著者
竹中 一平 落合 萌子 松井 豊
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.135-148, 2018-03-25 (Released:2018-03-25)
参考文献数
34

In modern society, the filtering of illegal or harmful content on the Internet is necessary for the healthy development of young people. However, the mental damage that Internet filtering workers may suffer has been overlooked. We examined occupational stress and related factors among Internet filtering workers in Japan. Workers (N=160) in a company providing a web-content filtering service completed a questionnaire. The percentage of all respondents with high-risk Impact of Event Scale Revised (IES-R) scores was 10.4% and with high-risk General Health Questionnaire (GHQ-12) scores was 47.0%. These results indicated that rates of mental damage among Internet filtering workers were as high as those of firefighters and journalists. IES-R and GHQ-12 scores were used as the dependent variables in the quantification method (Type 1). The results showed that these scores related to stress responses in the aftermath of witnessing traumatic illegal or harmful content, emotional empathy, and so on.
著者
田中 耕史 井上 耕一 豊島 優子 岡 崇史 田中 宣暁 外海 洋平 野里 陽一 岩倉 克臣 藤井 謙司
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.46, no.SUPPL.3, pp.S3_48-S3_53, 2014 (Released:2015-10-26)
参考文献数
1

症例は51歳男性. 頻拍の加療のため近医より紹介となった. 洞調律時, V1誘導はrsR’ パターンで+/-のデルタ波を伴っていた. 発作時心電図は230bpmのregular wide QRS tachycardiaであった.  心臓電気生理学的検査では頻拍中の心房最早期興奮部位は冠静脈洞入口部近傍であり, His不応期での心室期外刺激で頻拍はリセットされた. 房室結節を順行性に, 後中隔副伝導路を逆行性に伝導する正方向性房室回帰性頻拍と診断した.  冠静脈入口部近傍で頻拍中に高周波通電を行ったところ頻拍は速やかに停止した. その後, 逆伝導は房室結節を介するもののみとなり, デルタ波も消失した. 一方, 右脚ブロックが顕在化し, QRS幅は術前140msから術後160msに拡大した. 術前は, 右側後中隔副伝導路を介して右室が早期に興奮していたため元来の右脚ブロックがマスクされ, QRS幅も相対的に狭くなっていたと考えられた.
著者
吉田 航
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.107, pp.89-109, 2020-11-30 (Released:2022-06-20)
参考文献数
32

高等教育の学校歴が初職に与える影響は,先行研究によってくり返し検討されており,大学選抜度が初職の企業規模に与える効果が一貫して確認されてきた。一方で,学校歴の位置づけを企業側から捉えた研究は少なく,とくにその企業間異質性についてはほとんど検討されていない。そこで本稿では,どのような制度・慣行を持つ大企業で高選抜度大学からの採用が多いのかについて,大学別採用実績データの計量分析を通じて検討した。 学校歴が入社後の訓練可能性を表すシグナルとして捉えられてきたことを踏まえ,採用時に訓練可能性が重視される程度と関連する制度・慣行として,技術職採用制度と長期雇用慣行に着目した。技術職採用を行う企業では,一般的な訓練可能性よりも特定の職務能力が重視されると想定し,上位大学からの採用が少なくなると予想した。一方,平均勤続年数が長い企業では,長期的な企業内訓練(OJT)がより実施される傾向にあると想定し,上位大学からの採用が多くなると予想した。 分析の結果,技術職採用を行う企業では,上位大学からの採用が少なくなる傾向が概ね確認された。さらに,平均勤続年数が長い企業では,上位大学からの採用が一貫して多くなっていた。これらは,学校歴を訓練可能性のシグナルとみなしてきた想定を支持する経験的な知見であると同時に,長期安定雇用が維持されている企業への就職に学校歴が寄与している可能性も示唆している。
著者
乾 つぶら 島田 三恵子 早瀬 麻子 緒方 敏子 時本 秋江 保条 麻紀 新川 治子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.189-197, 2008 (Released:2009-05-20)
参考文献数
26
被引用文献数
1 2

目 的 妊娠末期から産後4ヶ月の母親の睡眠覚醒リズムの特徴と変化を明らかにする。対象と方法 同意を得た妊娠末期の妊婦57名を対象とし,このうち追跡調査できた産後1ヶ月47名,産後4ヶ月34名に縦断調査を行った。睡眠表に一日の睡眠と覚醒を30分毎に連続1週間の記録を依頼し,郵送法で回収した。夜間・昼間・総睡眠時間,最長睡眠時間とその開始時刻及び終了時刻,昼睡眠・総睡眠回数,中途覚醒時間とその回数,及び睡眠覚醒のリズム周期を検討した。結 果 総睡眠時間は妊娠末期7.79時間,産後1ヶ月6.73時間,産後4ヶ月6.91時間であり,夜睡眠時間は各々6.75時間,5.85時間,6.36時間であり,最長睡眠時間は6.39時間,3.46時間,4.13時間であり,いずれも時期による変動があった(p<0.001)。産後,これらの睡眠時間は妊娠末期よりも短縮した(p<0.01~0.001)。夜間の中途覚醒時間は妊娠末期0.42時間,産後1ヶ月1.70時間,産後4ヶ月1.14時間であり,中途覚醒回数は各々0.3回,1.7回,1.5回であり,いずれも時期による変動があった(p<0.001)。産後,中途覚醒は妊娠末期よりも増加した(p<0.001)。妊娠末期から産後4ヶ月は睡眠が分断されても,最長睡眠は0:22から6:50の時間帯にあり,睡眠覚醒のリズム周期は24.04~24.08時間であった。妊娠末期と産後4ヶ月では,最長睡眠時間とその入眠時刻との負の相関(p<0.001~0.05)がみられた。いずれの時期も入眠時刻と夜睡眠時間との負の相関があった(p<0.01~0.001)。結 論 妊娠末期から産後4ヶ月にかけて,総睡眠時間,夜間睡眠時間,および最長睡眠時間が減少し,夜間の中途覚醒が増加しても,最長睡眠時間は夜間にあり,睡眠覚醒のリズム周期は約24時間であることが明らかになった。また,妊娠末期と産後4ヶ月では最長睡眠の入眠時刻が早いほど最長睡眠時間は長いことが明らかにされた。
著者
加藤 隆 池田 俊也 武藤 正樹
出版者
一般社団法人 日本医療・病院管理学会
雑誌
日本医療・病院管理学会誌 (ISSN:1882594X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.285-294, 2013 (Released:2013-12-25)
参考文献数
24
被引用文献数
1

本研究は薬剤師による疑義照会を行なわない場合に起こると想定される治療や入院期間に対する影響を推定し,その医療費を推計することで,薬剤師による疑義照会の医療の質への貢献度ならびに経済的影響を評価することを目的とした。 東京都内の1病院にて調査を行い,12週間の調査期間中に薬剤師が行った疑義照会148例を対象とした。疑義照会が行なわれなかったと仮定した場合の治療や入院期間の影響を推定する際にデルファイ法を用いることで評価の精度を高め,医療費の算定に出来高ベースの金額を用いて医療資源削減額を評価した。 その結果,入院期間への影響は入院日数の延長,再入院日数を合わせて43症例,190日であった。また,疑義照会による医療費の回避額は推定75万円∼190万円となった。医療費を用いて疑義照会による貢献度を定量化することができた結果,薬剤師は医療の質ならびに経済面に貢献していることが確認された。

8 0 0 0 OA 北斎模様画譜

著者
葛飾北齋 画
出版者
探古堂
巻号頁・発行日
1884
著者
谷村 要 Kaname TANIMURA
出版者
大手前大学
雑誌
大手前大学論集 = Otemae Journal (ISSN:1882644X)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.63-80, 2022-07-31

近年のコンテンツツーリズム研究では、物理的場所をメディアとみなし、メディア形式を横断した「コンテンツ化」=コンテンツの「物語世界の展開・拡張プロセス」の事象としてコンテンツツーリズムの場(「聖地」)を捉える議論がある。本稿では、この議論を踏まえ、なぜ/どのように「コンテンツ化」が発動するのか、という問いからメディアミックスやキャラクターに関する先行研究を検討し、「コンテンツ化」を駆動させるリアリティの源泉として、「キャラ」の集合知の存在を指摘する。「キャラ」の集合知は、多様なメディア参加者によるコンテンツの受容・解釈・共有・編集・創造によって更新される。これらのメディア実践と集合知の同期がコンテンツツーリズムおよび「コンテンツ化」のダイナミズムを支えている。
著者
田平 隆行 池田 由里子 丸田 道雄 下木原 俊
出版者
一般社団法人 日本老年療法学会
雑誌
日本老年療法学会誌 (ISSN:2436908X)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-6, 2022-03-01 (Released:2022-03-30)
参考文献数
32

Healthy Aging(WHO)や世界的な作業療法の潮流を受け,個人にとって意味のある活動(Meaningful Activity; MA)を基にした作業療法実践が重要視されてきている。MAは「個人,集団,地域にとって個別的意味があり,納得のいく経験を促すために選択され,遂行される作業」と定義されているが,世界的なコンセンサスは得られていない。しかし,地域在住高齢者のMAを発掘し,MAに焦点を当てた実践によってIADLやQOLに効果があることが分かってきた。我々が取り組んでいる地域在住高齢者に対するMA調査においても,MAの満足度と抑うつやアパシーとは有意な関連があり,MAの満足度を高める支援が必要と考える。さらに,身体フレイルを有する高齢者は身体活動を,認知機能障害を有する高齢者は認知活動をそれぞれMAとして選択する割合が有意に低く,フレイルの各側面に応じてMAが影響を受けることも分かった。住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けるためにMAに従事し満足できるよう,本人のできることを最大限に活かした作業療法を展開していきたい。