著者
山添 崇 舟木 智洋 喜安 勇貴 溝上 陽子
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6+, pp.17, 2018-11-01 (Released:2019-01-29)
参考文献数
3

質感は物体から受ける印象を決定する主な要因であり,物体の好ましさや価値判断の指標の一つである.照明の指向性および拡散性が質感の印象に影響することは報告されている.しかし,どのような照明条件下で最も質感の印象が忠実に再現されるかについては,分かっていない.そこで,本研究では実物体観察時における質感の印象と照明条件の関係について検討した.実験では,初めに自然光源下において,被験者が視覚と触覚を用いて,実験刺激である食品サンプルの印象を形成した.その後,3種類の照度と3段階の拡散度の組み合わせ合計9条件の照明下において,実験刺激を観察し,最も印象に忠実な照明条件を選択した.同時に7件法の主観評価を行い,印象の変化についても評価を行った.実験の結果,拡散性の高い条件が最も記憶した印象に忠実な照明として選択された.また,7件法の主観評価では,拡散性による明確な印象の違いは得られなかった.ただし,刺激の種類により重さの評価等に違いがでたことから,拡散性の影響は物体形状や材質により異なると考えられる.以上より,印象を忠実に再現するために最適な照明の拡散性条件の決定が可能であることが示唆された.
著者
兵頭 健治 浅野 誠 山本 栄一 菊池 寛
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.402-410, 2017-11-25 (Released:2018-02-25)
参考文献数
13
被引用文献数
4 3

がん化学療法においては、がん組織ではなく、正常組織へ分布した薬物により惹起される副作用が抗がん剤の使用上の大きな問題となってくる。この問題を解決すべく、抗がん剤をDDS製剤化することで非選択的な生体内分布の抑制が期待される。特にナノ粒子化によるDDS製剤は正常組織に比して、がん組織への集積が向上するというEnhanced Permeability and Retention(EPR)効果が起こるといわれている。このEPR効果により副作用の軽減と薬効の増強が期待されている。医薬品の製剤設計においては、ヒトで最良の薬理効果を発揮できるように設計すべきであるが、臨床のがん治療における薬効と担がんマウスモデルでの薬効の間には乖離があることがしばしば問題となる。そのため、担がんマウスモデルの結果からのみではヒトで最適な処方を見出すことが難しい。実験動物から得られる薬理効果は、臨床における実態を反映できるのだろうか?本稿ではDDS製剤、特にリポソーム製剤の処方設計における留意点について紹介する。

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著者
佐村八郎 編
出版者
六合館
巻号頁・発行日
vol.上, 1900
著者
山下 麻衣
出版者
京都産業大学マネジメント研究会
雑誌
京都マネジメント・レビュー (ISSN:13475304)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.25-38, 2014-09

本論文の目的は,日清戦争以降から満州事変以前において,日本赤十字社がどのような救護をおこなっていたのかを明らかにすることにある.日本赤十字社の主たる事業上の使命は,戦傷病者をケアすることであった(「戦時救護」).但し,国際赤十字社は,1920 年以降,健康管理や疾病予防のための取り組みを行なうようになった.この流れを受けて,日本赤十字社は,少年赤十字を結成し,学校看護婦および社会看護婦を養成し,林間学校を文部省と協力して行なうようになった(「平時救護」).これら事業は日本における健民健兵政策と強く結びついていた.
著者
長谷 雄太
出版者
京都大学大学院教育学研究科
雑誌
京都大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13452142)
巻号頁・発行日
no.67, pp.293-306, 2021

悪は多くの論の中で曖昧に扱われ, その全容を掴むことが難しい概念である。本稿では, 犯罪現象を通して悪の性質について検討を行った。その中で, 悪は道徳的なルーツを持つものと主観的体験にルーツを持つものに分けて考えられた。また犯罪に至る内的要因として, 主体の持つ"力"の欠乏感や, それに伴う恐れや不安といった破壊的情動の存在が示唆された。ここで, 恐れや不安には発達的段階があり, そうした情動を対象化する器として悪が機能していた。そして, 悪と罪悪感との関わりを論じる中で, 主体の破壊的情動を抱える基盤の重要性が挙げられ, 司法・犯罪領域の心理臨床では, 動的犯罪要因への働きかけと同等に, 情緒的基盤に働きかける力動的なアプローチも必要だと考えられた。こうした犯罪における主体の在り方を正確に掴むためにも, 臨床家は道徳的悪に捉われず, 主体の体験的悪に迫る営みを専門的に行っていく必要があることが示唆された。
著者
西原 正和
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.412, 2021

COVID-19は,新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症で,2019年12月に中国湖北省武漢市で確認されて以降,世界中に拡大した.今やパンデミックに至ったCOVID-19に対抗するため,各国では治療薬候補の選定やワクチンの開発を喫緊の課題として推し進めている.日本でも,レムデシビルがCOVID-19の重症患者を対象とした治療薬として特例承認され,天然物から開発された駆虫薬・イベルメクチンについても,COVID-19治療薬としての臨床試験が行われている.一般的にウイルス感染症の治療では,相乗効果を得るため異なる標的を持つ抗ウイルス剤を組み合わせる.本稿では,ベルベリンやレムデシビルを含む9種の化合物について,SARS-CoV-2に対する単剤および併用での効果を評価したPizzornoらの報告を紹介したい.<br>なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.<br>1) Pizzorno A. <i>et</i> <i>al</i>., <i>Antiviral</i> <i>Res</i>., <b>181</b>, 104878(2020).<br>2) Wu Y. <i>et</i> <i>al</i>., <i>Chin</i>. <i>J</i>. <i>Integr</i>. <i>Med</i>., <b>17</b>, 444-452(2011).<br>3) Ianevski A. <i>et</i> <i>al</i>., <i>Bioinformatics</i>, <b>33</b>, 2413-2415(2017).
著者
稲葉 利江子
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.72-76, 2022-01-15

大学入試センターは,2021年3月24日に公表した2025年に実施する大学入学共通テストの教科・科目の再編案において,「情報」を新たに導入し,国語や数学などと並ぶ基礎教科とする方針を示した.これを受け,FIT2021(第20回情報科学技術フォーラム)において,日本学術会議情報学委員会情報学教育分科会,情報処理学会,電子情報通信学会が主催となり,公開シンポジウム「大学入学共通テスト『情報』が目指すもの」が,2021年8月26日にオンライン開催された.本稿では,公開シンポジウムの内容について報告するとともに,大学入学共通テスト「情報」の動向について述べる.
著者
河原 達也
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.77-78, 2022-01-15

高等学校で「情報I」が2022年度から必修化されることとなり,さらにその3年後から大学入試共通テストに導入されることが決定された.その意義と期待について,入学者選抜の観点,大学の情報教育の観点,および初等中等情報教育充実の観点から述べる.
著者
中山 泰一
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.79-80, 2022-01-15

文部科学省は2021年7月30日,2025年の大学入学共通テストから「情報」を出題教科として,「情報I」をその科目とすることを決定した.現在,国立大学協会(国大協)で,2025年に実施する入学者選抜制度が議論されている.これまで,国立大学は一般選抜においては,第一次試験として大学入学共通テスト(原則5教科7科目)を課してきた.これに「情報」を加えた「6教科8科目」を原則とすることが検討されている.本稿では,その経緯と,国立大学の入試科目に「情報」が加わることの意義について述べる.
著者
仏書刊行会 編
出版者
仏書刊行会
巻号頁・発行日
vol.第46巻 覚禅鈔 第2, 1922
著者
新矢 将尚 紀 雅美 山口 之彦
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.58-62, 2020
被引用文献数
1

<p>指定外着色料の一つであるパテントブルーVによる,輸入食品の食品衛生法違反は後を絶たない.パテントブルー色素の名称で市販されているものには,化合物名が異なるものがある一方,複数の異なる化合物がパテントブルーの名称で市販されている場合もあるため,注意が必要である.パテントブルー色素と推察される市販色素9品について,TLC,HPLC,LC-MS/MSで分析したところ,いずれの方法でもパテントブルーV,アズールブルーVX,イソスルファンブルー,アルファズリンAの4種に識別され,製品情報が不明瞭な試薬も同定された.パテントブルー群については,命名法を統一することで誤認の可能性を軽減できると考えられる.</p>
著者
田中 文彦
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子 (ISSN:04541138)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.76-80, 2008-02-01 (Released:2011-10-14)
参考文献数
24

高分子の統計力学研究に現れた三つの数学的手法にスポットライトを当て,高分子と数学との相互交流の発展史をたどリ将来を展望する。まずループのエントロピーとアッペル関数の特異点との関係,次にゴム弾性理論で構築された不規則系理論(レプリ力理論)とそのスピングラスへの適用,最後にカスケード確率過程とゲル化反応理論を取り上げる。
著者
横山 修 泉 明宏 中村 克樹
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.23, pp.91, 2007

近年、マカクザルが、自らがある事柄を記憶しているか否かをある程度理解していること、つまり、メタ記憶能力を持つことを示唆する結果が報告されている。例えば、長期間の訓練後にあるアカゲザルは、記憶課題の正試行と誤試行とで異なる報酬を選択できることが示された。しかし、例数も少なく、また長期の訓練が必要かどうかなど、マカクザルのメタ記憶能力に関しては未だよく分かっていない。本研究では、記憶課題遂行後に報酬を得るためにある画像に触れることを要求する遅延見本合わせ課題を用い、記憶課題の訓練以外に特別な訓練をせず、報酬を要求する行動が記憶課題の正誤に応じて異なるかどうかを解析した。まず、タッチパネルモニタを用いて1頭のニホンザルに遅延見本合わせ課題を訓練した。十分な訓練後、試行の最後に別の画像を呈示するようにした。その画像に触れること(報酬要求行動)で、記憶課題が正解だった場合にはサツマイモ、誤りだった場合にはタイムアウトを与えた。その後、新しい試行を開始した。報酬要求行動における反応潜時を解析したところ、正試行よりも誤試行において有意に長く、ニホンザルが記憶課題に正しく答えたかどうかを区別していたことが示唆された。与えられる報酬や罰は反応潜時によって変化しないため、成績依存的な反応潜時の違いは訓練を通して獲得されたものではない。ニホンザルが、記憶課題後その正誤に応じて自発的に異なる行動をとったと考えられる。特別な訓練を行わずにこうした行動が見られたことは、ニホンザルには記憶に基づいて自ら行なった行動の妥当性を評価する能力があり、外部環境だけでなく内部状態をも考慮に入れたより適応的な行動の産出を行いうることを示唆する。
著者
盤指 豪
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.1250-1253, 2012

2012 TAPPI International Conference on Nanotechnology for Renewable Materials が2012年6月4日~7日の4日間に渡ってカナダのモントリオールで開催された。カンファレンスの開催地であるカナダをはじめ,北米ではArboraNano(カナダ),CelluForce(カナダ),Agenda2020(アメリカ)といった産学官のプロジェクトがNano Crystalline Cellulose(以下NCC)を中心にナノセルロース研究を進めている。中でもCelluForceは1t/日の製造能力を有するNCCプラントを完成させ,世界的に注目を集めている。今回は初日にCelluForceのNCCプラントツアーが組まれ,希望者のみの参加であったが,当日はキャンセル待ちが出るほどの人気を博した。<BR>カンファレンスには北米,欧州を中心に20カ国から200名以上の参加があり,口頭発表,ポスター発表,パネルディスカッション,ワークショップなど計60件を超える発表が26セッションに分けて執り行われた。昨年同様,ナノセルロースの基礎研究,応用研究,標準化,安全性評価など多岐に渡る報告がなされ,各国の注目度の高さが伺えた。本稿では,CelluForceのNCCプラントツアーおよびカンファレンスの発表の中から数報を抽出し,その概要を報告する。