- 著者
-
天田 明男
千田 哲生
- 出版者
- 日本ウマ科学会
- 雑誌
- 日本中央競馬会競走馬保健研究所報告 (ISSN:03685543)
- 巻号頁・発行日
- vol.1964, no.2, pp.1-8, 1964-03-31 (Released:2011-02-23)
- 参考文献数
- 26
競走馬の不整脈を心電図によって診断する基礎資料を得るため,左側下胸 部(心尖部)と右側肩部からの胸部双極誘導法により,育成馬95頭,競走馬59頭,計154頭の心電図を記録し,次のごとき成績を得た。 (1)P波は殆んどの例で2峰性陽性波が記録された。振幅は,育成馬は平均0・30mV,競走馬でね平均0.34mVであった。持続時間は,育成馬は平均0.13秒,競走馬は平均0.15秒であった。 (2)PQ segmentは,殆んどの例で陰性方向に若干偏位していた。Ta波のためと考える。 (3)QRS群は,rS型またはQS型として出現した。S波の振幅は,育成馬では平均2.40mV.競走馬では平均3.24mVで,競走馬の方が大なる値を示した。持続時間は育成馬では,平均0.11秒,競走馬では平均0.12秒であった。 (4)T波は,育成馬においては-+型2相性波を示したものが多く,競走馬では陽性波を示したものが多かった。 (5)PQ間隔は,育成馬では0.40~0.20秒で平均0.29秒,競走馬では0.50~0.23秒で平均0.32秒であった。 (6)QT間隔は,育成馬では0.54~0.34秒で平均0.45秒,競走馬では0.57~0.34秒で平均0.47秒であった。 (7)PQ間隔とPP間隔との関係式およびPQ間隔の正常範囲は次のようであった:PQ=0.07PP+0.20±0.05 終りに臨み,種々御指導を戴き,かつ本稿の校閲を賜った東大農学部野村晋一助教授に深謝する。また,本実験の実施には宇都宮育成牧場長金子忠三氏ならびに廐舎係員各位,東京競馬場および中山競馬場診療所員各位,馬事公苑教育課員各位の御協力に負う所が多かった。茲にその御厚意に謝意を述べる。