13 0 0 0 OA 七年史

著者
北原雅長 著
出版者
啓成社
巻号頁・発行日
vol.上, 1904
著者
五十嵐 泰正
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.521-535, 2012-03-31 (Released:2013-11-22)
参考文献数
30
被引用文献数
1 2

多様性が価値として称揚される現代の都市においては, しばしば文化実践の当事者の疎外を伴いながらも, 周縁的な差異までも資源として動員されることが多くなった. しかし, 都市内部の多様性と都市間の多様性は二律背反の場合が多い現実の中で, 多文化都市における来街者を意識したまちづくりは, ある特定の地区に特定の文化的資源の選択的な集積を促し, 文化的次元でのゾーニングを志向しがちである. このような整理を踏まえたうえで, 本稿の後半では, そうしたゾーニングが困難な多文化的な商業地である東京都台東区上野2丁目地区における防犯パトロール活動に注目する. 執拗な客引き行為などを取り締まり, 良好な地域イメージを守ろうとするこの地区のパトロールには, 従来批判されてきたセキュリティの論理とコミュニティへの意識の接合を見出すことができる. しかし本稿では, パトロールをもっとも熱心に推進しているのが, 空間的ゾーニングに加えて時間的なゾーニング (住み分け) も難しい飲食店主層であることを明らかにしたうえで, セキュリティの論理ぐらいしかコミュニティ形成のきっかけとなりえない異質性と流動性がきわめて高い――すなわち高度に都市的な――地区では, 地域防犯への志向性こそが, 多様な人々の間にコミュニケーションのチャンネルを開く最大公約数的な契機であり, ゾーニング的な発想に基づいた排除的な多文化主義を克服しうる側面ももっていることを指摘した.
著者
小暮 敏博 向井 広樹 甕 聡子
出版者
日本地球化学会
雑誌
地球化学 (ISSN:03864073)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.195-201, 2015-09-25 (Released:2015-12-25)
参考文献数
13

Mineral species that really retain radioactive cesium in Fukushima soil have been investigated by analyzing actual contaminated soil samples in Fukushima using IP autoradiography, electron microscopy and X-ray diffraction. Weathered biotite originated from granitic body in Fukushima was frequently found as radioactive fine particles. The weathered biotite is mineralogically a biotite-vermiculite mixed-layer mineral. Besides, smectite-like clay mineral was identified in biotite-free particles using X-ray diffraction. A new cesium-sorption experiment was conducted, in which various clay minerals were immersed together in dilute 137Cs radioisotope solutions and the amount of 137Cs adsorbed in each mineral was measured by IP autoradiography to reproduce the sorption at actual concentration level in the radioactive particles. It was found that 137Cs was sorbed predominantly by the weathered biotite collected in Fuku shima, confirming the results from the investigation of the actual contaminated soil mentioned above.
著者
家永 遵嗣
雑誌
近世の天皇・朝廷研究 (ISSN:18834302)
巻号頁・発行日
no.5, pp.43-96, 2013-03-01 (Released:2017-06-01)

研究期間:2011年4月28日-2015年3月31日(予定) 科学研究費補助金基盤研究(C)「近世天皇・朝廷研究の基盤形成」 課題番号:23520829 研究代表者:高埜利彦(学習院大学文学部)(近世の天皇・朝廷研究 第5回大会成果報告集)
著者
梶原 智之 山本 和英
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.983-992, 2015-03-15

小学生の文章読解支援に向けた語彙平易化を目的として,国語辞典の語釈文から平易な語彙的換言を獲得する手法を提案する.国語辞典の語釈文は,見出し語を平易な語を用いて説明しており,見出し語から語釈文中の語への換言によって語彙の平易化が見込まれる.従来は主要部終端型である日本語の特徴を利用した語釈文末の語への換言が行われてきたが,我々は語釈文全体から見出し語と換言可能性のある候補を広く収集して換言する手法を提案する.換言候補から最終的な換言を選択する際には,文脈を考慮するよりもシソーラスに基づく語の類似度を用いた選択の効果が高いことを実験的に示す.
著者
水上 崇
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.73, 2003 (Released:2004-04-01)

1.はじめに 日本の沖積平野における洪水災害は、第二次大戦後の治水工事の進展により堤防を溢流するタイプは減ってきているが、その一方で、農地や森林の宅地化に代表される土地利用の変化によって内水氾濫型の洪水はむしろ増加している。そして、この傾向は三大都市圏のみならず、地方都市でも顕著になってきているものと考えられる。 本報告ではそのような観点から、高梁川とその最大の支流である小田川との合流点に位置し、古くから頻繁に水害を被ってきたことに加え、岡山市と倉敷市に近接していることから近年ベットタウン化が著しい岡山県吉備郡真備町をフィールドに取り上げ、洪水のタイプの変化による新たな水害の可能性について考察する。また、併せて町が近年作成したハザードマップの有効性についても言及を試みたい。2.真備町の地形 真備町は小田川の下流部に位置し、小田川と高梁川によって形成された氾濫原と背後の花崗岩質からなる丘陵より構成されている。小田川は、町の東端で高梁川と合流している。 空中写真判読による地形分類図作成結果から、真備町の氾濫原は次のように特徴づけられた。_丸1_自然堤防は極めて少なく、氾濫原のほとんどが後背湿地である。_丸2_小田川の旧河道は左岸の後背湿地に広く分布し、小田川の流路が右岸の丘陵寄りに移動し続けている。_丸3_左岸支流から末政川、高馬川という2本の顕著な天井川が流入しているが、いずれも扇状地を形成しておらず、上流からの土砂供給が少ないものと考えられる。3.洪水タイプの変化 続いて、過去の真備町に関する水害及び治水事業の記録からこの地域の洪水のタイプの変化について検討した。 真備町は、鎌倉時代の高梁川の南遷事業を契機として、小田川に加えて高梁川からの溢流による水害にも見舞われるようになった。加えて、小田川と合流した高梁川は、そのすぐ下流で倉敷平野へ抜ける狭窄部を通るため、大雨の際にはしばしば増水した河川水が小田川へと逆流し、真備町の氾濫原に水害をもたらすことが多くなった。この両タイプの水害は第二次世界大戦前まで頻繁に起こった。 第二次大戦後は高梁川、小田川のそれぞれ上流にダムが完成したことと、高水化工事が行われたこともあり、溢流するタイプの洪水は起こらなくなった。しかし、1960年代以降はそれに代わって、宅地化に伴う水田面積の減少によって、降った雨水が排水されず後背湿地に湛水し続ける内水氾濫タイプの水害が多く起こるようになってきている。なお、これには河床が高いために排水機能を果たせない天井川が氾濫原に存在していることも背景にあるものと考えられる。4.ハザードマップの有効性 真備町では、2000年に洪水避難地図(洪水ハザードマップ)を作成し、既往最大の水害時の浸水域内に居住する全ての世帯に配布を行っている。 このハザードマップの記載内容には以下の問題点を指摘したい。_丸1_氾濫原一面を同じ高さまで浸水するように示しており、微地形の違いによる湛水高が判別できない。_丸2_避難経路として最も湛水深の深い後背湿地(特に旧河道)を通るように示しているケースもあり、安全な避難を行えるか疑問である。 この他の問題点等については分析中につき、当日報告する。
著者
植田 めぐ美 Megumi UEDA ウエダ メグミ
出版者
総合研究大学院大学文化科学研究科 / 葉山町(神奈川県)
雑誌
総研大文化科学研究 = Sokendai review of cultural and social studies (ISSN:1883096X)
巻号頁・発行日
no.15, pp.65-86, 2019-03-31

本稿では、16世紀ブラジルにおいて、イエズス会が行ったトゥピ語による宣教活動と先住民のシャーマンが先導した抵抗運動を取り上げ、両者を比較することで、シャーマンがどのようにキリスト教を解釈していたのかを再構成することを目的とする。ブラジルにおける宣教活動は1549年にイエズス会によって開始された。初期の活動はトゥピ語系諸語を話す先住民が暮らしていた沿岸地域で行われた。自文化とは全く異なる文化に属する人びとへの宣教は困難であり、宣教師は直面した現実に応じて新しい宣教方法を模索してゆかなくてはならなかった。困難のひとつはキリスト教の教義をトゥピ語へ翻訳する作業であった。この言語にはキリスト教的要素を表す語が欠如しており、その解決策として、宣教師は先住民の文化的要素を転用した。例えば、キリスト教の唯一神には雷を象徴する神話的英雄を指すトゥパンという語が転用された。ポルトガル人が砂糖産業を発展させてゆくと、強制労働や伝染病が先住民を苦しめた。さらに、宣教師によって先住民の文化や慣習は否定された。このような現実から解放されるため、先住民はシャーマンが先導する抵抗運動に加わるようになった。この運動はポルトガル人に「聖性」と呼ばれた。「聖性」運動に見られる特異性は、シャーマンが「教皇」や「神の母」といったキリスト教の人物を自称するなど、キリスト教を排除することが目的であるにもかかわらず、運動の基盤となっているシャーマニズムの儀式にキリスト教の要素が転用されていることである。宣教師は、「聖」の概念を表すため、シャーマニズムの能力を意味する「カライーバ」という語を用いたが、トゥピ語に翻訳されたキリスト教において、「カライーバ」はキリスト教的領域を指す「真の聖」もシャーマニズム的領域を指す「偽りの聖」も意味する語として使用された。その結果、トゥピ語のキリスト教からは完全にシャーマニズムが排除されずに、先住民がシャーマニズムに沿ってキリスト教を再解釈する可能性を与えてしまった。ゆえに、シャーマンは「教皇」や「神の母」から宣教師に打ち勝つことのできるシャーマニズムの力を見出し、これらを「聖性」運動に取り入れたと考えられるのである。
著者
畝田 道雄 村上 昇啓 高島 伸治 神宮 英夫 石川 憲一
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会誌 (ISSN:09120289)
巻号頁・発行日
vol.83, no.4, pp.361-366, 2017-04-05 (Released:2017-04-05)
参考文献数
6
被引用文献数
2

Japanese sword is one of the most important representative traditional crafts in Japan. The familiar characteristics of Japanese sword is the mechanical functionality and beauty of handcrafts industrial art. Newly produced Japanese swords by the modern sword smith work are rated by the prominent (expert) sword smiths and so on. However, novice sometimes cannot understand the difference of the evaluation results. This paper tries the scientific evaluation of the beauty of the Japanese sword from the viewpoints of both the sword smiths and novice. Here, a sensual information is one of the beauty items of the Japanese sword. The sensual information is felt by the sensibility combined by the several components. In this paper, the order of priority and relevance of these several components are clarified by using the DEMATEL method. Moreover, by using the Thurstone method, the viewpoint of the novice is determined.
著者
Satoshi Iwata Shinya Murata Shi Rong Han Akira Wakana Miyuki Sawata Yoshiyuki Tanaka
出版者
National Institute of Infectious Diseases, Japanese Journal of Infectious Diseases Editorial Committee
雑誌
Japanese Journal of Infectious Diseases (ISSN:13446304)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.368-373, 2017 (Released:2017-07-24)
参考文献数
23
被引用文献数
6 10

A 9-valent human papillomavirus (HPV 6/11/16/18/31/33/45/52/58) virus-like particle vaccine (9vHPV) has been proven highly efficacious in preventing anogenital diseases related to HPV, in a pivotal phase III study for women aged 16-26 years. Here, we report the results of an open-label phase III study conducted to bridge the gap between the findings in women aged 16-26 years and Japanese girls aged 9-15 years. All subjects (n = 100) received a 3-dose regimen of 9vHPV vaccine on day 1 and at months 2 and 6. Anti-HPV serological assays were performed on day 1 and at months 7, 12, 24, and 30. At month 7 (4 weeks after the third dose), 100% of the subjects exhibited seroconversion for each type of HPV. Increases in geometric mean of the titers for anti-HPV 6/11/16/18/31/33/45/52/58 in the subjects were similar to those in Japanese women aged 16-26 years in a previous phase III study. Persistence of the anti-HPV response was observed for 2 years after administration of the third dose. In addition, administration of the 9vHPV vaccine was generally well-tolerated in Japanese girls.
著者
近藤 憲久 福井 大 倉野 翔史 黒澤 春樹
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.63-70, 2012 (Released:2012-07-18)
参考文献数
36

北海道網走郡大空町にある旧大成小学校体育館で,コウモリの出産哺育コロニーが発見された.本コロニーを形成する個体の捕獲を行い,外部形態を精査したところ,乳頭が2対あることからヒメヒナコウモリと同定した.また,8月以降にコロニー周辺で拾得された2個体のコウモリについても,外部並びに頭骨計測値からヒメヒナコウモリと同定した.5回にわたる捕獲調査の結果,本種は6月下旬~7月上旬に出産し,8月上旬には幼獣が飛翔を始めていた.本コロニーを形成する雌成獣は約60頭であった.8月以降は,成獣はほとんどいなくなり,幼獣が大部分(96%)を占めていた.飛翔時の音声構造は,FM-QCF型であり,ピーク周波数の平均値は26.1 kHzであったが,FM成分とQCF成分の比率は飛翔環境によって大きく変化していた.ヒメヒナコウモリのねぐらおよび出産哺育個体群は国内初記録であり,今回の発見により,本種の国内における繁殖・定着が明らかになった.
著者
藤井 亮吏 古屋 康則 棗田 孝晴 田原 大輔
出版者
岐阜県水産研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

無秩序な移植・放流による遺伝的な撹乱の危険性を、イメージしやすく説明するため、カジカ大卵型を対象に、個体群ごとの産卵期の違いを明らかにすることを目的に、産卵実験および河川調査を行った。その結果、環境が異なる河川の個体群は、同じ水温であっても、それぞれ異なる時期に産卵を開始することが明らかとなった。また、産卵開始は最低水温や特定の水温に上昇した時などといった、水温変化の目立ったタイミングとは無関係であると考えられた。これより、カジカ大卵型の産卵開始は、その時の水温ではなく光周期などの他の要因によって、生息環境にあわせて繁殖に最適な時期になるよう決定づけられていると考えられた。