著者
田村 糸子 高木 秀雄 山崎 晴雄
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.116, no.7, pp.360-373, 2010-07-15 (Released:2010-11-11)
参考文献数
54
被引用文献数
11 13

南関東の千葉県銚子地域から東京都江東区,神奈川県鎌倉市,愛川町にかけて分布する上総層群相当層に見出された,ざくろ石を多量に含むという特徴を持つテフラ層について,記載岩石学的特徴,ざくろ石の化学組成,テフラ層の層序学的位置づけなどを検討し,これらのテフラ層が明確に対比されることを示した.そして,ざくろ石の粒径の傾向などから,その給源火山が丹沢に求められることを明らかにした.このざくろ石テフラ層を丹沢-ざくろ石軽石層(Tn-GP)と呼ぶ.Tn-GPの堆積年代は,各地における生化石層序,テフラ層序,古地磁気層序などから,およそ2.5 Maと推定される.ざくろ石を多量に含む極めて特徴的なTn-GPは,今後,南関東の各地の更新統で見出される可能性が高く,新しい層序区分におけるP/P境界付近,あるいは黒滝不整合の時代の指標テフラとして貴重な時間面を提供し,関東平野の都市基盤解明に寄与すると期待される.
著者
市川 寛也
出版者
大学美術教育学会
雑誌
美術教育学研究 (ISSN:24332038)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.57-64, 2018

<p>近年の「妖怪ウォッチ」ブームに象徴されるように,今や妖怪は視覚文化として広く認知されている。一方で,民間伝承として語られてきた妖怪の多くは視覚で捉えることのできない無形の文化である。本稿では,民俗文化と大衆文化の間で揺れ動きながら形成されてきた現代の妖怪イメージを研究対象とする。その際,過去に蓄積されてきた知識や情報を参照しながら各種の表現媒体に変換されていく過程に着目し,そこに妖怪文化の持つ本質的な創造性を見出した。「妖怪をつくる」というテーマには,既存のキャラクターをモチーフとして用いるだけではなく,妖怪がつくられる仕組みを創作活動に組み込むというアプローチを想定することもできる。その実践事例として,筆者が取り組んできた「妖怪採集」というワークショップを踏まえ,現代の妖怪文化を通じた地域学習の可能性について一つの方法論を提示した。</p>
著者
中村 和之
出版者
法政大学国際日本学研究所
雑誌
国際日本学 = INTERNATIONAL JAPANESE STUDIES (ISSN:18838596)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.186(1)-168(19), 2021-02-26

Completed in 1356, the “Suwa Daimyōjin Ekotoba” is an important historical source of the medieval history of the Ainu. In this book, the Ainu were referred to by the word ʻEzoʼ. There were three groups in ʻEzoʼ : Hinomoto, Karako, and Wataritō. Among them, the ʻKarakoʼ people have been regarded as a group that lived on the west coast of northern Hokkaido. In the 13th and 14th centuries, the Mongol Empire and the Yuan Dynasty invaded Sakhalin Island. In medieval Japanese, the group name ʻKarakoʼ can be translated as ʻthe children in Chinese attire and hairstyleʼ. The meaning can be explained by the relationship between northern Hokkaido and China.According to the records of Jesuit missionaries in the early 17th century, the place called Teshio on the west coast of northern Hokkaido was a trading hub with Sakhalin Island. And one example of Okhotsk type pottery made in the southern part of Sakhalin Island was found in ruins, dated to be after the 10th century, in Nayoro city in the inland area of northern Hokkaido. It is estimated that this Okhotsk type pottery was carried to Nayoro city via the Teshio River. At the mouth of the Teshio River, there is a large archaeological site of Satsumon culture. Thus, the mouth of the Teshio River was likely a hub for trade with Sakhalin Island from the 11th to the 17th centuries. The newly found evidence indicates the name ʻKarakoʼ originated from the close relationship between Teshio and Sakhalin Island.

8 0 0 0 OA 生物コーナー

出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.10, pp.674-678, 1987-10-25 (Released:2009-05-25)
被引用文献数
1 1
著者
松下 温
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, 1991-01-15
著者
酒井 菜穂 上野 幸三 北林 耐 小田島 安平 板橋 家頭夫
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.79-86, 2005-02-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
23

近年欧米諸国と比較して我が国において, 急速に食物アレルギー患者数が増加している.この疾患に対する標準的な治療方法はいまだ確立されておらず, 原因抗原食品の除去療法が治療の中心となっている.我々はプレバイオティクスであるフラクトオリゴ糖 (Fructooligosaccaride以下FOSと略す) に着目し, その抗アレルギー作用について病理組織学的手法を用い, 食物アレルギーの新しい治療法の選択肢になりえるかを検討した.方法として卵白オボアルブミン (Ovalbumin以下OVAと略す) 感作により食物アレルギーモデルマウスを作製し, 5%FOS摂取群と非摂取群間で病理組織学的な変化について画像解析の手法を用い, 十二指腸の肥満細胞数と絨毛の浮腫発生率を計測し評価した.FOSの投与期間は2週間および8週間とし治療効果について比較検討した.十二指腸内の肥満細胞数はOVA感作で有意に増加したが, FOS8週間投与群で肥満細胞数は有意に減少した.絨毛内浮腫の発現頻度はOVA非感作群では, 5.9% (1/17例) とほとんど認められなかったが, OVA感作群の発現頻度は66.7% (20/30例) と高率に観察され, しかも高度な浮腫が認められた.一方, FOS投与群では, いずれの投与期間でも統計学的な有意差は認められなかったが, 浮腫率は減少しており, 絨毛の組織傷害の修復に効果があることが示唆された.この研究の結果よりフラクトオリゴ糖には肥満細胞数を減少させ, アレルギー治療効果を有することが明らかとなり, 食物アレルギー治療法の一つとして有用であると考えられた.
著者
佐藤 佐織 増渕 哲子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.73, no.7, pp.387-401, 2022 (Released:2022-08-05)
参考文献数
25

本研究の目的は, 中学校家庭科教員の調理実習時における食物アレルギー対応と, 学校内での食物アレルギーに関わる組織体制の現状について把握し, 課題を提示することである. 札幌圏の中学校の家庭科教員を対象とし, 2019年11月~2020年2月に, 郵送法による質問紙調査を実施した. 質問紙配布数は公立中学校と私立中学校を合わせて計144部, 回収数は63部で, 回収率は43.8%だった. 結果は以下の通りである. 学校内の食物アレルギーに関わる組織体制が整備されていた中学校は, わずか30.1%だった. 食物アレルギー症状を持つ生徒数を把握している家庭科教員の割合は55.6%だった. 保護者から, 調理実習時の食物アレルギー対応を依頼されたことがある家庭科教員ほど, 食物アレルギー症状の有無に拘わらず, 全ての生徒が共に食べることができる共通メニューによる調理実習を実施する傾向が見られた. 食物アレルギーに対応した調理実習例が教科書に掲載された方がよいと考える家庭科教員の割合は, 76.2%と高かった. 現在, 学校では学校給食における食物アレルギー対応が重視されているが, 生徒の安全と教育の機会均等を守るため, 家庭科の調理実習にも対応できる食物アレルギーに関わる学校組織体制づくりが求められる. 今後は, 調理実習における家庭科担当教員の負担を減らし, 食物アレルギーに対応した調理実習題材の開発と普及が必要である.
著者
江川 清文
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.124, no.14, pp.3149-3156, 2014-12-20 (Released:2014-12-25)
参考文献数
43

粘膜型HPV感染症は性感染症の一つであるが,病因・病態論的多様性と共に不顕性感染の多いことが分かり,無症候性キャリアーの問題が出て来ている.したがって粘膜型HPV感染症は,顕性病変である尖圭コンジローマやボーエン様丘疹症等“clinical infections”の他に,通常では病変を認めない“subclinical infections”や“latent infections”を念頭に考える必要がある.本稿では,粘膜型HPV感染症の多様性,診断・治療面でのトピックスや性感染症としての最近の動向と問題について述べた.
著者
久保薗 愛
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.18-34, 2016-10-01 (Released:2017-04-03)
参考文献数
34

18世紀前半の鹿児島方言を反映するロシア資料には,過去否定を表すヂャッタという形式が見られる。この形式と,19世紀以降の過去否定形式を比較したところ,ヂャッタからンジャッタへという変化が認められた。近世半ば以降,本方言では否定とそれ以外の要素を分けて表現する方向に変化したものと思われる。また,表記に使用されるキリル文字の音価及び日本語表記の様相を分析した結果,この形式は否定の連用中止形デ(ヂ)+アッタに由来する可能性が高いことを論じた。
著者
森山 至貴
出版者
The Kantoh Sociological Society
雑誌
年報社会学論集 (ISSN:09194363)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.23, pp.188-199, 2010
被引用文献数
1

Gay identity and gay community are both central topics in gay studies and queer studies. However, the relationship between them remains unquestioned. This paper reveals how the relationship between gay identity and gay community has been shifted from the 90's to the present based on an analysis of discourses on coming-out.<br>Coming-out in the 90's included three important elements: aspiration for making a good relationship, high self-reflexivity and entry into the gay community. However, the latter two elements have disappeared and the meaning of coming-out has shifted. This shift demonstrates that the relationship between gay identity and gay community has become more and more irrelevant and independent.