著者
鈴木 昌治 小泉 武夫 野白 喜久雄
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.439-442, 1984

水田の稲穂にしばしばみられる糸状菌の菌叢「稲麹」を, 昔, 一部の酒造蔵では種麹として使用し米麹を得, これで清酒を仕込んだという記録を古文書から多く見出したので, このことについて検討したところ次のような所見を得た。<BR>1) 福島県, 埼玉県, 東京都の水田から稲麹を採取してきて, そこから糸状菌を純粋分離したところ, 分離された菌の大半は<I>U. virens</I>で, それに混じって<I>Aspergillus</I>属も多数分離された。 この両菌以外の糸状菌はほとんど分離されなかった。<BR>2) 分離した<I>Aspergillus</I>属について, その形態的, 生理的性質の検討を多項目にわたって行ったところ, アニスアルデヒド培地上での胞子の変色, 梗子の形や状態, 頂のうの型, 胞子の大きさ, 菌叢の色調, アフラトキシンの生成などにおいて<I>A. oryzae</I>の性質を示した。
著者
稲葉 幸雄 吉田 智彦
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.219-225, 2006-09-15
参考文献数
27
被引用文献数
2 6

栄養繁殖作物のイチゴでは,限られた育種材料間での交配を繰り返すため近親交配が問題となる.そこで,近年育成されたイチゴ品種の近交係数を計算した.また,近交係数と収量との関係を調べた.近交係数の計算は推論型言語Prologとパーソナルコンピューターを利用した手軽な処理系で計算プログラムを作成した.交雑実生の近交係数と実生の選抜率との間に相関関係は認められなかった.栃木県農業試験場栃木分場の育成系統(3次選抜系統)の近交係数と収量の関係を調べたところ,-0.37(危険率1%)の有意な負の相関が認められた.また,イチゴでは近交係数が0.3程度までであれば,近交弱勢による収量の低下は見られないことが明らかになった.近年育成されたイチゴ品種の近交係数は,一季成り性品種では0.2を超えるものが多く,'とちおとめ','章姫','さがほのか','あまおう','さつまおとめ','ひのしずく','やよいひめ'はそれぞれ0.261, 0.222, 0.257, 0.213, 0.257, 0.247, 0.346であった.一方,四季成り性品種では'サマープリンセス'と'きみのひとみ'の2品種がが0.183と0.195でやや高い値であったが,それ以外はいずれも0.1以下であった.代表的な一季成り性品種15品種の総当たり交配による雑種の近交係数を計算した結果,自殖を除いた近交係数の値は0.067〜0.440で平均は0.210となり,近親交配の程度が高くなることが明らかになった.
著者
小鹿 一
出版者
名古屋大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2012-04-01

オニヒトデから発見したステロイド配糖体acanthasteroside B3は、PC12細胞の神経様突起伸長作用およびマウス記憶改善効果を示す。したがって神経変性疾患の治療薬への応用が期待できるため、未解決であった(1)分子標的や作用機構、(2)安定供給、という2つの重要な課題に取り組んだ。1.作用機構の解析: acanthasteroside B3は、神経成長因子(NGF)によるMAPキナーゼ(ERK, p38)の活性化を増強するが、NGF受容体の活性化は増強せず、標的が不明であった。そこで、MAPキナーゼ上流の既知の分子(Ras, NGF受容体TrkAなど)の活性化の有無をウェスタンブロット法により調べた。その結果、極微量のNGF共存下で、acanthasteroside B3はNGFによるTrkAの微弱な活性化(リン酸化)を増強していることがわかった。そこで、NGFを事前に培地中でインキュベートした後にPC12細胞に投与したところ、インキュベート時間に応じてNGFの突起伸長効果が低下し、acanthasteroside B3により回復した。したがって、acanthasteroside B3のNGF増強作用は、NGFの安定化が一要因と考えられた。2.活性類縁体の合成と記憶改善効果の確認: オニヒトデからのステロイド配糖体の供給は、材料入手の不安定性、危険性、煩雑な精製作業など困難が伴う。そこで応用化を視野に、構造活性相関に則した単純化類縁体の合成を行った。従来合成した類縁体はNGF増強活性を示したが難水溶性のため動物実験を断念していた。そこで、PC12細胞に対する突起伸長活性と高い水溶性を兼ね備えた数種の類縁体を安価なエルゴステロールから合成した。合成類縁体は天然acanthasteroside B3の活性の約50%の活性を示したが、残念ながら水溶性は低かった。今後はステロイド核の水酸基の数をさらに増加させた類縁体の合成を目指す。
著者
永田 雅靖
出版者
農業技術研究機構野菜茶業研究所
巻号頁・発行日
no.8, pp.1-5, 2009 (Released:2011-03-05)

クロロフィルとカロテノイドの可視吸収スペクトルの違いを利用して,ホウレンソウのアセトン抽出液の479,645,663nmにおける吸光度からβ-カロテン濃度を精度良く推定する簡便定量法を開発した。β-カロテン濃度の推定式,HPLC分析値との相関係数(r)および標準誤差(SE)は,以下のとおりである。β-カロテン(mg/L)=0.854A 479-0.312A 645+0.039A 663-0.005 (r=0.992,SE=0.0096mg/L)
著者
間島 信男
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.174-175, 1994-03-25
著者
千秋 博紀 丸山 茂徳 李野 修士
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.119, no.6, pp.1215-1227, 2010-12-25 (Released:2011-03-17)
参考文献数
57
被引用文献数
6 6

It has long been believed that granite remains on the surface of solid Earth indefinitely due to its low density, hence continents increased in volumes to cover about 30% of the Earth's surface over time. However, recent studies on the accretion history of continents reveals that at least 80% of the granite that ever formed had been subducted into the deep mantle to form “second continents” at the mantle transition zone (410-660 km). These second continents would affect mantle dynamics in two ways. First, as the second continents are gravitationally stable at the depth of the mantle transition zone, they act as a barrier to descending cold slabs. The stagnation of cold slab would be partly due to the pre-existing second continents. Another effect of the second continents on mantle dynamics relates to their chemical component. Because granite is enriched with incompatible elements, including long-lived radiogenic elements K, Th, and U, the second continents act as heat sources in the mantle. In particular, the heat generation of the second continents is a key to understanding the formation-breakup cycle of supercontinents. Granite that piled up beneath a supercontinent during continent accretion would cause thermal instability to form a superplume beneath the supercontinent. A numerical study on the thermal evolution of subducted granite gives the characteristic time scale of thermal instability which is consistent with the lives of supercontinents suggested by geological studies.
著者
野口 久美子
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and information science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
no.62, pp.111-143, 2009

原著論文【目的】本稿の目的は,資料をもとに,これまでの読書指導の実践の推移を明らかにすることである。具体的には,小学校・中学校の教職員の読書指導に関する考え方や実践内容の特徴を分析し,その内容にどのような変化があったかを考察する。【方法】全国学校図書館研究大会は50 年以上の歴史があり,全国から約2,000 ~ 3,000 人が集まる。参加者は,読書指導のベテランから経験の浅い初任者まで,さまざまである。本稿では,全国学校図書館研究大会の参加者による実践報告や議論をまとめた記事を分析の対象とし,彼らが読書指導についてどのように考え,実践してきたかを整理した。【成果】資料をもとにした分析の結果,次のことが明らかになった。読書指導は「みんなで読む」ことと「読書で得た内容や感想を深める」ことから始まった。読書内容の質も追求された。しかし,その方法については賛否両論があった。読書指導のための時間を確保することが難しいという声も多く挙がった。そうした中,各地の実践の積み重ねを経て,「短い時間で実施可能な一斉読書活動」と「読書そのものを楽しむ取り組み」が提案,実践された。大会の参加者が実践してきた読書指導に全体としてどのような変化があったかについては,次の3 点を指摘した。①読書指導の実施は困難であったが,1980 年代の「ゆとりの時間」の活用,1990 年代後半以降の「朝の読書」運動の広まりを通じて,10~20分というわずかな時間を利用すれば,読書指導あるいは読書推進活動を行うことができることが認知されるようになったこと,②従来の読書指導では,読後の活動に重点が置かれたが,1980年代頃を境に「読書の楽しさに触れる」こと,「読書そのものと向き合う」ことが見直されたこと,③全員で同じ本を読むこと,事実上読む本を強要することには賛否両論があり,自由読書が重視されるようになったこと。

1 0 0 0 現代農業

著者
農山漁村文化協会 [編]
出版者
農山漁村文化協会
巻号頁・発行日
1960
著者
中野 詩
出版者
美術科教育学会
雑誌
美術教育学 (ISSN:0917771X)
巻号頁・発行日
no.25, pp.299-317, 2004-03

In recent years, "project-style art" which consists of appreciators' self-directed activities and the process of the activities has become popular. This is a kind of "participation-style art" in which the appreciator is indispensable. This paper focuses on the project-style art which has no definitive purpose at first, like the prosperity of a town, environmental protection etc., but has the reason of necessary expression style for an artist at the on-going process. For example, in the case of Hiroshi Fuji's work "Kaekko" as an operation system (OS), the building of relationships with appreciators, "education for art" and the roll of Fuji at the OS-expression are analyzed. As a result, I found that there are two close sides at the project-style art which are educational and contemporary-artistic.
著者
中山茂著
出版者
岩波書店
巻号頁・発行日
1981
著者
額田 年 椿 恒城
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.119-122, 1964-09-01

(1) 体型的にみた場合海女の中でも大磯人は他の海女群及び非海女よりも比胸囲・比体重がすぐれている。潜水のための上体の発達から筋肉労働者としての体力作業に耐えうる体型であり他の職業婦人とは有意の差をみた。<BR>(2) 体力, 握力は左右が稍平行している。肺活量は他の海女群に比較して大きく, 止息時間と肺活量の相関は低いが潜水作業者として息こらえが長く出来るためには肺活量が大きい方がよく, 血圧は作業直後 (1~2分) にはさしたる変化はしないが30分後には95%が低下した。又, 年令が進むと共に血圧低下の度が大きい。体力的にすぐれた海女は漁獲高も多い。<BR>(3) 障害: 潜水による水圧との関係から30才以上に57.1%の耳鼻咽喉科的疾患がみられ, 聴力は年令と共に難聴者を増し8, 000cycleの高い音がきこえにくくなる。これ海女の職業病と云つてよい。<BR>(4) 疲労: 客難的主観的な検査からは作業後に疲労の徴こうがあらわれているが翌日には解消している所から正常疲労とみた。好酸球数は5.79%の減少率を示したが自覚疲労がなくとも海女の疲労はないとは云えない。毎日の作業であるから「なれ」が出来作業に苦痛は感じないが潜水そのものには疲労をともなつていると思われる。疲労部位は伊豆・志摩海女の作業形式には特色があるため前者は下肢に後者は上肢にその疲労感をみとめた。<BR>以上の事から海女作業は海女自体から云つた場合には苦痛にたえる様な職業とは云えないが海女作業の健康障害については充分に考慮してその改善をはかるべきである。