著者
永沼 優一 山本 景子 倉本 到 辻野 嘉宏
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:21888760)
巻号頁・発行日
vol.2018-HCI-177, no.4, pp.1-8, 2018-03-09

リアルタイムで状況が変わるゲームをプレイする際に,プレイヤーは変わっていく状況に対してその都度判断を下して行動し,その行動によって現れた状況に対し判断を下して行動するということの繰り返しを行っている.その中でも,判断し行動するまでの時間がきわめて短い判断を瞬間的判断と呼ぶ.プレイ技術の向上のためには,この瞬間的判断の傾向を分析し改善する必要があるが,プレイ動画を見返すだけでは瞬間的判断をした箇所や判断中にある無意識な偏りに気づけないという問題がある.そこで本研究では,イベントとアクションを定義し,その発生時間の差を元に瞬間的判断が行われた箇所を抽出してユーザに判断箇所と傾向を提示する手法を提案する.提案手法を評価するために,提案手法に基づき実装したツールと既存手法でプレイ中の判断の偏りを発見させる比較実験を行った.その結果,提案手法は既存手法に比べて有意に短い時間で判断の偏りを発見することができた.また,提案手法は既存手法と同程度の精度で判断の偏りを探せることがわかった.
著者
板垣 竜太 戸邉 秀明 水谷 智
出版者
同志社大学
雑誌
社会科学 (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.88, pp.27-59, 2010-08

論説(Article)本稿は国際的な視野から日本植民地研究を再考した。その際、「比較帝国研究」の枠組とは一線を画すことに留意し、日本帝国を他の植民地帝国と比較するというよりは、日本植民地研究の史学史と現況に焦点を合わせた。すなわち、マルクス主義、近代化論、ポストコロニアル論などの欧米の学界に由来する歴史研究の枠組が、日本植民地研究にどう受容され、対話がおこなわれ、批判され、鍛えられてきたかに注目し、議論を展開した。This essay reviews Japanese colonial studies from an international perspective. The essay, however, is not intended as yet another example of so-called 'comparative empire studies'. Rather than comparing the Japanese empire with others, it focuses on the past and present of the historiography of Japanese colonialism. It discusses a range of theoretical issues by examining how the historiographical frameworks developed in the Euro-American academia was received, discussed, and critiqued by scholars of Japanese colonialism.
著者
牧園 清子
出版者
松山大学
雑誌
松山大学論集 (ISSN:09163298)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.159-189, 2013-02-01
著者
野田 秀孝
出版者
富山大学人間発達科学部発達教育学科発達福祉コース
雑誌
とやま発達福祉学年報 (ISSN:21850801)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.27-31, 2017-05-31

2015(平成27)年4月に生活困窮者自立支援法が施行され、これまで制度の狭間であった、生活保護に至るまでにない生活困窮のものに対する支援が始まった。従来の福祉サービスは、高齢者、児童、障害者など特定の分野において、特定の者を選別し、サービスの可否を定めて行ってきたものである。近年の社会情勢から、様々な要因から、経済的困窮に至る要因が複雑に絡み合っていると考えられる。これまでのセーフティネットだけでは、生活困窮に至る状況を食い止めることができない。そのため、第2のセーフティネットとして施行されたのが生活圏窮者自立支援制度である。この制度は、経済的労働的自立支援を中心としているが、その他の制度の狭間で今まで対象にならなかった人々、支援が届かなかった人々を対象に支援を可能にする余地が十分にあると考えられる。さらには住民活動などのインフォーマルサービスから公的扶助などのフォーマルサービスまでを含む重層的なネットワークやワンストップサービスなどの総合的な包括的な相談窓口などの設置の可能性も含むものと考えられ、地域福祉的な視点で考えるに、重要な制度となると思われる。本稿は重層的で幅の広いシステムの構築の可能性を視野に、地域福祉的視点で生活困窮者自立支援法をとらえ課題と展望のための一考察を示すものである。
著者
大村 敬一
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.247-270, 2005-09-30 (Released:2017-09-25)

今日、カナダ極北圏では、イヌイトの伝統的な生態学的知識に大きな関心が集まっている。近代科学とは異なったパラダイムに基づいてはいるが、極北の環境について近代科学に勝るとも劣らない精確な情報を蓄積しているその知識に、環境管理に貢献する可能性が期待されているからである。本稿の目的は、この伝統的な生態学的知識の基本原理を探るために、狩猟・漁労・採集というイヌイトの生業活動で展開される実践知に焦点を絞り、その実践知において記憶と身体が果たしている役割について分析することである。本稿ではまず、第II章でイヌイトの生業活動においては実践知が中核的な役割を担っていることを確認するとともに、それを解明するためには、時間の流れの中で機能する記憶のメカニズムに注目する必要があることを示す。さらに第III章では、「差異の反復」という考え方をイヌイト社会の社会・文化的コンテキストに位置づけ、この考え方がイヌイト社会に広く浸透していることを論証する。これらの準備作業をふまえて、第IV章と第V章では、イヌイトの伝統的な生態学的知識において記憶が機能するメカニズムを探るために、生業活動の実践と狩猟の物語という伝統的な生態学的知識の2つの側面を分析し、生業活動の中核をなしている実践知において記憶が機能するメカニズムの仮説的なモデルを提示する。そして最後に、本稿で提示したモデルに基づいて、イヌイトの生業活動においては、身体と一体化した記憶が過去を資源化する場となっているのではないかという仮説を提示する。

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著者
山崎光夫著
出版者
文藝春秋
巻号頁・発行日
2004
著者
松永 昌宏 金子 宏 坪井 宏仁 川西 陽子
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.135-140, 2011-02-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
10
被引用文献数
2

本研究では「幸福感」に着目し,幸福感の脳神経基盤および幸福感が脳と身体の機能的関連に及ぼす影響を明らかにすることを試みた.実験の結果,高幸福群では低幸福群に比べて,ポジティブ感情喚起時の内側前頭前野・腹側線条体(脳内報酬系)活動が有意に高く,報酬系活動を抑制する末梢炎症性サイトカイン濃度が低いことが明らかとなった.また,カンナビノイド受容体遺伝子多型と幸福感との関連を解析した結果,カンナビノイドの受容体に対する結合能が高いCC/CT遺伝子型群では,TT群よりも主観的幸福感が高いこと,末梢炎症性サイトカイン濃度が低いこと,そして内側前頭前野活性が高いことが示された.本研究から,幸福感を維持するメカニズムとして脳内報酬系機能,炎症性サイトカイン,内因性カンナビノイドの関連が示唆された.本研究の研究成果から,今後心身の健康を維持するための予防医学的アプローチなどが展開されていくことが期待される.