著者
竹内 史郎
出版者
日本語学会
雑誌
國語學 (ISSN:04913337)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.97-83, 2004-01-01

従来ミ語法は、その形態的特徴のために、形容詞の語法体系において一端を担うものであると積極的に主張されることが躊躇されてきた側面がある。形容詞性と動詞性が併存するとされ、主にマ行四段動詞との関連から併存の理由を説明する試みもなされてきた。しかしながら、ミ語法は、構文的意味の観点からすると形容詞構文に等しく、マ行四段動詞構文とは異なることが明らかになった。したがって、構文的意味に整合する形で形態的側面の説明が求められるが、語尾生成の際の子音選択のあり方・形容詞活用、格助詞ヲ等の上代語の文法の特性を考慮すれば、ミやヲはその動詞性を保証するものではないと認められる。形容詞性と動詞性の併存をみる解釈は、ミやヲの考察において近代語の文法に依拠したために解釈に至る過程で飛躍を含んでしまったものと考えられる。
著者
青木 久美
出版者
沖縄工業高等専門学校
雑誌
独立行政法人国立高等専門学校機構沖縄工業高等専門学校紀要 (ISSN:1881722X)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.47-59, 2008-03

『中論』においてナーガールジュナは、言語が現実をそのまま言い表すことができるという人々の考え方を批判し、言語がそこで止滅するところの空を示そうとする。ただし、彼は空という見解を主張しようとしたわけではない。テトラレンマに基づいたナーガールジュナの帰謬法的論法は、自らの主張さえをも否定する。ナーガールジュナはむしろ、二項対立的言語が陥らざるを得ないアポリアを暴露し、それによって空を示そうとするのである。言語が陥らざるを得ないアポリアとは、言語世界の裂け目であり、非言語世界への開けである。このような開けとして経験される空は、伝統的解釈でいわれるような、自性の否定ではない。空が自性の否定と解されてきたのは、自性は縁起と相容れないものであるがゆえであるが、自性がなければそもそも事物の存在すら成り立たない。自性が非言語に開けているとき、事物は自立していると同時に他に依存している。つまり、自己同一的存在として縁起によって生じうるのである。
著者
重茂 克彦 山本 欣郎
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

ゲノムバイオロジーによる解析では、食中毒原性黄色ブドウ球菌の遺伝学的特性を検索するためにmulti locus sequence typing(MLST)によって由来の異なる黄色ブドウ球菌の系統解析とその系統のSEs/可動性遺伝因子/プラスミドプロファイルを行った。食中毒由来株と鼻腔由来株を用いて両集団の系統解析の比較を行ったところ、両集団を構成する系統の比率は有意に異なっていた。食中毒由来株で最も存在頻度が多かった系統では共通のSEH関連可動性遺伝因子を保有しており、さらに株によってSEA/SEB関連可動性遺伝因子と約25Kbpのプラスミドを保有していた。また、鼻腔由来株にも食中毒由来株と類似した遺伝学的特徴を示す株を含んでいたが、その出現頻度は2%と非常に低いものであった。また、ブドウ球菌エンテロトキシンA(SEA)の体内動態を検討するために、嘔吐モデル動物であるスンクスにSEAを複腔内投与、あるいは経口投与し、抗SEA抗体を用いて免疫組織学的にSEAの分布を検索した。複腔内、経口投与ともに、SEAは消化管粘膜下組織肥満細胞に結合していた。また、脱穎粒阻害剤の複腔内投与によって、経口投与および腹腔内投与されたSEAによる嘔吐が抑制されることが明らかになった。すなわち、SEAによる嘔吐発現において粘膜下組織肥満細胞による脱穎粒が重要な役割を果たしている可能性が高い。以上のように、ブドウ球食中毒由来菌の遺伝学的特性の一端を解明するとともに、SEAの感染機構に肥満細胞が関与することが明らかになった。
著者
渡邊 隆弘
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.108-113, 2006-03-01

目録の集中機能を担う典拠コントロールは,レファレンスの品質を確実にするためにも欠かせないものである。本稿では,典拠コントロールの2つのトピック,FRARとLCSHを概説する。FRAE(『典拠レコードの機能要件』)は,IFLAがFRBRに続いて作成している,名前典拠を主対象としたE-R分析による概念モデルである。公開草案に述べられた典拠ファイルの機能と利用者タスク,さらに「実体」「属性」「関連」の分析について述べる。世界的に広く用いられている件名標目表であるLCSH(米国議会図書館件名標目表)については,その基本的特徴や標目・細目・参照構造の概略,さらに近年の動向について述べる。
著者
浅倉 秀三
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.159-170, 2004-12-24

LC(米国議会図書館)はMARC21をXMLデータベースヘ変換し,それをMARCXMLとよんでいる。そして,MARCXMLをDublin Coreなど種々なデータ形式との相互変換のバスとして位置づけている。MARCXMLのXML構造は,LCが提示する書誌データのための標準化したXML構造である。本稿では,日本語書誌データ処理技術として,日本語MARCをMARCXMLのXML構造でXMLデータベースヘ変換する実験を行った。そして,日本語MARCにこの構造を採用することの妥当性を実証した。その結果,その構造を採用することによって,同一の操作環境でMARC21, JAPAN/MARCとTRC MARCのデータを閲覧できることが明らかとなった。さらに, JAPAN/MARCとTRC MARCのように,タグとサブフィールドコードが統一されている場合は,それらのデータを混在して利用できることが明らかとなった。
著者
鯰越 溢弘
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、平成21年5月21日以降に我が国において実施されることとなった裁判員裁判における立証活動の理論的・実証的な研究を目的とするものであるが、その研究の成果は、研究論文の発表、講演会の講師としての講演、実際の裁判員裁判の弁護活動の中で示された。
著者
藤澤 三佳
出版者
京都造形芸術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

障害者の芸術活動に関して精神障害を中心として社会学的考察をおこない、人間の自己表現の必要性とその意味を明らかにし、社会からの孤立を強いられがちな人々が、芸術活動を通して、他者からの共感を得て、社会のなかに生きている意識や生の充実感を再獲得する変化のプロセスを明確にした。また、医療・福祉と芸術の分野の交差領域にある芸術社会学の理論枠組みを示し、各領域がどのように融合され、そこで社会学的研究が可能かを明確にした。
著者
斎藤 隆雄 五町 善雄 中原 信生 蜂須賀 舜治 佐藤 浩 井内 松三郎
出版者
社団法人空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
no.13, pp.67-76, 1980-06-25

無風時における自然通風冷却塔の塔内気流について模型実験を行った.模型の高さは800mm,底部と頂部での直径は,それぞれ672mmと424mmである.熱交換部は電気ヒータによって模擬し,気流への通風抵抗はグラスウールフィルタによって与えた.煙による塔内気流の観察と,頂部吐出し口における速度と温度の分布の測定を行い,発熱量・通風抵抗・空気取入れ口の大きさなどが,塔内気流に及ぼす影響について調べた.
著者
和田 和行
出版者
日本大学
雑誌
日本大学芸術学部紀要 (ISSN:03855910)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.87-96, 2008

写実主義の絵画やノンフィクション文学等の芸術作品は、記号とみなすことができる、という考えに問題はないだろう。これらは何らかの実在するものを表しており、したがってそれらの記号となっている。しかし、通常、実在するものを表してはいないと考えられている、抽象絵画や音楽等のいわゆる抽象芸術、あるいは文学でもいわゆるフィクション等は、何らかの意味を有するのであろうか。これらを含めて、すべての芸術作品を記号とみなすことが可能であろうか。モリスは、芸術作品はすべて記号とみなすことが可能であると主張している。さらに、彼はすべての科学を体系化し、それらを統一しようとする"統一科学"の一部として、美学を記号論としてとらえるという構想も述べている。筆者もこのようなモリスの主張と構想を支持するが、しかし、彼の理論は時代的制約もあり、必ずしも完全なものとはいえないと思われる。特に、彼の理論では、意味についての分析が不十分と考えられる。現代の英米系の記号論では、フレーゲやカルナップのように、意味を内包と外延の2つに分けて考える立場がある。そして、これらはライプニッツによって始められ、カルナップやクリプキによって発展させられた可能世界意味論において、可能世界という概念を用いて分析される。この論文では、このような現代の英米系の記号論の枠組にしたがって、モリスの考えの不十分な点を補い、彼の説の正当化を行おうと思う。
著者
津野 倫明
出版者
戦国史研究会
雑誌
戦国史研究 (ISSN:02877449)
巻号頁・発行日
no.41, pp.1-11, 2001-02
著者
藤井 義久
出版者
岩手県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

欲求不満傾向の強い児童生徒ほどキレやすい傾向が見られる。そのようなキレやすい児童生徒を生み出しやすい母子関係は国によって異なっており、日本においては特に母親の愛情不足が、北欧諸国においては特に母親によって自分の自由が束縛されることがキレやすい児童生徒を生み出す大きな原因になっていることがわかった。そして、キレやすい子供に特徴的な甲高い声に反応してキレやすい母親が多く、そのような母親は特に外部に対して様々な子育て支援を求めていることが明らかになった。
著者
小松 大介
出版者
筑波大学比較民俗研究会
雑誌
比較民俗研究 (ISSN:09157468)
巻号頁・発行日
no.19, pp.184-186, 2003-11

2001年9月11日、ニューヨークの世界貿易センタービルに2機の旅客機が突入した。この事件は、同時多発テロとして、テレビを通じて昼夜を問わず、全世界に報道された。オサマ・ビン・ラディンを首謀とするアルカイダのメンバーが、旅客機をハイジャックする事で、自分もろとも突入をかけるという我々を驚愕させる方法で行われた。・・・