著者
佐藤 宏之
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学教育学部研究紀要. 人文・社会科学編 = Bulletin of the Faculty of Education, Kagoshima University. Cultural and social science (ISSN:03896684)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.1-14, 2012

明治二年(一八六九)八月、金沢城二ノ丸殿中において前田家八家の本多政均が暗殺されるという事件が起こる。その三年後、本多家家中は仇討ちを果たす。この事件は、「明治忠臣蔵」と評価されるにいたるのだが、なぜ本多政均暗殺事件と仇討ちが「忠臣蔵」と冠されるのだろうか。その所以はなにか。本稿は、「明治忠臣蔵」とイメージづけられた歴史像を「歴史的記憶」と位置づけ、その形成過程をあきらかにするものである。本多政均暗殺事件と仇討ちは、数年後には実録物に仕立てられ、明治四二年(一九〇九)九月の従四位への追贈を契機に碑石・銅像の建設運動へと展開し、その後小説へと流れ込む。その過程において、この一件は赤穂事件と重ね合わせられ、義士の物語として人びとに記憶されていくのである。
著者
尾崎 孝宏
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿大史学 (ISSN:04511913)
巻号頁・発行日
no.59, pp.15-28, 2012
著者
木原 綾香 桑原 司
出版者
鹿児島大学
雑誌
経済学論集 (ISSN:03890104)
巻号頁・発行日
no.77, pp.71-99, 2011-10
著者
冨田 裕一郎
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.115-121, 1972-03-30

トリプトファン・グルコース反応液と現在常用されている抗酸化剤との酸化防止効果の比較を行なったところ, ここで明らかにされた最適条件で得られた反応液の抗酸化能はα-トコフェロールよりも強く, 合成抗酸化剤のBHA, BHTに匹敵するものであることが明らかになった.以上のように強い抗酸化性を示したトリプトファン・グルコース反応生成物ナタネ油の抗酸化剤, カロチンの安定剤および餅の揚げ物の抗酸化剤として用いた試験を行なった.そして, この反応生成物はBHA, BHTなどに匹敵する効果を示すことを明らかにした.
著者
出口 英樹
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学総合教育機構紀要
巻号頁・発行日
no.4, pp.12-26, 2021-03

近年の大学(高等教育)支援政策は競争的かつ特定事業支援型である。すなわち、国が大枠的な目的や方向性を確定した上で各大学がその具体策を競い合うものとなっている。その一方で、このような政策の背後には「全学的教育改革」という含意を見て取ることができる。これは、「学位の質保証」や「高等教育の実質化」などの観点から体系的なカリキュラムの構築や学習成果の可視化という文脈と軌を一にするものである。本稿の目的は、①特定の事業を支援する政策の成果として、(当該特定事業ではなく)全学的教育改革にどのような成果があったのか、②成果があった大学の共通点は何か、③充分な成果が挙げられなかったのならば問題点はどこにあったのか、を解明することにある。これを検証するため、本稿ではCOC / COC+ に採択された国立大学の動向に着目する。当該大学において、上記の隠された政策意図がどのように実現したのか、それぞれの大学がウェブサイトや報告書等を通じて発信する情報、及びCOC / COC+ 事業の外部評価結果などを分析し、上記の目的を達成する。その結果、問いに対して以下のような結論を得た。すなわち、①多くの大学で一定の成果があり、特に成果の大きな大学においては全学のカリキュラム改革や教育資源の再配分などの成果があった、②成果のあった大学では全学的な意思決定や合意形成がなされていると見られるという共通点があった。そして③成果の乏しかった大学においては全学的な意思決定や合意形成が脆弱であり、全学的なカリキュラム改革も教育資源の再配分も遅れ気味であることが推察された。
著者
盛田 友弌 モリタ トモカズ MORITA Tomokazu
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学水産学部紀要=Memoirs of Faculty of Fisheries Kagoshima University (ISSN:0453087X)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.121-129, 1960-02-20

In the Tokara Sea, the skipjack fishing water-temperature is about 20°~30°C throughout a year.And during the term when the water-temperature shows comparativelyhigh and low degrees within the limits of 20°~30°C no temperature variation is to beabserved through the sea conditions, with good catches of the skipjack. At the termwhen the sudden ascent and descent of water-temperature occurrs in the fishing groundsome remarkable time variation in the sea condition becomes to be noted, with poorskipjack catches. As to the horizontal distribution of water-temperature, when the fishingground shows a higher and more constant temperature than the other ones, the goodskipjack catching is to be expected on the ground.From the above mentioned results it is assumed that the catching condition overthe Tokara Sea may be expected to be good, provided that the water-temperatureestimated both from the terminal and spatial view points is kept comparatively constant,and moreover that it is confronted by the opposite inconstancy.トカラ海域におけるカツオの漁獲水温(表面)はほぼ20°~30°C位の範囲であるが,その最高,最低を示す時季においてカツオ漁が好況を呈しており,その水温の顕著な昇降過程にある時季には概して漁況不振となっている。なお,カツオの漁場附近における水温の鉛直分布の年間変動をみると,その恒温季には比較的深層まで等水温状態となり,その状態が持続されている。かかる海況においてカツオ漁の好況が期待されている。しかし,春の昇温季の後半には表面水温の急昇により表層における成層状態が極めて顕著となり,カツオの沈降が想像され,このためその漁況は総体的に不振となる。又,秋の降温季は比較的深層までの総体的な降温が時間的に顕著になるので,カツオ群は適温水帯を求めて南下移行するようになる。故に,この降温現象の遅速による等水温帯の時間的出現状況が秋季のカツオ漁況とその漁期の長短に相当影響しているものと考えられるのである。しかして,トカラ海域では水温の水平的な分布状況においてもカツオ群は概して等温な水帯を撰択し,その漁場を構成している。ただ,この場合水温による比較的顕著な潮境で包囲される非開放的な等水温帯がカツオの好漁場の構成要件となっているものと考える。トカラ海域におけるカツオの漁獲水温を温度別,期別にみると,春季にはその水温範囲が概して大きくなっているが,これは漁場水温の上昇に伴い高温水帯から移行した魚群と残存低温水帯における残留魚群との混獲によって記録されるようになったものと考える。又,同海域におけるカツオの等漁獲水温期間は夏冬の恒温季には当然比較的長期にわたるが,春秋の昇降温季においても魚群の往来が想定されている沖繩海域を通じてみると,相当長期に及んでいるのである。以上更に要約すれば,トカラ海域におけるカツオ漁況は,その漁場が時間的に空間的に比較的等温な状態を示し,しかも,それが常に顕著な相対的状態にある場合においてその好漁が期待されるものと考察される。
著者
錦織 寿 田中 健一 佛淵 のぞみ 瀬戸 房子
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学教育学部研究紀要. 自然科学篇 (ISSN:03896692)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.17-23, 2012

ドラゴンフルーツ(ピタヤ)は中南米原産のサンカクサボテンの果実で,近年では鹿児島県でも栽培されるようになり,主に食料品として利用されている。また,世界的にも研究が進められており,果実の色の異なる各品種の利用や有効成分の解析が報告されている。その一方,ドラゴンフルーツの色素を利用した染色法の開発についてはほとんど報告されていない。そこで,染色のための色素抽出と羊毛布の染色の検討を行った。本研究では赤紫色の果実をもつドラゴンフルーツ(レッドピタヤ)を用いた。この赤紫色はベタレインという色素により発色されており,赤色のベタシアニン類と黄色のベタキサンチン類に分けられる。検討の結果,アセトンを用いて黄色の色素を抽出した後,蒸留水を用いて短時間で抽出を行うことにより二種類の色素抽出液を分取することができた。また,得られた色素抽出液を用い,酒石で媒染することにより羊毛布を鮮やかな赤紫色に染めることができた。
著者
桜井 芳生 赤川 学 尾上 正人
出版者
鹿児島大学
雑誌
挑戦的研究(開拓)
巻号頁・発行日
2017-06-30

分析はおもに以下の様な因果図式であった。遺伝子多型の値(ss,sl,ll,の三値)は、生得的に不変とかんがえ、つねに独立変数としてあつかった。[ジーン(×SES)→ネットワークタイ分析]すなわち、遺伝子の値(と当人の社会経済的変数)が当人のネットタイ形成(具体的には友人形成)に影響をあたえているのか。また、二者間の遺伝子変数の類似がその二者の友人形成を促進するのか。すなわち「(遺伝的)類が、友を呼ぶ」のか、の分析をおもに、ロジスティック回帰分析を利用して分析をこころみた。[ジーン×ネットタイ×SES→SES 分析]すなわち、第一波第二波第三波の時系列データを収集するので、これを利用する。すなわち、第一波時点におけるジーン・ネットタイ(だれと友人か)・SES(社会経済状態)が、第二波時点の当人のSES(社会経済的状態)ならびにネットタイの変化にどのように影響したのかを分析した。これはおもに第二波のSES ならびにネットタイの一つ一つを従属変数とし、第一波のジーン・ネットタイ・SES を独立変数とする重回帰分析によって解析した。さらに第一波で計測した遺伝子の値、第二波でのネットワーク変数(だれとタイをむすんでいるか。本人のネット中心性の値など)を独立変数とし、第三波のSES ならびにネットワーク変数を従属変数とし、同様の分析をこころみた。さらに個別の遺伝子の一塩基多型のタイプが被験者の社会行動に影響をあたえていないか、スマートホンアンケートとの同時計測の結果について相関分析を試みた。
著者
レーマン ハフィーズ ウル
出版者
鹿児島大学
雑誌
南太平洋海域調査研究報告=Occasional papers (ISSN:13450441)
巻号頁・発行日
no.56, pp.57-60,

ミクロネシア連邦は西太平洋のカロリン諸島とも呼ばれる島々からなる地域で、地理的には、西から東へヤップ、チューク、ポンペイおよびコスラエの四つの州にわかれており、後者の三つの島は火山性の島々である。先行研究では、カロリン諸島の火山島は太平洋プレートが未知のホットスポット上を通過し、西から東へ火山島の年齢が若くなるとされる。しかし、先に述べた三つの島での火山活動の時期は重なっており、チューク環礁の島々とポンペイ島には同年代の火山岩が存在する。また、コスラエ島にもポンペイ島と同年代の火山岩があり、それらの火山島は(数百キロもお互いに離れている島々)、ホットスポット上にプレートが通過した時に形成されたとは考えにくい。本研究の目的はミクロネシア連邦の火山島の地質調査を含む、岩石試料の岩石学、地球科学および年代学的な研究を行い、火山島の成因を明らかにする。
著者
口岩 聡
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

1.ダイオキシン摂取の次世代影響を調べるため雌マウスにダイオキシンを慢性的に経口投与して胎内蓄積を起こさせた後、妊娠させ産子を得た。産子の外観や成長には異常が認められなかったが、接触刺激に対し過敏性を示すなど、行動に異常が現れた。行動異常が出現した動物では、脳内のセロトニン産生細胞が著しく減少していた。このことは、胎盤および母乳を介してダイオキシンに汚染された子どもの脳にセロトニン異常が発生し、それが行動異常を起こす原因となる可能性を示唆している。2.ダイオキシン致死量1回投与を受けたラットでは、投与後摂食障害が現れ、著しい体重減少が起こった。このラットの脳内では、扁桃核中心核、分界条床核、室傍核、内側視索前核、視床下部内側核にc-Fosタンパクの発現が見られた。これらの神経核は摂食の調節に関係しているので、ダイオキシンによる摂食障害はこれらの神経核が障害を受けるためと推察された。3.またこれらのダイオキシン急性投与を受けた動物では、視床下部外側野、室傍核、脳弓周囲核において一酸化窒素合成酵素の活性低下が認められた。これらの領域も摂食に関係する部位であり、一酸化窒素は摂食行動に関係する伝達物質である。ダイオキシンは一酸化窒素系に影響を与え、摂食行動を障害する可能性が考えられた。4.またこれらの急性投与動物において扁桃体核、内側視索前核、淡蒼球、分界条床核においてエンケファリン免疫活性増強が認められた。以上の結果は、ダイオキシンは胎盤、母乳だけではなく、成人でも大量に摂取すると脳異常ひいては行動異常が現れることを示している。
著者
梅内 幸信
出版者
鹿児島大学
雑誌
地域政策科学研究 (ISSN:13490699)
巻号頁・発行日
no.9, pp.83-97, 2012-03

In the 19th century man reached the realization that human unconsciousness is just a true labyrinth through research on the literature of the absurd of E.T.A. Hoffman and F. Kafka, etc. It is indispensable for children who try to imprint the patterns of their parents' habits into their own minds in order to cultivate the spirit of what is right and what is wrong. The patterns of habits mean the patterns of man's psychological reactions which are based on the principle of pleasure and reality (displeasure) such as S. Freud advocated. We can find such figures, not only in the persons of Sindbad the Sailor and Sindbad the Porter in Arabian Nights, but also in those of Tu Tze-chun the Extravagant and Tu Tze-chun the Ascetic in Akutagawa's Tu Tze-chun. This binominal conflict in an individual corresponds to the specialization of the human mind. They are poles in the human mind and they compensate each other. In consideration of this relationship, we arrive at the conclusion that the principle of pleasure works as a function of motherhood with humor, the principle of reality as a function of fatherhood with irony and the transcendental ego as a function of a wise old man or great mother.
著者
後藤 洋
出版者
鹿児島大学
雑誌
経済学論集 (ISSN:03890104)
巻号頁・発行日
no.60, pp.23-37, 2003-12
著者
松田 君彦 林 紋子
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学教育学部教育実践研究紀要 (ISSN:09175865)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.149-156, 2005

子どもが叱られる場面だけに注目するのではなく、その前後、つまり、叱られる様な事態に至った経緯、更には、叱られた子どもが示した反応に対して大人がどのように応答することが望ましいかということに焦点を当てた研究を行った。その結果、叱られるような事態を招いた原因に関する認知が明確に現れるのは児童後期であること、子どもが自己責任を感じている場合では、親の叱り方にかかわらず、受諾反応が多く、また親の叱りの背景に肯定的な信念を感じ取る傾向が強いことが明らかになった。
著者
坂田 泰造 吉川 毅 前田 和孝 カスティーヨ カルメロ・S ドレザ ラウデス・A
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學水産學部紀要 (ISSN:0453087X)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.35-43, 2005-12-27

Four microalgal strains, NN-G, TB-G, CC-B, and SC-B isolated from green water of tilapia culture ponds in the Philippines were cultivated in 10ml of ESS liquid medium at 23℃ with a 12h light-12h dark cycle. The cell forms of NN-G and TB-G were green small round and green large oval, respectively, while both CC-B and SC-B had brown cubic or quadrangular cells. Predominant bacteria isolated from the four microalgal cultures were commonly restricted to Moraxella-Acinetobacter group, Pseudomonas and Flavobacterium. Strains NN-G and TB-G contained chlorophyll b, chlorophyll a, violaxanthin and zeaxanthin, while strains CC-B and SC-B possessed chlorophyll c, chlorophyll a, and fucoxanthin as major pigments. Phylogenetic analysis based on SSU rDNA sequences demonstrated that strains NN-G, TB-G, CC-B and SC-B have close taxonomic relationships with Chlorella spp., Tetraselmis spp., Chaetoceros spp., and Chaetocertos spp., respectively.