- 著者
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中西 英之
キャサリンイズビスタ
石田 亨
クリフォードナス
- 雑誌
- 情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
- 巻号頁・発行日
- vol.42, no.6, pp.1368-1376, 2001-06-15
本論文では,仮想空間内での人間同士のコミュニケーションを補助する社会的エージェントについて述べる.このエージェントはパーティーにおけるホスト役を模擬しており,会話が停滞している2人のミーティング参加者に共通の話題を与えようとする.我々は,このエージェントを異文化間コミュニケーションの支援に適用する実験を行った.実験用に,ミーティング参加者との質疑応答を通して,文化的に共通の安全な話題を提供するエージェントと,危険な話題を提供するエージェントを設計した.実験は,専用線でつながれた京都大学とスタンフォード大学のPCの上で,我々が開発した仮想空間FreeWalkを動作させて行った.この実験において,安全なエージェントはアメリカ人の学生に肯定的な影響を与えた.一方,日本人の学生には否定的な影響を与えると同時に,会話相手との類似性を強調した.危険なエージェントのいる環境では,両国の学生とも会話をより面白いと感じ,日本人学生がよりアメリカ人のように振る舞った.実験の結果,危険な話題は有用であり,エージェントは各参加者に適応できた方が良く,エージェントの存在が参加者の振舞いに影響を及ぼすことが分かった.