著者
サクニミット モラコット 稲月 一高 杉山 芳宏 八神 健一
出版者
公益社団法人 日本実験動物学会
雑誌
Experimental Animals
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.341-345, 1988

マウス肝炎ウイルス (MHV) , イヌコロナウイルス (CCV) , Kilhamラットウイルス (KRV) およびイヌパルボウイルス (CPV) に対する消毒薬, 加熱, 紫外線の殺ウイルス効果を検討した。コロナウィルス (MHVおよびCCV) に対しては, ほとんどの消毒薬, 60℃, 15分の加熱で不活化ができたが, パルポウイルス (KRVおよびCPV) に対しては, ホルムアルデヒド, ヨードホール, 次亜塩素酸ナトリウム, 亜塩素酸ナトリウム以外に有効な消毒薬はなく, 80℃, 30分の加熱でも不活化できなかった。紫外線は, いずれのウイルスに対しても, 15分の照射で不活化できた。また, 同一ウイルス群に属するウイルスは各処置に対して同程度の反応を示し, ウイルス種, 株による差は認められなかった。
著者
湯浅 貴行
出版者
麗澤大学大学院言語教育研究科
雑誌
言語と文明 = Language & Civilization (ISSN:21859752)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.65-83, 2016-03-31

本研究の目的は、日本人英語学習者があるテキストを読み、そのテキストのどれくらいの割合の語彙を知っていればどれくらい理解できるのかを調査することである。テキストに知らない語が多ければ多いほど、理解の程度も低くなる。この考えを前提としたものがカバー率研究である。多くの先行研究は、未知語の推測や適切な読解を得るためには、テキスト内の98%の単語を知っている必要があると主張している。(Hu & Nation, 2000; Laufer, 2011; Schmitt, Jang, & Grabe, 2011)。しかし、1 語の定義にワードファミリーを使用している点と読解の測定に従来の多肢選択式テストなどを用いていて再生テストが用いられていない点に問題があり、この2 点の問題を改善し、本研究は読解とカバー率の関係を調査した。
著者
安藤 嘉倫
出版者
分子シミュレーション学会
雑誌
アンサンブル (ISSN:18846750)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.99-104, 2017-04-30 (Released:2018-04-30)
参考文献数
18

本記事では「京」コンピュータと汎用分子動力学計算ソフトウェアMODYLAS を用いて行った電解質水溶液中でのポリオウィルスエンプティカプシドの全原子分子動力学計算の概要を説明する. 生体系で重要な長距離静電相互作用を, 大規模並列に適した高速多重極展開法(FMM) により計算することで, 1,000 万原子規模の巨大系についても長時間の分子動力学計算を可能とした. 平衡状態でのトラジェクトリに対する解析から, ポリオウィルスカプシドの安定性についての分子論的知見を得た. 研究の過程で生じた大規模系特有の問題についても記す.
著者
野田 伸司 渡辺 実 山田 不二造 藤本 進
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.355-366, 1981-05-20 (Released:2011-11-25)
参考文献数
20
被引用文献数
3 4

親水性ウイルス (エンテロウイルス) および親油脂性ウイルス (アデノおよび被エンベロープウイルス) の合計11種類のウイルスに対する, メタノール, エタノール, イソプロパノールおよびN-プロパノールの不活化作用を検討した.エンテロウイルスはメタノールによつて最も強い不活化作用を受け, 次いでエタノールであつた. イソプロパノールによつては, AHCウイルスが長時間の感作でわずかに不活化されるのを除き, 他のウイルスは全く不活化を受けなかつた.親油脂性ウイルスの中, 被エンベロープウイルスはN・プロパノールによつて最も強い不活化を受け, 次いでイソプロパノール, エタノール, メタノールの順であつた. これに対し, アデノウイルスはエンベロープゥイルスと同様にN-プロパノールによつて最も強い不活化を受けるが, その他のアルコール類に対する感受性は大きく異なり, 以下メタノール, エタノール, イソプロパノールの順に不活化効果が示された. アデノウィルスにおいては, 特にエタノールに対する抵抗性の強さおよび20℃ においてはイソプロパノールによりほとんど不活化を受けないことが注目された.エンテロウイルス中のAHCウイルスおよび親油脂性ウィルス中のアデノウイルスを除外すると, 全体的な傾向として, エンテロウイルスは炭素数の少いアルコール類, 親油脂性ウイルスはこれと反対に炭素数の大きいアルコール類により, 不活化を受け易い傾向が認められた.
著者
藤井 仁奈
出版者
文教大学
雑誌
文学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Language and Literature (ISSN:09145729)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.1-22, 2012-09-01

井上ひさしは、「シェイクスピア大全集」を謳い文句にした劇作『天保十二年のシェイクスピア』へ、シェイクスピア作品の筋を巧みに持ち込んでいる。私は、『井上ひさし・追悼プロジェクト『天保十二年のシェイクスピア』研究』に参加し、その際、論文「『天保十二年のシェイクスピア』論―佐渡の三世次について―」のなかで、佐渡の三世次が作品全体の不条理さに関わり、三世次さえも不条理に破滅するという点を明らかにし、井上がこの作品で、「人が何の理由もなく次々に死んでいかなくてはならぬこのご時勢」において、「ばたばたと無造作に命を落とす」という「不条理」を強調して描こうとしたこと、そしてその不条理が不完全な「策略家」である三世次に集約されていることを指摘した。だが、『ハムレット』については、きじるしの王次の「きじるし」が三世次によって引き起こされ、『ハムレット』の筋を主軸にする登場人物たちの死が三世次に起因することを指摘するにとどめた。三世次が井上自身を投影した登場人物であり、不完全な策略家であることの指摘を目的としていたためだ。しかし、三世次が『ハムレット』の筋にからむことによって、『ハムレット』におけるオフィーリアの役割を担うお冬が、王次の言動によって狂気に陥り、死を遂げるという結末は、いっそう不条理なものになるという点も論証したかった。あくまでも「オフェーリアはお冬に[…]転生している」ようにしか見えないお冬も、井上によって巧妙に作り変えられている。お冬の死に至る過程には、一見三世次が無関係のように思われる。しかし、三世次こそがお冬に不条理をもたらすのであり、その不条理は『ハムレット』におけるオフィーリアの悲劇とは異質のものなのだ。お冬の不条理さを先の論文で書き切れなかったことは非常に心残りであり、私個人の「井上ひさし追悼研究」はお冬を論証することで完結させたいと思う。したがって、本論では『ハムレット』におけるオフィーリアと『天保十二年のシェイクスピア』におけるお冬を比較考察し、お冬の狂気の原因が、三世次のことばによるものであることを明らかにすると同時に、お冬について、井上がオフィーリアをパロディ化する巧みさを指摘したい。

10 0 0 0 OA 白内障と認知症

著者
石井 晃太郎
出版者
日本白内障学会
雑誌
日本白内障学会誌 (ISSN:09154302)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.36-38, 2015 (Released:2015-07-10)
参考文献数
5
著者
小松 輝久 大瀧 敬由 佐々 修司 澤山 周平 阪本 真吾 サラ ゴンザル 浅田 みなみ 濱名 正泰 村田 裕樹 田中 潔
出版者
日本海洋学会 沿岸海洋研究会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.117-127, 2017 (Released:2020-02-12)
参考文献数
41

2011年3月11日の東日本大震災は,東北地方の沿岸に甚大なる被害を与えた.津波は,沿岸漁業の社会的インフラである,港,市場,漁船,養殖筏はもちろんのこと,魚介類の再生産の基盤である沿岸のエコトーンであり自然的インフラである藻場など(本論文ではブルーインフラと定義)にも被害を及ぼした可能性があった.そこで,岩手県大槌湾および宮城県志津川湾において,藻場の被害状況とその後の変化を調べた.海藻藻場の被害は大きくなかったが,2014年からは震災後に加入したウニによる磯焼けが生じており,積極的な駆除を行う必要がある.砂地に生育するアマモでは,津波の波高が大きくなったために壊滅的な被害を受けた湾奥部では,2011年6月に埋土種子から実生に生長しており,アマモ場の回復が始まっていた.また,地形的に津波による被害を受けにくい湾央や湾口にあるアマモ場は残っていた.これらのアマモ場は種子供給源になるため,次の大津波に備えて保護することが望ましい.津波と地盤沈下により埋め立てで失われていた塩性湿地や干潟というブルーインフラは再生したが,復旧の埋立や巨大防潮堤などの工事で消滅した.繰り返される将来の大津波に備え,次世代のために持続的で健全な海洋環境および社会を育む沿岸域を実現するという視点から,ブルーインフラの回復を織り込んだグランドデザインを平時につくる必要がある.
著者
佐藤 賢一
出版者
電気通信大学
雑誌
電気通信大学紀要 (ISSN:09150935)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.23-33, 2020-02-01

This paper introduces a mathematical puzzle book, Gobanjo, rediscovered on 2008. The radiocarbon dating on this book suggests that this puzzle book had been written on 15th century, which could be the oldest mathematical book in Japan. The Gobanjo shows us 6 types of puzzle utilizing go stones. The author summaries and translates these 6 types of puzzle into modern Japanese, i.e. Hyakugogenzan (Chinese Remainder Theorem), Shihoseki (counting the sides of square), Tonitarazu (addition and subtraction), Sassadate (simultaneous equations), Metsukeishi (guessing a hidden go stone), and Jugodate (3×3 magic square). Hitherto, as we had some knowledge about these puzzles except Metsukeishi, the author presumes the reconstruction of Metsukeishi utilizing the transposed matrix.
著者
藤井 仁奈
出版者
文教大学大学院言語文化研究科付属言語文化研究所
雑誌
言語と文化 = Language and Culture (ISSN:09147977)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.269-284, 2012-03-01

Miyoji is a main character of Tempo 12nen no Shakespeare. He is a man of the humblest birth in Edo period; he is a cunning schemer who wants to be in the ruling classes by using words. He idntifies himself as an expert wordsman just like his master who was an expert swordsman. He commits crimes just like as Macbeth: an old which woman makes a prediction about him, which controls him completely. She also tells him that his taboo is one pair of twin women. However, he fervently feels a secret love for them and at last he rapes and kills one and he married the other after killing her husband. This violation of his taboo collapses his identity: he loses his ability to use words and takes his own llife. He can't use any trick or scheme with his wife. He is a defective schemer. This kind of absurdity, which Inoue wanted to write in this play, is put together into Miyoji. I hope to analyse Miyoji's identity as an expert wordsman while showing his contradiction and insanity and suggest the absurdity coming from Inoue's satire on this modern world.
著者
堀米 綾子 江原 達弥 小田巻 俊孝 清水 隆司
出版者
公益財団法人 腸内細菌学会
雑誌
腸内細菌学雑誌 (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.1-14, 2019 (Released:2019-02-01)
参考文献数
144

母乳は乳児にとっての最良の栄養源である.乳児の腸内細菌叢はビフィズス菌優勢であり,このことが児の健康に大きく貢献していると考えられている.母乳中にはさまざまな抗菌活性因子,免疫性因子,ビフィズス菌増殖因子が含まれており,これらが複合的に作用して乳児のビフィズス菌優勢な腸内細菌叢を形成するものと推測されるが,その詳細は未だ十分には解明されていない.一方,人工栄養児の腸内細菌叢は,母乳栄養児のそれと比較してビフィズス菌が少ないなどの差が認められることが古くから指摘されており,人工乳のさまざまな改良が腸内細菌叢改善の観点からも試みられてきた.本稿では,母乳中の因子による「乳児型」ビフィズス菌の増殖およびその他細菌の排除の仕組みに関する最近の知見について,主要なビフィズス菌増殖因子であるヒトミルクオリゴ糖(HMOs)の話題を中心に,われわれの研究成果も交えて紹介する.また,腸内細菌叢改善の観点からの人工乳の改良の歴史と現状,今後の可能性についても併せて概説したい.