著者
有森 由紀子
出版者
京都大学大学院人間・環境学研究科
雑誌
人間・環境学 (ISSN:09182829)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.43-56, 2014-12-20

本論文は, 映画監督・脚本家プレストン・スタージェスのスクリューボール・コメディ2作品『偉大なるマッギンティ』(The Great McGinty, 1940) と『サリヴァンの旅』(Sullivan's Travels, 1941) について考察を行う. 両作品はスタージェスの優れた喜劇の才能が発揮された作品であると同時に, 大恐慌というアメリカの歴史・社会的状況を反映し, アメリカン・ドリームと現実の乖離がもたらす悲劇も描く. 両作品の主人公は, 子供らしい無知と無邪気さを備えた典型的「スクリューボール」である. 彼らは階級間移動を試みて挫折を味わう一方で, スクリューボール・コメディに相応しいハッピーエンド=恋愛の成就に至る. 夢に破れる主人公の悲劇が, ジャンルの掟と拮抗し, いかにしてスタージェス独自のスクリューボール・コメディへと結実していくのかを明らかにする.
著者
八杉 佳穂 Yoshiho Yasugi
出版者
国立民族学博物館
雑誌
国立民族学博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Ethnology (ISSN:0385180X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.139-225, 2009-01-30

ローマ字入力漢字仮名交じり変換という画期的な方法とコンピュータの技術進歩のお蔭で,自由に日本語が書けるばかりか,検索も自由に行われるようになり,書記法の問題は解決された感がある。しかし日本語の書記法については,難しいとか,国際化に適さないというような否定的な見解がいまだに多い。それらはアルファベットが一番進化した文字であるという進化思想や,西欧の基準を無理やり日本に適用させたことに起因している。 本論では,マヤ文字とかアステカ文字など中米の文字体系から得られた知見をもとにして,漢字仮名交じりやアルファベットの文字体系にまつわる「常識」を検討している。文字の本質は,意味ある単位をいかに表わすかということ,すなわち,表語である。一見やさしくみえるアルファベットも,表語という観点からみると,漢字となんらかわるところはない。 漢字仮名交じり表記法は,世界でほかにない珍しい書記体系だから,国際標準と信じられているアルファベットにかえなければならないのではなく,唯一無二であるから,学び磨き伝えていかなければならないという思想こそ大切である。
著者
黒田 勇
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.141-163, 2020-03-31

This research note aims to reveal the history of the sports events operated by two newspaper companies, The Osaka Asahi and The Osaka Mainichi, in the early 20th century. It focuses on Minato Ward of Osaka City where several sport-events were held, the 6th Far Eastern Championship Games in1923, for example, and "Ichioka Paradise" was built in 1925, which consisted of several amusement facilities and the Japan's first artificial skating link.
著者
粕谷 圭佑 平井 大輝
出版者
奈良国立大学機構連携教育開発センター
雑誌
連携教育開発センター紀要 = Bulletin of Center for Interprofessional Education Development (ISSN:27586855)
巻号頁・発行日
no.1, pp.29-37, 2023-03-31

本稿は、筆者らが取り組む「学校的社会化」研究の比較研究における主要な論点について、2022 年度に行った調査報告を兼ねながら試論的に論じるものである。「子どもが児童になる過程」を探究する学校的社会化研究において、学校規模や教育理念の違いをどのように議論に組み込んでいくのかが理論的な課題となる。本稿は、島しょ部少人数校とオープンプラン教育実施校の参与観察を通して、典型的な公立校における環境・理念との「差異」を、いかに学校的相互行為の研究として取り扱っていくかを検討し、空間的な規範性、理念の規範性、相互行為の規範性それぞれを弁別化する必要性を論じた。