著者
長谷 憲一郎
出版者
日本映像学会
雑誌
映像学 (ISSN:02860279)
巻号頁・発行日
vol.104, pp.51-72, 2020

<p>近代日本における染色業および紡績業の発展に尽力した稲畑勝太郎が、リュミエール兄弟と日本での独占契約を締結し、実施したシネマトグラフ事業とは、いったい何だったのだろうか。本稿は2017年に筆者が発掘した新資料稲畑勝太郎のリュミエール兄弟宛て書簡4通(1897年)によって新たに判明した五項目にフォーカスし分析した。事業の背景には映画装置の渡来直前の明治後期、古都京都において第四回内国勧業博覧会が開催され、博覧会やパノラマ館、幻燈興行といったスペクタクルが消費され、受容されていた環境があった。実業家の稲畑は、野村芳国と横田永之助のスクリーン・プラクティスに基づく視覚的実践の経験に着目し、映画興行および映画撮影を成功させるべく二人に協力を要請して彼らの経験を有効に活用した。リュミエール兄弟のサポートはもちろんのこと、彼らのような興行者の協力を得ることで、稲畑のシネマトグラフ事業は、映画が単なる映写機でも撮影機でもなく、現実世界を自動的に再創造し、イリュージョンを生み、時空間をも越えさせる装置であることを見事に示したのだ。本稿は、日本における映画前史と映画史を接続させたという点において、稲畑は日本映画史に極めて重要な役割を果たしたと結論づけた。</p>
著者
福島 可奈子 松本 夏樹
出版者
日本映像学会
雑誌
映像学 (ISSN:02860279)
巻号頁・発行日
vol.103, pp.91-112, 2020

<p>本稿は2018年に筆者らが入手した幻燈兼用の水平走行型玩具映写機とそのフィルムの精査と復元、19世紀末から20世紀初頭にかけての日独仏の玩具会社の販売カタログなど一次文献資料の分析によって、これらのアニメーションフィルムとその水平走行装置の存在とその映像史上の意義について論じる。</p><p>一般的に映画はリュミエールのシネマトグラフから始まったとされる。シネマトグラフ装置はフィルムを垂直に走行することで撮影・映写するものであり、現在のようにデジタル化が進むまで、映画はフィルムを垂直走行することで現実世界を記録・再生するのが当然であると考えられてきた。だがシネマトグラフが誕生した当初、家庭などの非劇場空間においては、実は実写映画の垂直走行装置よりもアニメーション映画の水平走行装置が先行していた。この発想は家庭用の幻燈など種々の光学玩具の延長上に必然的に登場したものであった。それ故筆者らは入手し復元された玩具フィルム2本が最古のアニメーション映画である可能性が極めて高いことを実証的に論じる。</p><p>幻燈から映画へとその流行が大きく移り変わるメディアの過渡期において、この水平走行型が大衆の映像メディアの認識において重要な役割を果たした点を本稿は明らかにする。</p>
著者
吉江 悟 高橋 都 齋藤 民 甲斐 一郎
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.51, no.7, pp.522-529, 2004 (Released:2014-08-29)
参考文献数
19

目的 行政保健師は,介護保険が実施される以前から高齢者介護サービス提供に携わるなかで,高齢者ケアマネジメントの経験・知識を蓄積してきた。原則としてその役割が介護支援専門員へ移管された介護保険施行後も,様々な対象からの相談対応を行っている。本研究では,高齢者在宅介護における対応困難事例のうち,これまであまり焦点の当てられなかった同居家族が問題の主体となるものに焦点を絞り,行政保健師の視点からみてどのような状況が対応困難と認識されているか明らかにし,具体的内容の類型化を行うことを目的とした。方法 人口67,000人,高齢化率約19%の長野県 A 市の平均経験年数10年の行政保健師に対し,同居家族が問題の主体となる対応困難事例の具体的内容を探る目的で,約90分のフォーカスグループインタビューと,1 人平均約60分の個別インタビューを実施し,インタビュー内容を質的に分析した。フォーカスグループインタビューには 6 人の保健師が参加し,個別インタビューはフォーカスグループインタビューの参加者 4 人を含む計 5 人に対して実施した。結果 同居家族が問題の主体となる対応困難事例について,「生じている介護の問題」と,その背景要因としての「同居家族の背景」の 2 つの大カテゴリーに関して,その具体的内容が分類された。 「同居家族の背景」に含まれるカテゴリーとして「1)精神・知的障害がある」,「2)介護意欲が低い」,「3)人間関係が悪い」,「4)他人が家に入ることに抵抗がある」,「5)金銭面の問題がある」が抽出され,「生じている介護の問題」に含まれるカテゴリーには「a)家族による介護量の不足」,「b)サービスの受け入れ拒否」,「c)介護における逸脱行動」が抽出された。結論 同居家族が問題の主体となる高齢者在宅介護の対応困難事例について具体的内容の類型化を行った。今回挙げられたような背景を同居家族がもつ場合には,将来対応困難となる可能性を考慮することが重要である。

1 0 0 0 OA 鼻なし村

著者
久留島武彦 述
出版者
東華堂
巻号頁・発行日
1913
著者
木下 英樹 渡辺 真通 齋藤 忠夫
出版者
日本乳酸菌学会
雑誌
日本乳酸菌学会誌 (ISSN:1343327X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.78-88, 2008-06-15 (Released:2009-09-10)
参考文献数
40

プロバイオティック乳酸菌は、宿主に対する様々な有益な生理的効果が報告されている。とくに、ヒト消化管への付着は、それらの諸作用を十分に発揮するために非常に重要な要素である。当研究室において、消化管ムチンの末端に発現している「血液型抗原」を認識する「血液型抗原認識性乳酸菌」が発見され、A型認識性レクチン様タンパク質としてSlpAが同定された。一方、病原菌(ピロリ菌など)も血液型抗原を認識することが知られており、多くの病原菌で血液型と感染発症の関連性が注目されている。最近、当研究室では強固にヒト大腸粘液層に結合していたLactobacillus plantarum LA 318株の菌体表層にグリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素(GAPDH)を見いだし、本酵素が血液型AおよびB抗原に結合することを発見した。また、結合には特徴的な血液型三糖構造が重要であることが判明し、GAPDHのN-末端側半分のNAD binding domainが付着に関与している可能性が示された。プロバイオティック乳酸菌の中でも、血液型付着能の特に高い選抜された「血液型乳酸菌」の利用により、将来的には血液型病原菌の競合的阻害や排除だけでなく、血液型抗原を同一レセプターとする食中毒原因菌や特定の腸疾患原因菌の排除を通して、各種疾病の予防や治療にも役立てられる可能性を確信している。
著者
佐藤 辰雄
出版者
法政大学
雑誌
日本文学誌要 (ISSN:02877872)
巻号頁・発行日
no.32, pp.p13-28, 1985-07
著者
屋宜 晃 設楽 哲也 岡本 牧人 佐野 肇 樋口 彰宏
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.955-959, 1987-11-20

I.はじめに インフルエンザワクチンは広範な接種が行われているにもかかわらず副作用の報告は少なく,とくにHAワクチンに変更してからは安全なワクチンといわれている。しかし稀ながら神経系の副作用の報告は散見され,とくに米国で多発したGuillain-Barré症候群の例は有名である1〜3)。最近われわれはインフルエンザワクチン接種後に生じた興味ある突発性難聴2症例を経験したので,若干の文献的考察も加え報告する。
著者
尾関 章
出版者
大和書房
雑誌
東アジアの古代文化 (ISSN:09135650)
巻号頁・発行日
no.125, pp.155-171, 2005

1 0 0 0 OA 気中放電加工

著者
国枝 正典 吉田 政弘
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会誌 (ISSN:09120289)
巻号頁・発行日
vol.64, no.12, pp.1735-1738, 1998-12-05 (Released:2009-06-30)
参考文献数
9
被引用文献数
3 3
著者
古舘 周 国枝 正典
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会誌 (ISSN:09120289)
巻号頁・発行日
vol.67, no.7, pp.1180-1184, 2001-07-05 (Released:2009-04-10)
参考文献数
11
被引用文献数
2 4

This paper describes the development of a new dry wire electrical discharge machining (dry-WEDM) method which is conducted in a gas atmosphere without using dielectric liquid in order to improve the accuracy of finish cutting. In dry-WEDM, since the process reaction force is negligibly small, the vibration of the wire electrode is minute. The gap distance in dry-WEDM is narrower than that in conventional WEDM using dielectric liquid, enabling dry-WEDM to realize high accuracy in finish cutting. Moreover, since there is no need to use water as dielectric liquid, there is no corrosion of the workpiece, making dry-WEDM advantageous for the manufacturing of high-precision dies and molds.