法の開発とその応用:レーザシェアログラフィを用いた欠陥検知への有効性について検討した。また、超高速度カメラを用いた動的変位計測システムによる振動計測法の有効性を確認した。(2)常時微動計測に基づく構造同定及び健全度評価への応用:耐震補強前後の実橋脚を対象として、レーザドップラ速度計による振動試験とFE解析から振動モード同定を実施した。補強前後の固有振動数の変化を実振動計測および振動解析で確認することができた。
著者
三好 宏 前川 拓治
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

生体における臓器虚血再灌流障害は、生命予後を大きく変化させる。臓器保護作用をもつ薬剤として水素の腎保護作用に注目して研究を行った。ウィスターラットを使用し、麻酔施行後、気管挿管・人工呼吸を行い、両側側腹部切開にて腎臓を露出後、腎動脈・腎静脈・尿管を一塊としてクランプする。虚血時間は40分。水素の投与は、低濃度・高濃度群に分けて行った。その後、閉腹し、24時間後、48時間後に採血を行い、血中尿素窒素、クレアチニンを測定した。水素投与により、血中尿素窒素、クレアチニンの上昇が抑えられることが判明した。
著者
岩尾 正倫 石橋 郁人 福田 勉
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

海洋天然物ラメラリンは、トポイソメラーゼIやプロテインキナーゼ(CDK, GSK-3, Pim1, DYRK1A, CLK等)を分子標的とする多機能性の抗がん物質である。本研究では、ラメラリンアナローグを用いた構造活性相関研究とドッキングシミュレーションによる阻害分子機構解析により、各分子標的に選択的な阻害剤を創製することを目的とした。その結果、ラメラリン骨格上の酸素官能基の適切な配置により、キナーゼ選択的(orトポI選択的)阻害剤の創製が可能であることが明らかになった。また、ラメラリン骨格C1-C11間の軸不斉に基づく16-メチルラメラリンNの二つのエナンチオマー間でキナーゼ阻害活性や選択性に大きな違いがあることも明らかになった。さらに、1位芳香環を置換したラメラリンN類縁体の多くが1位置換基の構造に依存して、キナーゼ阻害に有意な選択性を示すことも明らかになった。
著者
林 徹
出版者
長崎大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、以下の独立開業ないし起業のプロセスのメカニズムの解明に向けて、部分的ながらもそれに資すると思われる事例を提供するものである。感情面における正の変化が生じると潜在的な起業者の見方が一変する。その後、感情面の起伏と経験が非直線的に進展する。物的資源の獲得と相俟って、懐妊期を経て、潜在的な起業者の顕在化に至る。しかし、特定のどの相手とのどのような相互作用が後押し(支援)となって潜在的な起業者(アクター)の正の感情の高まり(愛情)が惹起され、他方で経営資源がいかに束ねられていくのか。AETを背景とするこうした一連のメカニズムの解明は仮説段階にとどまっている。
著者
福田 正弘
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究は、個々の子どもに焦点を当て、彼らが形成している日常的社会認知の姿とその発達過程を明らかにすることを目的としている。そのため、4年間の継続調査を実施した。調査対象は、1997年度時点で、第2学年生108名と第3学年生107名である。また、4年間同じ質問表を使用した。質問は、日常生活の様々な文脈で自身の販売するレモネードの価格を決定する12の問、例えば、「サッカーの試合を観るために、多くの人が集まっているとき、あなたはレモネードの値段を上げますか、下げますか?」「運動会に参加するために、多くの子どもが集まっているとき、あなたはレモネードの値段を上げますか、下げますか?」から成っている。本研究の結果は次のようである。1)両児童グループの正反応率は、複雑な文脈よりも単純な文脈における方が高かった。複雑な文脈には、意思決定時に考慮しなければならない複数の条件、例えば、道徳、同情、人物の特徴が含まれている。従って、子どもの日常的社会認知の発達は、文脈を構成している考慮すべき条件に関係している。2)4年間に渡る個々の子どもの反応の変化には、2つのパターンがある。第1は、子どもの反応が年齢とともに、正反応に集中していくパターンである(パターン1)。第2は、子どもの反応が正反応と非正反応の間を行ったり来たりするパターンである(パターン2)。パターン2は、特に複雑な文脈によく見られた。それゆえ、子どもの社会認知の発達経路は、子どもが思考している文脈に関係がある。
著者
嶋田 繭子 荻 朋男
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

ヌクレオチド除去修復機構 (NER)は、DNA修復機構の1つで、紫外線により誘発されるDNA損傷の修復に機能する。NERの欠損により発症する遺伝性疾患には、本邦で罹患頻度が高い色素性乾皮症 (XP)や、2015年に指定難病に認定されたコケイン症候群 (CS)などが含まれる。NER欠損性疾患が疑われるが疾患責任遺伝子変異が未確定の症例について解析を実施し、新規の疾患関連因子を同定することを目指した。その中で、2例の興味深い症例を見いだした。
著者
山崎 真紀子 野間田 真紀子 片山 清美 中尾 優子
出版者
長崎大学
雑誌
長崎大学医学部保健学科紀要 (ISSN:09160841)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.83-86, 2003-12

ネットワークグループ長崎Cキューブの7年間の地域母子保健活動を振り返った.主な活動内容は,母子保健・助産に携わる人たちへ向けた勉強会・セミナーや地域の母子およびその周囲の人々へ向けた各種クラス等(両親学級、育児学級等)のイベントの開催,月2回の定例会とイベント前の臨時例会,会員へ年に4回のミニレター発行などであった.開催した各種イベントは参加者や主催者ともに満足度や評価が高かった.今後の課題として①女性のライフステージ全般へのアプローチとサポートという視点で振り返ると,幼児期,思春期,更年期などは取り上げていないので今後活動に入れていく必要がある,②専門職としての活動の活性化は図れているが,地域に根ざしたネットワーク活動を行っていくには,お母さんグループ等の地域で活動しているネットワークグループと交流をもち地域のニーズを把握していく必要がある,③イベント後にとっているアンケート内容の検討を行い,評価方法を再考する,④マンパワーの確保と強化があがった.
著者
東 登志夫 菅原 憲一
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

メンタルプラクティス(MP)の実践においては対象者が運動イメージ(MI)を鮮明に想起していることが前提となるが, 1人称MIを想起することは容易ではない.そのため,効果的なMPを実践するには,この1人称MIの鮮明度を十分に確保する必要がある.本研究では対象者が1人称のMIを想起する際に,想起する課題に関する感覚情報を提示することで,1人称MIの鮮明度が強化されるという仮説を立て,大脳皮質運動野興奮性の変化と主観的なMI鮮明度評価の観点から検証した.その結果,動作に関連した聴覚情報や視覚情報の負荷した条件では対象者の主観的なMIの鮮明度を高め,またMI中の大脳皮質運動野の興奮性も高値を示した.
著者
三根 真理子 本田 純久 柴田 義貞 三根 真理子
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

長崎市在住の原爆被爆者1237人を対象に、被爆時の状況や被爆体験に関する面接聞き取り調査を1997年に行なった。本研究では、被爆から50年以上が経過した現在においてもなお残る「こころの傷」の全体像を把握するために、同調査から得られた口述記録をテキスト型データ解析の方法を用いて分析を行なった。解析対象は1237人中、性別、年齢、GHQ-30、被爆距離の項目がすべて判明している928人とした。まず、テキスト化された口述記録を"要素"(例えば、「原爆」、「ピカッ」、「死体」、「やけど」、「後悔」)に分解した。同じ意味を持つひらがな、カタカナ、漢字での表記はまとめ、関係のない単語は除外した。方言や表現の違いは同じ"要素"としてまとめた。例えば「光」、「光って」、「ピカドン」、「ピカッ」、「ピカー」は「光」という"要素"とした。また「燃えよった」、「燃えよる」、「燃えてる」は「燃える」という"要素"とした。最も出現頻度が高かった"要素"は「原爆」で口述記録の90%を占めていた。ついで「死んだ」が73.5%、「母」が67%であった。次に身体的なもの(火傷、怪我、病気など)、悲惨な状況をあらわす景色(ガラス、爆風、火事など)、家族、こころ、混乱状態、その他にグループ化し、被爆体験を構成する"概念"を抽出した。被爆体験に関する"要素"や"概念"が各対象者の口述記録に現れる頻度と、要素間あるいは概念間の相関関係を調べた。さらに性別や被爆時の年齢、被爆距離といった対象者の属性により"要素"の出現頻度を比較した。また1997年の聞き取りの際に行なったGHQ(General Health Questionnaire)-30項目質問紙調査の結果と、被爆体験に関する"要素"の出現頻度との関連を調べることで、精神的健康状態との関連についても検討を行なった。
著者
松岡 數充 MERTENS Kenneth MERTENS Kenneth N
出版者
長崎大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

温度と塩分の異なる条件でProtoceratium reticulatumシストの発芽を試みたが成功せず,この種は温度と塩分の異なる条件に順応不可能であったと考えられた.このために,発芽実験用標本は形態的に類似した隠蔽種(cryptospecies)ではないかとの仮説の基に,天然シストを詳細に観察し,かつP.reticulatumのプランクトン細胞とシストのrDNA塩基配列を調査した.その結果,プランクトン細胞とシストの対応関係を得た.この実験結果は従前のP.reticulatumプランクトン細胞とシスト対応関係を支持していた.すなわちOperculodiniun centrocarpum sesu WallとされてきたシストはP.reticulatumであった.カナダ(東部: バフィン湾,西部: バンクーバー島)(日本;北海道,九州),デンマーク;カテガット)など異なる地点から採取したプランクトン単細胞と単一のシストのSSU,ITSおよびLSU塩基配列を明らかにした.その結果,ITS領域では配列に顕著な違いがある事が判明した.これが隠蔽種であるのか否かが今後の検討課題となった.北太平洋表層堆積物中のP.reticulatumシストの刺の長さの変化を詳細に計測した.平均刺の長さは毎年の海水密度と逆相関を示した:σt annual=1000+(-0.8476 x average process length+29.094)(R^2=0.84). Effingham Inlet in British Columbiaでのセディメント・トラップ試料では海水密度変化と平均プロセス長さの変化は北太平洋と同じ関係を示した.バルト海-スカゲラク海峡地域では平均の刺の長さ変化は海水密度と以下の関係式で示された.σt annual=1000+(3.5184 x average process length-6.686)(R^2=0.87). それぞれの関係式は一致しなかった.それは海水密度や栄養塩環境に地域特性があり,それに適応した隠蔽種が存在するか,あるいは他の未知の環境要因が寄与している可能性があるのかが今後の検討課題として残された.
著者
橋本 健夫 川上 昭吾 戸北 凱惟 堀 哲夫 人見 久城 渡邉 重義 磯崎 哲夫
出版者
長崎大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

社会の成熟に伴って多様な価値観が存在するようになった。その中で一般に勝ち組、負け組と言われる二層が存在するようになり、それが教育格差をも生じさせている。また、学校教育においては、いじめ、不登校などの問題が深刻になるとともに、数学や理科における学力の低下という新たな課題も生まれてきている。特に後者は、科学技術創造立国を掲げる日本社会にとって憂慮すべき課題である。本研究は、それらの指摘を踏まえた上で、科学技術創造立国を支える学校教育のあり方を追究したいと考えた。平成17年度は社会が学校に何を期待するかや諸外国の学校事情等を調査し分析した。本年度においては次の調査等を行い、研究テーマに迫りたいと考えた。(1)子ども達の理科に対する意識調査(2)韓国や中国等における自然科学教育の実態調査(3)日本・中国・韓国の研究者を招いてのシンポジウムの開催これらを総合的に討議した結果、自然科学をバックボーンにした従来の理科学習に代わって職業観の育成等を組み込んだ理科学習や、現行の小・中・高の学校制度を見直す時期に来ているとの認識で一致した。この認識の是非を小中学校の教員に尋ねたところ、半数以上の教員が賛同を示した。二年間の研究期間ではあったが、学校教育の中における自然科学教育の課題を浮かび上がらせ、その解決に向けた提案をすることができたと考えている。