著者
宝月 理恵
出版者
日本保健医療社会学会
雑誌
保健医療社会学論集 (ISSN:13430203)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.85-95, 2012

本稿の目的は、戦後日本における歯科衛生士の専門職化運動を、医療専門職システムにおける専門職プロジェクトとして把握し、その変容過程と特徴を明らかにすることにある。歯科衛生士団体の機関誌、歯科学雑誌、国会会議録、および歯科衛生士を対象としたインタビュー調査記録の分析から、歯科衛生士と業務の協働・分業を行う歯科医師、歯科技工士、(准)看護婦、歯科助手の支配管轄権をめぐる境界線の変容過程を詳細に検討した。その結果、専門職間の縦のヒエラルキーのみならず、縦横の競合関係が歯科衛生士の専門職化プロジェクトの方向性を決定するとともに、国家政策やジェンダー関係といった外的要因が日本における歯科衛生士の専門職化の道程を規定してきたことが明らかになった。
著者
田中 秀和
出版者
岡山大学文学部
雑誌
岡山大学文学部紀要 (ISSN:02854864)
巻号頁・発行日
no.66, pp.67-79, 2016-12
著者
塚田 美紀
出版者
東京大学
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.407-415, 1996-12-20

This paper examines the concept of art education of Ryusei Kishida(1891-1929) focusing on the meaning of "Shasei"("realism of sketching") and "Shajitsu" ("realism") , for the purpose of revealing the problems of expression in art education at Taisho era. "Shasei" is a problematic term both in art history and art education history in japan. Originally this term included not only the meaning of sketching merely "an object" , but also of pursuing "acutuality" and "liveliness" , even "spirituality" of the object. The richness of this term "Shasei" would be seen in the writings of Kishida, a painter who explored "Shajitsu"("realism") through his life. Kishida revealed that "Shajitsu" could take place only through a struggle between "inner life" and "object" . He also suggested that, through this struggle, the materials and techniques composing the "surface" of picture could become tools of enriching the expressing self. Through considering how his thoughts was accepted among art teachers in Taisho era, we could illuminate the problems of expression in historical context, that is, the separation between "inner life" and "technique" in expression.
著者
田村 竜二 岡本 貴大 門脇 嘉彦 高橋 卓也 坂田 龍彦 高倉 範尚
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 = The journal of the Japan Surgical Association (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.7, pp.1776-1781, 2008-07-25
参考文献数
17
被引用文献数
4 4

症例は25歳,女性.右側腹部痛と発熱を主訴に近医受診,腹部超音波検査にて肝腫瘤を指摘され当院へ紹介入院となった.HBs抗原およびHCV抗体は陰性,軽度肝機能異常,軽度炎症所見を認めるのみで,腫瘍マーカーは正常範囲であった.CTでは,肝右葉を占める巨大腫瘍で,充実性部分と嚢胞性部分が混在しており,充実性部分は早期相で濃染,晩期相でwash outされる肝細胞癌様所見を呈し,嚢胞性部分辺縁は淡く造影され中心部は全く造影されず,血管造影では腫瘍血管の増生と口径の不整が見られた.悪性肝腫瘍と診断し肝右葉切除術を施行した.腫瘍割面は充実性部分と嚢胞性部分が混在し,病理組織検査にて,細胆管細胞に類似した腫瘍細胞が小管腔を形成し,cytokeratin 7が陽性で抗肝細胞抗体が陰性であり,細胆管細胞癌と診断された.術後17日目に退院し,補助療法は行なわず,術後4年の現在,無再発生存中である.
著者
山室 信一
出版者
京都大學人文科學研究所
雑誌
人文学報 (ISSN:04490274)
巻号頁・発行日
no.101, pp.63-80, 2011

1895年から1945年の敗戦に至るまでの日本は, 日本列島弧だけによって成立していたわけではない。それは本国といくっかの植民地をそれぞれに異なった法域として結合するという国制を採ることによって形成されていったが, そこでは権利と義務が差異化されることで統合が図られていった。こうした日本帝国の特質を明確化するために, 国民帝国という概念を提起する。国民帝国という概念には, 第1に国民国家と植民地帝国という二つの次元があり, それが一体化されたものであること, しかしながら, 第2にまさにそうした異なった二つの次元から成り立っているという理由において, 国民帝国は複雑に絡み合った法的状態にならざるをえず, そのために国民国家としても植民地帝国としてもそれぞれが矛盾し, 拮抗する事態から逃れられなかった事実の諸相を摘出した。その考察を通じて, 総体としての国民帝国・日本の歴史的特質の一面を明らかにする。The Meiji state's experience of forming a nation state affected its possession of colonies and also the changes that accompanied the Meiji state's becoming a colonial empire. In this paper, I will employ the concept of nation—empire for the purpose of clarifying the character of Japanese total empire. To do so, I wish first to emphasize that the concept of nation—empire has two dimensions, for it is meant to incorporate both the nation state and the colonial empire. But my second point is that for precisely that reason, it contains tendencies that contradict the nation—empire itself.
著者
韓 韡
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.129-147, 2013-09

本論は、従来の研究で注目されてこなかった清末「日本型教育体制」の成立における女子教育と日本モデルという問題を、女子手芸科目という視点から考察した。その結果、清松の女子師範学堂および民国の女子中学校と女子師範学校のカリキュラムに組み込まれた手芸科目「編物・組糸・嚢物・刺繍・造花」が、明治三十四年文部省発布の「高等女学校令施行規則」における随意科目の手芸内容の模倣であることを明らかにした。そして、富国強兵の方策を模索していた清末の教育視察者が、実業技能として教授された明治期の手芸が女性の職業と結びつき、国家の産業発展に貢献しているのを見て、またそれが伝統的な婦徳にも合致するため、中国でもこれを実現しようと意図的に中国の女子教育に組み込んだ結果であることを論証した。 しかし、中国に導入された手芸は、実用性がないものとして教育関係者から批判された。手芸が日本のような大きな発展を見せなかった理由の一つとして、教育制度の導入に際し、日本の高等女学校では随意科目とされた手芸科目を裁縫や家事と同様の家政科目として取り入れたことが考えられる。さらに、日本における手芸は、女子教育の中で実業技能という位置づけであったが、中国においては近代的産業の未発達が女子実業教育の社会的実利を妨げたため、実業教育としての手芸が成り立たなかった。また、日本では産業全体と女子実業教育の発展とが連動しており、手芸の中でも開化趣味に合った「編物」と「造花」は、明治後期にはすでに女性の職業の一つとして成立していた。一方、中国では、原材料すら日本からの輸入に頼らなければならない「編物」と「造花」は、その物自体も単なる装飾品・奢侈品として認識されるにとどまった。近代女子教育に導入された手芸は、当時の社会状況と産業経済の未熟さによって、日本のような職業と結びついた実業として発展を遂げることができなかった。
著者
室井 努
出版者
弘前学院大学文学部
雑誌
紀要 (ISSN:13479709)
巻号頁・発行日
no.50, pp.37-51, 2014-03-25

日本語学会の大会シンポジウム(ワークショップ)における小松英雄氏の発言をきっかけとして、氏の主張する書記における読み手の存在の考えをどのように定位するかを試みる。具体的には、同様の構造で論争が起きた岩波新『漱石全集』本文問題と、時枝誠記のソシュール批判の顛末、および時枝氏の主張する言語過程説においての「書く」「読む」といった文字と音声との関係の精読の二つを通じて、読み手の立場を考慮に入れた書記資料の扱いを説く小松氏の、日本語学史上の位置づけを考える。
著者
岩崎 寛 山本 聡 権 孝〓 渡邉 幹夫
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.247-249, 2006-08-31
被引用文献数
10 14

近年、植物による癒しの効果に注目され、屋内空間においても多くの植物が配置されるようになった。しかし、それらが実際に人の生理的側面に与える効果に関する検証は少ない。そこで本研究では屋内空間における植物の有無が人のストレスホルモンに与える影響を調べた。その結果、観葉植物を配置した場合、無い場合に比べ、ストレスホルモンが減少したことから、室内における植物の存在はストレス緩和に効果があると考えられた。
著者
大塚 眞理子
出版者
千葉看護学会
雑誌
千葉看護学会会誌 (ISSN:13448846)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.20-26, 2001-06-30

本研究の目的は,在宅要介護高齢者と介護者である配偶者(以下高齢夫婦)は互いにケアしあう存在であるという前提にたって,高齢夫婦のケアしあう関係とケアしあう関係を促進する看護援助を明らかにすることである。作成した[ケアしあう関係を促進する援助の指針]に基づき3人の要介護高齢者とその介護者である配偶者を看護し,その看護経過を詳細に調べ,高齢夫婦のケアしあう関係を促進する看護援助を検討した。結果は以下の通りである。高齢夫婦のケアしあう関係は,〈両者はそれぞれの体力と心にゆとりができ相手をケアする可能性がある〉〈両者は相互理解している〉〈両者は互いに相手の価値を認めている〉〈両者は互いに相手に専心している〉〈両者は互いに相手の成長を助けている〉〈それぞれが相手へのケアを通して自分の生の意味を感じている〉が見いだされた。高齢夫婦のケアしあう関係を促進する援助は,【相手をケアするゆとりを生み出す援助】【ケアする相手への専心を促進する援助】【相互ケアを促進する援助】【相手に対するケアを促進する援助】【相手をケアするゆとりの支援を外部・他の家族に求める援助】に集約された。老化や健康障害により心身のゆとりを失った高齢夫婦の双方に対する【相手をケアするゆとりを生み出す援助】,要介護状態でのつらさや心身のゆとりがない状態での介護などから離れた心を再びつなぐ【ケアする相手への専心を促進する援助】ならびに,老化や要介護状態などで役割を失った夫婦が新たに協働したケアをはじめるよう促す【相互ケアを促進する援助】はすべてのケアしあう関係を促進するのに関連しており,高齢夫婦のケアしあう関係を促進