著者
草野 友子
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 人文科学系列 (ISSN:02879727)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.196-212, 2011-03

本稿は,中国の新出土文献「銀雀山漢墓竹簡(ぎんじゃくざんかんぼちっかん)」(以下,銀雀山漢簡)の「論政論兵之類」に分類される『為国之過』を取り上げ,その文献的特質を考察するものである。 銀雀山漢簡は,1972 年に出土した竹簡であり,その内容は主に古代兵書である。全容は三分冊によって公開されることが予告されていたが,『孫子兵法』『孫臏兵法』などを収録した 『銀雀山漢墓竹簡(壹)』の刊行後,続巻の刊行が中断した。 しかし,2010年になってようやく『銀雀山漢墓竹簡(貳)』が刊行された。第二輯において公開された『為国之過』は,国を治める際の過失について,箇条書き風に説かれている文献である。そこには,国家の存亡,君主・臣下・民の相互関係,戦争時における対策などについて具体的に書かれており,その理想と現実とが述べられている。 本稿では,『為国之過』の内容を確認した上で,その全体構成と本文献の特質を明らかにしていきたい。

1 0 0 0 OA 毛詩 20卷

著者
(漢) 毛亨 傳
巻号頁・発行日
vol.[5], 1600
著者
保木井 啓史
出版者
一般社団法人 日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.261-272, 2015

本研究の目的は,幼児の協同的な活動の成立過程を,幼児の日頃の関係性の点から明らかにすることであった。研究方法として,幼稚園5歳児クラスの保育場面を,Ripleyらが提唱した「メンターシップ」の視点から質的に分析した。その結果,次のことが明らかになった。第1に,協同的な活動への参加は,日頃の遊びでの決まったメンバーである「仲良しグループ」を単位としてなされていた。第2に,幼児同士の目的の共有がなされない場合にも,「仲良しグループ」を単位とした活動は,他児への関心によって図らずも「協同的」になっていた。第3に,「気楽な雰囲気」が,仲良しグループを単位とした協同的な活動を継続させていた。
著者
横田 千晶
出版者
日本脳循環代謝学会
雑誌
脳循環代謝(日本脳循環代謝学会機関誌) (ISSN:09159401)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.51-56, 2015 (Released:2015-08-07)
参考文献数
16
被引用文献数
1

要旨 急性脳卒中例におけるバイオマーカーとして,終末糖化産物(advanced glycation end products; AGE)とその可溶性受容体(soluble RAGE; sRAGE)に着目した.発症後3 日以内の急性期脳卒中例の検討より,sRAGE 低値と重症白質病変,入院時重症度,喫煙習慣,正常糸球体濾過率は有意に関連した.急性期脳卒中例におけるsRAGE とesRAGE には良好な相関があった(R=0.85).急性脳梗塞例と年齢をマッチさせた吹田コホートとの比較より,AGE の一つである血中ペントシジン(PENT)値は,他の危険因子で補正後も有意に急性脳梗塞と関連した.脳卒中発症後平均3 日と14 日にsRAGE,esRAGE,PENT を測定し,健常例と比較した.sRAGE,esRAGE は,脳出血発症早期に低下しており,脳出血発症に関連している可能性がある一方,PENT は,脳卒中発症リスクのバイオマーカーとなる可能性がある.
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンストラクション (ISSN:09153470)
巻号頁・発行日
no.587, 2014-03-10

五輪開催に向けた首都圏のインフラ整備で注目の国道357号。東京湾岸道路の一部に位置付けられている路線だ。同路線の都内区間の"渋滞名所"で進行していた大型改良事業で、1件がこの2月に完成、もう1件が3月に完成する。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.863, pp.29-31, 1996-10-28

増資で得た資金が生きなかった。業界随一の強い財務体質が空回りする。他社に先駆けて整備した人事制度も,平等主義の風土で成果が出ない。全国を網羅した生産拠点は人員過剰の源になってしまった。キリンビールは来年をメドに自社株消却を実行する。豊富な手持ち資金を使って自社株を買い入れる。
著者
神山 剛一 安部 達也 鉢呂 芳一 國本 正雄 荒木 靖三 高野 正博
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.867-872, 2011 (Released:2011-11-02)
参考文献数
44
被引用文献数
4

便失禁の保存的治療では,まず患者の生活習慣を調べた上で食物繊維摂取を促し,便を軟化させるコーヒーやアルコールなどは控えるよう指導する.これに加え薬物療法が選択されるが,軟便が漏れる場合はロペラミドが有効とされ,一方ポリカルボフィルカルシウムは便の性状に関係なく便失禁を改善させる.これら基本的なアプローチで改善しない場合,より専門的な介入の適応となる.便失禁に対するバイオフィードバック療法(以下BF療法)は症状の改善に有用で,海外では広く認められた方法である.当院では薬物療法で改善しなかった54名にBF療法を施行し,Wexner's scoreを9から3へ改善させることができた.他にアナルプラグや逆行性洗腸があるが,いずれも脊髄障害患者や直腸切除後といった特定の対象者で有効性が得られている.
著者
竹澤 伸哉 タケザワ ノブヤ Nobuya Takezawa
雑誌
国際基督教大学学報. II-B, 社会科学ジャーナル = The Journal of Social Science
巻号頁・発行日
no.48, pp.83-90, 2002-03-15

本論文は「eventstudy Jによる自社株消却の情報効果の検証を行った。一定の価格で買い戻す公開買付による自社株取得方法が株価に著しいプラスのインパクトを与えたことを証明した。
著者
劔 義隆 中村 恒
出版者
日本リアルオプション学会
雑誌
リアルオプションと戦略
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.23-31, 2017

スチュワードシップコードやコーポレートガバナンスコードが日本において制定され、機関投資家は株主としての経営監視責任の強化・企業との対話促進をより一層求められ、企業側は株主などのステークホルダーに対するアカウンタビリティをより強化させていく必要に迫られている。余剰現金の保有に対する株主からの配当増額要請や自社株消却要請、M&A・設備投資などの戦略・ファイナンス方法・リスクマネジメントなどを、株主・債権者などのステークホルダーに理論立てて説明しなければならない機会はますます増大していくことが想定され、これまで日本の実務界では欧州との相対比較であまり重要視されてこなかったコーポレートファイナンス・統合リスクマネジメントの領域の知識武装がますます求められてきている。なぜ、企業はリスクマネジメントを行わなければならないのかについては、海外では早くから学術的に理論分析や実証分析が行われてきた。また、教育の場でも欧米のMBAにおいてファイナンス理論の世界から統合リスクマネジメントを 学ぶ授業が展開され、本論文で紹介するケーススタディが掲載されたテキスト、ニール・ドハティの『Integrated Risk Management』(邦訳『統合リスクマネジメント』(米山高生、森平爽一郎監訳)は、まさにそのMBAに使われる標準的テキストとして名声を得ている。本テキストでは、難解な数式を用いることなく簡単な四則演算で計算できるケーススタディを多数用意し、これらのケーススタディを丹念に読み解いていくことで、企業がなぜリスクマネジメントを行わなければならないのかについて、その理論を体系的に習得することが可能となっている。原書はやや古いものではあるが、内容は現在でも全く色あせておらず、多くの実務家の方々に対して有益な実務的指針を提供してくれるものである。筆者らは、一橋大学MBA(大学院商学研究科経営学修士コース)においてこのテキストを用いた授業「統合リスクマネジメント」を開設し、本テキストをよりわかりやすく理解できるようにするため、特に重要と思われるケーススタディをピックアップし、各ケーススタディの意味付け、バランスシートによる解説、考察および事後課題を付したスタディ・マニュアルを新たに作成し、授業では実際にこの副教材が大いに学生の理解の手助けとなった。本稿では、このテキストに掲載されたケーススタディの中からオプションに関連するケーススタディを取り上げ、スタディ・マニュアルの内容を盛り込みつつ内容の紹介を行う。紙面の関係で、ここに取り上げるケーススタディはごくごく一部でしかなく、興味を持たれた方はぜひテキストに加えて、ウェブサイト にて公開しているスタディ・マニュアルを併用し、他のケーススタディにも触れていただければ幸いである。
著者
中村 雅哉
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1058, pp.160-163, 2000-09-18

ゲーム大手のナムコ会長兼社長にして、再建途上の映画大手・日活(東京・文京区)の社長も務める男——それが、今年12月で75歳になる中村雅哉だ。怒ったときこそ迫力を増すが普段は好々爺然とした風貌と、柔らかく律義そうな物腰で、日々、社内外を歩き回る中村は、普通の人に比べて少々変わった生活リズムを持っている。1日に3回、起床・就寝を繰り返すのだ。
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンストラクション (ISSN:09153470)
巻号頁・発行日
no.662, pp.46-49, 2017-04-24

NJSでは、今回の不正に取締役など上層部は関与していなかったとしている。ただ、会社として不正をチェックできなかったことは大きな問題だ。営業と積算の分離という、不正を防ぐための基本方針が守られていなかった。
著者
山本 千鶴子
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大學大學院紀要 (ISSN:13442422)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.93-103, 2007-03-01

ディラン・トマス(1914-1953)は南ウェールズのスウォンジーに生まれ、幼、少年時代はそこで過ごした。1934年にロンドンに住むようになったが、後に終生愛したウェールズに戻って、作品を生みだした。彼の詩は、初期、中期、そして後期と大別される。中期の詩は、詩人が幸せな幼、少年時代を過ごした地方の自然や四季などを通して体験した回想詩である。本稿では、中期の作品に当たる`Reminiscences of Childhood'(First Version,1943),`The Hunchback in the Park'(1941),`After the Funeral'(1938)をとりあげ、これらの作品中に描かれる<Sense of Place>について考える。トマスの心の故郷である<スウォンジー>、彼と共に成長したクムドンキン公園、彼が詩人として想像力豊かに歌っているその公園内でのせむし男と色々なものとの共感、そして田園的な環境のアン伯母の農場で体験した愛別離苦と彼自身が詩人としての復活などには、どのような<Sense of Place>が含まれているのか、本稿はこの点についての考察を目的とする。