著者
谷岡 武雄
出版者
古今書院
雑誌
地理 (ISSN:05779308)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, 1957-04
著者
谷岡 武雄 平野 健二 芦田 忠司 田中 欣治 井上 淳
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.191-205, 1958

One of the oldest cadastral maps (drawn in 751 A. D.) kept by Shosoin, is that of the Minuma manor in Omi province of the Todai-ji temple. It shows the &ldquo;Joni&rdquo;-system which was the land system of ancient Japan. As result of our research on the &ldquo;Jori&rdquo;-system of Inukami county in Omi, it was proved that the area in the map corresponds to the domain of the modern village, Binmanji, in the east of Hikone City. We made a general and intensive survey by means of reading air photographs, land measurements, soil analysis, studying old documents and archeological excavation of the domain of the manor. The results are as follows:<br> 1) The Minuma manor belonging to the Todai-ji temple occupied the Inukami river's fan in the middle of the lake Biwa plain about the middle of the 8 th century. Inspite of fierce overflows at heavy rains, it was neccessary first of all to built a reservior and an irrigation canal for the management of paddy fields, because the ordinary quantity of water supplied by the river was insufficient and the soils of this fan was osmotic.<br> 2) Below the soils now under cultivation, there spreads the stratum of the anciently cultivated soils and it is probably the same stratum as the one containing the remains which are supposed to be belong to 8th century.<br> 3) Judging from the roads the reservoir, some parts of land division and the black coloured soils found by excavation, we think that the &ldquo;Jori&rdquo;-system was put in operation over this area to the same direction as the other parts of Inukami county.<br> 4) The land division in most parts of lands now under cultivation is very much different from the &ldquo;Jori&rdquo;-system in Inukami county, and it is adapted to the land form.<br> 5) It is better to consider that the Todai-ji manor has occupied this area based on the &ldquo;Jori&rdquo;-system. But there are some differences between the old lands of the manor and the present ones. The reasons would probably be due to the overflows or changes of various human geographical conditions.<br> 6) The history of the settlements of this area began in Nara era, at the establishment of this manor.<br> 7) The houses which occupied the hilly land consisting of the old aluvial strata, remained for considerably long period. And the houses which were situated on the flood plain of the river seem to have been lost by overflows and lateral erosion of the Inukami.<br> 8) The site of the present village seems to correspond to Shibahara (brush fields) on the map, and the village has the character of a &ldquo;Monzen-Machi&rdquo; of the Binman-ji temple which was built up in Heian era. Probably the movements of the residents from hilly land to the present site were done gradually over the long period before Meiji revolution.<br> 9) Considering the land from, the land system and the result of the archeological excavation, we conclude that contents of the map was not so different from facts.<br> 10) And so we can say that the Todai-ji manor in this area was established not through the acquirement of already cultivated lands, but through the clearing of lands which were hard to cultivate. In this, we recognize the peculiar character of the Todai-ji manor in Nara era, and this character was common the other manors of this temple.
著者
谷岡 武雄
出版者
史学研究会 (京都大学文学部内)
雑誌
史林 = THE SHIRIN or the JOURNAL OF HISTORY (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.319-350, 1973-05-01

個人情報保護のため削除部分あり駿河・遠江の両国々境に展開する大井川扇状地においては、散居景観が典型的に発達している。かかる集落型の起源について、従来は近世初期の成立にかかるものと考えられた。しかし筆者らは、居住地の時間的連続性・居住者の系統性・集落型の継承性という三方向から実態調査に基づくアプローチを行ない、いままでとは異なった結論を得るに至った。すなわち、台地の開析谷・扇側や扇裾の一部においては、大治四年の質侶荘立券文案に示されたごとき条里制に基づく土地割が残存している。また、向榛原の一部には堤防で囲われた輪中地形がある。したがって、洪水から比較的に安全な扇状地上位面(微高地) に居住し、しばしば氾濫する同下位面にて水田を営むという生活が、古代から行なわれてきたことは明らかである。しかも文安二年の請状や嘉吉三年の検地目録に記載された名主百姓の系統を引くものが、現在の散居農家の中に見いだされ、居住者の家系を若干は十五世紀前半まで、ごく一部は十二~十三世紀までさかのぼることができる。かかる事実のうえに立ち、上記立券文および検地目録、土地所有関係、本家~分家関係を検討した結果、この扇状地の大部分では、散居的開発→氾濫による耕地の荒廃→それの再開発という過程が繰り返されたけれども、居住条件が良好なところでは、全体として階層分化が進行し、居住密度が高まりながらも、同じような散居的集落形態が、歴史の諸時期を通じて継承されてきたことが判明した。十五世紀前半以降に見られる集落型の継承は、それ以前の時期においても行なわれたのではなかろうか。世界的に見て、dispersion intercalaire のタイプに属すると思われる日本の散居集落は、古代には集居集落との未分化なかたちであらわれ、遠隔地荘園が経営されるような pioneer fringe において、開拓に伴う集落型として顕現するに至ったように考えられる。There can be found a typical landscape in the boundary area between Suruga 駿河 and Tōtōmi 遠江. And it has been assumed that such a settlement-type has its origin in the early modern age. In this article I investigated this problem from three view points; that is, the continuity of the settlement area, pedigrees of the settlers and succession of the settlement-type. As the result of that investigation I found it out that in this fan man continued to live in just the same dispersed settlement from the early times. I think that type of the settlement existed not only after the first half of the fifteenth century but also before that time. The dispersed settlement of Japan which belongs to the type of the dispersion intercalaire appeared as the form not distinct from the amalgamated settlement in the ancient time and showed itself as reclamation work went on in the pioneer fringe in which remote manors was set up.
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1271, pp.52-54, 2004-12-13

11月23日朝、東京・銀座の玩具店「博品館」の前には100人を超える行列ができていた。先頭は、午前6時半から並んでいた小学校4年生の女の子2人組とその母親。お目当ては、「たまごっち」である。11時の開店とともに2つずつ購入し、思わず「うれしー」と歓声を上げた。母親も、「クラスの女の子の間でブームなんです。でも、ずっと品切れで。

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出版者
画報社
巻号頁・発行日
vol.45(2), no.534, 1921-12
著者
第五高等学校一覧 編
出版者
第五高等学校
巻号頁・発行日
vol.昭和7至8年, 1932
著者
岑 友里恵
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.568, 2007-12-15 (Released:2008-02-01)
参考文献数
2

トランスグルタミナーゼ(EC 2.3.2.13 : TGase)は1957年にClarkeらによってモルモット肝に見出されたトランスアミド化活性を有する酵素として紹介された.1968年,Pisanoらによる血液凝固の研究で,ペプチド結合-グルタミル残基(アシル供与体)のγ-カルボキシアミド基とペプチド結合-リジン(アシル受容体)のε-アミノ基との間のアシル転位反応を触媒し,ε-(γ-グルタミル)リジン(G-L)結合を形成してタンパク質間を架橋することが明らかにされた(図1).その後,TGaseは無脊椎動物,両生類,魚類,鳥類,哺乳類,植物,微生物等,自然界に広く存在することがわかり,その存在理由や生理学的役割の究明に関する生化学的分野での研究が活発化した.当初は牛,豚,魚類といった食用動物の組織や体液からの酵素抽出が行われ,分子量70~90kDa,活性中心がシステイン残基で,Ca2+依存性のモルモット肝TGaseや牛血漿TGaseが実験室規模で単離され,特に前者がTGaseとしてよく研究に用いられた.そして,動物TGaseは血液凝固,傷回復,外皮ケラチン化,赤血球膜硬化などの生理学的役割を有していることが明らかにされた.我が国においてはSekiらがカマボコ製造工程での坐りが魚の内生TGaseに起因していることを示し,Kumazawaらが実際に,すり身製造に使うスケトウダラの分子量77kDaでCa2+依存性の内生TGaseを分離・精製して以来,食品タンパク質の改質のための応用研究が盛んになった.と同時に,本酵素の食品工業向け生産方法が探索され,1989年,培養液中にTGaseを分泌する微生物Streptomyces mobarensisの変異株が発見され,通常の発酵法によりS. mobarensis起源のTGaseが工業生産されるようになった.この酵素の至適pHは5~8,至適温度は55℃で,活性中心は動物TGaseと同じで,従って反応性も同じであるが,その分子量(38kDa)及びCa2+非依存性においてそれと異なっている.この微生物TGaseのCa2+非依存性はCa2+で沈澱しやすい食品タンパク質の修飾にとって好適で,近年,魚肉すり身ゲルの弾力強化,鶏肉ゲルの食感改善,麺の歯ごたえの増加や茹で延び防止,豆腐の弾性付与,食用素材の接着,非加熱凝固ゼラチンの調製,そして可食フィルムの調製等,数多くの新規食品や機能性改変法の開発をもたらしている.また,これらTGase処理架橋タンパク質は摂食後,胃腸消化酵素でG-Lジペプチドを残してアミノ酸に分解される.G-L結合は腎臓のγ-グルタミルアミンシクロトランスフェラーゼと,腸の刷子縁膜と血液中に存在するγ-グルタミルトランスフェラーゼ(血液検査で肝臓疾患の指標とされるγ-GPT)によってグルタミン酸誘導体(G)とリジン(L)に代謝され,遊離したLは栄養成分(必須アミノ酸の1つ)として吸収される.一方,G-L結合は多くの一般食品中にも存在し,また食品調理そのものも加熱による食品素材に内在するTGaseの反応でタンパク質中のG-L結合を増加させるため,人類は火と調理の発見以来,G-L結合を摂取してきていることになり,TGaseによるタンパク質修飾は栄養学的にも有用で,安全なものであるといえる.
著者
古賀 達也 コガ タツヤ Tatsuya KOGA
出版者
総合研究大学院大学
巻号頁・発行日
2006-09-29

本研究では量子力学的な分子動力学法を用いて, グラファイト材料の水素原子吸<br />着による化学スパッタリング過程の機構を明らかにした. その経緯と概要を以下に<br />述べる.<br /> 今日, 経済発展に伴う化石資源の枯渇と環境破壊が大きな問題となっており,<br />これらに対して新しいエネルギー資源の早期開発が必要である. 実用化されてい<br />る, または実現可能と考えられる多くの代替エネルギーの中で究極のエネルギー<br />源が核融合である. しかし, その実現において最も重要である核融合炉壁材料に<br />ついては, 耐熱・耐放射線性のふさわしい材料が未だ見つからず, またプラズマと<br />壁との間の相互作用も十分に明らかにされていない. この問題を克服すべく, こ<br />れまで数多くのプラズマと固体壁に関する理論的・実験的研究が行われてきた.<br />その中でも固体壁表面の損傷については, 原子衝突により壁面の構成原子が外に<br />飛び出す物理過程だけでなく化学反応によっても表面が損傷されることが明らか<br />になってきた. そして, この後者が核融合炉壁材料に大きな影響を与える可能性<br />がこれまでの研究結果により認識されている.<br /> 化学スパッタリングは, 核融合炉材料のひとつである炭素壁とプラズマ起源の水<br />素との間で顕著に現れる. それらの相互作用は原子・分子という非常にミクロなス<br />ケールの反応であり, この詳細な過程を実験で知ることは現在の技術水準では容易<br />ではない. 一方, 固体や分子のミクロな現象の研究には計算機シミュレーションが<br />多用されている. 本研究の分野では以前から物理スパッタリングの計算機シミュレ<br />ーションによる研究が行われており, 実験結果を十分説明できる研究成果が挙げら<br />れている. しかし, 化学スパッタリングは物理スパッタリングと異なり, 原子間力<br />のみを取り扱う古典力学的な方法は不十分であり, 原子間結合の切断・結合を扱う<br />電子状態を考慮した量子力学的な取り扱いが必要である. ところが, 波動(シュレ<br />デインガー)方程式が数値的にも計算できるのは水素様の原子と10原子程度の系<br />である. そこで本研究の計算機シミュレーションでは, 電子の密度汎関数理論に基<br />づくKohn-Sham 方程式を用いている. この方法により電子の量子多体系が扱える<br />ようになるが, 古典力学と比べてはるかに多くの計算量を必要とする. このため,<br />計算機を並列に接続して分散処理を行う並列計算機(PC クラスター)を用いた.<br />以前のシミュレーション研究では, 損傷を受けていない平坦なグラファイト表面<br />上ではCH<sub>2</sub> よりさきの炭化水素が生じないことが確かめられているが, 実験ではグ<br />ラファイト内に取り込まれ同一グラファイト層上に付着した水素原子数がグラフ<br />ァイトを構成する炭素原子数に対して約50%になったとき, 化学スパッタリング<br />由来の炭化水素が観測される. このことから, 水素吸蔵と化学スパッタリングに因<br />果関係が存在すると考え本研究を行った.<br /> 計算体系としては, グラファイトを模擬材とし, そこに水素原子を順次付着させ,<br />その際に起きる構造の変化を, まず構造最適化(エネルギー最小化)の方法により<br />求めた. その結果, 吸着された水素原子密度が上昇するにつれ, グラファイトが<br />徐々に変形して構造が不安定となり, グラファイト一層あたりの水素原子付着率が<br />約50%に達したとき, 炭素原子間の共有結合が切断されCH<sub>2</sub> が発生, その後CH<sub>3</sub><br />からメタンの生成を起こして崩壊することが第一原理分子動力学シミュレーショ<br />ンにより明らかにされた. すなわち, 水素吸蔵により化学スパッタリングが容易に<br />発生して, 壁材料が大きく損傷することを示した.<br /> 一方, 実験では900K の高温域で材料表面上で炭化水素の発生量増加が確かめら<br />れている. そこで本研究では次に, この温度域での化学スパッタリングの発生過程<br />について調べる為, 原子の運動をVerlet+Nose-thermostat 法で追跡して調べた. そ<br />の結果, グラファイトの熱振動に伴いグラファイト表面に付着している水素原子が<br />表面上から離脱しやすくなり, 損傷を受けていないグラファイト表面上では化学ス<br />パッタリングが起きにくいことを確認した. 一方で, 構造最適化計算で得られたす<br />でに表面上にCH<sub>3</sub> が発生した初期状態を用いた計算では, CH<sub>3</sub> のグラファイトから<br />の離脱が確認できた. このことより, 化学スパッタリングは主に低温で起きる現象<br />であり, 高温では低温で発生した炭化水素が激しい熱振動により離脱することがわ<br />かった. また, CH<sub>3</sub> 離脱後のグラファイト表面上には大きなホールが形成されるが,<br />このホールが他のグラファイト層の破壊を容易にし, 結果としてグラファイト全体<br />へと影響を及ぼすと考えられる. 以上, 本研究は化学スパッタリング現象の基礎過<br />程を量子力学に基づき理論的に明らかにしたといえる.<br /> 本研究結果からの炉壁材料開発への提言として, 水素を吸蔵させないグラファイ<br />ト材料の開発が必要である. また, 高温域では化学スパッタリングが起き難いこと<br />から壁材料を1000K程度の高温に保持することも有効な解決方法と考えられる. 一<br />方, 本研究で用いられた密度汎関数法は実験データや他の経験則を必要とせず, 解<br />析理論, 装置実験と並ぶ数値シミュレーションという新たな研究手法である. 今後,<br />計算機性能の向上により取り扱う計算体系がより実現象に近づき, 計算機シミュレ<br />ーション法が物質現象を理解する上でさらに重要な地位を占めると考えられる.
著者
岩﨑 秀紀 廣野 恵一 市田 蕗子 畑崎 喜芳 藤田 修平 谷内 裕輔 久保 達哉 永田 義毅 臼田 和生 仲岡 英幸 伊吹 圭二郎 小澤 綾佳
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.237-243, 2016

<i>LMNA</i>遺伝子は,核膜の裏打ち蛋白であるLamin A/Cをコードし,心筋・骨格筋・末梢神経の障害,皮膚疾患など多彩な疾患の発症に関与する.<i>LMNA</i>変異には,拡張型心筋症や伝導障害,心室性不整脈の合併が多いとされ,これらの心不全・伝導障害に対して心臓再同期療法(Cardiac resyncronization therapy; CRT)の有用性の報告が散見される.本症例は乳幼児期発症の先天性筋ジストロフィーの女児で,遺伝子検査で<i>LMNA</i>変異を認めた.8歳以降,徐々に心機能が低下し,完全房室ブロックや非持続性心室頻拍を認め,13歳時より心房細動,徐脈および心不全が進行し,入退院を繰り返すようになった.14歳時に,伝導障害を伴う高度徐脈を合併した心不全に対して,経静脈的に両心室ペースメーカ植込み術を施行し,心不全症状の改善が得られた.<i>LMNA</i>関連心筋症は成人期以降に徐脈性不整脈・心不全や突然死を呈することが多く,成人例でのCRTの有用性が報告されているが,本症例のように小児期発症例においてもCRTの有用性が示唆される.
著者
箕輪 篤志 下岡 ゆき子 高槻 成紀
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.1-8, 2017 (Released:2017-07-11)
参考文献数
21
被引用文献数
4

山梨県東部の上野原市郊外に生息するホンドテンMartes melampus melampus(以下,テン)の食性は明瞭な季節変化を示した.平均占有率は,春には哺乳類33.0%,昆虫類29.1%で,動物質が全体の60%以上を占めた.夏には昆虫類が占める割合に大きな変化はなかったが,哺乳類は4.7%に減少した.一方,植物質は増加し,ヤマグワMorus australis,コウゾBroussonetia kazinoki,サクラ類(Cerdus属とPadus属を含む)などの果実・種子が全体の58.8%を占めた.秋にはこの傾向がさらに強まり,ミズキCornus controversa,クマノミズキCornus macrophylla,ムクノキAphananthe aspera,エノキCeltis sinensis,アケビ属Akebiaなどの果実(46.4%),種子(34.1%)が全体の80.5%を占めた.冬も果実・種子は重要であった(合計67.6%).これらのことから,上野原市のテンの食性は,果実を中心とし,春には哺乳類,夏には昆虫類も食べるという一般的なテンの食性の季節変化を示すことが確認された.ただし,以下のような点は本調査地に特徴的であった;1)春に葉と昆虫類も利用すること,2)秋に甲殻類も利用すること,3)秋に利用する果実の中に,他の多くの調査地でよくテンが利用するサルナシActinidia argutaがほとんど検出されないこと.占有率-順位曲線は,ある食物品目の糞ごとの占有率を上位から下位に配する.これにより,同じ平均値であっても一部の占有率が大きくて他が小さいか,全体に平均値に近い値をとったかなどの内容を表現することができる.今回の結果をこれで表現すると,1)夏,秋,冬の果実・種子のように多くの試料が高い値をとって低順位になると急に減少する,多くのテン個体にとって重要度の高い食物品目,2)春の哺乳類や春,夏の昆虫類のように直線的に減少する,占有率に偏りのない食物品目,3)春の支持組織や果実・種子,秋の甲殻類や昆虫類,冬の昆虫類や葉のように,一部の試料だけが高い値をとり,多くの試料は低い値になる食物品目の3パターンがあることが示された.これには食物の供給状態やテンの選択性などが関連することを議論した.
出版者
ほるぷ出版
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, 1920-04
著者
飯島 健太 奥平 准之 石坂 幸人
出版者
一般社団法人 日本放射線影響学会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集 日本放射線影響学会第53回大会
巻号頁・発行日
pp.129, 2010 (Released:2010-12-01)

ヒトゲノム中には動き回りえる遺伝子(トランスポゾン)が約45%存在している。中でもLINE-1(Long interspersed nucleotide element-1)は全ゲノムの17%ほどを占めており、現在でも100コピー程度のLINE-1はレトロトランスポジション能を有している。LINE-1のゲノムへのランダムな挿入は直接的に遺伝子の変異をもたらすことに加えて、細胞内の遺伝子発現プロファイルを変化させることが報告されていることから、LINE-1と発がんとの関連が強く示唆されている。 近年の研究で、LINE-1のレトロトランスポジションが放射線などのDNA損傷により誘導されることが明らかにされており、この現象はDNA損傷応答において中心的な役割を果たすATMの活性に依存していることが示されている。 本研究ではLINE-1のレトロトランスポジションを測定できるレポーターの系とエンドヌクレアーゼによるDNA二重鎖切断(DSB)誘導系を組み合わせることにより、DSBが直接的にLINE-1レトロトランスポジションを誘導することを明らかにした。また、DSBにより誘導されるLINE-1の挿入個所の指向性に関して考察したい。 また現在ATMによるレトロトランスポジション制御機構についての解析を進めており、LINE-1タンパクがATMリン酸化タンパクと相互作用することが示唆された。放射線照射後に誘導される細胞形質変化・染色体不安定性とLINE-1のレトロトランスポジションとの関連性について議論したい。
著者
大野 尚仁
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.527-537, 2000-08-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
49
被引用文献数
7 8

βゲルカンは真菌, 細菌, 植物など自然界に広く分布している。βグルカンは各々の生物において生物学的な機能を発揮するのは勿論の事, 生物間のやり取りにおいても様々な役割を演じ, あるいは産業上も重要な素材であることから注目されている。ここではβ-1,3-グルカンの構造と生体防御系修飾作用について我々の実験成績を中心に要約した。真菌βグルカンは細胞壁成分として存在する不溶性βグルカン並びに, 菌体外に放出される可溶性βグルカンに大別される。βグルカンは特徴的な高次構造をとり, 可溶性高分子では一重並びに三重螺旋構造をとる。βグルカンは様々な生物活性を示すが, その中には高次構造依存的なもの, 例えば, マクロファージからの酸化窒素産生やリムルスG因子の活性化, 並びに非依存的なものがある。βグルカンが示す活性の多くは免疫薬理学的に有用なものが多いが, 喘息の増悪因子としての作用や非ステロイド性抗炎症薬の副作用増強作用などの有害作用も示す。更にβグルカンは体内に分解系が無いので蓄積する傾向を示し, その期間は数ヶ月以上にわたる。またこの間, 活性の一部は持続的に発揮する。一方で, βグルカンの生物活性を適切に評価できる in vitro 評価系は少なく, βグルカンの免疫修飾作用を分子レベルで解析するには, 新たな評価系の開発が望まれる。
著者
兵頭 昌雄 大岩 忠彦 岩澤 宏哲 清水 英寿 中山 一大 藤江 康光 堀越 哲郎
出版者
東海大学
雑誌
東海大学紀要. 開発工学部 (ISSN:09177612)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.213-222, 2000-03-10
被引用文献数
1

真核生物のリボソーム遺伝子(rDNA)は,ゲノム内で反復配列として数百コピー存在し,核小体の中心を形成している。このDNA領域の塩基配列は分子進化学における研究対象となっている。我々の研究室で維持されている4系統の日本産メダカ(0ryzias latipes)における18S rDNA領域の構造について研究する目的で,このDNA配列をPCR法により増幅する条件について検討した。その結果得られた最適条件は,(1)鋳型DNA量;100ng,(2)プライマー濃度;0.2μM,(3)変性;94℃1分,アニーリング;60℃1.5分,伸張;72℃2分,(4)サイクル数;35,であった。この条件下で約1.8kbと比較的長いDNA鎖である18S rDNAが増幅でき,その反応液中の収量は19.5ng/μ1であった。18S rDNAの収量をさらに増加させるために,PCR産物を鋳型として再増幅することを試みた。しかし,再増幅では,1.8kb以外の長さの異なるバンドも増幅されており,有効ではないことが明らかになった。つぎに4系統のメダカ(近交系野生型クロメダカ〔HB-32C系統〕,沼津市浮島地区で採取された野生型クロメダカ〔BMT系統〕,体色に関する変異株であるヒメダカおよびアルビノ〔i/i系統〕)のゲノムDNAをもとにPCRにより18S rDNAを増幅した。その結果いづれの系統のDNAからもほぼ同量の18S rDNAが得られ,ゲノムあたりのコピー数は一定であることが示唆された。