著者
茂木 健一郎
出版者
金原一郎記念医学医療振興財団
雑誌
生体の科学 (ISSN:03709531)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.82-86, 1995-02-15

I.「意識」における時間の流れ 21世紀は科学者にとって,脳の世紀となるだろうと予測されている。すなわち科学にとって,真のフロンティアは脳科学であるということである。そして,脳のさまざまな属性の中でも「意識」の問題は,最もその究明が困難な,しかし同時に本質的な問題であると考えられている1-3)。「意識」の問題に対するアプローチにはいろいろあるが,科学的なアプローチとして有力なものは,「意識」が脳における情報処理過程において,どのような役割を果たしているかという設問である。端的にいえば,「意識」と呼ばれるような実体が存在しなければ,実行できないような情報処理が存在するのかという問題である。どのような情報処理が,「意識」が存在しなければ実行できないのかという問題は,それ自体が未解決の問題であって,慎重な議論が行われなければならないが,本稿では,異なるモダリティの情報を単一の時間と空間の枠組みの中で統合することが,「意識」の計算論的な意義であるという作業仮説を採用することにする。 上の作業仮説をとりあえず認めたとして,それでは,「意識」における単一の時間と空間の枠組みは,どのようにして生じてくるのだろうか。この問題に現時点で科学的にアプローチするとしたら,どのような手法が可能なのだろうか。
著者
松村 一志
出版者
東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻
雑誌
相関社会科学 = Komaba Studies in Society (ISSN:09159312)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.3-16, 2019-03-01

In this paper, I examine the transformation of rhetorical strategies in experimental reports in the late nineteenth century. Steven Shapin and Simon Schaffer’s canonical work Leviathan and the Air-Pump (1985) has demonstrated that early experimental scientists such as Robert Boyle had to adopt the “rhetoric of trial,” a lost literary technique with which experimental reports were compared to testimony in court, due to the lower status assigned to observation and experiments. While subsequent researchers have analyzed how this sort of rhetoric was used in the seventeenth century, the era of “scientific revolution,” few have focused on the rise and fall of the“ rhetoric of trial” afterward. In response, I try to show when and how this rhetoric disappeared. For this purpose, I focus on a branch of experimental science called psychical research. Though psychical research is now seen to be a typical example of pseudoscience, it attracted many famous scientists in the fin de siècle, inspiring huge debates on the reliability of experimental reports. Psychical researchers frequently used the “rhetoric of trial” to justify their reports. However, this rhetoric began to lose its persuasiveness with the rise of experimental psychology and statistical testing. From this episode, I reconsider the origin of current norms in scientific experiments such as reproducibility.
著者
伊勢 眞樹 秋山 仁美 鳴海 浩 中崎 喜英 公文 範行 白方 淳
出版者
医学書院
雑誌
理学療法ジャーナル (ISSN:09150552)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.101-113, 2010-02-15

はじめに リハビリテーション(以下,リハ)医療では,「患者は治療後に生活者として,再び地域に帰り生活機能(住み慣れた場所で,健康に家庭・社会生活が自立している)を継続してゆく」という視点1,2)が重要であり,脳卒中のリハゴールは「生活機能を継続してゆく」ことに尽きる.そのためには,脳卒中の治療として,入院後可能な限り早く自動運動を促し,治療効果を向上させ,不用意な安静を排除して合併症の発症を徹底的に予防することが必要である.脳卒中治療ガイドラインで強く勧められている「急性期からの積極的なリハを行う」3)とはこのことである. 本稿は,岡山県西部医療圏の急性期先進医療基幹病院における急性期のリハ科・リハセンターの機能を前提としたゴール設定の考え方であることをご理解いただきたい.ゴール設定に必要な脳卒中の活動制限の診かた,脳卒中の予後予測,高齢者の機能障害とその対応,リハ治療を解説して,最後にゴール設定について述べる.
著者
東山 文 山田 功治 大家 舞 辻口 裕介 星野 奈央 三谷 健太郎 永田 元康
出版者
一般社団法人 システム制御情報学会
雑誌
システム制御情報学会 研究発表講演会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.5, pp.216, 2005

本論文では、負荷分散を考慮した非同期データ複製システムについて提案する。我々が提案するデータ複製のプロトコルは、トランザクションのログの利用および同期周期間隔における特定のレプリカサーバから主コピーサーバへのデータ更新情報の反映によって、特徴付けられる。また、ワークフロー管理機能を採用し、クライアント、ワークフローコントローラおよびサーバから構成される3層構造モデルによってトランザクションのスケジューリングを行い、効率よい処理を目指す。さらに、プロトコルの実装について報告する。
著者
横江 義彦 兵 行忠 広岡 康博 飯塚 忠彦 小野 尊睦
出版者
Japanese Society of Oral and Maxillofacial Surgeons
雑誌
日本口腔外科学会雑誌 (ISSN:00215163)
巻号頁・発行日
vol.31, no.10, pp.2450-2456, 1985-10-20 (Released:2011-07-25)
参考文献数
24
被引用文献数
1

Congenital aglossia is a rare tongue anomaly. There were 16 cases reported in Japan of which only one was an adult case.Recently we experienced a congenital aglossia case. The patient, a 20-year-old female, is the youngest of two children of unrelated parents, aged 32 (father) and 28 (mother). The patient's mother had a drugless normal pregnancy and normal delivery. The patient had sucking difficulty, but no treatment such as nasal feeding.Intraorally, a small extruded mass was recognized from the floor of the mouth. Both of the maxillary and the mandibular arches were very narrow, and three incisors of the mandible were congenitally missing. Radiographically, the existance of hyoid bone, submandibular, salivary gland and suprahyoid muscles were suggested by computed radiography and computed tornography. However, the patient had almost normal taste and clear pronunciation.
著者
瀨良 兼司
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.88-96, 2019-06-28 (Released:2019-06-28)
参考文献数
52

サービス提供企業と享受者(顧客)との接点となる,サービス・フロントラインで働く従業員が接する顧客のニーズは,多岐にわたる。この異質性への対応というサービス・フロントラインの課題を踏まえると,各顧客のユニークなニーズへの対応の必要があり,品質の標準化に基づく定型的な提案だけではなく,パーソナライズされた創造的な提案が求められる。サービス・フロントラインにおいて創造性を発揮する従業員は,顧客の潜在的ニーズを発見し,顧客の抱える課題を独自の対応で効果的に解決し,優れた顧客経験を生み出すことで,顧客との長期的な関係を築くことに貢献する。本稿では,サービス・フロントライン従業員を対象とし,創造性研究における蓄積を手掛かりとしながら,サービス・フロントライン従業員の役割や従事する職場を考慮したうえで,サービス・フロントライン従業員の創造性に関する研究の現状と今後の課題を提示する。
著者
山田 貴人 安藤 秀俊
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.41-44, 2015

理科と数学を関連付ける代表的な例として「単位」をあげ,「単位」に着目した理科と数学に関する意識について調査したところ,多くの生徒が問題文から式を作る立式ことに苦手意識をもっており,その着眼点に単位を意識できていないことがわかった。同時に,単位の意味を学ぶことに興味を示し,その活用性に期待感を持っている生徒が多かった。このことから,単位の組み立て方を短時間に反復して思考することができる教材(単位カード)を開発し教育的効果を検証している。中学生に実践したところ,活動中の生徒達からは思考を重ね新たな単位の組み立て方に気付く様子が多く見られた。

1 0 0 0 OA 歴代序畧1卷

著者
明梁寅撰
出版者
龍山雪齋書院刊
巻号頁・発行日
1554

明孟散梁撰。元代までの歴史を簡便にまとめたもの。川瀬一馬著『五山版の研究』によれば、本書は、天文23(1554)年に竜山雪斎によって覆明刊本が刊行されたが、のちにその巻末刊記の一部を削去した後印本も刊行され、当館本はこの後印本に相当するという。全巻に朱点・朱引きが施され、墨で返り点・送り仮名が付されており、欄外には墨書書き入れも見られる。「江風山⁄月荘」「応夢山」ほか古印記1種が押捺されている。本書覆明刊本の刊行者である竜山雪斎(1496-1555)は臨済宗妙心寺派の僧で、今川義元の叔父にあたる人物であり、同じ天文23年には『聚分韻略』の開版も行っている。
著者
井上 武夫 林 典子 津田 克也
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.103-108, 2004 (Released:2014-08-29)
参考文献数
7

目的 平成 7 年に始まった愛知県瀬戸市の乳幼児期 BCG 接種技術改善努力が,小学 1 年のツ反陽性率に及ぼす影響を針痕数との関連で明らかにする。方法 平成12年,13年,14年の小学 1 年生3,409人のツ反発赤径と針痕数を計測した。BCG 未接種児童は除外した。結果 一人あたり平均針痕数は,平成12年1.8個,13年3.1個,14年6.3個であった。針痕を 1 個でも認めた児童は,平成12年25.1%, 13年38.1%, 14年70.5%であった。平成13年は12年に比べ,平成14年は13年に比べてそれぞれ有意に高率であった(P<0.001)。 ツ反陽性率は,平成12年32.5%, 13年36.5%, 14年63.7%であった。平成12年と13年とは有意差がなく,平成14年は12年および13年に比べ有意に高率であった(P<0.001)。 針痕なしの児童の陽性率は,平成12年29.4%, 13年33.1%, 14年56.1%,針痕ありの児童の陽性率はそれぞれ41.8%, 42.0%, 66.9%であり,針痕ありの児童の陽性率は針痕なしの児童より有意に高かった(P<0.005~P<0.001)。平成14年の針痕なしの陽性率は,12年および13年の針痕ありの陽性率より有意に高かった(P<0.001)。 針痕数 1~9 個と10個以上の陽性率は,平成12年40.2%と46.3%, 13年34.0%と55.7%, 14年63.9%と70.7%であった。平成14年の針痕 0 個の陽性率は12年の10個以上の陽性率より高値であった。 ツ反発赤径 5 mm 以上10 mm 未満(旧疑陽性)の児童は,平成12年32.8%, 13年30.2%, 14年20.0%であった。平成14年は12年および13年に比べて有意に低率であった(P<0.001)。 ツ反発赤径 5 mm 未満(旧陰性)の児童は,平成12年34.6%, 13年33.3%, 14年16.3%であった。平成14年は12年および13年に比べて有意に低率であった(P<0.001)。結論 乳幼児期の BCG 接種技術改善により小学 1 年のツ反陽性率を大きく高め,ツ反発赤径 5 mm 未満の旧陰性群を大きく減少させることができる。針痕数よりも針痕の残る児童の割合の方が全体の陽性率との関連が強い。平成14年は針痕なしの児童も高い陽性率を示したことから,管針を強く押すだけでなく,生菌を多く接種するための改善がなされたと推測できた。
著者
村松 一弘 武井 利文 松本 秀樹 土肥 俊
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.50, pp.27-32, 1996-05-24
参考文献数
8
被引用文献数
1

大規模流体解析と同時に解析結果を可視化する、実時間可視化システムを開発した。本システムはUNIXベースのネットワーク分散環境に対応しており、計算サーバとしての分散メモリ型並列マシンCenju?3と、XおよびMotifが装備されているクライアントワークステーション()で動作する。並列計算サーバ上で、流体解析とイメージデータ生成までの処理を行ない、解析結果の可視化表示と可視化のための諸パラメータの制御をクライアントで実行する。またJPEGのような画像圧縮技術を実装することにより、サーバからクライアントへの転送データの削減を図っている。これにより、バンド幅の狭いネットワークでもサーバからクライアントへのデータ転送がネックにならないと考えられる。A real-time visualization software system has been developed for concurrent visualization of on-going large-scale flow simulation. This software runs in UNIX-base distributed environment composed of a Cenju-3 distributed-memory parallel computing server and a client workstation equipped with X and Motif. The flow simulation and generation of pixel images for display are performed on the parallel server, while graphical monitoring of the simulation results and steering of visualization parameters are performed on the client. Image compression techniques (such as JPEG) are also employed for the data transfer from the server to the client, so that the software can work on a standard low-cost network such as the Ethernet.
著者
伴 雅雄 及川 輝樹 山崎 誠子 後藤 章夫 山本 希 三浦 哲
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.131-138, 2019-06-30 (Released:2019-07-06)
参考文献数
27

Based on the history of volcanic activity of Zao stage VI, we examined possible courses of future activity of Zao volcano. All activities will start with precursory phenomena. Next, phreatic eruptions from Okama crater or other place inner part of Umanose caldera will occur, and may cause ballistic materials release, ash fall, pyroclastic surge, and lahar. The possibility of small scales edifice collapse and lava flow swelled out is very low but should be included. When the activity progresses, magmatic eruptions will be taken place from Goshikidake, and cause same phenomena as in the phreatic eruptions but larger in scale. The possibility magmatic eruption takes place without preceding phreatic eruption can not be excluded. Rarely, the activity will go up further and resulted in sub-Plinian eruption. Aside from the above sequence, larger scale phreatic eruption from Goshikidake area should be listed, although the possibility of this is very low.
著者
丹沢 宏
出版者
The Textile Machinery Society of Japan
雑誌
繊維機械学会誌 (ISSN:03710580)
巻号頁・発行日
vol.31, no.7, pp.P287-P292, 1978-07-25 (Released:2009-10-27)
参考文献数
13
被引用文献数
1