著者
木村 政伸
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.86, no.4, pp.485-496, 2019 (Released:2020-06-12)

海外から日本の教育へは様々注目されてきたが、その中でも日本社会における識字率の高さや教育の普及が日本の近代化や現代の科学技術の高さの背景にあるという論調は多い。しかし、近世社会における識字率の高さが人々の生活にどのような影響を及ぼしたのかは十分に検証されてこなかった。本論文では、近世初期において文字の字体、文法、書式などが全国的に共通化され、また文字を使用することが必須化されたことを指摘し、そうした文字社会の成立が日本の近代化と深いかかわりを持っていたことを論じた。
著者
安藤 勝也 山中 克己 明石 都美
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR TUBERCULOSIS
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.77, no.9, pp.589-595, 2002-09-15
被引用文献数
1

高校教諭に肺結核が発症し, それにより同高校の教職員2名ならびに生徒4名の結核患者と75名 (教職員3名, 生徒72名) の予防内服の患者が集団発生した。初発患者は27歳の男性教諭で, 1年3・6組2年4・5組に簿記を教え, 3年1組の副担任であり, バドミントン部の顧問もしていた。平成11年11月より軽い咳があり, 近医を数回受診し, 平成12年1月N病院受診しガフキー8号学会分類bII2と診断され入院治療となった。当保健所は, 教職員63名, 学生153名の合計216名を対象とした定期外検診を行った。直後の定期外検診にて, 1名の生徒が<I>l</I>III1肺結核と診断された。ツ反検査のヒストグラムから40mm以上の発赤径を示した27名の生徒が感染を受けたとして, 予防内服のため病院に紹介した。2カ月後の定期外検診のX-Pにより2名の生徒が肺結核 (<I>l</I>III1・<I>l</I>III1), 1名の生徒が結核性胸膜炎と診断され, 1名の職員が肺結核γIII1と診断された。ツ反検査により直後の発赤径に比して17mm以上大きくなった45名の生徒と職員3名の合計48名が感染を受けたとして, 予防内服のため病院に紹介した。12カ月後の定期外検診にて職員1名がγII1肺結核と診断された。初発患者の家族検診において兄が結核性胸膜炎, 母が<I>l</I>III1肺結核と診断され, 親戚の子供1名が予防内服となった。ツ反を判断するにあたり, 結核病学会の「結核医療の基準」に従って画一的に予防内服を決めることは, 危険であり, 事例に応じて柔軟に対応すべきとの示唆を得た。
著者
鈴木 吉彦 竹内 郁男 細川 和広 渥美 義仁 松岡 健平
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.31-35, 1994-01-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
7
被引用文献数
2

糖尿病発病から数年でインスリン分泌が減少しketotic proneであることからインスリン依存型糖尿病 (以下IDDMと略す) と診断し, 経過観察中に多発性硬化症 (以下MSと略す) の疑いある病像を併発した23歳女性を報告する.MSは, 発病年齢が若いこと, 中枢神経病巣が複数あること, 他疾患を除外しうること, 症状が一過性であったことなどから疑いありと診断した.両疾患合併が疑われた報告は本邦で最初である.両疾患が合併しやすい理由には糖脂肪代謝異常による脱髄現象説, ウイルス感染説など種々の説がある.両者とも発病年齢, 性差, 地理的特徴, 発病頻度, 寛解期を有する点, 自己免疫異常機構を介した機序が考えられる点に共通性がある.本症例ではIDDMに対し疾患感受性HLA遺伝子であるDR4とMSに対するDR2を有する点は遺伝的背景を疑わせる.またMSの併発は糖尿病治療に種々の幣害を及ぼし, 通院中断や過食, 神経症に対する誤診を導くなど悪影響を認めた.
著者
井関 康人
出版者
一般社団法人 日本エネルギー学会
雑誌
日本エネルギー学会機関誌えねるみくす (ISSN:24323586)
巻号頁・発行日
vol.97, no.1, pp.61-66, 2018-01-20 (Released:2018-02-28)
参考文献数
3

家電製品の破砕混合プラスチックから,湿式比重選別,静電選別により高純度のPP,PS,ABSを選別する。さらに,RoHSに適合させるため,X線を利用した選別により臭素系難燃プラスチックを除去する。三菱電機は,このようにして回収された高純度プラスチックを,再び家電製品で使用する,いわゆる自己循環リサイクルを推進している。
著者
追沼 龍三 成沢 郁夫 小山 清人
出版者
一般社団法人 日本繊維機械学会
雑誌
繊維機械学会誌 (ISSN:03710580)
巻号頁・発行日
vol.49, no.12, pp.T313-T323, 1996

1×1ゴム編編成域での結び目 (コーマ綿糸c30s/1を用いたウィバースノットおよびフィシャマンズノット) による糸切れ発生機構について, 高速ビデオカメラを用いて詳細に研究した.得られた結果は次の通りである.<BR>(1) 1x1ゴム編編成域での結び目による糸切れが次の3段階を経て発生することを明らかにした.1) シリンダ針の針頭のフック部への結び目の引っ掛かり, 2) 糸張力の増大, 3) 糸切れ.<BR>(2) 1×1ゴム編編成域でのエアースプライスによる糸切れはいずれの編成条件でも全く発生しない.<BR>(3) いずれの結び目でも, 結び目の引っ掛かる率, 引っ掛かった結び目による糸切れ率および結び目による糸切れ率はカム引込量, 給糸張力および巻取荷重の増加とともに増加する.<BR>(4) いずれの編成条件でも, 結び目の引っ掛かる率, 引っ掛かった結び目による糸切れ率および結び目による糸切率はウィバースノットよりフィッシャマンズノットの方が大きい.
著者
ナバレット マイク ウィリアムス ケン ダステルホフト ロン
出版者
石油技術協会
雑誌
石油技術協会誌 (ISSN:03709868)
巻号頁・発行日
vol.77, no.5, pp.336-341, 2012-09-01
参考文献数
2

近年の開発は, オペレーターに非在来型の貯留層から効率的かつ改善された環境プロフィルで炭化水素の生産を可能にしている。総体的なアプローチは, 水平坑井を掘削し, 水圧破砕を行うことによって, 根源岩貯留層の中に存在しているガスを開発してきた。根源岩貯留層の分析は, 根源岩が生産可能性を持つために十分な有機炭素と成熟度を持っている場所を特定するのに役立つ。岩石が堆積したときの条件は, 有機炭素と根源岩貯留層の豊かさを決定する。成熟度は, 堆積以来の地質状態と温度履歴に依存する。<br>これらの条件に会うプレイエリアを識別するために, 1Dモデリングと解析のマッピングを使用することができる。生産可能性に加えて,根源岩貯留層は水圧破砕を保持し, フラクチャリング作業が終了まで開いたままに保てるのに十分な厚さと脆さを必要とする。地下で岩石が複雑に褶曲していたり,断層があってはならない。この複雑さは, 長い水平坑井の掘削に障害を起こす。
著者
Seiji Nakagawa
出版者
ACOUSTICAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
Acoustical Science and Technology (ISSN:13463969)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.851-856, 2020-11-01 (Released:2020-11-01)
参考文献数
36

Although the mechanisms involved remain unclear, several studies have reported that bone-conducted ultrasounds (BCUs) can be perceived even by those with profound sensorineural hearing impaired, who typically hardly sense sounds even with conventional hearing aids. We have identified both the psychological characteristics and the neurophysiological mechanisms underlying the perception of BCUs using psychophysical, electrophysiological, vibration measurements and computer simulations, and applied to a novel hearing aid for the profoundly hearing impaired. Also, mechanisms of perception and propagation of the BCU presented to distant parts of the body (neck, trunk, upper limb) were investigated.
著者
山添 孝徳
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.107-112, 2020 (Released:2020-01-24)
参考文献数
14

大都市を中心に広がる大気汚染対策と,気候変動対策として,各国がガソリン車やディーゼル車の販売を禁止する方針を打ち出すなど,電気自動車(EV)が一気に普及していく可能性が高まっているが,EV普及の為の課題の一つとして,充電時間が長いということがある。現状の充電時間は,50kW級の急速充電器を使用して,約30分から1時間程度である。これに対して,ユーザはガソリン給油時間と同等の充電時間 約6分程度を望んでいる為,各充電インフラ会社では350kW級の超急速充電器を開発することを決め,2020年頃から広範囲に設置する予定である。一方,超急速充電を受け入れる方の電池は,充電中に電池温度が上昇し,電池の劣化が加速される懸念がある為,電池の冷却は必須である。 本稿では,超急速充電時に適したEV電池の冷却方式として,相変化材料(PCM)を用いた冷却方式を検討した。その結果、EVに搭載された電池パックを350kWで6分間急速充電した時の,電池パック内セル温度の上昇に対して,セルの通常使用温度の上限60℃以下にする為に,PCMをセル間に配置しセルの熱をPCMに吸収させて温度上昇を軽減させることが有効であることがわかった。100個のセルとセル体積の4%の体積のPCMで構成された電池パックを想定し,セル温度をシミュレーションした結果,環境温度40℃の条件でもセル温度は60℃以下になることを確認した。また,PCMを使用した時の課題であるPCMに溜まった熱の放熱については,急速充電後に走行中の風などで空冷することで,5時間毎に急速充電してもセル温度は60℃以下になることを机上計算で確認した。