著者
千 錫烈
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.420-427, 2010-10-01

本稿では問題利用者への対処法を示すことを目的とする。最初に図書館における問題利用者の定義や問題行動の種類について概観し,問題利用者の範囲は広く,状況によっては問題行動かどうかの判断が困難なことを指摘する。次に日本における問題利用者の実態調査のレビューを行い,現実問題として問題利用者の被害が深刻であり,図書館員の精神的負担となっていることを示す。最後に,問題利用者の対処法として,最も遭遇頻度が高いであろう「怒った利用者」に焦点を当て,傾聴法に代表されるコミュニケーション・スキルを用いた方法や,意見が対立した際の「優位」と「回避」を用いた対処法を紹介する。
著者
山田 恒夫
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.367-375, 2014-09-01 (Released:2014-09-01)
参考文献数
6

2013年は日本におけるMOOC元年といってもよい年になった。日本のトップ大学が北米のグローバルMOOCコンソーシアムに参加し英語版MOOCを開講し,日本版MOOCであるJMOOCが結成された。また2014年から日本語のMOOCを順次開講し,どちらも数のうえでは十分な成功を収めた。その一方,MOOC発祥の地,北米では,「MOOCは終わった」との論調も強くなり,MOOCの評価や再定義が始まっている。このような状況において,JMOOCを含む,後発の地域MOOCコンソーシアムは,MOOC現象の本質を見極め,それぞれの文脈に応じて,進化させていく必要がある。本稿では,コースとしての質保証,持続可能性・可能なビジネスモデル,ビッグデータと学習解析,次世代の生涯学習の観点から論じた。
著者
福成 洋
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.376-386, 2014-09-01 (Released:2014-09-01)
参考文献数
10
被引用文献数
1

本稿では「アクションにつながる分析」をキーワードに,書誌情報を基にした研究戦略のための分析事例を紹介する。前半では研究力分析の評価指標について,被引用数やImpact Factorの限界について言及したうえで,分野横断のインパクト指標やジャーナル指標を紹介する。後半では,エルゼビアが国内外の大学に対して行った具体的事例を用いて,国際共同研究を促進するための具体的実践例を紹介する。まず国際共同研究の現状を,大学別,分野別に共著論文数,インパクト指標で考察する。さらに個人別の論文集合データ(Author Profile)を用いて,共同研究の参加研究者を特定した具体的なアクションにつなげる。Author Profileは研究者同士の交流促進にも利用でき,さらには研究者の流動性分析も可能にする。
著者
竹野 学
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.31-48, 2013-02-21

本稿は, 1918年から始まるシベリア出兵の最中の1920年春に発生した尼港事件への対抗措置として, 同年から1925年まで日本軍によって行われた北樺太(北サハリン)保障占領について, その日本領土化を期待して同地に移住した日本人移住者(居留民)に焦点を当てて, 日本軍政下の北樺太社会の動向を分析したものである。 保障占領開始後に同地へ到来した日本人は, 主に商工業者から構成されており, 近代日本における対外膨張の過程で各地においてみられた「一旗組」のパターンと軌を一にしていた。しかし同地での営業には限られた商機しか存在せず, 交通インフラの未整備や中国人商人の台頭なども重なり, 居留民は同地から撤退を始め, 最終的には1925年1月の日ソ基本条約締結によって総員の北樺太引揚げを余儀なくされる。 このような北樺太の経験は, 近代日本における対外膨張の過程においては例外的な逸脱事例であることを指摘した。

14 0 0 0 OA アイヌの酒 (13)

著者
加藤 百一
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.321-326, 1971-04-15 (Released:2011-11-04)

前回にひきつづき, アイヌが長い間伝承してきた《アイヌの酒》を捨てて, 米から造つた和酒に切り替えていく経過が記述されている。
著者
牛渡 亮
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.73-83, 2013-07-19 (Released:2014-08-31)
参考文献数
19

本稿の課題は,スチュアート・ホールによって1970年代に展開されたモラル・パニック論の内容を詳らかにするとともに,このモラル・パニック論と1980年代以降に展開される彼の新自由主義論との結びつきを明らかにすることにある.ホールによれば,モラル・パニックとは,戦後合意に基づく福祉国家の危機が進展するなかで人々が感じていた社会不安や恐怖感の原因を,社会体制の危機そのものではなくある逸脱的集団に転嫁し,当該集団を取り締まることで一時的な安定を得ようとする現象である.本稿では,このモラル・パニックを通じて高まった警察力の強化に対する能動的同意を背景に,それまでの合意に基づく社会からより強制に基づく社会への転換が起こり,そのことがサッチャリズム台頭の基礎となったことを示した.したがって,本稿での作業は,ホールが「新自由主義革命」と呼ぶ長期的プロジェクトの端緒を理解するための試みであると同時に,オルタナティヴの不在により今日ますます勢いを増す新自由主義を理解するための試みでもある.

23 0 0 0 OA 八ツ山羊

著者
呉文聡 訳
出版者
弘文社
巻号頁・発行日
1887
著者
小塩 真司
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.280-290, 1998-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
29
被引用文献数
24 18

本研究の目的は, 自己愛傾向と自尊感情との関わりを検討すること, そしてその両者が, 青年期における友人関係とどのように関連しているのかを検討することであった。自己愛人格目録 (NPI), 自尊感情尺度 (SE-1), 友人関係尺度が265名 (男子146名, 女子119名) に実施された。NPIの因子分析結果から, 「優越感. 有能感」「注目・賞賛欲求」「自己主張性」の3つの下位尺度が得られた。NPIとSE-1との相関から, 自己愛は全体として自尊感情と正の相関関係にあるが, 特に「注目・賞賛欲求」はSE-1と無相関であり, SE-1の下位尺度との関係から, 高い自己価値を持つ一方, 他者の評価に敏感であり, 社会的な不安を示すといった特徴を有していることが明らかとなった。これらの結果は, NPIの妥当性を示す1っの結果であると考えられた。また, 友人関係尺度の因子分析結果から, 友人関係の広さの次元と浅さの次元が見出され, その2つの次元によって友人関係のあり方が四類型された。この友人関係のあり方と NPI, SE-1との関係が分析された。結果より, 広い友人関係を自己報告することと自己愛傾向が, 深い友人関係を自己報告することと自尊感情とが関連していることが明らかとなった。このことから, 青年期の心理的特徴と友人関係のあり方とが密接に関連していることが示唆された。
著者
Dalia Muhammed Al-Imam Hana Ibrahim Al-Sobayel
出版者
理学療法科学学会
雑誌
Journal of Physical Therapy Science (ISSN:09155287)
巻号頁・発行日
vol.26, no.8, pp.1193-1198, 2014 (Released:2014-08-30)
参考文献数
24
被引用文献数
1 20

Burnout has been shown to be present in different health professions, but the prevalence among physiotherapists working in an Arabian setting has not been established. [Purpose] This study aimed to investigate the burnout levels of physiotherapists working in Saudi Arabia and the association of burnout with work and organization-related factors. [Subjects and Methods] A cross-sectional study was conducted at government hospitals in Saudi Arabia. One hundred and nineteen Saudi physiotherapists were included. They electronically completed a questionnaire that included the Maslach Burnout Inventory and the Areas of Worklife Survey. [Results] Participants showed a moderate degree of burnout as reflected by mean scores of the three subscales of the Maslach Burnout Inventory. The majority of participants demonstrated moderate to high burnout levels across the three subscales. A significant association was found between the exhaustion subscale and the subspecialty in which participants worked. A strong association was found between workload and exhaustion subscale scores. [Conclusion] This study was the first to explore burnout and related factors among physiotherapists in an Arabian setting. A moderate degree of burnout and associations of burnout with work and organizational factors were found. The findings may help human resource planning and managing the physiotherapy services.

10 0 0 0 Aera = アエラ

著者
朝日新聞社編
出版者
朝日新聞社
巻号頁・発行日
1988
著者
福土 審
出版者
公益財団法人 パブリックヘルスリサーチセンター
雑誌
ストレス科学研究 (ISSN:13419986)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.16-19, 2013 (Released:2013-12-20)
参考文献数
20

Irritable bowel syndrome (IBS) is a representative stress-related disorder. Major pathophysiological feature of IBS is brain-gut interactions, which is typically manifested by visceral perception and altered stress response. Visceral pain signal is originated from the primary afferent neuron whose cell body is located in the dorsal root ganglia. In the lamina I of the posterior horn of the spinal cord, the primary afferent neuron switches the pain signal via synapse to the second order neuron. The axon of the lamina I neuron ascends the spinothalamic and spinoreticular tract. The pain signal is spread to the insula, anterior cingulate cortex, and the prefrontal cortices via the thalamus. These are the specific pathway from the gut. The lamina I neuron switches its signal to the amygdala and hypothalamus via parabrachial nucleus. Thus, strong intensity of pain signal and/or low pain threshold cause (s) visceral pain as well as stress response including negative emotion. Clarification of the IBS pathophysiology probably provides keys to disclose the synthetic mechanism of negative emotion. Further research is warranted to solve the processing of normal visceral perception as well as pathophysiology in the central nervous system in IBS.