著者
山本 肇 佐藤 愛実 齋川 健志 彌勒 清可 関本 正泰 二本栁 洋志 石幡 哲也 高田 直樹
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.335-341, 2022-04-25 (Released:2022-04-25)
参考文献数
9

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)検査として汎用される抗原定性検査は,簡便かつ安価に検査可能であることから広く用いられる一方,核酸増幅検査との不一致例も報告されるが頻度や症例に関する詳細な報告が少ない。検査法による診断性能の違いを明らかにするため,SARS-CoV-2抗原定性検査キット「クイックナビTM-COVID19 Ag」と核酸増幅検査の結果を後ろ向きに比較検討した。同時提出された2,721件を対象に,両者を比較したところ,全体一致率99.3%が得られた。抗原定性検査陰性,核酸増幅検査陽性となった症例を13例認めた。多くの症例でCt値が高い傾向を示しており,ウイルス量が少ないことで抗原定性検査の検出感度を下回り,核酸増幅検査との結果が一致しなかった可能性が考えられる。一方,抗原定性検査陽性,核酸増幅検査陰性となった症例を7例認めた。いずれも,COVID-19は否定され,抗原定性検査偽陽性の判断であったが,全症例で偽陽性の原因の特定に至らなかった。以上のことから,「クイックナビTM-COVID19 Ag」はSARS-CoV-2抗原定性検査として十分な性能を有していることが明らかとなった。一方でイムノクロマト法として偽陰性や偽陽性を避けることはできないため,利用者は検査法の特性について十分に留意したうえで使用することが求められる。
著者
伊達 成基
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.78, no.6, pp.963-972, 1987-06-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
24

私たちの教室では, 経直腸的リニア電子走査装置を用いた精嚢超音波穿刺術を開発した。本法は, 経会陰的精嚢穿刺を超音波リアルタイム画像でモニタでき, 精嚢内容液の採取による内容液の分析, 細菌学的検査, 細胞学的検査など種々の精嚢の検査および精嚢疾患の治療が可能となった。1981年1月より1984年6月まで, 私たちの教室において, 精嚢炎53例, 血精液症8例, 前立腺癌5例, その他2例総数68例に対し精嚢超音波穿刺術を試みた。その結果, 本法は以下の点において有用であることがわかった。1) 精嚢内容液の採取。(1) 精嚢内容液の分析による生理学の研究。(2) 精嚢炎, 血精液症の病理生理学の研究。(3) 精嚢内容液の細胞学的検査による, 前立腺癌における精嚢への浸潤の有無。2) 精嚢内薬液注入。(1) 精嚢炎, 血精液症の治療。(2) 精嚢レ線造影。精嚢超音波穿刺術は, 近い将来, 精嚢疾患に対する新しい診断法および治療法となりえることが強く示唆された。
著者
竹内 倫子 澤田 ななみ 鷲尾 憲文 澤田 弘一 江國 大輔 森田 学
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.64-75, 2022-09-30 (Released:2022-10-26)
参考文献数
48

わが国では認知症高齢者が急増しているが,認知症に対する有効な治療法はまだ確立されていない。そのため,認知症の発症を予防する手段を模索することが望まれる。本研究の目的は,地域在住高齢者を対象に口腔機能およびソーシャル・キャピタル(SC)と認知機能低下の関係を調査することである。2018年5月~8月に,農村地域在住の高齢者を対象に,世帯,学歴,基本チェックリスト,農村SC,舌圧,オーラルディアドコキネシス(ODK),現在歯数,主観的口腔機能を調査した。認知機能は基本チェックリストの項目より評価した。主観的認知機能低下を従属変数とした二項ロジスティック回帰分析を行った。また,主観的認知機能の低下に与える要因間の関係を検討するために共分散構造分析を行った。分析対象者は73人(男性24人,女性49人,平均年齢80.0±10.6歳)であった。二項ロジスティック回帰分析の結果,主観的認知機能低下と有意な関連がみられたのは,うつ病の可能性(オッズ比6.392,95%信頼区間 1.208~33.821),ODK/ta/(オッズ比0.663,95%信頼区間 0.457~0.962),農村SC(オッズ比0.927,95%信頼区間 0.859~0.999)であった。共分散構造分析の結果,「年齢が高いほどODK/ta/値が低く,うつ病の可能性がある」「ODK/ta/値が高く,うつ病の可能性がなく,農村SC値が高いほど,主観的認知機能低下がない」という関係がみられた。 結論として,農村地域の高齢者を対象に主観的認知機能低下に関連する要因を調査した結果,SC,うつ病の可能性および舌の巧緻性が関連していた。
著者
榊原 雅人
出版者
日本生理心理学会
雑誌
生理心理学と精神生理学 (ISSN:02892405)
巻号頁・発行日
pp.2209si, (Released:2022-10-29)
参考文献数
120
被引用文献数
1

生理心理学や関連領域において心拍変動は自律神経活動を検討する目的でひろく利用されている。本稿は心拍変動の分析を用いた心理生理学的状態の評価と心拍変動の増大に関わる臨床的応用(心拍変動バイオフィードバック)について解説した。はじめに,心拍変動の高周波成分(呼吸性洞性不整脈)は統制された条件のもとで信頼性の高い迷走神経活動の指標となり,これを利用してさまざまな行動的課題(すなわち,ストレスやリラクセーション)に対する心理生理学的反応性を評価できることを示した。一方,迷走神経制御の特徴から呼吸性洞性不整脈は迷走神経活動の指標というよりはむしろ心肺系の休息機能を反映する内因性指標であると考えられ,これを利用して日常場面に関わる心理生理的状態を評価できることを示した。次に,心拍変動の増大に関わる臨床的応用の文脈から,心拍変動バイオフィードバック研究の起源,臨床的な有用性,作用機序について解説した。心臓血管系の調節に重要な役割を果たしている圧受容体反射には共鳴特性があり,共鳴周波数(おおむね0.1Hz)の呼吸コントロールは著しい心拍変動を生み出す。このような共鳴のメカニズムを通して心拍変動バイオフィードバックは圧受容体反射に関わる自律系のホメオスタシス機能を高め,ストレス症状の緩和や情動制御の効果をもたらしている。総じて,心拍変動の分析は心理生理学的状態を評価する有用なツールとなり,心拍変動の増大は心身の健康やウェルビーイングにとって重要な要因であると考えられる。
著者
早乙女 雄紀 大沼 亮 西原 賢 星 文彦
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.63-67, 2022-10-26 (Released:2022-10-28)
参考文献数
23

目的:パーキンソン病(以下,PD)患者における,トレッドミル歩行と部分免荷トレッドミル歩行時の歩行周期と両側の股関節,膝関節及び足関節の関節角度を比較した。 方法:健常者10名,PD 患者7 名(解析対象は5名)に対し,免荷装置(SPIDER)を用いて,ポータブル3 次元動作解析装置(MYOMOTION)を使用し,免荷条件と非免荷条件の各歩行周期割合と下肢角度データを計測した。結果:健常者は条件間で有意差はなかったが,PD 患者は非免荷条件と比較して,免荷条件で立脚期の割合が減少し,遊脚期の割合が増加した(p <0. 05)。さらにPD 患者では同時支持期が減少した(p <0. 05)。結論:PD 患者に部分免荷トレッドミル歩行は同時支持期割合を減少させ,歩幅増大の一要因である可能性が示唆された。
著者
藤實 久美子
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要 アーカイブズ研究篇 = The Bulletin of The National Institure of Japanese Literature, Archival Studies (ISSN:24363340)
巻号頁・発行日
vol.52, no.17, pp.1-42, 2021-03-29

徳川幕府・藩のアーカイブズ研究は、幕府の寺社奉行所研究などに牽引されて大きく進 展してきた。そのうえで、今後に期待されるのは、奉行所内部の各部局の実務者レベルの アーカイブズ研究ではないか。もっともそこには公文書と「家」で作成・蓄積された文書・ 記録との関係という複雑さが含まれているのだが、本論文では開国後に新設された江戸の 町奉行所の外国掛下役(同心)および詰所を中心に据えて考える。 まず、旧幕引継書類の請求番号808-23「日記」を分析する。所蔵館(国立国会図書館) はこれをひとつの「かたまり」とする。だが組織体にもとづいて分析すると、各国総領事 館・公使館・仮旅宿・接遇所詰(宿寺詰)が作成した詰所日記20冊をその階層構造から「ア イテム(単体)の集合体」として捉えることができる。 詰所日記の分析からは宿寺詰の勤務体制が明らかになる。また詰所日記は記主が日々替 わるという近世社会の日記の1類型の特徴をもつことに加えて、修正の痕跡が多くみられ る。修正の痕跡は勤務状況を反映している。 つぎに請求番号808-26「外国人買物」ほかを分析する。宿寺の機能と外国掛下役の職 務は多岐にわたったが、そのうち外国人への江戸での商品売渡管理制度を明らかにする。 また綴り帳「外国人買物」の内的秩序を推察し、届書の出所を各宿寺・町奉行所に大きく 分類する。基礎データとして外国人への商品売渡販売者などを一覧表にまとめて示す。 The structural analysis of the documents and records prepared and stored by the departments of Edo Machi Bugyo’s offices still requires much elucidation. This paper analyzes the documents and records prepared and stored by minor officials in charge of foreign affairs at magistrate’s offices, examining papers inherited from the Tokugawa shogunate that are now held by the National Diet Library. The National Diet Library views call number 808-23 “Diaries” as a single series, but from the perspective of archival science, we found 20 tsumesho nikki for various countries’ consulates general, legations, provisional inns, and reception venues for Ansei 6 (1859)–Mannen 1 (1860). By analyzing the contents of the tsumesho nikki, this paper considers the documents and records in the manner of restoration, and discusses the nature of the duties of minor officials in charge of foreign affairs at shuku-tera-tsume from the tsumesho nikki’s “sense of noise.” Subsequently, in relation to the nature of “Foreigners’ purchases” (call number 808-26) and other documents, we confirm the obligation to submit a “toritsuketou shinasho, regular custom list” (todokesho, notification) borne by the headman of the town where the seller and seller’s store were located and analyze the contents.
著者
柏木 智一 横山 徹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会 東北ブロック協議会
雑誌
東北理学療法学 (ISSN:09152180)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.33-41, 2017-08-31 (Released:2017-09-15)
参考文献数
18

腰部脊柱管狭窄症の術前と術後3カ月の間欠性跛行とQOLの関連性について調査した。当院において手術を施行したLSS患者20例(男性7例,女性13例,平均年齢72.1±6.7歳)を対象とした。評価項目は,連続歩行テスト(歩行距離と歩行時VAS)とQOL評価としてMOS Short-Form 36-Item Health Survey日本語版ver.2(以下:SF-36)と日本整形外科学会腰痛評価質問票(以下:JOABPEQ)とした。評価は術前と 術後3カ月に実施した。手術内容は全例部分腰椎椎弓切除術であった。術後の理学療法は3,4週間の入院 期間中のみ実施した。術前では連続歩行距離とJOABPEQの歩行機能において,術後3カ月では連続歩行距離とSF-36のPF,BP,GH,SF,JOABPEQの疼痛関連,歩行機能,心理機能において有意な相関が認め られた。術後3カ月において連続歩行距離の重要性が示唆された。
著者
高橋,肇
出版者
運輸省船舶技術研究所
雑誌
船舶技術研究所報告
巻号頁・発行日
vol.7, no.7, 1971-02-28

It is very important to measure the wake distribution accurately from the point of view of the propulsive performance including the problems of cavitation and vibratory forces induced by the propellers. At the 11th and 12th International Towing Tank Conference, the characteristics of five-hole pitot tubes and the measuring technique of the wake behind the ship model always come up for discussion. Recently, pitot tubes of the N.P.L. type have been calibrated in the Ship Research Institute. The report deals with the discussion of the characteristics of two 5-hole pitot tubes, and then the comparison between the wake distributions measured behind the model using the pitot comb of the Prandtl's type and the 5-hole pitot tube, are presented. Finally the effect of the two types of wake distributions upon the calculated bearing forces and moments are shown.

1 0 0 0 苫小牧市史

出版者
苫小牧市
巻号頁・発行日
1975

1 0 0 0

著者
大林太良編 石野博信 [ほか] 執筆
出版者
社会思想社
巻号頁・発行日
1975
著者
石野博信著
出版者
吉川弘文館
巻号頁・発行日
1990
著者
桑原 達朗 今中 翔一 河村 剛至 渡部 多真紀 黒木 裕治 河野 将行 長尾 剛至 三宅 康史 坂本 哲也 安野 伸浩
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.876-880, 2022-10-31 (Released:2022-10-31)
参考文献数
6

エチレングリコール(ethylene glycol,以下EGと略す)中毒は,有毒代謝物による代謝性アシドーシスなどにより死に至ることがあり,迅速な代謝阻害薬ホメピゾールの投与や血液透析が有効である。患者は自殺目的に大量のEG を服用し,救急要請となった。推定内服時間から搬送まで約7時間,来院時の血液検査で代謝性アシドーシス(pH 7.262),アニオンギャップ上昇(24.1mEq/L)を認めた。救急隊の情報で,搬送前に薬剤師がホメピゾールを加温融解し,来院39分後にホメピゾール投与,114分後に血液透析を開始した。その結果,重度のアシドーシスの進行や乏尿を認めることなく,入院10日目に退院となった。今回の症例では,救急隊の初動から薬剤師の介入により早期ホメピゾール投与による代謝物生成抑制,CEによる透析管理,医師による病態の評価と治療方針決定など,多職種連携による迅速な治療介入が,中毒治療に奏功したことを示す。