著者
菱田 繁 谷口 忠昭
出版者
兵庫医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

ラットの自発的にアルコール (以下 「ア」 と記す) を選択し得る装置を用いて、ラットの 「ア」 嗜好性を調べ、その遺伝的背景を調べるための基礎的な実験を行った。ラットの 「ア」 嗜好性を調べるために使用した装置は、スキナーボックスを、Dne-lever,two-liquid方式に改良したものである。すなわし、ラットがスキナーボックス内で壁面のレバーを押すと水または、10% 「ア」 水溶液が交互に、壁面中央のノズルから出て来るように設計してある。この装置にはNEC社製パーソナルコンピューター (9800uM) を用いて、簡単に操作、制覇でき、かつ、データー処理が行なえるようにソフトウェアを組込んである。(1) ラットの系統別にみた 「ア」 嗜好性の差を調べるために、Wister系ラット、Long-Evans系ラット、Levis系ラットならびにFiscker系ラットを選び、各々のラットにおける 「ア」 嗜好性を調べ、各系統別に高い 「ア」 嗜好性を示すラットの出現頻度を求めた。その結果、Lewis系およびWister系ラットで 「ア」 嗜好性ラットの出現頻度が他の系統に比べて高く、Long-Evans系ラットで最もその出現頻度が低かった。(2) 同一系統内で、より高い 「ア」 嗜好性を有する雄ラットと雌ラットを選び、それらを近親交配させると、その子供に高い 「ア」 嗜好性を持つラットが高頻度で発生することがわかった。(3) また、ラットをAlcohol diet ( 「ア」 含有の液体飼料) で長期間飼育すると、そのラットの 「ア」 嗜好性が上昇することもわかった。以上の基礎的なデーターを基にして、今後はラット肝の 「ア」 ならびにアセトアルデヒド脱水素酵素の多形等からラットの 「ア」 嗜好性の遺伝的背景を追求して行きたい。
著者
宮沢 正 中島 邦生 南 幸男 池田 昌彦
出版者
日本法科学技術学会
雑誌
日本鑑識科学技術学会誌 (ISSN:13428713)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.95-98, 1997 (Released:2010-06-10)
参考文献数
10

The pinpoint condensation technique using perfluorated polymer film was applied to the identification of lysergic acid diethylamide (LSD). Rapid solvent elimination for condensation of LSD into a small single residual at room temperature was performed by solvent evaporation on perfluorated polymer film, and the residual was measured by the microscope/FTIR technique. This sample condensation method provided high sensitivity for IR analysis. The detection limit was 2ng. When interfering substances did not exist in the extracted solution from blotter paper of LSD, the extract was able to be measuered simply and rapidly by microscope/FTIR technique. If isolation by preparative TLC was needed, the best elute was ethyl acetate or isopropanol which did not elute interfering substances from TLC plate into the eluent. More than 5 μg of LSD would be detectable by this technique after preparative TLC. We were able to identify LSD by this technique with preparative TLC from blotter paper containing more than 10 μg of it. This technique was useful to identify LSD sensitively from forensic samples.
著者
中西 良文
出版者
日本教授学習心理学会
雑誌
教授学習心理学研究 (ISSN:18800718)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.60-69, 2020 (Released:2022-11-07)

本研究は現実のテスト結果における成功/失敗の原因帰属について自由記述法で検討を行ったものであるが,特にこれまで主要な帰属因として扱われてきた努力帰属に関して,方向的な側面を含むものを方略帰属として弁別し検討を行った。また,原因帰属を行った後に,次の解決のためにどのような学習方略を用いようとするのかについても検討を行った。高等学校の1・2年生153名(男性97名・女性54名・不明2名)を対象に,社会科(現代社会もしくは地理)の定期テストにおける学業成績の原因帰属と,次の解決のための方略について自由記述で回答を求めた。その結果,最も多く挙げられた帰属因は,普段の学習における方略に該当する,勉強方略であった。また,成功の場合は勉強方略への帰属が最も多かったが,失敗の場合は努力帰属が勉強方略への帰属よりもやや多く,また,成功の場合との対比で勉強方略への帰属の割合に比して,テスト方略への帰属の割合が高かった。さらに,原因帰属を行った後に考える,次の解決のための方略については,失敗の原因帰属では学習の環境を整えるといった間接的にしか学習に関わらない方略がより挙げられやすいことが見いだされた。

1 0 0 0 大将白川

著者
桜井忠温 著
出版者
松岳会
巻号頁・発行日
1933
著者
是枝 喜代治
出版者
東洋大学ライフデザイン学部
雑誌
ライフデザイン学研究 = Journal of Human Life Design (ISSN:18810276)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.265-282, 2014

近年、在籍するすべての子どもが一人ひとりの教育的ニーズに沿った支援を受ける権利を保障する「インクルーシブ教育」への関心が高まりつつある。インクルーシブ教育は普通学校の中で、障害のある子どもが健常児と共に教育を受けることを基本としている。本研究では、1980年代以降、インクルーシブ教育を先導的に取り入れてきたイギリスの学校現場を訪問し、インクルーシブ教育のシステムや具体的な支援の現状について実地調査を行った。調査期間は2013年9月1日から9月8日までである。 特別支援学校の視察では、多様なニーズを抱える子どもに対し、個々人の特性やニーズに応じた個別のカリキュラムが用意され、各クラスにICT機器などが積極的に導入されていた。特に、スイス・コテージ・スクールでは、近隣の学校教員の研修のシステムが充実していた。また、インクルーシブ教育の具現化に向けて開設されたEducation Villageの視察では、障害のある子どもとない子どもがさまざまな教育の場を共有し、相互の交流が進められていた。 一連の実地調査から、日本におけるインクルーシブ教育システムの普及と共に包括的な教育システムを構築していくことの必要性などが示唆された。
著者
岩本 謙吾
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会誌 (ISSN:13405551)
巻号頁・発行日
vol.125, no.5, pp.276-279, 2005 (Released:2007-02-02)
被引用文献数
1

本記事に「抄録」はありません。
著者
木下 昭
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 = NIHON KENKYŪ (ISSN:24343110)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.301-319, 2022-10-31

アジア太平洋戦争中、多くの地域で、後発の帝国であった日本が、欧米諸国にとってかわって統治権を得ることになった。この支配の交代によって生じた変化を被支配者がどのように受け止めたか、そのなかで新旧帝国間にいかなる関係が見いだせるか、これらを論じることは日本帝国に対する考察を深める上で極めて重要である。 この帝国支配の移行に伴って、日本が占領下で力を注いだのが日本語を中心とする教育である。なかでもフィリピンに注目すべきなのは、日本の侵攻により全土で普通教育が複数の帝国によって施された、アジアでは希有な地域となったことである。普通教育に用いる大規模な人的物的資源や言語能力などの被支配者への広範囲に及ぶ影響を鑑みるとき、この教育を要に帝国、そして帝国間関係を論じる意義は高い。そこで本稿では、日本占領下の普通教育に関するフィリピン人たちの記憶を回想録や聞き取り調査結果を使って分析し、日本による教育がフィリピン人たちにどのように意味づけられたのか、そのなかで先行したアメリカ支配がどのような影響を与えているのかを考察した。 日本占領が甚大な被害をもたらしたフィリピンで、日本の教育に対して人々が残した言葉には、恐怖や暴力の経験が生み出す「均質化の語り」だけではなく、積極的な評価もあった。この要因として注目したのは、民間人と軍人の二種類の日本人教員の存在である。民間人教員は派遣の要件が英語力であり、これが彼らの勤務に肯定的な認識をフィリピン人にもたらしたと考えられる。というのも、アメリカ統治下の教育により、英語がフィリピンで文明化と社会的地位を表象するようになっており、民間人教員はその能力ゆえに文明の基準に沿うことになったからである。 このことは、フィリピンのアメリカ化を打破するために導入した日本の普通教育が、アメリカの普通教育によって進んだ文明化を基盤としていたことを反映している。フィリピン人たちの日本統治下の記憶は、この新旧二帝国の普通教育政策のかみ合わせから生み出されたと考えられる。
著者
小林 誠
出版者
公益財団法人 国際交通安全学会
雑誌
IATSS Review(国際交通安全学会誌) (ISSN:03861104)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.81-87, 2018-10-31 (Released:2018-11-01)

離島はわが国の領域、排他的経済水域等の保全、海洋資源の利用、多様な文化の継承、自然環境の保全等、重要な役割を担っている一方、四方を海等に囲まれ、人口減少が長期にわたり継続、生活に必要な物資等の輸送費用が他の地域に比べて多額となっているなど、他の地域と比較して厳しい自然的社会的条件にある。こうしたことを踏まえ、政府は離島振興法などの法律を制定するとともに、離島振興に必要となるさまざまな施策を講じている。資源エネルギー庁においては、離島における重要な移動手段となる自動車用燃料等、生活に必要不可欠な物資である石油製品の安定的な供給かつ低廉化を図る取り組みを行っている。
著者
野上 道男
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.94, no.7, pp.581-585, 1986-01-25 (Released:2009-11-12)
参考文献数
9
著者
Hirotsugu INOUE Minoru KAMIBAYASHI Kikuo KISHIMOTO Toshikazu SHIBUYA Takashi KOIZUMI
出版者
The Japan Society of Mechanical Engineers
雑誌
JSME international journal. Ser. 1, Solid mechanics, strength of materials (ISSN:09148809)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.319-324, 1992-07-15 (Released:2008-02-18)
参考文献数
6
被引用文献数
5 5

The Laplace transform is known as one of the most useful mathematical tools for solving a wide range of engineering problems. For its application to theoretical or numerical analyses, methods of numerical inversion have been studied extensively. On the other hand, the method of numerical transformation has not yet been studied very much. This is one of the reasons why few applications of the Laplace transform to experimental analysis have been reported. In the present paper, a method for numerical Laplace transformation and inversion utilizing the fast Fourier transform (FFT) algorithm is studied with the intention of applying it to experimental analysis. A discrete Laplace transform pair is formulated as in the discrete Fourier transform pair. The numerical accuracy of the present method is evaluated for the sinusoidal function and step function. A chart is presented for determining parameters for computation so as to attain a specified accuracy.
著者
菊池 蘭 伊藤 創馬 太田 美鈴 日高 慎二 瀧沢 裕輔 栗田 拓朗 中島 孝則
雑誌
日本薬学会第140年会(京都)
巻号頁・発行日
2020-02-01

【目的】ベルソムラ錠の有効成分であるスボレキサントは、覚醒物質オレキシン受容体を可逆的に阻害する新しい作用機序の睡眠薬である。従来の睡眠薬に耐性ができた患者など広く使用されているが、服用直前にPTPシートから取り出すこととされており、一包化調剤は避けられてきた。そこで、ベルソムラ錠分包品の保存安定性について検討を行った。【方法】ベルソムラ錠をセロポリ製分包紙に分包し、シリカゲル入アルミ袋またはアルミ袋に入れ、25℃60%RHまたは40℃75%RHの条件下で保存した。また冷蔵庫での保存も試みた。4週間後、錠剤の質量、直径と厚みを測定すると共に溶出試験を行った。また各条件下で保存後のスボレキサント含量についてHPLCにて定量を行った。【結果】25℃60%RHならびに40℃75%RHの条件下において、分包後4週間でシリカゲル入アルミ袋に保存したものは錠剤の質量、直径と厚みが減少し、溶出速度の低下が認められた。これに対しアルミ袋中で4週間保存したものでは、やや質量の増加が認められたものの、溶出速度の変化は認められなかった。冷蔵庫内での保存においては、分包したまま保存したもの、アルミ袋中で保存したもの共に質量や溶出速度の変化は認められなかった。加えて、全ての保存条件においてスボレキサント含量の変化は認められなかった。【考察】ベルソムラ錠分包品はアルミ袋中に保存するか、冷蔵庫内で保存することにより安定であり、長期保存が可能であると考えられる。
著者
浅野 健吾 内野 滋彦
出版者
一般社団法人 日本外科感染症学会
雑誌
日本外科感染症学会雑誌 (ISSN:13495755)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.238-241, 2018-06-30 (Released:2018-09-12)
参考文献数
19

セプザイリス®は AN69ST膜からなる持続透析膜である。高いサイトカイン吸着能による治療効果が期待され,本邦では 2014年に敗血症に対して保険収載されているが,これは実際の患者への効果を必ずしも証明するものではない。そこで今回,セプザイリス®の効果に関する既存研究を検証し,臨床での使用が妥当であるかを考察した。セプザイリス®に関する研究は動物実験や in vitroでの研究が多く,とくに敗血症を対象とした臨床研究は限られている。加えて,治験の研究も含めてこれらの臨床研究には問題点も多く,予後改善効果を証明するに至っていない。敗血症に対してセプザイリス®使用を推奨する根拠は乏しいと思われる。