著者
神田 勤 岩崎 誠 和田 正彦 黒飛 万里子 志水 洋二 上松 一郎
出版者
THE JAPAN DIABETES SOCIETY
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.429-435, 1992

Hypotonia, hypomentia, hypogonadism, obesityを主徴とするPrader-Willi症候群において, 高浸透圧非ケトン性糖尿病性昏睡 (HNKC) およびrhabdomyolysisを合併した本邦第1例を経験した.<BR>症例は21歳, 女性. 1986年5月II型糖尿病と診断され, 食事療法にて治療されていた. 1989年11月頃より鶴歯のためジュースを多飲.同12月6日糖尿病性昏睡を発症し, 某院入院. 治療を受けるも改善せず, 翌日当院へ転院となった. 転院時に筋脱力, 尿路感染症を認め, 血糖値736mg/d<I>l</I>, 血漿pH7.449, 血漿浸透圧485mOsm/<I>l</I>, LDH1682IU/<I>l</I>, CPK981IU/<I>l</I> (MM型98%), 血清ミオグロビン (MG) 1370ng/m<I>l</I>, 血清Na188mEq/<I>l</I>を示しHNKCと診断した. 治療開始半日後に意識清明となり, 4日後に筋脱力回復し, 10日後にはLDH, CPK, MGは正常値に復した. 以上より本症例ではII型糖尿病に過食と感染症を契機としてHNKCが発症し, 高Na血症, 脱水, インスリン不足が持続・進行したため, rhadbomyolysisが併発したものと思われる.
著者
松尾 宏
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.107, 2013 (Released:2013-09-04)

明治43年(2010)8月に利根川、荒川などで起った洪水は、関東地方では近代以降最大の被害をもたらしたものであった。しかしながら、その洪水の特色や地域の被災状況については、まとまって整理されたものがなく、水害地や洪水の特色など不明なところが多い。また、明治43年洪水では、近世以降利根川治水史上重要な役割をもっていた堤防である「中条堤」が大きな争論の焦点となり、この洪水を契機に治水計画が変更され変化をみせていった。この大きな災害の理解と社会問題となった明治43年洪水後の中条堤についての究明も研究はなされていない。その中条堤は現在でもその姿を残している。明治43年利根川洪水・水害の大きな要因は、この中条堤の決壊であることが言われてきた。 平成21年(2009)3月皇太子殿下は第5回世界水フォーラム(トルコイスタンブール)において、利根川治水と中条堤についてとりあげられ基調講演をなされた。その講演内容の一部に誤りがあり、資料を提供したと思われる機関、研究者の認識不足でもあり、これまで明治43年洪水と中条堤の歴史的社会問題の研究がなされてこなかったことの原因が指摘できる。本研究はその証明となる研究を含むものであり、中条堤の歴史およびこれまで研究が乏しかった明治43年利根川洪水と中条堤およびその関係、中条堤の変貌についての研究である。
著者
仙波 浩幸 清水 和彦
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【はじめに,目的】質の高い授業を展開するためには,学生の集中力を高め,教授内容の理解度を上げる必要がある。本研究は,学生に集中力をもたせ質の高い授業展開を図るための知見を得ることを目的に実施した。【方法】対象は本学理学療法学科に在籍する,男150名,女78名,合計228名である。基本情報,睡眠調査,授業中の眠気調査から構成される,オリジナルで46の設問からなる質問紙を作成した。平成25年11月に学年毎に一斉に実施した。基本調査は,学年,年齢,性別,アルバイト(1週間の日数,1週間の時間数)の6項目である。睡眠調査は,就寝時間,起床時間,睡眠時間,睡眠満足度(7段階),寝つきの悪さ,深夜覚醒の6項目である。授業中の眠気調査は34項目である。授業中に眠気をもたらす原因として,全く関係ない(1)から強く関係する(7)までの7件法で回答を求めた。その項目は,寝不足,身体的疲労,精神的疲労,体調,授業の理解度,落ち込んでいる,集中力,やる気,授業内容,苦手な先生,座席の位置,指定席,自由席,意中の人が近くにいる,隣席との距離感,教室の明るさ,室温・湿度,季節,朝食後の授業,昼食後の授業,教室の雰囲気,受講生数,よく話す人が近くにいる,レジメの有無,話を聞くだけの授業,授業のペース,パワーポイントの授業,ペンを動かさない授業,先生の話し方,先生の威圧感,授業態度に厳しい教師,授業への緊張感,小テストの有無,期末試験の難易度である。すべての項目に基本統計,2項目間の相関,眠気調査34項目の因子分析を実施した。因子の抽出方法は,最尤法プロマックス回転,固有値1.0,因子負荷量0.4以上とした。すべての統計学的有意水準を5%,統計ソフトはIBM SPSS 19を使用した。【結果】1)眠気調査の基本統計影響が強い項目順に示す(平均値5.0以上,平均値±1標準偏差)。寝不足6.1±1.3,身体的疲労5.9±1.3,昼食後の授業5.7±1.3,話しを聞くだけの授業5.7±1.3,室温・湿度5.5±1.5,精神的疲労5.4±1.6,やる気5.3±1.5,先生の話し方5.3±1.5,集中力5.3±1.5,授業の内容5.1±1.6,授業への緊張感5.1±1.5,授業態度に厳しい5.1±1.6,教室の雰囲気5.0±1.7,パワーポイントの授業5.0±1.6であった。2)寝不足,平均睡眠時間,身体的疲労,精神的疲労の間には有意な関係が見られた。(Pearsonの相関係数:r=0.20-0.58,p<0.01)。また,アルバイト時間と平均睡眠時間,身体的疲労,寝不足の項目間にも弱い相関が見られた(Pearsonの相関係数:r=0.14-0.20,p<0.05)。3)眠気調査の因子分析5因子が抽出され,抽出後の負荷量平方和の累積は46.4%であった。第1因子の負荷量平方和は28.2%であった。第1因子に含まれる項目は,授業態度に厳しい教師,授業への緊張感,先生の威圧感,ペンを動かさない授業,期末試験の難易度,小テストの有無,先生の話し方,よく話す人が近くにいる,授業のペース,話を聞くだけの授業,パワーポイントの授業,であった。第2因子以降の抽出後の負荷量平方和は5.6-3.5%と低い値であった。第4因子は,精神的疲労,身体的疲労,寝不足,体調の4因子が抽出された。【考察】基本統計量による結果と因子分析の結果のそれぞれの項目の位置づけに大きな相違が見られた。学生は,寝不足,身体的疲労,精神的疲労などの健康面と昼食後の授業や室温・湿度などが眠くなる大きな要因と考えている。基本統計量による結果は,学生が考える眠気をもたらす要因,つまり主観的要因を示している。これには睡眠時間の短さが影響している。因子分析の第1因子は能動的・緊張感が求められる授業,第2因子は教室の環境,第3因子は座席の位置,第4因子は学生の健康,第5因子は学生の積極的授業参加と解釈した。抽出後の負荷量平方和の値から第1因子に含まれる項目が主に影響を及ぼす要因であり,その項目から判断すると,因子分析による結果は眠気をもたらす客観的要因であると推察した。したがって,学生は鉛筆を動かし,教員は学術的内容を充実させ,緊張感をもって授業を実施し,双方向コミュニケーションを積極的に取り入れた授業展開が重要であることを再認識した。【理学療法学研究としての意義】質の高い授業展開の方策を授業中に生じる眠気の視点から考察した。
著者
三谷 悠 渡邉 慎二
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.63, 2016

近年情報技術の発展に伴いオフィスでの働き方が時間や場所に制約されなくなってきている。そのような中、自由席での業務スタイルが生まれ、コストダウンのみならずコミュニケーション活性化が注目されたフリーアドレスオフィスは増加傾向にある。一方こうしたオフィス形態の変化は、個人が対応すべき環境の制約もあり全体的な仕事満足度への影響も報告されている。本研究ではフリーアドレスオフィスという環境のなかで、個人の仕事環境を向上させることを目的とした。調査を踏まえ、「交流」の場で「集中」の場を確保することと、公共空間をパーソナライズすることの2点に着目した。個人所有の机上用品にパーテーションの効果を持たせることを提案の方向性とし、デザイン要件を、①周囲は普段通り話しかけられること(交流の確保)②作業中はパーティションとして機能すること(集中の確保)③自分のものでデスク環境を構築できること(公共空間のパーソナライズ)の3つを抽出した。「交流」の場でのパーテーションのあり方という観点で試作を繰り返し、最終的にはユーザーの所作に合わせて形状が変化し、パーテーションを作るという製品を提案した。
著者
稲水 伸行
出版者
The Academic Association for Organizational Science
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.4-14, 2013

近年,オープン化と自由席化をしたオフィスの導入が進んでいるが,組織パフォーマンスへの効果やプライバシー,縄張り意識などの観点で議論されてきた.本稿で取り上げる日本マイクロソフト社の品川オフィスでは,⑴多様な空間づくり,⑵柔軟な制度運用,⑶コミュニケーション手段の統合,の3つの特徴によりコミュニケーションの活性化が図られており,この種のオフィスの導入と運用への示唆を与えてくれる.
著者
田中 武志 山田 浩之 竹門 康弘 池淵 周一
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第51回日本生態学会大会 釧路大会
巻号頁・発行日
pp.247, 2004 (Released:2004-07-30)

河川に生息するモンカゲロウ(Ephemera strigata)などの水生昆虫類では,砂礫堆上流端に位置する淵尻の瀬頭に集中的に産卵する行動が知られている.このような産卵場所選択性は,砂礫堆の河床間隙水の透水性や溶存酸素濃度などの物理化学特性と関係していると考えられる.しかしながら,産卵場所の環境条件と産卵個体数の関係や産下された卵やふ化幼虫生存率などを実証的に示した研究は行われていない.一方,近年各地の河川で生じている砂礫堆の樹林化やツルヨシの繁茂によって,このような産卵適地が減少しつつあると懸念されている.そこで,本研究では,産卵雌数に対する瀬-淵,樹冠の有無,岸際の状態,微生息場所環境条件として透水係数,動水勾配および河床間隙水流速の影響を調べた.また,モンカゲロウ卵野外孵化実験を通して,卵の孵化率・死亡率に対する河床間隙水域の物理化学的環境の影響を調べた.その結果,モンカゲロウは,上空が樹冠で覆われず,岸際が植生に覆われていない裸地部分を産卵場所に選ぶことが確認された.また,産卵場所と瀬-淵の相対的位置関係を分析した結果,産卵の集中地点は,必ずしも瀬頭とは限らず,瀬中央付近でも集中的に産卵することがわかった.次に,微生息場所条件の分析の結果,瀬の産卵雌数は,ばらつきは大きいものの動水勾配との間に有意な正の相関が認められた(r=0.61, p<0.01).これに対し,透水係数,間隙水流速との間には有意な相関は認められなかった(透水係数r=-0.17, 間隙流速r=0.25,n.s.).さらに,野外孵化実験の結果,モンカゲロウ卵は産卵場所に選ばれていない場所でも孵化できることが確認できたが,死亡率は,間隙水流速が小さく,DO供給量が小さくなる砂礫堆内陸側や下流側において大きくなる傾向が認められた.本研究の結果は,「モンカゲロウの選択する産卵場所条件は,間隙流速が大きく豊富な溶存酸素が供給される間隙水域に対応しており,卵や孵化した若齢幼虫の生存率を高めるのに役立っている」という仮説を支持している.
著者
岸本 侑斗 池田 佑樹 鈴木 新
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.83, no.851, pp.17-00175-17-00175, 2017 (Released:2017-07-25)
参考文献数
13
被引用文献数
1

In this paper, we propose a system to identify the intention of motion based on the change of the surface shape of the upper arm. The proposed system uses six photoreflectors to measure the change of the surface shape of the forearm close to elbow joint. The changes of the surface shape of the forearm close to elbow joint are caused by muscle contraction. For this reason, the proposed system aims to be mounted on prosthetic hands for upper limb amputees who have residual muscular. Conventional identification methods of the intention of motion using photoreflectors were performed with a single motion such as grasping / releasing. In contrast, the proposed system identifies the six types of composite motions of hand and forearm. Complex processing is required to identify the six types of composite motions at a time. In the proposed system, it is possible to identify the composite motion by relatively simple multiple regression model, by separating into the motion of the forearm and the hand. In order to confirm the effectiveness of the proposed system, we conducted a discrimination experiment of composite motion by six volunteers and a discrimination experiment of composite motion at long-time use by one volunteer. As a result of the experiment by six volunteers, the average discrimination rate was 94.9 %. Moreover, the average discrimination rate of long-time use was 97.8 %. From these experimental results, we showed the possibility of discrimination of composite motion using photoreflectors.
著者
飯田 実 石井 正則 秋山 香織 辻 富彦 吉田 茂
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.151-153, 1998-04-15 (Released:2011-03-18)
参考文献数
15

口蓋扁桃摘出術後4日目に大量出血をきたした1症例を経験した。凝血塊の誤飲により窒息し, 心肺停止をきたした。そのため緊急気管切開術を施行し, 救命救急処置により一命をとりとめた。術後安静の不徹底が誘因と考えられた。口蓋扁桃摘出術は頻繁に, そして比較的安易に行われる手術であるが, 危険な一面を有していることを再認識し, 予防法の徹底と的確な対応の重要性を強調した。
著者
神吉 和夫
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.177-191, 1993-06-01 (Released:2010-06-15)
参考文献数
42

玉川上水は武蔵野台地の開発と江戸の都市用水の供給を担った1654 (承応3) 年創設の一大用水である。本稿では、江戸市中の配水区域の地形と江戸時代中期から幕末にかけての玉川上水の江戸市中における構造と給水形態に関する史資料を用い、江戸市中における玉川上水が水工構造物としてどのような構造をもつか、また、水の配水先、給水形態からその機能が何かを明らかにしようと試みた。玉川上水の江戸市中での配水区域は江戸城、大名屋敷、武家屋敷など武士階級の居住地が大部分を占め、玉川上水は生活用水、泉水用水、防火用水、濠用水、下水用水等の多機能施設であった。台地に位置する江戸城、大名屋敷では生活用水としての機能は低い。武蔵野台地と同様、江戸市中でも、幕府が幹線を建設し、その分水として大名屋敷への給水が行われ、分水口断面が重要な計画要素である。1722 (享保7) 年の玉川上水の青山・三田・千川の三上水への分水の廃止は、玉川上水の構造と機能からみて、武蔵野新田の町人請負開発を募集する幕府の決意を不要都市用水の廃止で示したもので、江戸市中の防火用水としての機能の限界から、都市用水としての必要性が低くなったことが背景にあると思われる。
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.27-34, 1997 (Released:2010-08-25)
著者
Kazuki Yoshida Tatsuma Sato Kaoru Narita Takeshi Tomiyama
出版者
日本プランクトン学会、日本ベントス学会
雑誌
Plankton and Benthos Research (ISSN:18808247)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.53-60, 2017-02-28 (Released:2017-02-28)
参考文献数
25
被引用文献数
2

The moonsnail Laguncula pulchella (Naticidae, formerly known as Euspira fortunei) is an invasive species that has had a negative impact on the Manila clam (Ruditapes philippinarum) population in northern Japan. In southern Japan, few records of L. pulchella exist; furthermore, the knowledge concerning the ecology of this organism is currently limited. Unexpectedly, we found many L. pulchella individuals in the Misuji River estuary, located in Hiroshima in southern Japan, during May 2015. We conducted a field survey on the density and body size of L. pulchella at a tidal flat in the Misuji River estuary (Site H) and compared those to L. pulchella in Matsukawaura Lagoon, located in Fukushima in northern Japan (Site F). The adult population of L. pulchella in a clam fishing ground (40,500 m2) at Site H was estimated to be 2,048 individuals in 2015. Densities of both surfaced individuals and egg collars of L. pulchella were lower at Site H than at Site F. Sizes of L. pulchella individuals and their egg collars as well as the somatic weight of the individuals at Site H were significantly smaller than those at Site F. These results suggest that the biological characteristics of L. pulchella largely differ between the two sites.
著者
宮城 浩彰 井上 真郷
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IBISML, 情報論的学習理論と機械学習 = IEICE technical report. IBISML, Information-based induction sciences and machine learning (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.265, pp.271-275, 2010-10-28
参考文献数
6

今日,ゲノムデータの統計的解析により疾患の原因となる遺伝的多型座が多々発見されている.この解析手法としてFisher正確確率検定もしくはこれを拡張したFisher-Freeman-Halton検定の多重検定補正(Bonferroni補正やHolm補正)が挙げられるが,これらの補正は保守的であり本来検出すべき遺伝的多型座を見逃している可能性が高い.このような問題に対し,本手法では多重性を考慮したp-値の正確計算を実現し,保守的でない多重検定補正手法を提案する.