著者
高橋 史人 山口 和子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.259-268, 1985-12-20
被引用文献数
10

本報においては, 1, 2節において年齢階層と嗜好の関係を論じ, その中で加齢と共に嗜好が変わる中で, 嗜好の分岐年齢が存在することを示した。即ち, (1) 10代は「洋風」「こってり」「甘味」好き, そして, 「和風」「スパイス」「アルコール」嫌いである。20代は「和風」嫌いを除けば, 他は全て好きである。この年代の嗜好の幅が一番広いといえる。30代は「こってり」「酸味」「スパイス」「アルコール」好きであるが, 10代, 20代で好まれた「甘味」が嫌いとなり, 次の40代が「和風」好みになる間隙に位置している。40代は「和風」好き, 「洋風」嫌いといった嗜好の変化が顕著に現われ, 次の50代, 60代に近い嗜好になる。50代, 60代は「和風」好みの点を除くと他の嗜好因子が全て嫌いとなる。(2) 食品に対して「好む」「好まない」の関係から嗜好の分岐年齢を検討した。嗜好の分岐年齢は「好まない」から「好む」に変化する際と, 「好む」から「好まない」に変化する際の2つ存在する。前者は20代から30代の間に多く存在し, 後者は30代から40代の間に多く存在する。そして, これらの分岐年齢に最も大きく関係するものとして, 前者においては, 和風因子を構成する食品, 及び, 和風イメージの強い食品, 後者においては, 洋風因子を構成する食品, 及び, 洋風イメージの強い食品をあげることができる。次に, 3, 4節においては地域と嗜好の関係を論じ, 嗜好因子からみた地域の特徴を捉え, 又, 嗜好因子を構成する42食品の地域間の「好む」「好まない」の関係から地域間の嗜好の類似を捉えた。即ち, (3) 北海道は「アルコール」好き, 東北は「アルコール」「酸味」好き, 関東は「洋風」「スパイス」好き, 北陸は「洋風」「スパイス」嫌い, 東海は「洋風」「スパイス」「こってり」のいずれも嫌いな地域, 近畿は「甘味」「スパイス」好きであり, 中国・四国は「洋風」「甘味」「スパイス」「アルコール」と嫌いなものの多い地域である。興味のある点としては, 地域では「好き」で特徴を示す北海道, 東北, 関東, 近畿と, 「嫌い」で特徴を示す北陸, 東海, 中国・四国とに2分されたことである。このことは, 筆者らが前報において, 地域別の好みの偏り度から, 関東は積極的な好み傾向をもつ地域, 北陸, 中国・四国は好きな食品が少なく, 嫌いな食品の多い比較的保守的な好み傾向をもつ地域, と述べたことに当然一致し, その内容を嗜好因子から捉えたことになる。(4) 地域間の嗜好の類似性を見るために, 2地域間共, 全国平均に比較して「好む」又は, 「好まない」とされた食品の数を算出し, その数の多い地域を嗜好の似ている地域, 数の少ない地域を嗜好の似ていない地域とした。嗜好の似ている地域として, 北海道-東北, 北陸-東海があげられた。嗜好の似ていない地域としては東北-東海, 関東-東海, 関東-中国・四国があげられた。
著者
秋山 広美 小松 孝徳 清河 幸子
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:21862583)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.23, pp.1-7, 2011-03-10

ユーザの発するオノマトペには 「何かを表現したいがうまく言語化して表現できないモヤモヤとした印象」 が込められていると言われている.すなわち,オノマトペを入力として扱えるシステムを開発することは,そのようなモヤモヤとした意図を直接的に扱えるため,ユーザの認知的な負担の軽減につながると考えられる.そこで,本研究ではこのようなシステムの構築に向けて,オノマトペの印象を客観的手法に基づき数値化する方法を提案することとした.具体的には,ユーザに対する質問し調査の結果をもとに,オノマトペを構成する音の印象を表現する属性の抽出と属性値の設定,およびその属性値を組み合わせることでオノマトペの印象を表現する方法を提案した.Onomatopoeias are usually used in the case that one cannot describe certain phenomena or events literally, and it is said that user' intuitive intentions are embedded in the onomatopoeias. Therefore, an interface system which can utilize the onomatopoeias as input information could comprehend such users' intuitive intentions and would contribute in reducing users' cognitive loads during their interaction with the interface systems. The purpose of this study is then to objectively generalize the onomatopoeic expressions by assigning certain numerical values in each attributes to these expressions to support users' intuitive expressions especially for applying for the interface system.
著者
森 善宣 金 東吉 朴 鍾哲
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

北京大学朝鮮半島研究センターとの共同研究の結果、中ロ東欧諸国に所蔵された朝鮮民主主義人民共和国との外交電文や情勢報告書など1948年から冷戦終焉までの北朝鮮関連資料を膨大に入手した。この資料を8つの資料群に整理、編集し、北京大学翻訳家協会で邦訳して『北朝鮮関連重要資料集』全3巻に編纂して出版する。この資料集に掲載する資料群をテーマ別に示すと、次のとおり。第1巻(53~58年):朝鮮労働党内の粛清過程+朝鮮戦争後の経済復興、第2巻(56~59年):第1次5ヵ年経済計画+8月宗派事件・中国人民志願軍撤収・在日朝鮮人帰還事業、第3巻(59~61年):核開発開始の経緯+4.19政変と北朝鮮の対応。

2 0 0 0 小学二年生

出版者
小学館
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, 1991-11
著者
家入 正治 高橋 仁 皆川 道文 澤田 真也 成木 恵 佐藤 皓 三輪 浩司 黒澤 真城
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

原子核・素粒子反応実験において、毎秒10^7までの画像事象を選別し処理可能な『超高速イメージ撮像管』の開発を行った。蛍光体の残光に頼らず、撮像管内部の電子の移動を制御する事により、画像保持すなわち"イメージ遅延機能"を有する。試験機は完成し、基本性能試験を行った。
著者
小笠原 理
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

昨今の測定技術の向上に伴い、生物学の分野などではデータドリブンな研究手法が注目されている。一方でコンピュータの高速化などに伴い、統計解析・データ解析手法は高度化し有用な解析手法が多数開発されている。これら2つの技術革新の融合はこれからの生物学研究に大きな影響を与えることが期待されるが、一方、大量データの測定・解析を行う実験研究者のような統計学の非専門家が先端的な解析手法にアクセスし正しく駆使することは容易ではない。この状況を改善する目的で、私は遺伝解析手法のデータベース(R Graphical Manual)を2006年より公開してきた。関数の実行結果の画像を使って関数の機能を一望できるという特徴を持っており、2008年の時点で月10~50万page view,月8千~1万unique IPほどのアクセス数を持っており、世界中の研究者から利用され一定の評価を得ていた。しかしデータ更新に大きな計算量が必要であるにもかかわらず、サーバ環境やソフトウェアが十分整備されていなかった。本研究において、このデータベースのサーバ環境、ソフトウェア環境を整えたことにより、2011年5月の時点で月20 万page view,月5万unique IPとなり、unique IPが顕著に増加した。月間unique IPはDDBJが1万7千、京都大学のKEGGが20万であるから、アクセス数については当初予想よりも大幅に増加し国内の著名なデータベースと比肩するサイトに成長した。各種の統計学辞典や教科書およびR Graphical Manualの関数マニュアルなどをもとに分類軸を作成した。この分類軸にR Graphical Manual中の関数をマッピングする必要があるが、そのためにR Graphical Manualの全文書に対してNamed Entity Recognition(NER)を行い、統計学の専門用語を抽出し、それをもとにマッピングを行った。この目的でNERの精度を上げるために新しい方法を開発した。
著者
花田 岳美
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.41, no.12, pp.895-901, 1991
被引用文献数
3 6

少部数で配布先が限定されていたりして所在確認と入手の困難な灰色文献には重要な資料も多く,新日米科学技術協力協定中に見られるように国外からの要望も大きい。日本国内で生産され,灰色文献と見なすことのできる文献の種類を概観し,灰色文献を扱っている情報サービスの動きを述べ,灰色性を薄める方策を論じた。
著者
藤居 岳人
出版者
阿南工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、懐徳堂学派の教育思想を分析した。特に、懐徳堂学派の理念としての経学思想が現実世界に関わる経世思想―その一環としての教育思想―に反映される様相を分析し、道徳と政治との双方の重視が懐徳堂儒者の基本的立場だと明らかにした。そして、道徳と政治とのつながりが「修己」から「治人」へと向かう直線的な流れではなく、両者を同列に置いたうえで止揚することによって得られる高度な「自己」を基底とする統合を懐徳堂学派の儒者が考えていたことを解明した。その高度な「自己」の概念を提出したことが日本近世儒教思想上における懐徳堂学派の思想史的意義である。
著者
髙橋 陽子
出版者
日本幼稚園協会
雑誌
幼児の教育
巻号頁・発行日
vol.106, no.3, pp.26-31, 2007-03
著者
木村 崇
出版者
日本スラヴ・東欧学会
雑誌
Japanese Slavic and East European studies (ISSN:03891186)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.79-113, 2008-03-30

死生観をめぐる問題は、宗教や人文・社会科学だけでなく、文学も独自の立場で取り扱っている。文学における死生観論は個別の作家や作品を扱う研究において展開されることが多い。そのため日露の文学における死生観の比較を行おうとすれば、体系化された見取り図に、膨大な数にのぼる両国の作家や作品を配置し、縦横あるいは斜めに相互比較をして、そこから総括的結論を導き出す作業が必要となる。本論は紙幅が限られているので、そのような方法を採ることができない。そこで筆者は、死生観が典型的な形で現れる状況をいくつか設定し、同様の状況を描いている日露の作品をランダムに選んで並列させて考察することにした。論文冒頭では、この比較方法をめぐって、その肯定的意義が述べられるが、またその限界についても言及される。「1章 肉親や近親者が死んだとき…」では、有吉佐和子『恍惚の人』、A.ソルジェニーツィン『マトリョーナの家』、ドストエフスキー『罪と罰』などを用いて、葬儀や追善供養などの慣習に見られる生者の戸惑い、疑念について分析し、これらの儀式が死者と対峙する人々にとって、なぜ欠かせない行為なのかを考察する。「2章 死後の世界と死ぬまでの世界」ではまず、「あの世」があるのかないのかをめぐって対立する二つの考え方が、日露の文学作品にどのような形で描かれているかを検討する。もちろん取り上げるべき作品は多数に上るが、本論では、トルストイ『戦争と平和』におけるアンドレイとピエールの対話を別に、ロシアにおける無神論的立場と有神論的立場の代表的な例を考察する。そのうえで正岡子規が『病牀六尺』で到達した観点をアンドレイのそれに対置してみる。また、避けることのできない死をどのようにして受け入れるかという問題を、日露の「水生生物」を主人公にした小作品、すなわち井伏鱒二『山椒魚』とサルティコフ・シェドリンの『スナモグリ』を素材に論じている。さらに、トルストイ『イワン・イリイチの死』をとりあげ、思索者トルストイとは異なる小説家トルストイの「死」へのアプローチについて分析する。「3章『死』に至る様々な道」では、無神論的な確信もなければ有神論的な達観もできない生者の迷いを通して、おそらくは大多数の人々がとるにちがいないこの典型的な態度に現れる死生観の「ゆらぎ」の問題を考察している。中心的に扱った作品は夏目漱石『門』である。また後半では「捕虜となる恥辱」よりも「死」が優先された第2次世界大戦時の日本とソ連の兵士の運命を通じて、「生」が限りなく軽んじられる状況における「生への執着」、「死者への思い」の問題を比較している。扱った作品は大岡昇平の『野火』とブイコフの『死者に痛みはない』である。「結語にかえて」では、このきわめて限られた比較作業から何が見えてきたか、また今後同様な比較研究を行うことによってどのような新知見が得られそうかについて、国際会議での口頭報告などに対する聴衆の反応などを紹介しつつ、言及している。
著者
酒井 智宏
出版者
東京大学大学院人文社会系研究科・文学部言語学研究室
雑誌
東京大学言語学論集 (ISSN:13458663)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.269-286, 2011-09-30

論文 Articles藤田(1988)および坂原(1992, 2002)に始まる等質化(あるいは同質化)によるトートロジー分析はトートロジー研究の標準理論とさえ言えるまでになっている。この論文では、こうした研究で用いられている等質化概念が混乱に陥っていることを指摘し、その混乱が意味の共有という幻想に根ざしていることを論じる。等質化に基づく理論では、「PであるXはXでない」と「PであってもXはXだ」が対立する場面において、「PであるX」(p)がXであると仮定しても、Xでないと仮定しても、矛盾が生じる。この見かけ上のパラドックスは、Xの意味を固定した上で「pはXなのか否か」と問うことから生じる。実際には、この対立は「Xの意味をpを含むようなものとするべきか否か」という言語的な対立であり、pの所属をめぐる事実的な対立ではない。そのように解釈すればどこにも不整合はなくなる。逆に、そのように解釈しない限り、不整合が生じる。「猫」のような基本語でさえ、話者の問でその意味が常に共有されていると考えるのは、幻想である。そしてこれこそが「言語記号の恣意性」が真に意味していることにほかならない。The homogenization-based approach to the tautology of the form X is X (even if P) contradicts itself regarding whether "X with P", evoked prior to its utterance, falls within the category of X or not. This paradox can be dissolved if we do not consider the meaning of the word X to be shared between speakers when X is X is uttered. This type of sentence does not express a factual proposition but a grammatical proposition about the very definition of X. Such freedom of definition is, we argue, what the arbitrariness of the sign is all about.
著者
萩原 正人 小川 泰弘 外山 勝彦
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.440-450, 2011 (Released:2011-04-01)
参考文献数
32
被引用文献数
1 1

Extraction of named entitiy classes and their relationships from large corpora often involves morphological analysis of target sentences and tends to suffer from out-of-vocabulary words. In this paper we propose a semantic category extraction algorithm called Monaka and its graph-based extention g-Monaka, both of which use character n-gram based patterns as context to directly extract semantically related instances from unsegmented Japanese text. These algorithms also use ``bidirectional adjacent constraints,'' which states that reliable instances should be placed in between reliable left and right context patterns, in order to improve proper segmentation. Monaka algorithms uses iterative induction of instaces and pattens similarly to the bootstrapping algorithm Espresso. The g-Monaka algorithm further formalizes the adjacency relation of character n-grams as a directed graph and applies von Neumann kernel and Laplacian kernel so that the negative effect of semantic draft, i.e., a phenomenon of semantically unrelated general instances being extracted, is reduced. The experiments show that g-Monaka substantially increases the performance of semantic category acquisition compared to conventional methods, including distributional similarity, bootstrapping-based Espresso, and its graph-based extension g-Espresso, in terms of F-value of the NE category task from unsegmented Japanese newspaper articles.