著者
中井 美樹
出版者
北海道社会学会
雑誌
現代社会学研究 (ISSN:09151214)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.34-57, 1991-05-01 (Released:2009-11-16)
参考文献数
21

本稿は、親として子供に望む価値期待が家族の社会階層にいかに影響され形成されるのか、またそれらは母親自身のパーソナリティの反映であるのか、といった、従来の地位達成過程や価値の伝達の研究で見逃されてきた親の価値期待の形成過程を、実証により明ちかにする。まず三二四人の女性データによって、階層的要因と親としての価値との関連を示す。さらに、子供のいる母親一七七人を対象として、家族の階層が子供に望む価値期待に影響するメカニズムを、LISRELの構造方程式モデルを用いて解明する。主な仮説は、第一に、母親のパーソナリティが家族の階層に影響されるだろう。第二に、親としての価値観は、母親自身の自立的パーソナリティを介して、家族の階層の影響を受けるのではないか。第三に、家族の階層は子供への達成期待にも効果をもつだろう。第四に、母親のパーソナリティや親としての価値観が子供への達成期待に影響するだろう。分析の結果、親としての価値観と女性自身の教育や職業の間に関連がみられること、家族の階層は子供に望む価値に影響することが明らかになった。興味深い知見は、家族の階層から親としての価値への効果が、主に母親の自立性を通じての効果であること、子供に自立を望むほど母親自身は逆に同調的になること、同調志向の母親ほど子供に高い地位達成期待を抱くこと、である。子供に対して抱く価値観や期待達成レベルには、母親自身の自立性が強く反映される。
著者
Yinjie Yang Shin-ichi Yokobori Akihiko Yamagishi
出版者
Japanese Society for Biological Sciences in Space
雑誌
Biological Sciences in Space (ISSN:09149201)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.151-163, 2009 (Released:2010-08-06)
参考文献数
133
被引用文献数
12 17

Microbiology at the high altitude atmosphere is important for assessing the chances and limits of microbial transfer from the earth to extraterrestrial bodies. Among the microorganisms isolated from the high-atmospheric samples, spore formers and vegetative Deinococci were highly resistant against harsh environment at high altitude. From limited knowledge available to date, it is suggested that terrestrial microorganisms may have had chances to be ejected and transferred to outer space. Survival of these organisms during their space travel and proliferation on other planets might be also feasible. Directed Panspermia from Earth to extraterrestrial bodies is discussed on the basis of findings reported in literatures.
著者
鳥居本 幸代
出版者
京都女子大学被服学教室
雑誌
京都女子大学被服学雑誌 (ISSN:02893819)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.p46-48, 1987-02
著者
川本 勝
出版者
尚美学園大学総合政策学部
雑誌
尚美学園大学総合政策研究紀要 = Bulletin of policy and management, Shobi University (ISSN:13463802)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.21-45, 2017-09-30

「手持ち資金は初値の2 倍」という条件で、東京証券取引所が公表している2013年のTOPIX Core30中の銘柄28社について「株式売買のシミュレーション」を行った。その結果、以前の2 論文(川本勝2016a、2017)に比べて売り回数と成功率は大きく改善した。しかし、この結果は、当初の研究(川本勝2014)で求まった「売買を60回程度繰り返せば、その利益は投資した原資の2 倍程度になる」という理想値には遠く及ばない。この事実は、他の改善要素が未だ残っていることを示唆している。これは、今後の重要な研究課題である。なお、この結果が東京証券取引所に上場している全ての企業について同様に当てはまるかどうかは、別途、調査が必要である。これらの結果は、筆者が既に発表している5 本の論文(川本勝2014、2015、2016a、2016b、2017)の結果とも矛盾しない。
著者
中 響子 米満 文哉 山田 祐樹
出版者
日本基礎心理学会
雑誌
基礎心理学研究 (ISSN:02877651)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.50-55, 2017

<p>Facial attractiveness is influenced by various personal and environmental factors. The present study investigated whether the gender environment surrounding observers affected facial attractiveness judgments. Students at single-gender (58 females) and mixed-gender (59 males and 46 females) universities participated in the experiment. Each of 15 male or female faces was morphed, respectively, with a female or male averaged face derived from the other 14 female and male faces, resulting in feminized and masculinized faces. Observers were simultaneously presented with one masculinized and one feminized morphed face and asked to judge which was more attractive. The results showed that students at a women's university judged feminized male faces as significantly more attractive than did students in a coeducational university. The present findings suggest that adaptation to female faces in a single-gender environment increases the processing fluency of female faces, therefore inducing higher preference.</p>
著者
馬屋原 康高 関川 清一 河江 敏広 曽 智 大塚 彰 辻 敏夫
出版者
公益社団法人 広島県理学療法士会
雑誌
理学療法の臨床と研究 (ISSN:1880070X)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.9, 2019 (Released:2019-07-05)

高齢者の肺炎の約 80%が誤嚥性肺炎であり、誤嚥性肺炎リスクを早期に発見し対応すること が急務である。嚥下機能と咳嗽能力の関連があることが報告されており、咳嗽能力を評価する ことは重要である。その評価指標の一つとして、咳嗽時の最大呼気流量(CPF)が用いられてい る。CPF値が270 L/min以下となった場合、呼吸器感染症を発症すると、急性呼吸不全に陥る 可能性があるとされ、160 L/min以下では、気管内挿管も考慮される値と報告されている。そ の他 242 L/min 未満が誤嚥性肺炎のカットオフ値として報告されている。臨床的には、そのカッ トオフ値を参考に低下した CPF を種々の咳嗽介助法を用いてカットオフ値以上に引き上げるこ とが重要となる。さらに筆者らは、咳嗽音を用いてより簡便な咳嗽力の評価方法を提案している。 誤嚥性肺炎を予防する第 1 歩としてより幅広く咳嗽力評価が用いられることを期待する。

1 0 0 0 法医一代

著者
牧角三郎著
出版者
[牧角三郎]
巻号頁・発行日
1984
著者
俵 尚申
出版者
嘉悦大学
雑誌
嘉悦大学研究論集 (ISSN:02883376)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.189-209, 2003-10

優れた選手の育成には、優れた指導者が必要である。世界のスポーツ先進国において、選手の育成と同時に、それ以上に指導者の養成(資質向上)を重視することは常識である。スポーツ先進国として代表される欧米やキューバは、選手個々の年齢に応じたアプローチを、総合スポーツクラブや国家政策としてのシステムが、社会基盤(インフラストラクチャー)として、みごとなばかりに確立されている。それらに対し、わが国のスポーツは、明治時代に欧米から伝播したスポーツという文化を「体育」として受容したことにより、学校を中心として発展し、学校スポーツ(体育)の延長線上に生まれたのが「企業スポーツ」である。すなわち、それらの環境がベースとなっているのがわが国のスポーツシステムであり、コーチング(指導)スタイルである。これらの世界のスポーツ先進国である諸外国のコーチング(指導)スタイル、および養成システムを通して、わが国のシステムとコーチングの根底に存在する問題点を、整理、検討し、スポーツにおけるコーチングについて論考する。
著者
小田部 雄次
出版者
静岡福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

現代日本の非婚や少子化の主たる要因としては、1大家族制度の崩壊、2私的生活優先の思想拡大、3アメリカ型家庭主義の定着などが想定される。そして天皇家もまたこうした戦後日本の動向に影響されてきた。天皇家がかつてのような大家族主義でなくなったことが、一般社会の非婚・少子化を促している要因となっていることは指摘できよう。
著者
加藤 一夫 渡部 茂己 小田部 雄次
出版者
静岡精華短期大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993

最終年の今年度は、これまでの資料調査と研究をふまえて、各自それぞれ以下のような研究成果を発表した。加藤は、これまでの資料調査に基づいて「地域民族紛争と国連平和維持活動-カンボジア問題を中心に」(『静岡精華短期大学紀要 第3号)を研究論文として発表した。小田部も同様に、これまでの資料調査から「『カンボジア・タイムズ』に見る自衛隊撤収後のカンボジア」(『静岡精華短期大学紀要 第3号)を研究論文として発表した。渡部は、国連・PKOの資料分析から単著『国際機構の機能と組織-新しい世界秩序を構築するために』(国際書院)を出版、また「『国際社会の民主化』に関する一考察」(『静岡精華短期大学紀要 第3号)を研究論文として発表した。以上により、本研究は一定の成果を達成した。
著者
小田部 雄次
出版者
静岡福祉情報短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

近代天皇制国家における女性の社会的位置は、一般に男性より下位におかれることが多く、たとえば職業、学業、その他の分野において、女性の活躍する場は限定されていた。しかしながら、女性の社会的能力は、そうした時代にあっても十分な可能性を有したものであった。十全な社会的活躍の場が保障されなかった女性たちにとって、天皇制国家の官僚システムに連動した職務や活動の舞台は重要なものであった。本研究は、そうした社会的な制限下にあった女性たちが、天皇制システムの中で、自らの可能性をどのように実現しえたのか、また、逆には、天皇制システムが女性の可能性をどのように制限し、かつ発展させていたのかを追究した。とりわけ、女官に焦点をあて、天皇の「付属物」的な存在としてみなされがちな女官やそれに類似する女性の機能が、時代の制限下の中で、女性の能力発揮の場として提供されていたかを明らかにした。具体的には、「『明治婦人録』に見る独立婦人」をテーマとして、明治期の女性の主たる職業や社会的活動の種類と、それに従事した具体的な女性名、およびその統計的処理をした。その際、宮中に関係する女性の全容把握につとめ、女性全体の中で宮中関係女性がどういう位置にあるかを検討した。また、補論として「『華族画報』に見る華族女性」を調査し、華族家における女性の動態把握につとめた。さらに、「近代の宮廷女性一覧」を作成し、女官などの宮廷女性の人物誌としてまとめた。その際、『日本近代女性人名辞典』、『平成新修旧華族家系大成』を基本的文献として、近代の女官の総体把握につとめた。
著者
高野 陽太郎 石川 淳 大久保 街亜
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.586-591, 2002-12-01 (Released:2008-10-03)
参考文献数
18
著者
西原 明史 Akifumi Nishihara
出版者
安田女子大学
雑誌
安田女子大學紀要 = Journal of Yasuda Women's University (ISSN:02896494)
巻号頁・発行日
no.46, pp.19-29, 2018

日本は「老舗大国」である。その理由としてよく持ち出されるのが、日本人の勤勉さや倫理感といった「国民性」だ。しかし、こうした根拠の薄い概念による説明は説得力に欠ける上、近年のメディアで目立つ日本賛美の論調とも恐らく共振している。そんな従来の老舗論への違和感から、本研究では比較社会文化史という方法で老舗存続の背景を考察することとした。老舗の多くは明治時代に端を発する。そこで、いずれも経済発展を遂げた中国の宋王朝、江戸時代及び明治以降の日本の三つの政治経済システムを整理し、そこから老舗の社会的条件を定式化することができた。それは、経済活動への自由参加が可能であること、そして規制と保護の機能を兼ね備えた中間組織が存在することの二つである。さらに、江戸時代の社会構造の下で形成され、その後も継承された「勤勉と信用」といったエートスが加わることで、明治以降に多くの老舗が生み出されたのではないだろうか。