著者
福澤 尚美
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究 技術 計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.40-51, 2012
参考文献数
36

大型競争的研究資金である21世紀COEプログラムにより,どれだけ研究が促進されたのかを,学術データベースにより作成した個別研究者の論文数と1論文あたり被引用数を成果指標としてDifference-in-differences推定量により実証分析した。その結果,生命科学分野全体では論文数,被引用数共に正に有意な増加効果が得られ,情報・電気・電子分野全体では被引用数で正に有意な増加効果が得られた。社会科学分野全体では論文数,被引用数共に正に有意な増加効果は得られなかった。本分析からこのプログラムにより概ね研究が促進されたと評価出来る。また,推定結果をピアレビューと比較した結果,生命科学分野では大きな相違は見られなかったが,情報・電気・電子分野と社会科学分野では相違がみられた。従って,分野により研究の特性が異なるため,ピアレビューのみならず定量的な分析との併用が研究評価の手法として望ましいと考える。
著者
稲葉 浩
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.524-533, 2015 (Released:2015-10-19)
参考文献数
12

要約:次世代シークエンス解析は,その圧倒的な塩基配列解読能力によって遺伝学や分子生物学の研究を一変させた.この技術は医学の分野にも多様な応用が可能であり,単一遺伝子に起因する遺伝性疾患の解析はもとより,がんや多因子疾患など,その発症や病態に遺伝子が関与する各種疾患を解析する目的で臨床医学にも応用され始めた.次世代シークエンスの有する“網羅的解析を迅速かつ低コストで行うことができる”という特長は,診断のためのツールとしても極めて有用である.本稿では次世代シークエンス解析について,自験例を交えて概説する.
著者
尾原 祐三 石井 建樹 片岡 みなみ
出版者
熊本大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

岩石を構成している岩石マトリックス、鉱物粒子、鉱物粒子境界の破壊靭性を評価するための試験法を開発した、その方法を用い、花崗岩中の長石および石英内に作製した10×10×50マイクロメートルの微小供試体の微視的な破壊靱性および変形特性を評価した。この結果、微視的破壊靱性は、通常の花崗岩供試体から得られる巨視的破壊靱性に比較して小さいこと、ばらつきが大きいことなどが明らかとなった。さらに、得られた値を用いて有限要素被膜法により巨視的破壊靱性試験における破壊進展数値シミュレーションを実施した。この結果、実験による破壊形状と解析結果はよい一致を示し、解析方法の妥当性が明らかとなった。
著者
石田 賢示
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.94, pp.325-344, 2014-05-31 (Released:2015-06-03)
参考文献数
26
被引用文献数
2

本稿では,「制度的連結論」の理論的枠組みに関するこれまでの論点を整理したうえで,学校経由の就職が若年者の初職離職リスクに与えた影響の趨勢を分析した。日本における学校から職業への移行過程において,若年者と労働市場を媒介する役割を学校が果たし,制度的連結の仕組みが日本の若年労働市場の成功の重要な要因だと考えられてきた。一方,1990年代以降の労働市場の構造変動期に,制度的連結が機能不全をきたしたという議論がなされるようになった。 制度的連結について対立する2つの立場はいずれも一般化されたものであるといえる。しかし,学校経由の就職とジョブ・マッチングの関係のトレンドを直接に明らかにした研究はそれほど多くない。そのため,本稿では1995,2005年SSM 調査の合併データを用いたイベントヒストリー分析によって,制度的連結効果の趨勢を検討した。 分析の結果,高卒者については1990年代以降に初職を開始した場合,制度的連結論の仮説が支持された。また,学校経由の就職の利用にはメリトクラティックな基準が作用していることも明らかになった。労働市場全体が不安定である時期に制度的連結は高卒就職を保護するようになったが,学校経由の就職の規模の縮小も同時に進んでいる。制度的連結は,それを利用できない層を生み出しながらその機能を維持しているといえる。また,中卒,大卒就職では仮説が支持されず,制度的連結概念自体の検討も必要である。
著者
伊藤 秀樹
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.93, pp.69-90, 2013-11-30 (Released:2015-03-25)
参考文献数
24
被引用文献数
2 2

本研究の目的は,生徒指導上の課題が集中する後期中等教育段階の学校(以下,「課題集中校」)で,生徒指導上の指導が受容されるメカニズムについて考察することにある。 課題集中校の生徒指導に関する先行研究では,①生徒たちは地位達成・学業達成へのアスピレーションが低く,教師の指導を受け入れる必要性をもたない存在であること,②教師=生徒間の葛藤を解消して生徒を学校にとどめておくためには,生徒の社会化から撤退するしかないこと,を示してきた。 しかし,課題集中校の中には,教師の指導に反発・無視していた生徒の大多数が,その指導を受け入れるようになる学校も存在する。本研究では,そうした事例である高等専修学校(Y校)でのインタビューと参与観察の結果から,生徒指導上の指導が受容されるようになるメカニズムを,「志向性」という新たな概念枠組みのもとで探究した。 Y校の生徒たちの語りからは,地位達成・学業達成のアスピレーションに集約されない,「成長志向」「被承認志向」「年長役割志向」といった3つの「志向性」との関連のもとで,生徒指導の受容の契機が生まれていることが見出された。 これらの知見からは,逸脱行動ではなく「志向性」という資源へと働きかける,生徒指導の「志向性基盤アプローチ」の重要性が示唆された。
著者
上山 浩次郎
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.91, pp.95-116, 2012-11-30 (Released:2014-02-11)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

本稿では,「大学立地政策」の「終焉」が,大学進学機会の地域間格差にどのような影響を及ぼしたのか明らかにする。 先行研究においては,その「終焉」は大学進学機会の大都市部への集中と地域間格差の拡大をもたらしていないと示唆されている。だが,その「終焉」の独自の影響力を捉えきれていない等の限界がある。 本稿では,「インパクト評価」に依拠し,実測値と予測値の差からその「終焉」の影響を評価する。具体的には,「高等教育計画」での特定地域における新増設の制限に注目し,この制限の撤廃が,(1)「規制地域」(を含む地域ブロック)での大学進学機会の動向に影響を及ぼしたのか,さらに(2)この動向が全国レベルの地域間格差にどのような影響を及ぼしたのかを検討した。 分析の結果,①大学学部定員数では,「規制地域」で予測以上の定員増がみられ,さらに全国レベルの地域間格差も予測以上に拡大した結果,格差の趨勢が縮小から拡大へと反転した。②大学収容力でも,「規制地域」を含む地域ブロックで予測以上に値が上昇し,地域間格差も予測以上に拡大した。結果的に,現在の格差の大きさは,「大学立地政策」開始直後以上になっている。③大学進学率も,「規制地域」を含む地域ブロックでの値の上昇と全国レベルでの地域間格差の拡大とが予測以上に進行した。 これらから,「大学立地政策」の「終焉」は,大学進学機会の地域間格差の拡大をもたらしたと判断できる。
著者
神原 浩平 光山 和彦 中川 孝之 池田 哲臣
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. RCS, 無線通信システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.188, pp.157-162, 2008-08-20
被引用文献数
8

800MHz帯FPU (Field Pick-up Unit)システムは,マラソン中継などの移動映像伝送に用いられている.現在,筆者らはより高画質で途切れにくい次世代システムを目指してMIMO伝送技術および誤り訂正技術の研究を行っている.LDPC符号はその高い誤り訂正能力から近年注目されており,中でもLDGM構造のLDPC符号を連接した直列連接LDGM (SCLDGM:Serially-Concatenated Low-Density Generator Manix)符号は,LDPC符号の短所である符号化演算量およびエラーフロアの両方を低減可能なため,大容量伝送で非常に低いビット誤り率が要求される次世代FPUシステムに適用可能である.本稿では,LDGM符号のLDGM部の列重み1の比率を可変する新しいLDGM構造を提案し,このLDGM構造を用いてSCLDGMに適した符号設計を行うことにより,既存のLDGM構造を用いたSCLDGMよりも優れた特性が得られることを示す.
著者
関沢 まゆみ
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.191, pp.91-136, 2015-02

1960年代以降,高度経済成長期(1955-1973)をへて,列島各地では土葬から火葬へと葬法が変化した。その後も1990年代までは旧来の葬儀を伝承し,比較的長く土葬が行われてきていた地域もあったが,それらも2000年以降,急速に火葬へと変化した。本論ではそれらの地域における火葬の普及とそれに伴う葬送墓制の変化について現地確認と分析とを試みるものである。論点は以下の通りである。第1,火葬化が民俗学にもたらしたのは「遺骨葬」と「遺骸葬」という2つの概念設定である。火葬化が全国規模で進んだ近年の葬送の儀式次第の中での火葬の位置には,A「通夜→葬儀・告別式→火葬」タイプと,B「通夜→火葬→葬儀・告別式」タイプの2つがみられる。Aは「遺骸葬」,Bは「遺骨葬」と呼ぶべき方式である。比較的長く土葬が行われてきていた地域,たとえば近畿地方の滋賀県や関東地方の栃木県などでは,葬儀で引導を渡して殻にしてから火葬をするというAタイプが多く,東北地方の秋田県や九州地方の熊本県などでは先に火葬をしてから葬儀を行うというBタイプが多い。第2,Bタイプの「遺骨葬」の受容は昭和30年代の東北地方や昭和50年代の九州地方等の事例があるが,注目されるのはいずれも土葬の頃と同じように墓地への野辺送りや霊魂送りの習俗が継承されていたという点である。しかし,2000年代以降のもう一つの大変化,「自宅葬」から「ホール葬」へという葬儀の場所の変化とともにそれらは消滅していった。第3,両墓制は民俗学が長年研究対象としてきた習俗であるが,土葬から火葬へと変化する中で消滅していきつつある。そして死穢忌避観念の希薄化が進み,集落近くや寺や従来の埋葬墓地などへ新たな石塔墓地を造成する動きが活発になっている。これまで無石塔墓制であった集落にも初めて石塔墓地造成がなされている。火葬が石塔その他の納骨施設を必須としたのである。第4,近代以降,旧来の極端な死穢忌避観念が希薄化し喪失へと向かっている動向が注目されているが,それを一気に加速させているのがこの土葬から火葬への変化といえる。旧来の土葬や野辺送りがなくなり,死穢忌避観念が希薄化もしくは喪失してきているのが2010年代の葬送の特徴である。After the 1960s, triggered by the high economic growth from 1955 to 1973, funeral practices changed from inhumation to cremation all over Japan. Still, inhumation remained common for a relatively long time until the 1990s in some regions where traditional practices were transmitted, though since 2000, it has rapidly replaced by cremation. Focusing on these regions, this paper presents the results of the field survey and analysis of the spread of cremation and its attendant changes in funeral and burial practices, as shown below. First, from the viewpoint of folklore studies, cremation has introduced two distinctive concepts into funeral services: one with the corpse in a coffin and one with the ashes in an urn. In the former, cremation follows the vigil and funeral/ farewell services (pattern A), while in the latter, it is conducted between the vigil and funeral/farewell services (pattern B). These two patterns of funeral procedures have diverged recently as cremation was spreading all over Japan. In the regions where inhumation remained common for a relatively long time, such as Shiga Prefecture in the Kinki Region and Tochigi Prefecture in the Kanto Region, the pattern A is more common; cremation is conducted after the last words were addressed to the deceased at the funeral service. On the other hand, the pattern B, cremation followed by the funeral service, is more common in Akita Prefecture in the Tohoku Region and Kumamoto Prefecture in the Kyushu Region. Second, it is worth noting that even though the pattern B, a funeral service with the ashes in an urn, was accepted in the Tohoku Region in the late 1950s to the early 1960s and in the Kyusyu Region in the late 1970s to the early 1980s, people did not abandon traditional practices related to inhumation such as a funeral procession to the cemetery. These practices have disappeared since the 2000s in parallel with another drastic change: a shift in the funeral venue from homes to funeral halls. Third, the double-grave system, which has been studied by folklorists for years, is also diminishing with the replacement of inhumation by cremation. Moreover, while death is less and less disliked or regarded as impurity, more and more tombstone cemeteries are built near communities and in temples and conventional burial cemeteries. Tombstone cemeteries have been also introduced to communities where that custom did not exist. The background for this is that cremation has created demands for repositories for the bones of the dead such as tombstones. Fourth, as referred to by many researchers in the modern times, death is less and less disliked or regarded as impurity, and this trend has been further accelerated by the shift from inhumation to cremation. The funeral practices in the 2010s are characterized by this trend of the weakening and diminishing of people's dislike and disgust of death, driven by the abandonment of the funeral practices that make people consider death as impurity such as inhumation and funeral processions.
著者
足立 祐美 永露 風花 河辺 悠里
出版者
日本女子大学国語国文学会
雑誌
研究ノート
巻号頁・発行日
vol.37, pp.28-31, 2009-02-28
著者
山田 奈津子 箱田 裕司 中村 知靖 湯田 恵美子
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.563, pp.29-33, 2000-01-20
被引用文献数
1

本研究では, 視覚的刺激(顔)と聴覚的刺激(声)という複数の手掛かりを情報として用いた場合の印象形成と, 単独の情報(顔または声)による印象形成との間に違いがあるのかを, 因子分析によって抽出された共通のパーソナリティ因子である「活動性」「社会的望ましさ」の2次元において観察し, 知覚の分野で有力な視覚的刺激優位仮説(マガーク効果)と印象形成との関連性を調査した.また, 顔と声という異なるモダリティーの評定尺度をそろえることで, マルチモダリティー間の印象形成の相違を直接比較した.その結果, 顔と声による印象形成においての視覚的刺激優位性は頑強なものではなく, とりわけ, 顔と声のパーソナリティ的属性(高-低)が不一致である場合において, 聴覚的刺激(声)が人物の印象に強い影響を与えていたことが示唆された.
著者
五峰仙史 著
出版者
大学館
巻号頁・発行日
vol.続, 1907
著者
佐藤 泰正
出版者
梅光学院大学
雑誌
日本文学研究 (ISSN:02862948)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.103-114, 1979-11-01