著者
平間 さゆり 牛木 潤子 小畠 秀吾 秋葉 繭三
出版者
国際医療福祉大学学会
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.37-47, 2016

近年,男子の殺人事犯は減少傾向にあるが,女子の殺人事犯には変化がない.殺人事犯には男女差があり,女子殺人の被害者には親族や配偶者が多く,情動が主な動機となっている.女子の殺人事犯の数は少ないためあまり研究されていないが,家族や近親者を対象にしていることから,本研究において,女子の殺人事犯を家族機能の側面から検討することとした.家族機能以外にも,犯罪に影響を与えるとされる発達障害(ADHD)と人格傾向(境界性パーソナリティ障害:BPD)に着目し,女子受刑者(殺人以外の他罪種を含む)を対象に家族機能・BPD・ADHD 傾向について調査した.その結果,女子殺人事犯において,ADHD 傾向を持ち,家族の情緒的絆や適応が不良であると,自己否定し見捨てられ感を抱き,他者が信じられず対人関係が困難になることが示された.よって,これらが女子の殺人事犯の背景要因の1 つになると考えられた.また,女子殺人事犯のみに,年齢の高低により家族・ADHD・BPD 傾向全てに差異がみられた.
著者
高田 明典
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.118-137, 2020-10-01 (Released:2020-10-01)
参考文献数
66

私たちの社会における価値観の形成に関して,「物語」が果たす役割は決して小さくない.物語は,この社会の価値観を形成し変化させうるものであると考える.本論文では,物語分析のうち,特に物語の訴求力を分析する方法としての「物語訴求構造分析」について論じる.まず,物語論及び物語分析の基礎となる理論を説明する.続いて,物語分析及び物語論の研究史を概観する.また,物語分析において用いられる主要な手法について概観し,その概要について述べ,物語の訴求構造分析手法の応用例を提示する.
著者
高橋 秀寿 中里 康子
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.6-11, 2016-01-18 (Released:2016-02-10)
参考文献数
22

急性期脳卒中患者の下肢麻痺に対するリハビリテーションを行う場合,早期からの長下肢装具や体重免荷トレッドミルなどを用いた立位歩行訓練を行うことで,機能障害としての麻痺の改善,歩行機能の改善だけでなく,日常生活動作の自立度の改善,心臓血管フィットネスの改善にも,有意に寄与することが報告されている.この歩行機能改善のメカニズムとして,筋電図を用いた報告でも,重度の下肢麻痺患者で立ち上がり動作でみられなかった下肢筋の筋放電が,歩行動作時のみに認められることから,脊髄に内在する中枢パターン発生器(CPG:central pattern generator)の関与が有力視されている.
著者
保城 広至
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.4-13, 2017-12-20 (Released:2018-03-30)
参考文献数
36
被引用文献数
1

社会科学者と歴史研究者との間には,認識論的あるいは方法論的に埋められない溝が存在し,両者の和解はとうてい不可能である,というのが一般的な理解である.保城(2015)では,そのような溝を埋めるための条件と方法論を提示し,両者の融合可能性を模索した.本稿ではその方法論の概略を改めて述べるとともに,その中で提案した「過程構築(process creating)」の具体例を紹介する.筆者の専門分野に即して外交政策決定過程の分析に特化するが,国家だけではなく企業や国際機関といった,他の組織分析にもその方法は有用であると考える.
著者
高木 実
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン (ISSN:18849644)
巻号頁・発行日
vol.18, no.9, pp.542-548, 1964-09-01 (Released:2011-03-14)
参考文献数
10

“最近のフィルム録画” については, 東京オリンピック大会に使用する機種の選定に当たって, 調査検討を行なった資料をもとに, 若干の補説を加えて説明を行なっている.最近のテレビ放送形態としては, 録画プロセスを考える必要性があり, 今後, ビデオテープ録画, 映画フィルムとの関係について論議されることになろう.
著者
スザ ドミンゴス
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.83, no.3, pp.765-787, 2009-12-30

キリスト教の隣人愛の命令は様々な問題を提起する。愛は人間に最も深く根ざした必要性であるが、なぜ命じられるのか。その愛の命令が要求しているように、偏愛せずすべての人を平等に愛することが可能なのか。キリスト教的愛に社会的表現が与えられ得るのか。本稿は、このような問いに伴う倫理的意味に関するキェルケゴールの見解を考察する。彼は、感情と衝動に基づく自然的愛に対して、キリスト教的愛が自然派生的に生じるのではなく、神によって命じられる愛であると特徴付け、義務になることによってのみ、愛はあらゆる変化から守られると主張する。キェルケゴールによれば、キリスト教的愛の究極的目的は、神を人が愛するように隣人に手を差し伸べるということであるが、それはある学者たちが批判するような非社会的および非現実的倫理を伴うのではない。神への愛は隣人への愛を媒介として常に表現されなければならないのであり、かならず現実的な人に向けられている。
著者
高橋 伸夫
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.9-40, 2004-01-25 (Released:2018-03-18)
参考文献数
18
被引用文献数
1

経営分野の若手研究者・大学院生を念頭に、英文論文を執筆するというプロセスを通して、研究の進め方、論文の書き方、さらには学界事情など、研究者の世界について解説する。
著者
荒井 國三 浦田 航希 橋本 昌子 蓮元 憲祐 谷山 徹 卯尾 伸哉
出版者
一般社団法人 日本薬局学会
雑誌
薬局薬学 (ISSN:18843077)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.95-107, 2020 (Released:2020-10-26)
参考文献数
17
被引用文献数
1

石川県内の高校生および大学生による医療用医薬品とヘルスケア商品(一般用医薬品,健康食品,サプリメント)の使用実態をアンケートにより調査した.体の具合が悪くなったとき,医療機関に受診しないで健康食品やサプリメントを利用する者が 18.5%(83 名:449 名の健康食品利用者中)いた.さらに,健康食品で病気は治ると,間違って理解している者が 34.5%(654 名)いた.以上より,中高校生に対する「くすり教育」において,医療用医薬品の教育ばかりでなく,健康食品やサプリメントの利用に関する教育を行う必要があると考えられた.
著者
末木 新
出版者
心理学評論刊行会
雑誌
心理学評論 (ISSN:03861058)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.265-276, 2017 (Released:2019-03-22)
参考文献数
71

The purpose of this study was to clarify how psychological research contributes to suicide prevention. First, we introduced previous reviews dealing with this problem from two perspectives: the theory on prediction of suicide occurrence and validated suicide prevention methods. Although not fully dealt with in previous reviews, we next reviewed studies on suicide prevention education, utilization of internet-related technologies for suicide prevention, and the grief of suicide survivors. In addition, we discussed the issues of psychological research on suicide as a way of improving the prediction accuracy on the occurrence of suicide and generating alternatives for psychiatric discourse on suicide countermeasures. Finally, we discussed the question of whether promoting suicide prevention using psychological knowledge was synonymous with the contribution of psychology to our society based on a review of the research on the value of statistical life.
著者
齊藤 笑美子
出版者
日本科学者会議
雑誌
日本の科学者 (ISSN:00290335)
巻号頁・発行日
vol.43, no.10, pp.554-559, 2008-10
著者
元森 絵里子
出版者
The Kantoh Sociological Society
雑誌
年報社会学論集 (ISSN:09194363)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.22, pp.174-185, 2009-07-25 (Released:2013-03-28)
参考文献数
34
被引用文献数
1 1

This paper analyzes the socialization theory and the repeated criticisms of it. Critics partly believe that the childhood socialization is related to better relations between individuals and society (i.e. the “Hobbesian Problem”), and partly doubt the peculiarity of childhood relationships. Luhmann converted the theory by his original interpretation of socialization, and the concept of “the child as a medium of the education”. However, he still remains inside our sociological imagination concerning individual and society. We should rethink why we have tried to question the relation between individual and society, and, on the one hand, analyze “childhood” as a discourse.
著者
松尾 邦枝 太田 順康 千住 真智子
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 第4部門, 教育科学 = Memoirs of Osaka Kyoiku University (ISSN:03893472)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.69-80, 2015-09

本研究では,2014年2月21日~3月13日の日程で,ヘルシンキにおいてフィンランドのスポーツ振興の実態を調査し,福祉先進国と呼ばれているフィンランドの健康の取り組みについて明らかにするとともに,運動しやすい環境の整備状況について調査を行うことで,日本人の運動習慣の向上や健康づくりに関する知見を得ることを目的とした。フィンランドは,定期的にスポーツを実施している者(週1回以上)が国民の91%と世界一の生涯スポーツ先進国である(山口:2007)。フィンランドは,かつて欧米同様に生活習慣病が増大していたが,医療費削減のためにスポーツ促進を掲げた福祉向上政策を行った結果,スポーツ振興や施設の改良や拡大がおこなわれ,自国の歴史の中で培われた気質のあとおしもありスポーツが浸透し,スポーツ実施率は世界一となった。現在,スポーツ実施率が47.5%(2012年度)といわれている日本も今後,利用しやすい総合型地域スポーツクラブの拡大や,ウォーキング等を実施しやすい道路,公園の整備,体育館の利用方法の簡素化等の対策を進めることで運動・スポーツのさらなる促進につながると考えられる。This is a survey on the sports situation in Finland from 21st February to 13th March in 2014. The first purpose of this research is to learn the health policy of Finland, known as a country with one of the most highly advanced welfare systems. The second is to give some implication to the improvement of the exercise habits of the Japanese by learning the maintenance of the Finnish sports environment. Finland is also one of the lifelong sports countries over 90% of the population of which are regularly doing a certain sport, at least once a week (Yamaguchi 2007). In Finland, life-related disease used to be as popular as it is in America, but some welfare improvement implements were put into practice for the purpose of a reduction of its national medical expense. It brought a sport promotion and an expansion and improvement of facilities, backed up mutually by its own historical and cultural background. Thus sports habits spread throughout people and now Finland has the largest number of people doing sports. In Japan the ratio is still estimated to be around 47.5% (in 2012), but in the near future there will be an improvement of exercise and sports situation with more easy-accessible general sport clubs, maintained walking roads and parks, and with more simple procedure to use public facilities.