著者
梨田 一也 岡田 誠
出版者
中央水産研究所
雑誌
黒潮の資源海洋研究 = Fisheries biology and oceanography in the Kuroshio (ISSN:13455389)
巻号頁・発行日
no.15, pp.57-62, 2014-03

ゴマサバScomber australasicusは北海道南部以南~西部太平洋~オーストラリア南部,ニュージーランド,ハワイ諸島およびメキシコ沖に分布し(Nakabo 2002),同属のマサバS. japonicusとともに本邦太平洋側における重要な水産資源である(川端他 2014)。ゴマサバ太平洋系群には,東シナ海~黒潮続流域から東北~北海道海域を大規模に回避する群れ(広域回遊群)のほか,黒潮周辺の沿岸域に周年分布する群れ(沿岸分布群)も多く(川端他 2014),さまざまな生活型に由来する複雑な年齢-体長関係が想定される。したがって,ゴマサバ太平洋系群に対する適切な資源管理の実行には,それぞれの生活型を踏まえた解析が望ましく,季節ごと,海域ごとの年齢-体長関係の把握が必要である。さば類の鱗による年齢査定については,比較的多くの知見が得られているが(例えば近藤・黒田 1966,花井 1999,渡邊他 2002),熊野灘以西で多いことが推測される沿岸分布群のゴマサバについての情報は十分とはいえず,熊野灘においては年齢査定に関する知見はない。また,熊野灘のゴマサバは広域回遊を行わない沿岸分布群が漁獲の主体とみられるものの,近年では広域回遊群の来遊も示唆されることから(岡田 2011),特に熊野灘における年齢査定は重要であり,かつ慎重を期する必要がある。近藤・黒田(1966)は過去のさば類の年齢査定に関する研究を総説的に紹介し,さば類の年齢査定法に関する教科書的な論文となっている。しかしながら,鱗を用いた年齢査定の具体的な方法については断片的な記述にとどまっており,初めてさば類の鱗を用いて年齢査定を行いたいと考える研究者にとっては,より詳細な年齢査定の基準や再生鱗の判別,偽年輪の判定などの具体的なマニュアルが望まれている。また一方では,年齢査定を行う各県の水産試験場等の研究者は異動頻度が高く,年齢査定のノウハウが継承されない場合が多いため,継承性をいかに確保するかも課題となっている。そこで,本報告では熊野灘で漁獲されたゴマサバの鱗を用いて,年齢査定を行う手順について標準的なマニュアルを作成すること,および熊野離における年齢査定上の注意点を整理することを目的とした。本報告が,これからゴマサバの年齢査定を行う研究者に参考になれば幸いである。
著者
長崎 二三夫 山本 毅也 北方 健作 脇坂 昇
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.5-16, 2014-04-25 (Released:2017-08-10)

はじめに オオムラサキは,最も大きなタテハチョウの1種であり,日本,朝鮮,中国,台湾等に分布している.通常年1化で,幼虫越冬をする.翅表は黒褐色を基調に,♂は翅表の基部を広く紫色が被い,♀では紫色を欠く.日本のオオムラサキの♂の翅表については,紫色が少し薄い北海道から黒みを帯びる九州まで,微妙な地方変異が知られている.海外に目を転じると,台湾において青く輝くオオムラサキが知られており,また最近,長野県産の輝きの強い個体が提示されており(小舘,2009),これも青いオオムラサキの1型である可能性が高い.著者の一人は大分県北部から1頭の青みを帯びた輝きの強い♂を飼育により得ている.そんななかで滋賀県の同好者の間で(ブルー)と呼ばれているオオムラサキの存在を聞くに及んだ.同産地の越冬幼虫をたまたま累代飼育していたところ,青いオオムラサキの出現を記録し,遺伝形式を解明すべく累代実験を行うこととした.最初の越冬幼虫は,2005年に滋賀県の鈴鹿山地より得たものである.飼育はそれぞれの著者の庭に植えてあるエノキを用い,ナイロンネットの袋掛けを行い,越冬幼虫を4月のエノキの芽吹きに合わせて放ち行った.成虫の羽化後♂は約10日経ち成熟してから,♀は羽化後2日目から7日目までを交配に用いた.交配はハンドペアリング法で行った.採卵はエノキの袋掛けネット内で行った.12月上旬に越冬幼虫が木を降りる頃を見計らい回収し,土を入れた植木鉢に保管した.2005年12月に野外採集で得られた越冬幼虫からF2世代まで3世代累代して青い異常個体を得,その後出現した青い異常型個体から世代を重ねて純系作成を試みた.内交配を繰り返し,得られる翅色彩についてすべての組み合わせによるペアリングをして,純系の作成を目指した.一腹から得られた次世代の全個体が青色異常型となった後には,純系であることの確認のために純系個体同士の交配を行った.青い異常型が出現する遺伝形式を見極めるために,青純系と新たに野外から得た幼虫より羽化した正常型との間で交配実験を計画した.2010年原産地より5km離れた地点から得た30頭の正常型と青純系の2頭の♂,2頭の♀との間で4組の交配を行った.飼育結果 1.青い異常型個体の出現 Table 1の通り,2005年12月採集の同一産地に由来する正常型の1♂1♀を交配し,内交配による累代飼育の結果,2008年6月に3世代目として羽化した3頭の♂のうち2頭が青く輝く異常型であった.2.青の純系の作成の試み 累代を続けた結果,3世代後の組み合わせの一つから羽化した♂は,30頭すべてが青で,F5世代で青の純系が誕生したことが示唆された.これらが本当に純系であるかどうかの確認を行うため,純系と思われる2家族同士の交配を2011年6月から7月にかけて行った.翌年2012年6月から7月にかけて,Cross11#1,#2それぞれから38頭と91頭の青の♂のみが羽化し青の純系であることが確認された.3.青純系と野外の正常型との交配実験 前節で得られた青の純系♂と♀を,野外の正常型と交配させた.これらの4組の組み合わせから,翌年2012年6月から7月にかけて,正常型の紫の♂46頭のみが羽化した.青が1頭も羽化しなかったことより青は劣性であることが強く示唆され,羽化した♂,♀ともすべて青の遺伝子をヘテロの状態で保持していると考えられた.最後に2012年7月に上記のF6-3,4,5,6同士の間で交配を行った.すなわち青のヘテロ同士で交配を行ったことになる.2013年6月から7月にかけてCross12#1-4のそれぞれから青と紫の両方が羽化した.上記の交配に用いた両親は,いずれも青に関してはヘテロでありまた青の遺伝子は劣性と想定していたので理論的に導かれる交配の結果は次のようになるはずである.♂Aa x ♀Aa→AA+2Aa+aa→3紫+1青 ここでA:優性の紫の遺伝子 a:劣性の青の遺伝子 AA:ホモの紫 Aa:ヘテロの紫 aa:ホモの青 すなわち理論的には青対紫の分離比は1:3であり,青出現率は0.25(1/4)のはずである.そこで実験結果につき統計学的検討を行うこととした.Cross12#1-4それぞれについて理論的な分離比から仮定される青出現率(p_0)に対し実験で得られた比率(p)が有意に異なるかを正規近似を用いて検定したところ,4組ともメンデル遺伝の理論分離比で劣性遺伝すると判断された(Z検定:Cross12#1-4それぞれ|Z_0|=0.425,p=0.67;|Z_0|=0.994,p=0.32;|Z_0|=0.478,p=0.63;|Z_0|=0.266,p=0.79).考察 以上の飼育実験より青い異常型はメンデルの劣性遺伝をすることが確かめられた.飼育実験を重ねるうちに集積された標本を検討すると,青の青さにスカイブルーから比較的暗いダークブルーまで,連続した微妙なバラツキのあることに気付いた.青と正常型の決定的な違いは,青は斜めに傾けて翅表を観察すると強く金属的に輝くことである.この金属色は構造色とよばれ鱗粉の微細構造に由来するものである.正常型オオムラサキの鱗粉は大きく2種類に分けられ,そのうちの1種類が櫛状構造に外皮様のヒダが何層にも重なってついており,これが構造色を生み出しているという(Matejkov-Plskova et al.,2009).鱗粉の櫛状構造の櫛についている多数のヒダの間隔が正常型では103nmに比し青では169nmと広く,この広いことが光学的研究により,青く輝く原因となっていることが突き止められている(永井ら,2009).この間隔が169nmより少し狭いと,濃い青へ,広くなるとスカイブルーの方ヘバラツクのではないかと想像される(吉岡,私信).スギタニ型にも青い遺伝型が出現し,スギタニ型での青はギラツキ感がやや弱く,また青みが暗い傾向がある.これらの微妙な変異をまとめてFig.7からFig.38まで提示してみた.連続した変異が理解されるものと思う.青い異常型の存在は,各地でささやかれてきた.先に示した大分県をはじめとして,福岡,京都,山梨からは報告は無いものの知られており,栃木,北海道からは最近報告されている.栃木県の報告では,同一のエノキから得られた8頭の越冬幼虫より青が2頭出現しており,遺伝の関与を示唆している(瀬在,2012).北海道では2011年と2012年のオオムラサキの大発生の年に,計6頭の青い異常型が採集されたと報告しており(上野・高木,2013),それぞれの年に,500〜600頭のオオムラサキが容易に捕獲できたとのことである(高木,私信).そうであればおおざっぱであるが,青の出現率は約0.5%(6頭/600×2年)となり極めて稀であることが理解される.オオムラサキは、蝶の愛好家の間では最も人気ある蝶の一つであり,過去半世紀以上数知れぬ越冬幼虫が飼育されてきた蝶である.にもかかわらず青い異常型の報告は,上記のように最近の数例しかない.それほど稀な型ということであろう.この青い異常型は極めて稀で,分布が限られており,保護が計られねばならない.その理由で詳しい産地の公表は控えさせていただいた.その一方で保護の目的で著者たちは累代の努力を継続中である.
著者
岩元 直久
出版者
日経BP社
雑誌
日経パソコン (ISSN:02879506)
巻号頁・発行日
no.652, pp.54-65, 2012-06-25

米グーグル、米マイクロソフトが時を同じくして総合型オンラインストレージサービスを展開した。簡便な使い勝手と豊富な機能が売り物だ。その具体的な操作方法や機能の違いを見ていこう。(岩元 直久=ライター) ここ1、2年、利用者数を伸ばしてきたオンラインストレージサービスが、改めて注目を集めている。
著者
Nomura Jun Matsumoto Ken-Ichi Iguchi-Ariga Sanae M M Ariga Hiroyoshi
出版者
Spandidos Publications
雑誌
Oncology reports (ISSN:1021335X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.5, pp.1305-1309, 2005-11

Fas-mediated apoptosis has been proposed to play an important role in homeostasis. Fas triggers apoptosis after stimulation by its ligand FasL or the Fas ligand agonist anti-Fas antibody through a mitochondria-dependent or -independent pathway, and MSSP has been identified as a transcription factor that regulates the c-myc gene and was later found to positively or negatively regulate a variety of genes, including alpha-smooth actin, MHC class I, MHC class 2 and the thyrotropin receptor. We further found that expression of the Fas gene was repressed, resulting in abrogation of the Fas-mediated induction of apoptosis both in Mssp-knockout mice and primary thymocytes. MSSP was then found to stimulate promoter activity of the Fas gene by binding to a specific region. In this study, to identify the MSSP-dependent Fas-induced apoptosis pathway, primary fibroblasts from MSSP (+/+) and MSSP (-/-) cells were treated with the combination of interleukin 1-beta and interferon-gamma and expression of the Fas gene was examined. The results showed that the Fas gene was expressed at the same levels in the two cell types. Furthermore, when these cells were treated with the anti-Fas antibody, it was found that cytochrome C was not released in the cytosol and that activations of caspase 8 and caspase 3 occurred in primary fibroblasts from MSSP (+/+) cells but not from MSSP (-/-) cells. These results indicate that Fas-mediated apoptosis induced by MSSP occurs independently of mitochondria.
著者
Zhangjie FU Xingming SUN Qi LIU Lu ZHOU Jiangang SHU
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
IEICE TRANSACTIONS on Communications (ISSN:09168516)
巻号頁・発行日
vol.E98-B, no.1, pp.190-200, 2015-01-01

Cloud computing is becoming increasingly popular. A large number of data are outsourced to the cloud by data owners motivated to access the large-scale computing resources and economic savings. To protect data privacy, the sensitive data should be encrypted by the data owner before outsourcing, which makes the traditional and efficient plaintext keyword search technique useless. So how to design an efficient, in the two aspects of accuracy and efficiency, searchable encryption scheme over encrypted cloud data is a very challenging task. In this paper, for the first time, we propose a practical, efficient, and flexible searchable encryption scheme which supports both multi-keyword ranked search and parallel search. To support multi-keyword search and result relevance ranking, we adopt Vector Space Model (VSM) to build the searchable index to achieve accurate search results. To improve search efficiency, we design a tree-based index structure which supports parallel search to take advantage of the powerful computing capacity and resources of the cloud server. With our designed parallel search algorithm, the search efficiency is well improved. We propose two secure searchable encryption schemes to meet different privacy requirements in two threat models. Extensive experiments on the real-world dataset validate our analysis and show that our proposed solution is very efficient and effective in supporting multi-keyword ranked parallel searches.
著者
湯淺 太一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.1-16, 2003-03-15
参考文献数
21
被引用文献数
2

Java 言語によって開発するアプリケーションに組み込んで使用することを主要目的として設計したLisp ドライバを紹介する.設計にあたって重視した点は,(1) Lisp 処理系の実装ノウハウを持たないJava プログラマにも機能の追加・削除・変更が容易に行えること,(2) コンパクトな実装であること,(3) 性能が極端に悪くないこと,などである.これらの条件を満たすために,Java の持つ機能を有効に利用し,大域的な制御情報を排除し,自然なJava コーディングを採用して,ドライバを開発した.このドライバは,高度なLisp プログラム開発支援ツールを備えていないが,単独でLisp処理系として利用することも可能である.Lisp の言語機能としては,IEEE Scheme のほぼフルセットをサポートしている.処理系のソースコードはわずか約3 500 行,100K バイト程度である.実行性能はけっして良くないが,許容できる範囲に収まっている.We present a Lisp driver which is designed to be used primarily as an embedded systemin Java applications. The key design issues include: (1) it should be easy to extend, modify,and delete the functionality even for a Java programmer who is not familiar with Lisp implementation,(2) the driver itself should be compact enough, and (3) the performance shouldbe comparable, though not excellent. In order to develop a driver that solves these issues,we highly made use of Java features, avoided global control mechanisms, and applied widelyacceptable Java coding. Although the driver is not equipped with powerful tools to supportLisp programming, it can be used as a stand-alone Lisp processor. It supports the functionalityof nearly the full-set of IEEE Scheme. The current implementation consists only of 3,500lines or 100 Kbytes of source code. The runtime performance is not excellent, but remains inan acceptable range.1.
著者
木原 裕貴 大田 敏之 福原 里恵 藤原 信 岩永 甲午郎 中田 久美子 本田 茜 古田 靖彦 大津 一弘 亀井 尚美 花見 亮治
出版者
The Japanese Society for Pediatric Nephrology
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 = Japanese journal of pediatric nephrology (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.71-76, 2007-04-15
参考文献数
20
被引用文献数
3 3

症例は日齢3の男児。血性嘔吐,腹部膨満,腹腔内遊離ガスを主訴とし,著明な高アンモニア血症,高エンドトキシン血症を認めた。持続的血液濾過透析を施行し,アンモニア値は減少傾向となったが,低血圧は改善しなかった。エンドトキシン吸着療法を施行したところ,血圧の上昇とともに,全身状態は改善し,根治術へつなげることができた。開腹所見は胃破裂であった。体外循環に伴う問題はなく,安全に施行することができた。成人領域においては,本治療法は広く行われているが,新生児では普及するにいたっていない。本症例において有効であったエンドトキシン吸着療法について,その機序と今後の適応基準を考察した。
著者
奥田 謙造
出版者
トヨタ自動車株式会社
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

米国のトルーマン政権は、対ソ連心理戦に関し、1951年に心理戦略委員会を設立し、政治・経済・軍事に関与する「明白」・「機密」の宣伝を推進したのに対し、アイゼンハワー政権は、それまでの心理戦は問題があるとし、1953年6月に「明白」な宣伝を行う作戦調整委員会を設立し、この下に8月に米国文化情報局を設置して、国際情報・文化・教育交流のための博覧会・映画上映・VOA等事業、さらに、12月の「平和のための原子」演説後に、日本への原子力平和利用も進めた。一方、英国も1948年、対ソ連政治戦(米国の心理戦に相当)に関し、外務省内に「明白」・「機密」の宣伝を行う情報研究部を設立し、米国のソ連への直接攻撃に対し、自由主義諸国内の共産主義の影響を阻む調整を図った。米国占領下の日本においては、米国政策の制約を受けながら、戦時中に青春期を犠牲にした若者を対象に政治戦を進めた。しかし、日本の独立後は自由な戦略が可能となった。英国は戦後、経済力は低下し、原子力戦略にも焦りが広がり、米国とは相入れない面もあったが、両国の心理的協調は堅固で有効に作用した。ところで、科学分野で英国は、終戦直後から、軍と学者により原子力の研究開発を進めた。1950年3月に、コッククロフトは「原子力の見通し」論文の中で、原子力と非原子力の区分を行い、原子力平和利用として、第1に原子力発電所建設、第2に増殖炉開発を提唱した。さらに、遡って戦時中の“チューブアロイズ”プロジェクトにおける1943年のケベック協定では、「核開発成果は戦後に英国の民間での利用を認める」、ことも示されていた。以上のような、戦中・戦後の米英の連携から、1955年以後の日本への原子力導入において、米国から先に「原子力平和使節団」が招聘されたにも関わらず、英国は米国の開発遅れを察すると、直ちにコールダーホール型原子炉の導入の態勢を整えられたと考えられる。

1 0 0 0 OA [大首役者絵]

著者
國政 画
巻号頁・発行日
1700
著者
五月女 律子
出版者
北九州市立大学国際教育交流センター
雑誌
北九州市立大学国際論集 = CIEE journal, the University of Kitakyushu (ISSN:13481851)
巻号頁・発行日
no.14, pp.1-17, 2016-03

本稿は、スウェーデンの安全保障防衛政策の特徴について、冷戦終結後を中心として安全保障・軍事の国際化の視点から分析を行う。第1節で冷戦期におけるスウェーデンの安全保障防衛政策の特徴を概観し、第2節で欧州共同体(EC)加盟を契機としてスウェーデンが「中立政策」から「軍事的非同盟政策」に転換した際に、安全保障と防衛を切り離したことを示す。第3節で冷戦終結後の国際的な平和活動(Peace Operations)や危機管理活動(CrisisManagement)の活発化に対する・・・