著者
伊藤 正子
出版者
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
雑誌
アジア・アフリカ地域研究 = Asian and African area studies (ISSN:13462466)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.258-286, 2018-03

北部山間部省の農村に住む「ガイ」と自称する人たちの身分証明書の民族名欄には, 「ホア(華人)」と記されている. 「ガイ」という民族が, 一民族として認められているにもかかわらず, である. ベトナムに移住してきて最低3世代以上がたっていたかれらの中には, ベトミンの独立運動に協力する者も珍しくなかったが, 1978-79年に中越関係が悪化した際, 中国に起源をもつ者としてベトナムの排斥政策の対象となり, 公職から追われ, 中国に帰国する者が数多く出た. その後も, さまざまな差別政策の犠牲となってきたが, 21世紀に入り, 中国広西でのさとうきび伐採のための労働力需要を満たすため, 78-79年に中国へ渡った人々との間の親族ネットワークを利用して, 密出国出稼ぎにいくルートをつくりだした. この出稼ぎネットワークは, 他の少数民族や多数派のキン(ベト)人をもまきこみ, ベトナム北部全域に及ぶようになっている. 本稿ではかれらの個人史を通じて, ベトナムの排斥政策が, 中国との関係が切れていたガイの人々に中国とのネットワークを新たにつくらせた皮肉な歴史を描く.In Vietnam, people must belong to one of the 54 ethnic groups recognized by the state. In the agricultural hilly area in the north, nearly 100, 000 people are self-proclaimed Ngai, who speak a kind of Hakka language. Though the state accommodated the new category'Ngai´ to pull them apart from China during the Chinese-Vietnamese War in 1979, the cadres in the rural area compelled the Ngai people to register themselves as Hoa, as they regard the people with Chinese-origin as Hoa. According to the Statistics Bureau of Vietnam, only around 1, 000 people are recognized as Ngai. In this study, I consider the difficulty faced by one ethnic group to live in country A, which conflicts with country B, to which they originally belong. To this end, I clarify the life histories of the self-proclaiming Ngai. They are publicly regarded as reactionary in nature, but many Ngai cooperated with the Viet Minh and did not leave Vietnam even in 1978-79. As discriminatory policies were implemented without public knowledge, the Ngai faced severe hardships in the 20th century. Recently, however, the young Ngai are pioneering their way to a better life by going to work in China, using the new network that was established during the war.
著者
住野 幾哉 山口 香 小林 好信 橋本 佐由理
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第67回(2016) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.285_2, 2016 (Released:2017-02-24)

近年、水泳の萩野公介が北島康介の、「ありのままでいいんだ」との言葉で蘇生し、リオオリンピック出場を決めた。言葉によるエンパワーメントの重要性が再確認された出来事である。スポーツ選手に対する言葉掛けには大きな意味がある。キックボクシングは相手と対峙し打撃を主とする競技であり、心理面へのアプローチが競技パフォーマンスに及ぼす影響は非常に大きいと推察される。本研究は、キックボクシング選手がエンパワーメントされる言葉についての知見を得ることを目的に、選手が励まされた言葉は何であったのかに着目してインタビュー調査を行った。対象は学生キックボクシング選手10名である。分析方法は、ジョナサン・スミス(Smith J. 1997)の解釈学的現象学的分析を参考にスーパーバイザーの指示の下で分析を行った。その結果、彼らが励まされたと感じた言葉は大きく「賞賛」「教示」「励まし」「受容」というカテゴリーに分類された。なかでも「励まし」「受容」に分類されたものが多かった。また、指導者が与える言葉だけではなく、家族、先輩、チームメイトなどといった重要他者から発せられる言葉が選手に与える影響が大きいこともわかった。
著者
添田 紗恵乃 Saeno Soeda
出版者
フェリス女学院大学国文学会
雑誌
玉藻 (ISSN:02887266)
巻号頁・発行日
no.52, pp.167-186, 2018-03
著者
近藤 将成 久保田 良輔
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.114, no.496, pp.21-26, 2015-03-05

本報告では,レーベンシュタイン距離に基づく遺伝的アルゴリズムを用いて,看護師の勤務希望を考慮した勤務表を生成する方法を提案する.これまでにも,看護師の勤務希望を考慮した勤務表生成が行われてきたが,それらの勤務表は看護師の勤務に関するガイドラインを完全に遵守できているとは言い難く,また,勤務希望の満足率も高いとは言えない.提案手法では,レーベンシュタイン距離に基づいて勤務表間の類似性を算出し,これを評価関数の設計と突然変異を行う要素の決定に利用することで,勤務に関するガイドラインを守りつつ,勤務希望の満足率を高く保つことが可能となる.種々のシミュレーションにより,提案手法の有効性を検証する.
著者
廣田 收 ヒロタ オサム Hirota Osamu
出版者
同志社大学人文学会
雑誌
人文学 (ISSN:04477340)
巻号頁・発行日
no.201, pp.101-132, 2018-03

『源氏物語』における物の怪を再検討する上で、本文に即した読み直しを試みる。そのとき、「もの」と「もののけ」「霊」との間には使い分けがあり、また登場人物の違いによって使い分けがあることを明らかにした。
著者
ペッ ペンシャイ 中島 典之 古米 弘明
出版者
SOCIETY OF ENVIRONMENTAL SCIENCE, JAPAN
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.15, no.6, pp.433-442, 2002

水環境への道路側溝堆積物の雨天時流出は,重要なPAHs汚染経路の一つであり,その流出を制御するためには,堆積物中のPAHsの起源解析や各起源の寄与率を知ることが重要となる。そこで,本研究では,自動車排出物(ディーゼル車およびガソリン車),タイヤおよび舗装材を,道路側溝堆積物中の主たるPAHs起源として取り上げ,入手した試料の分析値(22データ)と文献値(64データ)計86データを対象に,16成分のPAH組成比(プロファイル)をもとに,クラスター解析によって6グループに類型化した。タイヤ全8試料は,単一のグループ(S1)として明確に他の起源試料と区別され,平均値としてPyreneが43.5%, Benzo (ghi) peryleneが18.9%となり,両者を多く含有する点が特徴であった。舗装材は,2つのグループ(20%以上を占めるPAHs成分がないS2とPhenanthrene, Pyrene, Fluorantheneの合計が全体の75%以上に達するS3)に別れて類型化された。S2とS3のほとんどは,舗装材と粒子状のディーゼル車排出物試料により構成されていた。ガソリン車排出物はS4~S6の3つのグループに別れて類型化され,Naphthaleneを多く含む点において明確に他の3グループと異なっていた。 都内の側溝堆積物4試料のPAHプロファイルを対象に,重回帰分析によって類型化された各起源グループ(S1~S6)の寄与率を求めた。環七通りの2試料はともに起源グループS1の寄与が大きく,50%以上を占め,S2と合計すると80%を超えた。一方,桜田通りでは起源グループS2の寄与率が全体の75%以上を占めた。起源グループS1とS2に含まれる起源試料から判断して,環七通りではタイヤ,桜田通りでは舗装材またはディーゼル排出物に由来するPAHsが側溝に多く存在している可能性が示唆された。

1 0 0 0 OA 康富記

著者
中原康富
出版者
巻号頁・発行日
vol.[79],
著者
佐藤進一著
出版者
岩波書店
巻号頁・発行日
1990
著者
細見 博志
出版者
金沢大学
雑誌
講義録・研究者になりたい人のための倫理--先端科学を中心に
巻号頁・発行日
pp.59-65, 2006-12-01

金沢大学大学院医学系研究科保健学専攻
著者
高石 雅樹 青柳 達也 増田 崇 千葉 百子
出版者
国際医療福祉大学学会
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.7-17, 2014-09-22

我が国では全人口の約30%が花粉症患者(2008年)であり,その半数以上がスギ花粉症患者といわれている.そして,花粉症に関する医療費は,日本全体では1,172億円と推計されている. 我が国では第二次世界大戦後,スギやヒノキが大量に植林された.これらのスギが,樹齢30年を超えて多くの花粉を生産するようになり,花粉飛散量が増加したことで,花粉症患者が増加した. 2008年において,栃木県のスギ花粉症有病率は39.6%と全国第三位であり,全国平均の約1.5倍である.栃木県では花粉症対策として,雄花の多いスギ林の間伐を推進している.また,2008年5月に「花粉の少ないスギ山行苗生産計画」を策定し,花粉の少ないスギ林の造成に関する研究を行っている.しかしながら,全てのスギが少花粉スギに置き換わるにはかなりの年数が必要である.また,花粉症患者数の増加に,食生活などの生活様式の変化や大気汚染等の関与も疑われている.したがって,今後の継続的な調査・観察・研究が必要である.
著者
井濃内 順 渋谷 達明 畑中 恒夫
出版者
筑波大学菅平高原実験センター
雑誌
菅平高原実験センター研究報告 (ISSN:09136800)
巻号頁・発行日
no.8, pp.167-179, 1987-03-25

Odor responses of the single olfactory cells on the antennae in the dung beetle (Geotrupes auratus) were studied. The receptor cells well responded respectively to a part or all of the five characteristic odors (2-butanone, phoenol, p-cresol, indole, skatole) from cattle's dung. The olfactory cells could be divided into the following two types of responses. (1)R-Type I: Only 2-butanone was effective for all cells of this type. The impulse frequency increased with increase of stimulus concentration. The slope of the dose-resoonse curve was relatively steep. Threshold concentration of the individual olfactory cells varied in the value. Impulse discharges of some of the cells to 2-butanone disappeared of decreased by stimulus of the mixture with other four odors. (2s) R-Type II: All cells in this type responded to 2-butanone but the responses to the other four odors were different with cells. The dose-response curve to 2-butanone of this type of cells resembled with that of R-Type I. Threshold values of the cells to the odors were differed from each other. 2-butanone in the dung may be volatilized faster than the other four odors, it is thus suggested that the dung beetles may be oriented to 2-butanone odor contained in their food.動物の生得的行動を開発する「鍵刺激」として、視覚的に単純な形や色、聴覚的な一定周波数の音、また、物理的な接触刺激などの存在が知らされている。一方、化学的、特に嗅覚的な匂いも鍵刺激として重要であり、鱗翅目昆虫の性フェロモンは、配偶行動を開発する、種に固有な匂いであることは良く知られている。・・・

1 0 0 0 OA 張州府志 30巻

著者
松平, 君山
出版者
巻号頁・発行日
vol.[1],
著者
鈴木 庸介 小林 良太郎 加藤 雅彦
雑誌
コンピュータセキュリティシンポジウム2018論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, no.2, pp.875-881,

近年,IoT 機器の普及によって日常生活の利便性が向上している一方で,IoT 機器を狙ったマルウェアも発生しており,IoT 機器のセキュリティ対策が求められている.しかし,多くの IoT 機器はログインパスワードの設定などがデフォルトのまま使われていることが多いため,マルウェアのパスワードクラックによって簡単に IoT 機器に侵入されている.そこで,パスワードクラックの検知機構によりマルウェアの感染後の活動を防ぐシステムを作ることを目指す.また,ライセンスフリーであり,複数のベンダーが開発に参加していることから,今後 IoT デバイスへの搭載が期待される,RISC-V に注目する.本研究では,プロセッサに RISC-V を使用した仮想マシンを用いて,エミュレーション環境を用意し,プロセッサ情報を用いた,パスワードクラック検知機構を評価した.実験の結果,パスワードクラックの検知が可能であることを確認した.
著者
村田 正博
雑誌
人文研究 (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.43, no.10, pp.831-850, 1991