著者
後藤 真孝 中野 倫靖 濱崎 雅弘
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.739-749, 2014-02-01 (Released:2014-02-01)
参考文献数
19

本稿では,初音ミクとN次創作に関連した音楽情報処理の研究事例として,歌声合成技術VocaListenerと音楽視聴支援サービスSongriumを紹介する。VocaListenerは,初音ミク等の歌声合成ソフトウェアを用いて,録音された人間の歌声の事例からその歌い方(声の高さと声の大きさ)をまねて自然な歌声を合成する技術である。Songriumは,オリジナル楽曲とそれらのN次創作結果である派生作品といったさまざまな関係性を可視化できる音楽視聴支援サービスである。本稿ではさらに,より未来を見据えて自動創作と自動鑑賞の可能性を考察することで,音楽がもたらす感動の本質的な要因についても議論する。
著者
柿本 正憲 西田 友是 苗村 健 原島 博
出版者
一般社団法人 画像電子学会
雑誌
画像電子学会誌 (ISSN:02859831)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.369-375, 2010-07-25 (Released:2011-08-25)
参考文献数
15

グレア効果はゲームやエンタテインメントにおけるCG特殊効果技術として広く使われている.本稿では,実世界で起こるグレア現象をより忠実に再現するレンダリングを行い,グレア効果のランプ設計分野への応用を提案する.人間の眼で起こる回折現象をシミュレートし,光源の波長特性(分光分布特性)を反映したグレアのパターンをテンプレート画像として前計算する.レンダリング時には,光源の配光特性のシミュレーションまたは計測結果を元に見る角度に応じたHDR画像を生成しトーンマッピングを施し合成する.車のヘッドランプのような高輝度光源を人が見たときの実際の見え方を模擬し,グレアの影響評価に応用できる良好な結果を得た.
著者
里宇 明元
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.465-470, 2016-06-18 (Released:2016-07-21)
参考文献数
29

革新的ニューロリハビリテーション技術を開発・実用化するには,神経科学研究の積み重ね,臨床的エビデンスの蓄積,知財マネジメント,医療機器としての製品化・薬機法承認・事業化が不可欠である.慶應義塾大学医工連携チームは,従来治療困難であった脳卒中後重度手指麻痺に対し,手指伸展企図時の運動野近傍の事象関連脱同期を頭皮電極で記録し,運動企図したと判断された際には,麻痺側手指を電動装具で伸展して体性感覚フィードバックを脳に返し,可塑性を誘導する治療システムを開発した.Proof of concept,first in man,症例シリーズ研究,効果機序解明を経て,企業と共同で製品化を進め,薬機法承認に向けた医師主導治験を計画中である.
著者
和泉 徹彦 イズミ テツヒコ
雑誌
嘉悦大学研究論集 = KAETSU UNIVERSITY RESEARCH REVIEW
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.23-41, 2015-03-19

保育所の待機児童解消は、安倍政権における経済成長戦略の中で女性の活躍する社会づくりの前提とされ、いわば国策として全国市区町村が待機児童ゼロを目標とするように迫られている。特に都市部では、待機児童を解消するために保育所整備を精力的に進めているが、保育所の新設が周辺住民の潜在的な保育サービス需要を掘り起こしてしまい、定員は増えているのに待機児童が減らない状況が起こっている。今回、政令指定都市を対象に調査を実施し、待機児童、隠れ待機児童、保育所入所率などを確認した。調査からは、公表している待機児童から除外されている隠れ待機児童が多い実態が明らかになった。待機児童ゼロを宣言している政令指定都市のうち、新潟市は就学前児童に対する保育所入所児が過半数を超えており、潜在的需要を掘り尽くした結果であることが分かった。一方で、隠れ待機児童が多く保育サービス需要の存在を隠している自治体もあった。この調査結果を受けて、保育所整備を続けて待機児童や潜在的需要を解消するためにはどれくらいの財政支出が必要なのかを試算した。100人定員の保育所を新たに建設する場合、当初2年間に1億9千万円の補助金が投入され、3年目以降は毎年1億3千万円の運営費がかかり、待機児童は最大で40人解消できる。待機児童や潜在的需要に対してこの条件を各市に当てはめて試算している。
著者
水漉 あまな 藤岡 洋保
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.63, no.503, pp.203-210, 1998-01-30 (Released:2017-02-02)
参考文献数
130

This Paper shows the kyoto's role in forming the Ancient Shrines and Temples Preservation Act(1897) was decisive. To help recover Kyoto's economy, since 1881 Kyoto had been trying to preserve old edifices in its shrines and temples as its symbols. But for lack of sufficient fund, Kyoto began to carry on a campaign to form a national law to preserve those old edifices; Kyoto even proposed a preservation bill referring to the ones abroad and ask other prefectures to join the campaign. Kyoto's propositions were introduced in some articles of the Act.

49 0 0 0 朝日年鑑

著者
朝日新聞社 編
出版者
朝日新聞社
巻号頁・発行日
vol.1948年版, 1949
著者
渡辺 伸一
出版者
奈良教育大学
雑誌
奈良教育大学紀要. 人文・社会科学 (ISSN:05472393)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.115-125, 2007-10-31 (Released:2017-02-27)

Environmental cadmium pollution causes cadmium poisoning. The first cadmium-polluted area ever discovered in the world was the Jinzu River basin in Toyama Prefecture in Japan. The most severe case of cadmium poisoning is Itai-itai disease (osteomalacia), which was officially recognized as a pollution-related disease by the Japanese government in 1968, and a less severe case is tubular kidney dysfunction. In other words, the occurrence of Itai-itai disease is only the "tip of the iceberg". The tubular kidney dysfunction is the earliest and most prevalent adverse result of chronic cadmium poisoning. The Japan Public Health Association Cadmium Research Committee, supported by the Environmental Agency, carried out health surveys in cadmium-polluted areas of 8 prefectures during the period of 1976-1984 and reported that many cases of tubular kidney dysfunction were found not only in Toyama but also in Ishikawa, Hyogo and Nagasaki prefectures. However, the Environmental Agency and the research committee have never certified this kidney dysfunction as a pollution-related disease. In 1970, the Japanese government set tentative acceptable standards of 1ppm for brown rice and enacted the Agricultural Land Soil Pollution Prevention Law in 1971. Based on this Law, restoration projects of polluted soils of rice paddies were started. If cadmium nephropathy was certified as a officially pollution-related disease, acceptable standards for brown rice must be more strict than 1ppm, because 1ppm is a standard to prevent habitants from suffering from Itai-itai disease. This new strict standard arrives at increases in polluted rice and soils. This means increases in the expenses to buy polluted rice and to restore polluted soils. To offer indemnity to farmers for any reduction in his rice crop is the responsibility of polluting industries and to pay expenses to restore polluted soils is the responsibility of polluting industries, the central government and local authorities. This paper concludes that the main reason why cadmium nephropathy has not been certified as an official pollution- related disease is that the decision-making of the Environmental Agency and the research committee reflects the intention of the polluting industries and the government who regard the expenses above as too heavy a burden.
著者
岩見 億丈 笹井 康則
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.106-116, 2016 (Released:2016-08-23)
参考文献数
13
被引用文献数
2

福島第一原発事故による放射性セシウム汚染牧草を遠野市一般廃棄物焼却炉で焼却した際の行政資料を分析し,物質収支により放射性セシウムの挙動を検討した。2012年11月から2014年7月までの394日分のデータから274日分を選別し,ベイズ統計回帰分析を行った結果,灰中回収率は 64.7 % (95 % 信用区間56.9~72.6 %) となった。設備へのセシウム吸着量を評価すると,バグフィルターの排ガス中放射性セシウム除去率は 64.6 % であった。排ガス中Cs137濃度は 1.4 Bq/m3N 前後まで上昇したと推定されるが,現行の測定法では不検出となる数値である。物質収支の視点からも放射性物質の大気への排出を検討し,科学的説得性のある排ガス中濃度測定法を実施することが,放射性廃棄物の焼却を行う際の科学的必要条件であると考えられる。
著者
中野 広
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.83-88, 1988-04-15 (Released:2010-03-11)
被引用文献数
1 1
著者
KEIYA FUJIMORI HYO KYOZUKA SHUN YASUDA AYA GOTO SEIJI YASUMURA MISAO OTA AKIRA OHTSURU YASUHISA NOMURA KENICHI HATA KOUTA SUZUKI AKIHITO NAKAI MIEKO SATO SHIRO MATSUI KYOKO NAKANO MASAFUMI ABE FOR THE PREGNANCY AND BIRTH SURVEY GROUP OF THE FUKUSHIMA HEALTH MANAGEMENT SURVEY
出版者
福島医学会
雑誌
FUKUSHIMA JOURNAL OF MEDICAL SCIENCE (ISSN:00162590)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.75-81, 2014 (Released:2014-08-08)
参考文献数
29
被引用文献数
8 47

Background: On 11 March 2011, the Great East Japan Earthquake followed by a powerful tsunami hit the Pacific Coast of Northeast Japan and damaged Tokyo Electric Power Company’s Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant, causing a radiation hazard in Fukushima Prefecture. The objective of this report is to describe some results of a questionnaire-based pregnancy and birth survey conducted by the Radiation Medical Science Center for the Fukushima Health Management Survey.Materials and Methods: Questionnaires were sent to women who received maternal and child health handbooks from municipal officers in Fukushima Prefecture between 1 August 2010 and 31 July 2011, with the aim of reaching those who were pregnant at the time of the disaster. Mailing began 18 January 2012. Data were analyzed separately for six geographic areas in Fukushima Prefecture.Results: The total number of women meeting survey criteria was 15,972. The number of responses received to date is 9,298 (58.2%). Data from 8602 respondents were analyzed after excluding 634 invalid responses and 5 induced and 57 spontaneous abortions (less than 22 gestational weeks). The incidences of stillbirth (over 22 completed gestational weeks), preterm birth, low birth weight and congenital anomalies were 0.25%, 4.4%, 8.7% and 2.72%, respectively. These incidences are similar to recent averages elsewhere in Japan.Conclusion: Considering the pregnancy and birth survey data in aggregate, our disaster seemed to provoke no significant adverse outcomes over the whole of Fukushima prefecture. But post-disaster prenatal care and support intended for patients’ safety and security should be coupled with ongoing surveillance and rigorous data analysis.
著者
少年文化社
出版者
少年文化社
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, 1949-03
著者
山本 悠真 ジェンキンズ ロバート
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

陸上植物は,地球上での重要な炭素貯蔵庫であるが,その構成成分であるセルロースやリグニンは難分解性の有機物であり,光合成によって固定された炭素がそのまま地層中に埋没しやすい.海洋に流出した材はフナクイムシをはじめとした木材穿孔性二枚貝などの材食者によって分解されることが知られている.木材穿孔性二枚貝はヤスリ状の殻で材を小片化し,また,共生微生物を利用してセルロースを分解する.特に深海性の穿孔貝であるキクイガイ類の場合は海底で材を分解する.木材穿孔性二枚貝は木の周囲に分解産物をまき散らすため,材周囲に沈木群集と呼ばれる生態系が形成されることがある.沈木群集には有機物の分解によって生成される硫化水素をエネルギー源とした化学合成生態系が含まれることもある.木材穿孔性二枚貝は前期ジュラ紀に出現し,当時は木を住処として利用しており,ジュラ紀末に木を餌資源として利用するようになった.また,穿孔性二枚貝は白亜紀に多様化した.しかし,白亜紀の海での穿孔性二枚貝の穿孔による木の分解過程は明らかにされていない.そこで本研究では日本の北海道中川町に分布する白亜系蝦夷層群から産出する化石を用い,海での木の分解過程を復元することを目的とした.計67個の炭酸塩コンクリーションを中川町の白亜系露出域から採集し,実験室に持ち帰って表面の観察,切断研磨面および薄片の観察,X線CT撮影,含有無脊椎動物化石のクリーニングなどを実施した採集したサンプルの内約70%に材化石が含まれていた.そのうちの約34%に材への穿孔痕が認められた.穿孔痕壁面の詳細観察により穿孔痕形成者はキクイガイ類などの深海種の木材穿孔性二枚貝だと推定できた.穿孔痕内に硫酸還元菌の活動を示すフランボイド状パイライトの密集が多く見つかった.材化石中や材化石の周囲にパイライトの密集が見つかった.木の周囲にペレットが密集して存在し,その一部には小片化した材が含まれていた.以上の観察事実を総合すると,白亜紀の蝦夷海盆の深海帯においては,少なくとも3割程度の材が深海性穿孔貝と硫酸還元菌による分解を被っていたことが明らかとなった.
著者
熊谷 慎一郎
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.797-807, 2012 (Released:2012-03-01)
参考文献数
5
被引用文献数
1 1

東日本大震災の発生から9か月あまりを経過した現在,被災した宮城県内の公共図書館を中心に被害状況・復旧状況を概観する。震災による被害は,地震に伴って発生した大津波による被害だけではなく,地震の揺れによる建物被害もあり,このことがあまり一般に報道されていないことを指摘した。宮城県図書館は,県域の公共図書館への復興支援として,各種事業を間接支援・直接支援という大きく2つの軸で展開した。これらの事業の主なものを紹介する。中でも,南三陸町図書館の再開までの支援について,詳細に取り上げる。さらに,県立図書館が,支援者と受援者の間で機能する役割を担っていることを明らかにし,中間組織の必要性を検討した。何が課題としてあるのかを指摘し,今後,大規模災害が発生した時に必要な支援のあり方について,現時点での考察を試みた。

49 0 0 0 OA <小鍛冶>の周辺

著者
石井 倫子
出版者
日本女子大学
雑誌
日本女子大学紀要. 文学部 (ISSN:02883031)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.1-12, 2003-03-20
著者
佐々木宏夫
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ リサーチ学会第51回シンポジウム『ゲーム理論と離散数学の出会い』予稿集 (2004年3月)
巻号頁・発行日
pp.25-43, 2004
被引用文献数
1

Gale-Shapley(1962)の公刊以来、マッチング問題に関して多方面の理論研究が行われている。一方、Roth(1984)による米国の医学部卒業生の研修先を決定するメカニズムが、この問題の現実への興味深い適用例であることの発見は、マッチング問題がゲーム理論における数少ない実証研究のテーマになりうることを示唆している。本研究では、早稲田大学高等学院から早稲田大学各学部等への配分メカニズムがゲール=シャプレイ・アルゴリズムの現実への適用例であることを明らかにした上で、具体的に得られた各プレイヤーの選好順位にもとづいて、この文脈における戦略的操作不可能性(strategy-proofness)の概念の含意を検討した。