著者
杉山 亮
出版者
首都大学東京法学部
雑誌
法学会雑誌 (ISSN:18807615)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.213-255, 2020-01
著者
末木 孝典
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.1_201-1_222, 2020

<p>本稿は、明治期最初の議院規則における傍聴規定の成立過程を 「梧陰文庫井上毅文書」 所収の草案の順序を推定することにより、現行規定の傍聴席の細かい分類や傍聴人の服装などの規制が規定された経緯や、最終的に女性の傍聴禁止条項が廃止されるに至った経緯を考察するものである。</p><p> その結果、以下のことがわかった。第一に、傍聴席分類や傍聴人の服装などの規制は欧米諸国を調査した事務局グループが作成した草案に起源があり、議院秩序を最優先する発想から来ていること。第二に、議院規則を勅令で事前に制定する方式ではなく、憲法が保障する議院の自律性に配慮して草案の作成にとどめ、成案は議会が定める方式を採用したことが最終的に女性の傍聴禁止条項の削除を可能にしたこと。第三に、草案作成に際して事務局内に対立があり、総裁の井上毅は女性の傍聴禁止を明文化せずに運用で規制すればよく、傍聴席分類も厳しすぎると認識していたこと、海外調査組の金子堅太郎は秩序と事務処理を重視し、女性の傍聴禁止の明文化に反対ではなかったこと。最後に、現行の議院規則や傍聴規則が明治期から維持されてきた細かい規制をいまだに残したままであることである。</p>
著者
春成 秀爾
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.137, pp.135-156, 2007-03-30

炭素14年代を測定し,暦年較正した結果によると,北部九州の弥生前期の板付Ⅰ式は前780年頃に始まる。南四国も前8世紀のうち,板付Ⅱa式併行期に始まる中部瀬戸内の前期は前7世紀,近畿の前期は前7~6世紀に始まる。すなわち,弥生前期は西周末頃に併行する時期に始まり,前380~350年の間,戦国中期に終わる。弥生前・中期の展開を考古学的に追究するうえで,青銅器の年代は重要な意味をもっている。日本出土の青銅器のうち年代がはっきりしている最古例は,福岡県今川遺跡出土の遼寧式銅剣の鋒と茎を銅鏃と銅鑿に再加工した例であって,板付Ⅰ式に属する。同様の例は朝鮮半島では忠清南道松菊里遺跡などから出土しているので,ほぼ同時期と考えてよいだろう。松菊里式の較正年代は前8世紀であるので,板付Ⅰ式の炭素年代とも整合する。青銅器鋳造の開始を証明する根拠は鋳型の出土である。現在知られている資料では,近畿では和歌山県堅田遺跡から銅鉇の鋳型が前期末の土器とともに見つかっている。北部九州では,福岡県庄原遺跡の銅鉇の鋳型が中期初めないし前半の土器と出土している。また,中期初めの甕棺墓に副葬してあった銅戈に朝鮮半島の銅戈と区別できる北部九州独特の型式が知られているので,中期初めには青銅器の鋳造が始まっていたとみられる。弥生前期の存続期間が著しく延びたので,北部九州の中期初めと近畿の前期末とが実年代では一部重なっていないかどうかの検討が必要である。銅鐸は愛知県朝日遺跡から最古型式の銅鐸の鋳型が中期初めの土器とともに見つかっている。同時期の石川県八日市地方遺跡出土の木製竪杵のみに知られている独特の羽状文を身に施しているので,北陸の集団も関与して銅鐸が創出されたことは確かである。朝日遺跡から出土した銅鐸鋳型だけでは,最古の銅鐸の鋳造が中期初めに濃尾平野で始まったとまでは断定できないとしても,きわめて重要な手がかりが得られたことはまちがいない。
著者
小山 史穂子 相田 潤 長谷 晃広 松山 祐輔 佐藤 遊洋 三浦 宏子 小坂 健
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.417-421, 2015-10-30 (Released:2018-04-13)
参考文献数
15

平成24年4月の母子健康手帳の改正により,幼児に対するフッ化物配合歯磨剤の使用の推奨が記載された.本研究では,大学での教育内容を深く反映すると考えられる歯学教育を終えて間もない臨床研修歯科医師を対象に,「幼児への歯磨剤の使用を推奨しているのか」について出身大学ごとに差があるかを調べた.平成24年12月から平成25年3月に臨床研修歯科医師2,323名に対し,郵送による自記式質問紙調査を行った.「二歳の男児の患者さんに対して,あなたが推奨する歯磨剤の量はどれになりますか」の質問の選択肢を「歯磨剤の使用を推奨しない」(歯磨剤は使わない)と「歯磨剤の使用を推奨する」(小児用歯ブラシのヘッドの1/3まで(豆粒大),小児用歯ブラシのヘッドの1/3〜2/3まで,小児用歯ブラシのヘッドの2/3以上,のいずれかを選択)の2カテゴリーにし,出身大学との関連を調べた.統計学的検定には,χ2検定およびロジスティック回帰分析を用いた.1,514名(有効回答率:65.2%)の有効回答の内,使用を推奨した者は48.7%であった.出身大学別の解析では,使用を推奨する者の割合が最も多い大学で73.8%であったのに対し,最も少ない大学で22.2%と両者間に有意差が認められ,出身大学によって,幼児への歯磨剤の使用に関する認識が異なることがわかった.科学的根拠を考慮した効果的な口腔衛生学教育のあり方について検討が必要だと考えられる.