著者
松森 昭
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1994

近年、血中TNF-αの測定が可能となり、各種の癌、感染症、膠原病において高値を示し、また、重症心不全において上昇することが報告され、心不全末期のカヘキシ-との関連が示唆された。研究者らは心筋炎、心筋症なとの血中サイトカインを測定し、急性心筋炎ではIL-1α,IL-1β,TNF-α,などの炎症性サイトカインが高値を示し、拡張型心筋症、肥大型心筋症でTNF-αが上昇することを発見した。また、マウスEMCウイルス性心筋炎モデルにおいて血中TNF-αが上昇し、抗TNF-α抗体の投与により心筋細胞障害が軽減することを明らかにした。本年度は、同モデルにおいてサイトカインの発現を経時的に検討した。4週令DBA/2マウスにencephalomyocarditis(EMC)ウイルスを接種し、1、3、7、14、28、80日後に屠殺、心臓を摘出し、RNAを抽出、cDNAを合成し、PCR法を用いIL-1β,IL-2,IL-4,IL-10,IFN-γ,TNF-αのmRNAおよびEMCウイルスRNAを半定量した。EMCウイルスRNAはウイルス接種1日後より検出され、7日後に最高となったが、80日後でも検出された。IL-1β,TNF-αは3日後から有意に発現が増強し、多くのサイトカインの発現は7日後に最高となり、すべてのサイトカインmRNAは80日後も検出された。近年開発された強心薬ベスナリノンは心不全の生存率を著明に改善することが報告され注目されているが、最近のわれわれの研究によりベスナリノンはIL-1,IL-6,TNF-α,IFN-γなどのサイトカイン産生を抑制することが明らかとなった。ベスナリノンはEMCウイルス性心筋炎の生存率を用量依存的に改善し、心筋細胞障害および炎症所見を改善した。しかし、ベスナリノンに抗ウイルス作用はなく、LPS刺激による脾細胞からのTNF-αの産生を抑制したことから、ベスナリノンはサイトカイン産生を抑制することにより心筋炎を軽減したと考えられた。
著者
石井 誠士 Seishi ISHII 兵庫県立大学看護学部専門関連科目哲学系 Philosophy General Education College of Nursing Art and Science University of Hyogo
出版者
兵庫県立大学看護学部
雑誌
兵庫県立大学看護学部紀要 (ISSN:13498991)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.1-8, 2005

ドイツの医師アルベルト・フレンケルは、1900年頃ストロファンティン静脈注射治療を創始した人として有名である。ハイデルベルクとバーデンヴァイラーの2つの町に病院を開設したことや若い優秀な医師や看護師を養成したことも大きな功績である。 しかし、人々が彼において特に期待したものは、むしろ、彼の患者を受け容れる仕方、姿勢であった。善良さ、患者の訴えにひたすら耳傾ける姿勢、患者への自己の絶対的な依存性、今日、医師と患者の間のパートナーシップ関係について言われる受動的非対称性passive Asymmetrieこそが、フレンケルの医学の第1の特徴をなしている。だが、強調しなければならないことは、フレンケルが、ヴァイツゼッカーと同様に、病気への自然科学的なアプローチを軽んずるどころか、むしろ重視したことである。自然科学的研究と臨床、内在と超越とが、彼の場合には、一つに結びついている。ここにこそフレンケルの「大いなるスタイルの医学」の秘密があり、またその今日性がある。
著者
津村重舎 著
出版者
時潮社出版部
巻号頁・発行日
vol.第2編, 1935
著者
望月 浩志 大谷 優 大森 沙江子 吉田 美沙紀 渡辺 楓香 藤山 由紀子 新井田 孝裕
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.73-79, 2018 (Released:2019-03-08)
参考文献数
15
被引用文献数
1

【目的】斜視や弱視で通院中の患児における三歳児健康診査(以下、三歳児健診)の判定状況を調査した。【対象および方法】斜視や弱視によりA病院に通院中の患児30名(男16名・女14名、年齢9.1±3.2歳)の保護者に、三歳児健診で眼科医療機関への受診(3次健診)を勧められたか、勧められなかった場合の眼科受診のきっかけについて聞き取り調査を行った。調査結果と患児の視機能の関係を検討した。【結果】30名中24名(80.0%)は三歳児健診で3次健診を勧められていなかった。勧められなかった24名のうち斜視は15名で、内訳は内斜視5名、外斜視2名、間欠性外斜視7名、上斜視1名であった。24名のうち弱視は13名(斜視と重複含む)で、内訳は屈折異常弱視4名、不同視弱視5名、斜視弱視4名であった。斜視15名の眼科受診のきっかけは、保護者の気づきや保育園や幼稚園教員の指摘11名、保育園や幼稚園、小学校での健診を含む3歳以降の健診4名であった。斜視弱視を除く弱視9名の受診のきっかけは、保育園や幼稚園教員の指摘2名、3歳以降の健診7名であった。【考按】所管する市町村によって携わる医療職や健診内容に差があるが、本調査では斜視や弱視を有する患児の80.0%は三歳児健診で3次健診を勧められていなかった。1次および2次健診の精度向上をめざし、屈折検査の導入などの視機能異常の検出方法の改善や視能訓練士などの眼科専門職の参加が必要であると考える。

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著者
国立研究開発法人科学技術振興機構
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
JSTnews (ISSN:13496085)
巻号頁・発行日
vol.2020, no.9, pp.7-8, 2020

<p>【研究成果】インドア派? アウトドア派?ウイルスの感染戦略を数理モデルで解析</p><p>【研究成果】金属と有機分子が結晶化するメカニズムを解明 マイクロ流路で観測、多孔性材料の開発に指針</p>
著者
深澤 史朗 永井 素大 中村 公美
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌
巻号頁・発行日
vol.23, pp.O063, 2007

【はじめに】今回、心筋炎を発症し経皮的人工心肺補助装置(PCPS)装着後3日で離脱。しかし両下肢壊疽により両側大腿切断。その後臥床時に原因不明の左上肢麻痺(腕神経叢麻痺)や胆嚢炎を併発し車椅子でのADL自立獲得において難航した症例を経験させて頂いたので報告する。<BR>【症例、評価、経過】45歳女性。体重50kg。夫と義母の3人暮らし。子供なし。2005/3/26風邪症状で入院。心筋炎診断。3/27PCPS装着。4/13両下肢壊疽により切断。6/3BS訓練開始【1、断端 右40cm左5cm。2、MMT左上腕2~3左前腕2~3左手指2両下肢3。3、表在感覚は左手掌脱失。左前腕から手指は鈍麻。4、基本動作の寝返りは手摺を利用。起き上がり全介助。座位保持は骨盤後傾し全体に屈曲した姿勢で固定的に構える。前後左右への体重移動は不可能。5、ADL全て介助(FIM53点)。】6/14車椅子乗車。移乗全介助。座位バランスは左右移動時右側への移動が左に比べて範囲は大きい。前後への移動は骨盤前後傾によって調整可能。移乗は臀部挙上時軽介助。6/22胆嚢炎治療開始(絶食)。8/上旬食事再開。8/17カンファレンス(医療スタッフ、本人、家族)家屋見学。8/25プッシュアップ保持約2分可能。車椅子から床への移動は約10cm段差を3つ利用し、階段昇降式に可能。車椅子自走可能。9/2プッシュアップ段差越えは臀部より約20cmの段差が可能。車椅子からベッド移乗は監視。9/20毎週末外泊。10/21退院。<BR>【考察】訓練開始時は突然の両側大腿切断のため身体内部表像の変化に対応できなかった。座位時は、左上肢麻痺のため上肢を錘としてバランスコントロールができず、保護的利用も不可能。移動や移乗は全介助。又、胆嚢炎治療(絶食)のため疲れやすく、継続的訓練が困難。精神的にも今後への不安から落ち込んでいた。当時、本人は高齢な義母の負担を考えADL自立を熱望していた。そのため、本人や家族と相談を繰り返した結果、義足処方は体力面や安全面から先送り、車椅子ADL自立を退院時目標に設定し訓練を進めた。経過と共に左上肢麻痺は軽減したが動作遂行の妨げとなってしまった。そのため、バランス時の保護的利用やプッシュアップ動作獲得には多くの時間を要した。最終的に左上肢麻痺は残ったが、何とかプッシュアップ動作を獲得できた。<BR>車椅子座面の高さは、自宅キッチンや洗面台再利用と便座や階段昇降機座面への移乗労力軽減の両方から検討した結果40cmに設定。そして、訓練時車椅子から床移乗において台を作成して臀部から階段昇降する動作訓練に時間を割いた。結果、自宅で台やソファーを利用していつでもどこでも1人で移乗可能となり、浴室もスノコを階段状に設置して自立した入浴動作を獲得した。洗顔や排泄時の更衣動作等も安全で円滑に行い、全ての家事動作も自立。趣味の菓子作りにも成功。自宅内車椅子ADL自立を獲得できた。
著者
天野 治
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌 = Journal of the Atomic Energy Society of Japan (ISSN:00047120)
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.759-765, 2006-10-30
参考文献数
7
被引用文献数
2 2

<p> 石油は1次エネルギーの40%を占め, われわれの生活を豊かなものにしている。ところが, われわれ人類は, 石油をこの50年で半分使いつつある。それも取り出しやすい, 経済的なものから使っている。残っているものは, 取り出すためにエネルギーがかかるものである。得られるエネルギーを取り出すためのエネルギーで除したものがEPR (energy profit ratio, エネルギー収支比) である。EPR=1はエネルギーを得るのと, 取り出すためのエネルギーが同じことを意味する。これは, 益がない。取り出すためのエネルギーとして, そのためにかかるすべての項目を可能な限り算定する。燃料の採掘, 輸送, 発電所の建設, 運転, 補修, 廃炉, 廃棄物処理・処分までを含む。EPRが高いことは, 石油の代替として有力な候補となる。</p><p> ウラン濃縮に遠心分離法を用いた原子力発電はEPRが高い。従来のガス拡散法はウラン濃縮に莫大なエネルギーが必要となり, 人力エネルギーを大幅に増加させるため, EPRは低くなる。EPRを高めるには, 出力エネルギーを増加させることも有効な方法である。具体的には, 稼働率を向上させること, 定格出力を上げることである。</p><p> 風力発電や太陽光発電のEPRは高くはない。これは, 風の強さ, すなわち出力エネルギーが定格の60%以下と低いことと稼働率が低いことによる (風力は風が吹いている間, 太陽光は日中のみ)。LNGは気体であり, 輸送のために液化するエネルギーを費やすので, 石油火力や石炭に比べてEPRは低い。</p>
著者
梅井 凡子 小野 武也 十河 正典 沖 貞明 大塚 彰 大田尾 浩 梶原 博毅 武藤 徳男
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.191-195, 2011 (Released:2011-06-07)
参考文献数
17
被引用文献数
4 3

〔目的〕虚血再灌流後の骨格筋の状態を経時的に確認すること.〔対象〕8週齢のWistar系雌性ラット41匹を7群に振り分けた.群わけは正常群と再灌流時間の異なる6群とした.〔方法〕駆血圧300 mmHg,駆血時間90分間で右大腿に駆血を行い異なる時間再灌流を行った.筋萎縮評価にはヒラメ筋相対体重比とヒラメ筋線維横断面短径を用いた.〔結果〕正常と比較し,ヒラメ筋相対体重比は再灌流時間が96時間群で,ヒラメ筋線維横断面短径は再灌流時間が72時間群で,それぞれ有意に減少していた.〔結語〕骨格筋において虚血再灌流後には浮腫が発生するとともに筋萎縮も発生していることが確認できた.
著者
中川 徹夫 Testuo NAKAGAWA
出版者
神戸女学院大学研究所
雑誌
神戸女学院大学論集 = Kobe College studies (ISSN:03891658)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.41-50, 2018-12

植物色素の一種であるアントシアニンは、中性では紫色を示すが、酸性では赤色~赤紫色、塩基性では青緑色~緑色~黄色とその色調を変化させるため、化学実験の酸塩基指示薬として利用できる。以前に著者は、巨峰の果皮やマロウブルーから抽出したアントシアニンを高等学校化学の教材として使用する方法について提案した。本研究では、12ウェルプレートと巨峰の果皮およびマロウブルーを用いた各種水溶液の酸性、中性、塩基性の識別に関するマイクロスケール実験教材について検討した。試薬として、0.1、0.01、0.001mol/L 塩酸 (HCl) 、0.1mol/L 酢酸 (CH₃COOH) 、0.1mol/L 塩化ナトリウム (NaCl) 、0.1mol/L ショ糖 (C₁₂H₂₂O₁₁) 、0.1、0.01、0.001 mol/L 水酸化ナトリウム (NaOH) 、0.1mol/L アンモニア (NH₃) 、飽和水酸化カルシウム (Ca(OH)₂) (石灰水) を用いた。希薄な0.001mol/L HCl と NaOH 以外は、アントシアニンの色調変化よりそれぞれの水溶液の酸性、中性、塩基性を識別できた。本教材を用いた授業実践を兵庫県下の高等学校2校で実施し、高等学校化学基礎の教材としての有用性を確認した。Anthocyanin, a plant pigment, shows purple in neutral, however, it turns red or red-purple when acidic and blue-green, green, or yellow when basic. Therefore, it can be used as an acid-base indicator in chemistry experiments. Previously, we proposed how to use them as teaching materials for high school chemistry. In this study, we have investigated teaching materials for a microscale experiment on classifying various aqueous solutions into acidic, neutral. and basic ones using a 12-well plate, kyoho peels, and mallow blue's petals. We have used various aqueous solution such as 0.1, 0.01, 0.001 mol/L hydrochloric acids (HCl), 0.1 mol/L acetic acid (CH₃COOH), 0.1mol/L sodium chloride (NaCl), 0.1mol/L sucrose (C₁₂H₂₂O₁₁), 0.1, 0.01, and 0.001 mol/L sodium hydroxides (NaOH), 0.1 mol/L ammonia (NH₃) (ammonia water), and saturated calcium hydroxide (Ca(OH)₂) (limewater). Except for 0.001 mol/L HCl and NaOH, these aqueous solutions can be correctly classified into acidic, neutral, and basic ones from the color change of anthocyanin. Using these microscale teaching materials, practical lessons have been carried out at two senior high schools in Hyogo Prefecture, and it has been found that such teaching materials are useful for high school basic chemistry.