著者
井上 正鉄 Masakane Inoue
雑誌
南極資料 = Antarctic Record (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.271-284, 1991-11

第27次観測隊に参加した筆者によって採集された標本を中心に基準標本等と比較検討した結果, 広義のヘリトリゴケ属地衣類の1新種, 1新組み合わせ種を含む3属5種を認めた。すべて, 昭和基地周辺地域では新産種である。各々について形態・地衣成分・地理分布を記載し, 近縁種との関係を論じた。(1) Carbonea capsulataは亜南極地域に分布する近縁のC. vorticosaと, 子器殻excipulumの菌糸の太さ及び地衣成分の異同で区別できる。本種は大陸性南極の数ヵ所で知られている。本地域では大陸周縁の露岩域に普通にみられる。(2) Lecidea andersoniiは, 北半球に広く分布し南極地域でも数ヵ所から報告されているLecidea auriculataに酷似するが, これとは子嚢下層hypotheciumの着色の有無や胞子サイズで区別できる。本種はウイルクスランドから新種として記載されて以来, 他地域からは報告されていないが, 昭和基地周辺地域では比較的普通にみられる。(3) Lecidea cancriformisは光沢のある褐色の地衣体を有する点で他の種と容易に区別がつく。北半球に広く分布し, 亜南極の数ヵ所にもその生育が知られている近縁のLecidea atrobrunneaとは地衣成分の違い, 地衣体髄層のヨード反応で区別できる。本種は大陸性南極に広く分布し, 昭和基地周辺地域でも普通にみられる。(4) Lecidea soyaensisは子嚢下層下部の髄層がクモの巣状の菌糸で構成され, よく発達した子器殻を有する点, また本種と近縁なLecidea auriculata群にみられない地衣成分スチクチン酸を産する点で新種として区別された。宗谷海岸ラングホブデ産。(5) Lecidella sipleiは側糸と子器殻を構成する菌糸の形状, 及び子嚢頂部の構造からLecidella属のもとに置くのが妥当と考えられる。北半球に広く分布し, 亜南極からもその生育が報告されているLecidella bullataに最も近縁と思われるが, これとは地衣体の形状, 地衣成分の異同で区別できる。本種は大陸性南極のマリーバードランドとビクトリアランドの2ヵ所から報告されているにすぎないが, 昭和基地周辺地域では普通にみられる。
著者
斉藤 哲 Brown M. Korhonen F.J. McFadden R.R. Siddoway C.S.
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.191, 2010

西南極マリーバードランドに分布するフォスディックミグマタイト-花崗岩複合岩体は、白亜紀のゴンドワナ大陸分裂に伴い隆起・削剥した東ゴンドワナ大陸古太平洋縁辺部の中~下部地殻と考えられている。当岩体には小規模な花崗岩体とミグマタイト化した片麻岩類に伴って、苦鉄質岩脈や閃緑岩の小岩体が分布している。本研究から得た苦鉄質貫入岩類のジルコンU-Pb年代は白亜紀を示した。また苦鉄質貫入岩類は中カリウム~高カリウム系列で塩基性~中間組成を持つ。微量元素パターンはLIL元素に富み、Nbの不異常を示すことからスラブ由来物の汚染を受けた岩水マントル起源と考えられる。Sr-Nd同位体データもエンリッチマントル起源を示唆する。本研究結果から、苦鉄質岩類はマントルプルーム活動に由来するのではなく、背弧拡大に関連した陸弧下マントルの融解起源と考えられる。
著者
山根 雅子 横山 祐典 三浦 英樹 前杢 英明 岩崎 正吾 松崎 浩之
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.329, 2008

近年開発された表面照射年代測定法は、二次宇宙線の作用により岩石の石英中に生成される宇宙線照射生成核種 (TCN) の濃度から、地表面が宇宙線に被爆した期間を直接求める手法である。この手法によって、これまで不確定性が高かった、南極氷床の最終退氷の時期が明らかになりつつある。発表者の研究グループは、東南極リュツォ・ホルム湾の露岩域から採取された岩石試料の石英に含まれる<SUP>10</SUP>Beと<SUP>26</SUP>Alの定量を行ない、この地域における氷床変動の研究を進めている。東南極のマック・ロバートソンランド、西南極のマリー・バードランド、南極半島においても、この手法を用いた最終退氷の時期に関する研究が行われている。TCNを用いたこれらの研究結果から、(1) 南極のどの地域も最終退氷の時期は完新世であること、(2) 東南極氷床は西南極氷床や南極半島氷床より気温の変化など、氷期の終焉によりもたらされた環境変化に対して、相対的に安定していたことが示唆された。
著者
小西 一之 堂地 修 岡田 真人 宮沢 彰 橋谷田 豊 後藤 裕司 小林 修司 今井 敬
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.11, pp.1075-1084, 1997-11-25
参考文献数
26
被引用文献数
4

持続性黄体ホルモン製剤であるCIDR-B(以下CIDR)を用いて発情周期を制御したウシのFSHによる過剰排卵処理について,Estradiol-17&beta; Valerate (EV)を投与したときの効果を黒毛和種未経産牛を用いて調べるとともに,短期間に実施した連続過剰排卵処理の影響を調べた.黒毛秘種未経産牛16頭を試験牛とし,無作為にEV投与区とEV非投与区(対照区)に分けた.試験牛には発情周期にかかわらずCIDRを膣内に装着し,その翌日にEV投与区にはゴマ油2mlに溶解したEV 5mgを,対照区にはゴマ油2mlを頸部筋肉内に注射した.これらの投与後5日目から過剰排卵処理を開始した.FSH計20AUを3日間の漸減法により筋肉内注射し,FSH投与開始後3日目にCIDRを除去するとともにクロプロステノール750&mu;gを筋肉内注射することにより発情を誘起した.人工授精を約12時間間隔で20行い,発情開始後7日目に非外科的に胚の回収を行った.以上の処理を1クールとし,EV投与区と対照区を交互に反転しながら4クール行った.採胚間隔は28日とした.なお,第3および第4クールは16頭のうち12頭で行った.第1および第2クールでは超音波断層装置によりCIDRの装着から除去まで1日おきに卵巣の動態を観察した.第4クールまでの12頭の過剰排卵処理成績について,EV投与と処理回数の2元配置により分散分析を待った.EV投与により回収卵数は有意に増加した(P<0.05).処理回数の影響はま黄体数でのみ有意であった(P<0.05).また,第1と第2クール分,第2と第3クール分,第3と第4クール分の連続する2クール分の成績をまとめた結果,いずれの場合も対照区の回収卵数が10あるいは8個未満のウシでは,反転させたEV投与区では採胚成績は有意に改善された.しかし,対照区の回収卵数が10あるいは8個以上のウシでは反転させたEV投与区での成績は対照区と差は認められなかった.第1および第2クールの卵巣の追跡では,過剰排卵処理開始時において,対照区に比べ,反転させたEV投与区の大卵胞(径82nm以上)数は有意に少なかった.以上より,CIDRを用いた過剰排卵処理ではEVを併用投与することにより,卵巣中の大卵胞数が抑制されるとともに,過剰排卵処理成績が改善されることが示唆された.
著者
斉藤 哲 Korhonen Fawna J. Brown Michael Siddoway Christine S.
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.35, 2008

西南極マリーバードランド、フォード山脈に分布するフォスディック花崗岩ミグマタイト複合岩体は、ミグマタイト化した片麻岩類とそれに伴う花崗岩類からなり、中~下部地殻相当の変成圧力条件(約6~10 kbar)が見積もられている 。フォスディック岩体の花崗岩類は、珪線石を含みSrとBaに乏しいもの(低Srタイプ)と珪線石を含まずSrとBaに富むもの(高Srタイプ)に区分される。ジルコンU-Pb年代測定の結果、これらの花崗岩類はデボン紀~石炭紀の陸弧火成活動と白亜紀のゴンドワナ大陸分裂に伴う複変成作用が引き起こした深部地殻の融解により形成したと考えられる。白亜紀の高Sr花崗岩類は、マリーバードランドに広く分布する白亜紀の浅部貫入岩体であるバードコースト花崗岩とジルコンU-Pb年代・Sr-Nd同位体組成が類似しており、浅部地殻に珪長質メルトを供給したフィーダー帯に相当すると考えられる。
著者
飯田 泰三
出版者
法学志林協会
雑誌
法学志林 = 法学志林 (ISSN:03872874)
巻号頁・発行日
vol.92, no.3, pp.1-4, 1995-03-10
著者
倉沢 一 Hajime KURASAWA
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
no.58, pp.204-234, 1977-03

南極の火山の分布は,後期新生代に関して,いわゆる造山帯の傾向あるいは歴史と同様な特徴をもっている.南極のマリー.バードランドとビクトリアランド地域はアルカリ岩系の岩石区の特徴をもって,さまざまな変化をみせている.南極半島地域の南シェトランド諸島は玄武岩~安山岩の組み合わせで,Na成分に富むとはいうものの,それらの性質からは,アルミナに富む高アルカリソレアイト系列に属すると考えられる.ストロンチウム同位体組成などから,ロス島火山岩類は,大陸に隣接していながら,ホット・スポットという意味をもって,海洋島のそれらによくにた性質をもっているという結論がえられた.同位体地質学的あるいは化学的性質から,南極地域の火山および火山岩類を検討した.
著者
松田 真治 伊東 栄介
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:21888833)
巻号頁・発行日
vol.2020-MPS-130, no.4, pp.1-6, 2020-09-22

本研究では麻雀における他家の待ち牌予測を,機械学習手法の Neural Network を用いて行う.先行研究では,他のプレイヤーの待ち牌を予測する場合,時系列情報を省いている.そのため,手順や局面の状況を利用できない予測となっていた.手順や局面の状況を予測に使うため,本研究では牌の切られた順序情報を学習に用いる手法を提案する.具体的に,麻雀ゲーム「天鳳」の牌譜データを対象に,先行研究の手法と本研究の提案手法とを適用し,待牌を予測した.その結果,先行研究と比較して F1 score を 4.16 % 向上させることができた.
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1170, pp.56-59, 2002-12-09

ロームには社章や社旗、社歌といった類のものは一切ないんです。本社の前には、旗を揚げるポールもありません。まして創業者の銅像なんて、実にくだらないものですよね。その昔、ソビエト連邦が崩壊した時に、レーニンの銅像が引きずり下ろされて踏みつけにされたじゃありませんか。社章だとか銅像は、そんな程度のものなんですよ。
著者
壽田 祐大 金田 礼人 本田 功輝 中島 康貴 山元 元司
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集
巻号頁・発行日
vol.2021, pp.1P2-I02, 2021

<p>Mobile robots with both high trampling ability and low COT are required for hazard removal and disaster rescue in unstructured environments. In this paper, we present a Spider-Man inspired mobile robot that can brachiate using wires to overcome obstacles. The proposed mechanism has two wire injection mechanisms and winding mechanisms. By ejecting the two wires toward a ceiling and rewinding them, the robot can control its position and angle for brachiation. Then, by detaching one of the two wires, the robot starts brachiation and lands on a remote point. We build a prototype robot and experimentally verify that it can brachiate along the target trajectory.</p>
著者
中根 大介 西坂 崇之
出版者
日本乳酸菌学会
雑誌
日本乳酸菌学会誌 (ISSN:1343327X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.10-16, 2020

<p>生命にとって動きは本質的である。多くのバクテリアは、べん毛という繊維構造を使って水中を自由自在に泳ぐことができる。一方、このような優雅な運動様式を持たずに動き回るものもたくさん存在する。この不思議な生体運動は、多種多様なバクテリアにおいて観察されており、多くの研究者を魅了してきた。しかし、べん毛を使わずに、一体どのようにバクテリアが動くのか、そして推進力を発生する装置は何なのか、こういった点について不明のままであった。ところが、この 10-20 年の間に顕微鏡の可視化技術が発達することで、バクテリア個体やそこに含まれる運動装置の動きや構造を詳細に観察できるようになり、これらの運動メカニズムの理解は飛躍的に進展した。本総説では、「スパイダーマン」のように「糸」の伸縮による動きまわる仕組み、「キャタピラ」のように膜表面の流れを使って這う仕組み、「ドリル戦車」のように高粘性環境を潜りながら動く仕組みなど、バクテリアという小さな生命体が独自に発達させた生体運動様式について解説し、我々が得た最新の知見について紹介する。</p>
出版者
最高裁判所
巻号頁・発行日
vol.刑事 120(昭和32年8月-昭和32年9月),
出版者
最高裁判所
巻号頁・発行日
vol.刑事 134(昭和35年6月-昭和35年7月),