- 著者
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丸山 悦子
坂本 薫
- 出版者
- 一般社団法人 日本家政学会
- 雑誌
- 日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
- 巻号頁・発行日
- vol.43, no.2, pp.97-103, 1992-02-15 (Released:2010-03-12)
- 参考文献数
- 7
炊飯における米の浸漬については, 松元らにより米粒切片の膨潤状態から30~120分間が適当であるとされ, また関らは, 20℃で浸漬した場合, 30分間以上15時間まで飯のα化度には浸潰時間による差はみられず, 食味上はいずれも同様に好まれたと報告している.米の浸漬温度や浸漬時間は、炊飯過程における昇温時間と相互に関連しており, 昇温時間を長くすることによって浸漬時間の不足をカバーすることができるとされている.浸漬における吸水量が多くなると昇温時間は短くてよいと考えられ、浸漬による吸水量を増加させることによって浸漬時間や昇温時間を短縮することが可能と思われるが、浸漬時間や浸漬温度と昇温時間との関連性については、ほとんど検討されていないのが現状である.すでに市販の自動炊飯器においては、米の浸漬中の吸水を40℃で行い, 炊飯を迅速に行うために種々の工夫がされているものがあり, 日常炊飯においても, 米の吸水を急速に進行させるために温水を用いる場合もある.今回は, 米の浸漬温度や浸漬時間, 昇温時間との関連を明らかにすることを目的として実験を行い, 若干の知見を得たので報告する.炊飯過程における米の浸漬温度や浸漬時間, 昇温時間は重要な加熱要因である.本報では, 浸漬と昇温との関連を検討するため, 合計30種類の方法で炊飯を行い, 米飯のテクスチャー, 還元糖量, 全糖量の測定, 飯粒断面の顕微鏡観察, 官能検査等を行った.その結果, 60℃で浸漬した米飯は20℃のものに比べ米粒周辺部の付着物が堅固であり, 表面が滑らかな状態で, 付着性が小さかった.また, 還元糖量は全体的に昇温時間, 浸漬時間が長く, 浸漬温度が高いほど高い値を示すことが明らかになった.テクスチャー測定による硬さは食味評価による米飯の硬さに対応しており, 官能検査の結果では, 40℃および60℃で浸漬した米飯が好まれた.