著者
松﨑 堅太朗
出版者
日本監査研究学会
雑誌
現代監査 (ISSN:18832377)
巻号頁・発行日
vol.2017, no.27, pp.99-110, 2017-03-31 (Released:2017-08-15)
参考文献数
25

調整(コンピレーション)業務は非保証業務であるが,会計士が財務諸表に一定の信頼性を付与する業務として,諸外国では主として中小企業を対象に広く実施されている。わが国には調整業務に関する基準は存在しないが,2012年3月にIFACより,ISRS4410(調整業務に関する基準書)が公表され,今後の国内基準化も期待される。また,AICPAは2014年10月に,調整業務を含む最新の業務基準書,SSARS No.21を公表したが,ISRS4410とSSARSにおける調整業務は,会計士の独立性の違いにより,報告書(レポーティング)の記載内容が異なっている。一方,わが国では,調整業務に類似する業務として,会計参与報告,税理士による書面添付制度,中小会計要領(中小指針)のチェックリストの添付といった実務がすでに定着しているが,国際的な調和は図られていない。このような事実をふまえ,今後,わが国の中小企業の属性に配慮した,「中小企業の財務諸表作成証明制度」といった,新たな調整業務に関する基準作成が望まれる。
著者
虫賀 幹華
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.95, no.1, pp.49-73, 2021

<p>北インドのヒンドゥーの聖地ガヤーで行われる祖霊祭では、「男性・女性たちのための十六」という死者の救済のためのマントラが唱えられる。本論文は『ガヤーマーハートミヤ』(十―十一世紀頃)に掲載される同マントラを和訳した上で、これを池上良正が論じるところの「無主/無遮」の両側面を含む無縁供養であるとみて分析するものである。同マントラで供養の対象となるのは、「まつり手がいない(無主)」ことあるいは異常死を理由として葬儀が執行されないことによる苦しむ死者、生前の悪行が原因で生まれ変わり先で苦しむ死者、親族を超えた非常に広範囲の祭主の「縁者」たる死者である。異常死者や転生先で苦しむ死者と祭主との関係性の不問、輪廻思想による時空を超える対象の広がり、言葉を尽くした祭主との関係性の描写といった、このマントラなりの「一切衆生への平等な(無遮)」供養のあり方にも注目する。</p>
著者
安田 文吉
出版者
東海学園大学
雑誌
共生文化研究 = Tomoiki cultural studies
巻号頁・発行日
vol.6, pp.147-153, 2021-03

1 0 0 0 IR 親忠家と俊成

著者
谷山 茂
雑誌
人文研究 (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.12, no.6, pp.551-573, 1961

一 俊成の岳父藤原親忠(定家の外祖父)については、宇槐記抄・仁平三年(一一五三)五月二十一日に「後聞、今日入道若決守親忠卒(五十九)美福門院乳母伯耆之夫也。天下無雙幸人也。」とあるので、そこから逆算すると、嘉保二年(一〇五九)に生まれたことになる。このように、親忠の生歿年はひとまず明らかに知られるのだが、その系譜については諸説があって不審な点が多い。……
著者
坪井 康浩 東野 哲也 牛迫 泰明 森満 保
出版者
JIBI TO RINSHO KAI
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.717-725, 1996

1995年5月までに宮崎医科大学耳鼻咽喉科にて行われた人工内耳手術は25例26耳であり, このうち2耳において顔面神経迷路部に近接する電極で顔面神経刺激が誘発された. 第1症例の原因は聴神経腫瘍による骨破壊や手術による骨削開で蝸牛骨包と顔面神経管の間の骨隔壁が脆弱となり漏電が生じたものと思われた. また第2症例では内耳梅毒に伴う骨病変のため迷路骨包の導電性が変化したためと考えられた. 術前のCTで, 迷路骨包と顔面神経管を境する骨が不明瞭であつたり, 迷路骨包の骨に病的所見を認める症例では顔面神経刺激誘発の可能性を考慮しておく必要がある. 本合併症に対して現時点では該当するチャンネルを不活性にするしか方策はないが, 電極の構造的な改良やマッピングの工夫とともに症例によつては蝸牛と顔面神経との間に手術的に絶縁体挿入の策も考慮すべきと考えた.
著者
伊藤 壽一
出版者
日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.175-180, 2014

要旨: 1985年に我が国で最初に人工内耳手術が行われてから30年近くになり, すでに7000人以上の方が手術を受けている。人工内耳は高度難聴に悩む方への福音となっている。各人工内耳機器の改良, 適応の拡大などによって, さらに今後手術を受ける方が増加していくものと考えられる。一方, 現在の人工内耳の適応が適切か, 手術後のリハビリテーション施設数, 言語聴覚士の数の問題, 聴覚以外のコミュニケーション手段との関係, 人工内耳機器の取り換え (アップグレード), 人工内耳に関わる費用の問題など検討すべき課題も多い。本稿では表1の各項目に関し, 人工内耳医療の現状とその問題点を, 医学のみでなく, 社会医学的な問題として解説する。
著者
佐々木 基樹
出版者
帯広畜産大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

平成18年度は、レッサーパンダの後肢足根部位のCT撮影をおこなった。CT撮影には、左後肢を用いた。脛骨長軸と足底面が垂直な状態、および、その位置から足を可能な限り回外させた状態の2通りの条件で足根関節部位のCTスキャン撮影を行った。さらに、得られたCT画像データを三次元立体構築して、足根関節の可動状況を観察した。また、肉眼解剖によって、後肢構成筋の形態を検索した。肉眼解剖の結果では、前脛骨筋の筋質はクマ科動物に比べると発達していなかった。さらに、膝窩筋の付着部位は、脛骨の近位に終止し、脛骨遠位端から膝窩筋終止部までの距離を脛骨の全長で割った比率は0.58とマレーグマの0.25-0.34、ジャイアントパンダの0.34-0.35、ホッキョクグマの0.45-0,56、ヒグマの0.49-0.56に比べるとホッキョクグマやヒグマに近い値を示した。この膝窩筋の付着範囲の結果から、レッサーパンダでは効率的な下腿の回内は見られないと考えられる。しかし、レッサーパンダの足根関節のCT画像解析の結果では、距踵中心関節において距骨頭の舟状骨関節面を中心足根骨が大きく回転し、さらに、踵第四関節において第四足根骨が、踵骨の立方骨関節面を大きく内腹側方向にスライドしていた。その結果として足の内側縁がほとんど垂直に挙上し足底が完全に内側を向いていた。これは、マレーグマで観察された足根関節の可動域よりも大きかった。レッサーパンダは生態学的には十分樹上性に適応しているが、筋による樹上適応は認められなかった。しかし、足根関節の樹上適応は明らかに認められた。大型のクマ科動物とは異なり、体重の軽いレッサーパンダにとって、関節の可動域が十分に確保されさえすれば筋を発達適応させなくても木登りは十分可能であると推測される。
著者
Harasaki Kouji Tsukuda Masanori Omura Ichiro
出版者
IEEE
雑誌
2021 33rd International Symposium on Power Semiconductor Devices and ICs (ISPSD) (ISSN:19460201)
巻号頁・発行日
pp.367-370, 2021-06-15
被引用文献数
1

Digital gate driving methods have been recently proposed to control the IGBT switching transient by dynamically changing the drive power according to the input digital pattern. It has been reported that both surge voltage suppression and turn-off loss reduction can be consistently achieved. In the prior papers, however, the effect is evaluated based on only one optimum point, so that the effect of digital gate driving technology have not been accurately benchmarked for practical use. In this paper, we proposed a new benchmarking method for digital gate driven IGBTs using an approach of Eoff-Vsurge Trade-off shifts. We applied the proposed method to 12 types of IGBT samples and analyzed the benchmarking results.