著者
北村 行伸 坂本 和靖
出版者
岩波書店
雑誌
経済研究 (ISSN:00229733)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.31-46, 2007-01
被引用文献数
1

This paper explores the recent marriage behavior in Japan from the view point of generational relationship. Using the Japanese Panel Survey on Consumers (The Institute for Research on Household Economics), we investigate the marriage behavior in the 1990s and the early 2000s. We find that (1) financial transfers from the parents reduce the probability of marriage only for those whose parents were born before 1945 and those who entered the labor market during the bubble period in the 1980s. (2) For those who entered the labor market after the bust of the bubble economy in the 1990s, the probability of marriage was lowered because of either longer labor hours or unstable job position. (3) In general, marriage decisions cannot be explained by the income ratio between father/parents and a possible husband, except the case in which the father'/parents' income was above 500 million yen. In this case, the probability of marriage became lower.本論文は少子高齢化問題の核心にあるとされる,未婚化・晩婚化などの結婚行動の変化を世代間関係という切り口から解明しようとするものである. 『消費生活に関するパネル調査』を用いて,結婚経験率が大きく落ち込んだ1990年前半から2000年代前半にかけての晩婚・非婚化現象の要因分析を行った.ここで得られた知見は以下の通りである.第1に,親同居未婚者にとって,親からの所得移転は結婚確率を低下させる効果が確認された.ただし,それは親が戦前・戦中世代,子がバブル世代においてのみでしか確認することができなかった.これは「パラサイト・シングル仮説」で描かれていた独身者像が一時的なものであったことを示している.第2に,子がバブル崩壊以降世代において,長時間就業している者,初職でよい就職先につけなかった者は結婚確率が低下する傾向がみられた.第3に,「乗り換えモデル」を検証すべく,父親と夫候補者の所得比が結婚に与える影響をみたところ,親の世代に関係なく,「親の所得が500万円以上」のケースにおいてのみ結婚確率を引き下げていることがわかった.
著者
謝 肖男 来生 貴也 米山 香織 野村 崇人 秋山 康紀 内田 健一 横田 孝雄 Christopher S. P. McErlean 米山 弘一
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.58-61, 2017-05-20 (Released:2017-05-20)
参考文献数
10
被引用文献数
41

トウモロコシが生産する根寄生雑草種子発芽刺激物質の1つを単離し,その構造を各種機器分析により,methyl (2E,3E)-4-((RS)-3,3-dimethyl-2-(3-methylbut-2-en-2-yl)-5-oxotetrahydrofuran-2-yl)-2-((((R)-4-methyl-5-oxo-2,5-dihydrofran-2-yl)oxy)methylene)but-3-enoate(1)と決定し,ゼアラトン酸メチルと名付けた.ストリゴラクトンの生合成前駆体であるカーラクトンの13C標識体の投与実験から,1はトウモロコシ体内においてカーラクトンから生合成されることを確認した.1は根寄生雑草Striga hermonthicaおよびPhelipanche ramosaの種子に対して強力な発芽刺激活性を示したが,Orobanche minorの種子に対する活性は100倍弱かった.

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出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.214-215, 2017-06-01 (Released:2017-06-01)
著者
戸田 幹人
出版者
京都大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1993

振動励起状態の分子におけるエネルギー再配分は、化学反応における基本的な過程の一つである。本年度は、振動エネルギーの再配分を研究するのに最も適しているファンデルワールス系のうち、特に希ガス・ハロゲン分子の三体系を対象に、振動エネルギーの再配分過程のシミュレーションおよび解析を行なった。この系は3自由度系であり、そのポアンカレ断面は4次元である。4次元の断面は直接に視覚化できない。そのため、この系の時間発展に関する研究は、これまでほとんど成されてこなかった。本研究では、ポアンカレ断面の3次元空間への射影・切断を通じて解析を行なった。当初の計画では、量子論・古典論の両方についてシミュレーションを行なう予定であったが、ポアンカレ断面の視覚化に時間がかかったため、古典論についてのみシミュレーションを行なった。解析の結果次のことがわかった。希ガス・ハロゲン分子の三体系において、遠方から希ガス原子をハロゲン分子に衝突させる。この時、希ガス原子の入射角度が直角または直線の場合、直接的な散乱過程が存在する。これに対して、斜め方向から衝突する場合、希ガス原子は一旦ハロゲン分子とゆるい結合状態を作る。この際、衝突方向のエネルギーの一部は回転運動を励起する。このあと、回転運動と振動運動の共鳴によって、希ガス原子の再解離がおこる。以上の結果が、どこまで量子論で対応しているか興味がある。特に、希ガス原子を軽い原子から重いものまで変えることによって、カオスにおける量子古典対応を調べることができる。これは今後の課題である。
著者
小川 智明 工藤 栄亮 須田 博人
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. RCS, 無線通信システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.156, pp.37-42, 2000-06-23
参考文献数
9
被引用文献数
9

無線アドホックネットワークのルーティングプロトコルとして, 送信局から受信局まで複数のルートを構築するマルチルート構築法を提案する.本方式では, 複数のルートを構築する際, 制御信号中に他ルートの存在を示すフラグを設定することにより, 互いに相関の少ない複数ルート構築を可能にしている.本方式について計算機シミュレーションによってネットワークのトラヒックを考慮した特性を検討した結果, パケット損失率に優れており, 高信頼な伝送が要求される場合に有効であることを示す.
著者
坪本 裕之
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.461-477, 2007-12-30
被引用文献数
1

本研究は,1990年代以降の,大規模再開発が進められている東京中心部におけるオフィス業務の変化と企業再構築,そしてそれらが反映されると考えられる新しいオフィス形態の導入が,都心とそれを含む大都市圏空間にもたらす影響について考察した.事例として,バブル経済崩壊後に急成長を遂げた経営コンサルティング企業に代表される知識基盤産業のオフィス構築活動を検討し,新しいオフィスの形態とそれを支える要素について考察した.米国に親会社をもつ旧会計事務所系経営コンサルティング企業では,1990年代前半に企業再構築の柱として,情報共有を目的とした情報化の推進とチーム制の導入,能力主義的業績評価をはじめとする人的資源管理(Human Resource management)の刷新が行われ,それに伴って,コンサルタントの執務するスペースにフリーアドレスが導入され改良されていった.フリーアドレスでは,コンサルタントはあらかじめ決められた席を持たず,必要があるごとに自由に席を決める.この新たなオフィスの形態を導入した結果,コンサルタントの大量採用が進む一方で,従業員一人当たりが占有する床面積とそれにかかるコストは大幅に縮小され,利用目的の再考と効率的なオフィススペースの活用が試みられた.さらにモバイルオフィスの導入によってコンサルタントの業務はフットルースとなり,フリーアドレスはオフィスから都市空間に拡張された.そして,オフィスとその外部の都市空間はワークプレイス(workplace)として統一的に扱われるようになりつつある.1990年代初頭にサテライトオフィスを開設した企業では,経営コンサルティング企業と同様に情報技術の利用と人的資源管理の刷新を行った結果,郊外に設けられた施設型分散オフィスの利用価値が低下している.一方,その核として位置づけられる中心部のオフィスは,チームプロジェクトの結節点としての機能が強化されつつ,顧客との関係強化においては,ワークプレイスそれ自身が含まれる不可視的な商品を具現化するショールームとしての機能が重視され,顧客企業本社からの近接性が高く,2000年代に入って再開発が進行しオフィス床の供給が増加した中央業務地区(CBD)での立地が強化されている.こうした動向は,オフィスがその内部における情報流やオフィス組織,そしてそれらを有機的に結びつけようとする企業活動が反映された土地利用形態であることを示している.事例として挙げた,情報へのアクセスの均質性が実現されたフリーアドレスと,それが外部に拡張してできるワークプレイスは,業務の遂行とサービスの付加価値の向上に必要とされる協同作業,言い換えればチーム構成員の相互補完を前提とした業務空間である.しかし,この補完性はオフィス形態を支えてきた潜在的な本質であり,ワークプレイスが構築されるに伴って表出したに過ぎない.既往の都市内部レベルのオフィス研究においては,対面接触の情報通信手段による代替性が基本的な概念として強調され,それが不可能な情報交換の手段として対面接触が位置づけられて都心の集積が評価されたが,今後の都市内部および大都市圏レベルのオフィス研究においては,オフィス業務の持つ補完性の考慮がより重要となろう.都市内部の業務地域を,機能的空間として考察してきた都市地理学の有用性は,この点の考慮にあるといっても過言ではない.
著者
長岡高等工業学校 編
出版者
長岡高等工業学校
巻号頁・発行日
vol.昭和2至3年, 1935
著者
長岡高等工業学校 編
出版者
長岡高等工業学校
巻号頁・発行日
vol.昭和3年至昭和4年, 1935
著者
長岡高等工業学校 編
出版者
長岡高等工業学校
巻号頁・発行日
vol.昭和4年至昭和5年, 1935
著者
長岡高等工業学校 編
出版者
長岡高等工業学校
巻号頁・発行日
vol.昭和6至7年, 1935
著者
鈴木 善充
出版者
関西大学経済学会
雑誌
関西大学経済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.101-124, 2012-06-10

相続資産が家計資産に占める割合はアンケート調査を利用した既存研究によると、3割から4割程度である。シミュレーション分析をおこなった場合、結果は経済想定や相続資産からの収益の現在価値をライフサイクル資産に含めるかどうかという解釈によって異なる。公開データからは、高所得層に資産が集中していること、現役サラリーマンよりも引退老人世帯が多くの資産を保有していること、高齢者世帯でも収入の増加にしたがって、また住宅・宅地資産が高くなるにしたがって貯蓄残高が増加していることがわかった。アンケート調査から、相続を経験している高所得層は、相続財産額が高い結果をえた。また教育投資額と親子間における職業連鎖による階層の固定化がみられた。高い相続をうけている家計が高い教育投資をおこない、子どもが高いレベルの大学に進学していることがわかった。これらをふまえると、控除額の引き下げという相続税強化の方向に改正された2011年度税制改正大綱は評価できる。今回の改正では、最高税率の引き上げが行われたが、改革の方向性としては、むしろ相続税の合法的な節税策を解消させるのが望ましい。世代間の所得・資産移転を通じた格差拡大を防ぐには、民主党の目玉政策であった子ども手当ては現金支給ではなく、現物支給に切り替えるのが望ましい。
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンストラクション (ISSN:09153470)
巻号頁・発行日
no.364, pp.12-13, 2004-11-26

行政主導の地域づくりから発想を転換し,住民が自ら事業を計画して工事も実行する——。広島県沼隈(ぬまくま)町は,「地域づくり推進事業」として住民主体の地域整備を進めている。 町内の48地区がそれぞれ話し合って事業計画を作成し,町に要望。町長の承認とモデル地域の指定を受けて事業を進める。行政は補助金のほか材料の現物支給などで支援する。
著者
宗像 達夫
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.436-436, 2016

梅雨の季節も近づく中,青や赤といった様々な色彩で私たちの心をそっと和ませてくれる身近な花といえば,アジサイ(Hydrangea macrophylla)だろう.アジサイの色は自生している土壌の酸性度によって変化するが,これは酸性土壌において土壌中にアルミニウムイオン(Al3+)が溶け出し,それが根から吸収されることに起因する.またアジサイの様々な色彩はアントシアンに由来するものであるが,赤色色素としては着色料などに広く利用されているものの,青色色素としては安定性の問題もあり使用が限定的である.本稿では,アジサイの青色色素の多様性の解明について積極的に取り組んでいるOyamaらの研究を紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Oyama H. et al., J. Agri. Food Chem., 63, 7630-7635 (2015).2) Takeda K. et al., Phytochemistry, 24, 1207-1209 (1985).3) Takeda K. et al., Phytochemistry, 24, 2251-2254 (1985).